海水浴と魔具
転移の魔法で無事浜辺に戻りました。心配げな漁村のおじさんおばさん達に、あの人魚はセイレーンではなく海精霊で、もう来ないことを教えました。
「っしゃぁぁ!野郎共!船を出せ!帆をあげろ!漁だぁぁ!!」
「うおおおおお!!」
「漁だぁぁぁぁぁ!!」
パワフルな海の野郎共は走り去りました。おばちゃん達は、お礼に新鮮な魚料理をごちそうしてくれると約束してくれました。
さて、とりあえず一件落着かな?
「皆、お疲れ様でした。じゃ、これから遊びましょうか」
「遊ぶのか?ロザリンドは元気だなぁ」
「嫌だなぁ、アルディン様。私が何のために海底まで行ったと思ってるんですか?なんの憂いもなく遊ぶためですよ!」
「…そうか。まぁ、善意じゃなくついでで助ける辺りがロザリンドだな」
「…だね」
王子様2人に苦笑されました。なんだかんだで彼らも私を理解してますよね。
「じゃあ、私が海のレジャーのために開発した魔具を出しますね」
まずはスタンダードなとこから。浮き輪サイズ各種、ビーチボール。お魚を模したでっかい浮き具はくじらさん、いるかさん、クーリンさんをご用意。
「わああ…」
シーダ君ちのちみっこ達がさっそく浮き輪と浮き具で遊んでます。結界があるとはいえ狩り残しがあると嫌なんで、水月さんに護衛を頼みました。水月さんは子供と遊びながら警戒しています。あとで誉めてあげよう。今日はよく頑張ったね。
「ふっふっふ。ここからがスゴいですよ!」
足こぎあひるさんボートをポーチから取り出したら、ツッコミがきました。
「待て待て待て!明らかにおかしい!」
「はい?」
重たいのであひるボートを置く。王子様達が呆然としています。
「ロザリンド、はい」
「はい?」
シーダ君が捕まえてきたらしいお魚をポーチに入れました。
「出してみろ」
「「「…………」」」
出したらお魚は三枚におろされていました。ポーチをそっと地面に置きました。
「だから、私に都合よくならなくていいから!」
王子様達に残念な生きものを見る目で見られました。
「ロザリンドのポーチはおかしいんだ。あんたら巨大野菜見たろ?」
「ああ…」
「あの動くやつかな?」
「あれを30体以上しまえるんだ。しかも使いやすい大きさにカットしてくれるんだ」
「「…………」」
「気にしない方がいいぞ。オレは諦めた」
「ロザリンドだからな」
「ロザリンド嬢だからね」
「待て!それおかしい!私だからなんですか!?」
「ロザリンドはおかしいからね」
兄からシャイニングスマイルいただきました…いやいや、私がおかしいんじゃない!
「ポーチさんがおかしいのです!私は普通です!!」
『いや、それはない』
場にいた全員からツッコミがきました。なんてこった、敵しかいない!
「ふんだ!こっからがすごいのに、出してあげません!」
私は拗ねていじいじと砂に絵を描きました。
「ロザリィ」
「ミルフィ…」
流石はわが親友!いじける私を慰めに来てくれた!ミルフィは宥めるように私の背中をなでる。
「ロザリィ…認めたくない気持ちは分かりますが、正直ロザリィを普通にしたら、クリスティアには普通の人がいなくなります。ちょっと…だいぶ…かなり変わっていたってよろしいじゃありませんの!私はいつまでもロザリィの親友ですわ!」
「…ありがとう」
「さりげなくとどめを刺したな」
「しかし流石はミルフィリア嬢。悪意がないからロザリンド嬢も折れるしかない」
聞こえてますよ、王子様達!ミルフィはわりと天然だよね。いたわるつもりがとどめでした。
気をとりなおして次の魔具を出すことにします。
モーターボート風魔具!操作パネルをいじれば簡単に船が操縦できます!
初心者でもいける、サーフボード魔具!魔力伝導パネルに足を置いて魔力を流せば、好きな方向にいけます。波も起こせるよ!
人魚変身セット!海中でも呼吸可能!お魚みたいに泳げちゃう!
そして私のイチオシ、水中シャボン玉!シャボン玉として遊ぶもよし!魔力を流せばポヨンポヨンしてビーチボール的な遊びも可!さらにさらに、大きくすれば、海中散歩ができちゃう優れもの!
「本当にすごいな!」
「ロザリンド嬢の頭はどうなってるんだろうね」
「…貸しませんよ?」
「「すいませんでした」」
遊びたかったらしく、即座に謝罪されました。すなおでよろしい。
更にビーチパラソル…冷房・紫外線遮断魔法つきにテーブルと椅子。ビーチチェア、テントを出していく。テントは昔アークにもらったやつです。さっそくちみっこが入ってます。子供はテントとか好きだよね。
「あ、大事なものを忘れてました。ミルフィ、これを身体に塗ってください」
「これは?」
「日焼け止めです。お肌を守るためのクリームです。日焼けし過ぎるとヤケドになることもあります。予防に肌が露出した部分に塗ってください」
「わかりましたわ」
「ディルク、背中に塗ってください!」
「ん?うん」
テントをちみっこに譲ってもらい、上着とズボンも脱ぎました。
「ちょっ!?」
水着姿でコロンと寝そべる。ディルクに座るよう促し、隣に座ったがディルクはソワソワしている。
「いやぁ、リンの夢が叶いましたね。恋人が出来たら背中に塗ってもらうの、憧れだったんですよ」
リンに海水浴とか、死ねと言ってるようなものでしたからね。実は海水浴自体も憧れだったんですよね。
「…そっか。頑張るね」
「うん…ふふ、くすぐったいよ…そっち…水着のフチもむらなく塗ってね?あん!くすぐったいよ」
「ガンバリマス」
終わったら、ディルクが悟りをひらいたかのようになってました。
「じゃ、次は私の番だね?」
「え?ちょ、こら、そこは……にゃああ!?」
日焼け止めを塗るついでにディルクをがっつり補給しました。
「うう…絶対塗る必要ないとこも触ったよね!?」
「てへ」
「もう…」
ほっぺをぷにぷにされました。ご褒美ですね?ありがとうございます。
「あ、兄様も日焼け止め!」
後のやけすぎ被害を防ぐため、皆に塗るように説明しました。
「背中が塗りにくいな、ロザリンド、頼めるか?」
「いいで「俺がやります」」
ディルクがさっさと塗ってあげました。不思議そうなアルディン様。
「ありがとう、ディルク。なぜ不機嫌なんだ?」
「アルディン様にやきもちを妬いたからですよ。ディルクはロザリンドが他の男に触るのが嫌なんです」
「ちょ!?ルー!本当のことだけど言わないで!」
ニヤニヤする近衛騎士達と私と兄。
「私ったら愛されてますね。私も同じ立場なら、やきもちを妬きますけど」
「え、あ…」
アワアワするディルクに、真面目なアルディン様が頭を下げた。
「すまない、ディルク!」
「へ?」
「ロザリンドを愛しているのに不快な思いをさせて申し訳ない!許してくれないだろうか…」
「いえ…俺がみっともなく勝手に嫉妬しただけで…」
「いや、ディルクがロザリンドを心から愛しているのは今に始まった事ではない。配慮すべきだった」
「あの、俺…そんなわかりやすいですか?」
「ロザリンドを見るときはすごく優しい表情だし、ロザリンドが居るときはいつもとても幸せそうな顔をしているじゃないか。居ないときとの差は歴然だぞ?」
「…………」
周囲にえ?そうなの?と目線で確認するディルク。私以外の全員から頷かれ、涙目になりました。いや…私が居ないときのディルクはそんなに違うの?ディルクはその後さんざんひやかされてました。
おや?ジルバがハンカチを噛みちぎりそうな感じですな。何を見て…あ、ミルフィだ。
「シーダ君、塗ってさしあげますわ」
「は?い、いいいいいいって!自分でやる!」
「背中は塗りにくいですわよ?弟さんや妹さん達も塗りました。後はシーダ君だけで…私に触られるのは嫌ですの?」
うるり、と涙目になるミルフィ。シーダ君は項垂れた。
「…それはない。頼む」
シーダ君は顔を真っ赤にしてましたが、尻尾がミルフィに甘えていました。
「ふふ、くすぐったいですわ」
「は?す、すまん!」
「かまいませんわ。私にいじわるしていたわけではないのでしょう?」
「そりゃ、違う…けど」
「そういえば、シーダ君も獣化できるんですの?」
「あ?できるぜ。完全獣化もできるぞ」
言うが早いか、シーダ君は手の平サイズのネズミさんになった。あらかじめシーダ君が完全獣化できるのは聞いてたんで、水着もシーダ君サイズに縮んでいる。灰色かと思ってたシーダ君はウサギみたいに白いネズミさんでした。
「か……………かわいい」
「は?」
「かわいいぃぃ!シーダ君!ちょっとだけでいいので抱っこ…抱っこさせてください!」
「待て!ちょっ!?」
人間サイズのネズミになろうと、ミルフィの勢いは止まりませんでした。
「ぎゅー」
抱きしめてスリスリするミルフィ。幸せそうな笑顔だった。
「ついに親友に私のモフ萌えがうつってしまったのですね…」
「うつるのか!?」
「うつりません」
「………」
純粋なアルディン様に睨まれつつ、ミルフィを見守る私たち。ミルフィは正気にかえるとシーダ君に平謝りしてました。
シーダ君が可愛すぎて理性がぶっ飛んだらしい。大丈夫だよ、ミルフィ。シーダ君あわあわしながら尻尾が甘えてたし、あわあわしながらちゃっかりミルフィの髪を撫でてたから。
長くなったんで切ります。次も海水浴です。遊びますよ。
ミルフィはモフ萌え(シーダ君限定)になった!
すべすべな毛並みのネズミさん…私も抱っこしたいです。