夏といえば
ロザリンドです!私は今、海に来ています!青い空、白い砂浜、どこまでも広がる海と、海の家はないかわりに魔物の群れ。
なんでやねん!!
私は夏といえば海だよね!とディルク、ミルフィ、兄、シーダ君とシーダ君ちのちみっこを連れて海に行くことにしました。おまけに王子が2人と護衛がついてきました。頼み事してたから断れなかった…まぁ、遊ぶだけじゃなくて用事もあったんだけどね。
そして、私は知らなかった。この世界の海は危険地帯だったんだね!こんなシーサーペントやらセイレーンが山盛りいる海で泳げるかっつーの!というか、セイレーンが異常に多くない?
私達は今、クリスティア南部の海岸に来ています。ここはマーサの出身地なんだそうです。ここの漁村でマーサは5歳まで育ち、アークが産まれたら公爵邸に呼ばれたそうな。マーサ達のお母さんはもともと公爵邸のメイドで、祖母の専属だったらしい。仲良しで手紙でやり取りしてたから、出産時期も近いし乳母にどうかと呼ばれたんだって。というか、うちの父とアークは幼馴染ではなく乳兄弟だったと今知りました。
その辺りは今後詳しく聞くとして、今気になるのは別のことです。
「マーサ」
「はい」
「…セイレーン、異常に多くない?」
「…こちらに居たのは5歳までですが、あんなにはいませんでした。普通は居ても1体です」
見る限り、10体はいるもんなぁ。明らかに多すぎる。
「ロザリンド、どうする?というか、そもそもここに何しに来たの?」
「…海水浴がしたかったんです」
「かいすいよく?」
この世界にはそもそも海水浴という概念がありませんでした。海は危険地帯だ。泳ぐバカはいません。でもさ、夏といえば海だよね!泳ぎたいよね!
「ふ……ふふふ…」
「ロザリンド?」
「魔物がなんぼのもんですか!狩りつくして昼食と夕食にしてくれるわ!」
「おねえちゃん、セイレーンも食べるの?」
上がったテンションは可愛い水色金魚さんが、がっつり下げてくれました。
「……………」
会話が聞こえていたのか、歌ってたセイレーンが固まった。ちなみにこちらのセイレーンは下半身が鳥ではなくお魚さん。人魚タイプのセイレーンです。歌で人間を引き寄せ、船を沈めて食べちゃうらしい。
スプラッタも食べるのも食べられるのも避けたいね。食わないよ!
ちなみに近隣の漁師さんも被害にあって船を沈められてしまうからなんとかして欲しいらしいです。お魚料理が売りのお店もお魚が出せないと嘆いてました。あんだけ居座られたら、漁もできないわな。
「いや、食べません。さすがに無理。平和的に解決します!ヴァルキリー!!対セイレーンモード!!」
「ロッザリンドォォ!!」
「だからそれはやめて!」
今回のヴァルキリーは海仕様です。モーターボートに顔とマイクとスピーカー付き。
「さぁ、ヴァルキリー!宴会芸にする予定だった歌声を存分に披露するのよ!」
「ロッザリンドォォ!」
スピーカーで威力が倍!うるさい!というかだから人の名前連呼すんな!
ヴァルキリーはセイレーンの近くに行き、某ボーカロイドの歌を歌いました。セイレーンも対抗します。セイレーンは歌で負けると沈んで、負けた地域から退去しなきゃいけない掟があるらしいです(クーリン情報)
ふはははは、クリスティアに舞い降りた電脳の天使の歌にひれ伏すがよいわ!
「さて、私たちはヴァルキリーがセイレーンの相手をしている間に狩りをしますかね。競争しましょうか」
「いいぞ!チームにするか!」
「単体は危ねーから妥当だな。ロザリンドとディルクは別チームな」
冷静に判断するアデイルさん。
「なんで!?」
「組まれると勝てる気がしない」
「……………ちっ」
非常に納得できる理由でした。というわけでチーム分け。
ディルク、王子2人、兄、ゲータ、ジャッシュチーム。
私、ミルフィ、シーダ君ち、ラビーシャちゃんチーム。人数に差があるんで私は魔獣と精霊さん使用可です。
審判&危険時のフォローに護衛の元暗殺者3人とマーサ、ジルバ。
「では、始め!!」
マーサが開始を宣言、ディルクは鞭で魚を一本釣りしてポイポイ投げ、切り刻む。
「すげー」
「流石はディルク=バートンだな。騎士団でも最上位と言われるだけはある」
喋りながらもディルクが釣り上げた魚の魔物を倒していく白様黒様コンビ。黒様も剣が使えたんだね。知らなかった。
「はっ!」
手際よく投げナイフで倒すのはジャッシュ。ディルクと息があってるようで次々しとめていく。
なかなかやるな、さすがはディルク!負けてられない!私は叫んだ。
「クーリン!巨大化して沖から砂浜に向かってきて!」
「はーい!」
巨大魚 に追いたてられ、海の魔物が岸辺に追いやられる。そこを…!
「水月さん!網を作って!」
「キシャー!!」
ウォータースパイダーの水月さんがネバネバの網を魔物にかける。
「刺身にしてやる!」
風魔法で一網打尽にしちゃいました!本当に刺身が食べたいなぁ。
「…………すげぇ」
「あれ、勝てるのか?」
ディルクのチームが固まってます。一気に数十体倒しましたし、私の倒しこぼしをラビーシャちゃん、ミルフィ、サボさん、シーダ君が倒していく…いや、シーダ君ちのちびちゃん達も倒してるな!意外に戦力になってます!
「きゃああ!」
網から逃れた突撃魚がミルフィに襲いかかる!下がってるように言ってたけど、前に出すぎたようです。私の位置からでは間に合わない!
「危ない!」
間一髪、シーダ君がミルフィを抱きかかえて回避しました。サボさんがすかさずお魚を針まみれにて、しとめます。
「ミルフィは!?」
「お姫様なら無事だ」
「お姫様?」
「あ、う…け、怪我はねぇよな!」
誤魔化すようにミルフィに確認するシーダ君。ミルフィは頷く。
ミルフィは柔らかなピンクブロンドと柔らかな巻き毛。サファイアの瞳で、長いまつげに薔薇色の唇。白いドレスワンピを着ている。お姫様だね!確かに物語のお姫様みたいだね!
「確かにお姫様みたいに気品があっておしとやかで、綺麗で可愛いよね、ミルフィ」
「まあ…ありがとうございます」
照れながらふんわり微笑むミルフィ。私から見てもお姫様ですね。シーダ君は頭をガリガリ掻いた。照れ隠しかな?
「いや、まぁ…うん。俺、あんたみたいな綺麗な女の子見たことないからお姫様だと思った。悪い」
「ふぇ!?あ…ありがとうございます。そんなこと初めて言われましたわ」
あまりにも直球すぎる賛辞にミルフィも真っ赤になった。うーん、お似合いかもしれない。シーダ君は家族思いの優良物件だと思う。
シーダ君は抱きかかえたミルフィを下ろすと頭を下げた。
「あの、今さらかもしれねぇけど、ずっと謝りたかった。あんたの財布を盗もうとして悪かった!」
「え?ああ、はい。済んだことですし、気にしてませんわ。貴方には貴方の事情があったようですし、貴方は私欲で盗みを働いたわけではありませんもの。助けていただきましたし、これでえっと…ちゃら?ですわ」
「…いや、盗みは盗みだ。この程度じゃ足りない」
「え?あ、怪我してるじゃありませんの!」
「このぐらい舐めてりゃ治「軽症治癒」」
ミルフィがすかさず治癒魔法をかけた。そして、背筋を伸ばしてハッキリと告げた。
「貴方は貴方の行いを恥じております。私は、家族のために罪を犯そうとした貴方を罰するつもりはありません」
「…そうか」
「それでも貴方が私に償いたいとおっしゃるなら…そうですわ、お友だちになってくださいませ!」
「…は?」
「私は貴方が好ましいと思います!私のお財布を盗って悪かったとおっしゃるなら、私のお友だちになってくださいませ!」
「いや…あんたみたいなお姫様ならロザリンドみたいな貴族「…ダメですの?」」
押すなぁ、ミルフィ。可愛いお姫様におねだりされて、シーダ君はたじたじです。
ん?なんか様子が……?ミルフィはシーダ君の両手を取った。焦るシーダ君。しかし、手を離さないミルフィ。
「友だちって償いでなるもんでもないだろ!つーか俺みたいなのに触ったらあんたが汚れる!」
シーダ君はミルフィの手を外そうとするが、手荒には出来ないのだろう。真っ赤になって慌てるシーダ君。ミルフィは真っ直ぐにシーダ君を見つめた。
「そうですわね。償いなどと卑怯な言い訳をするところでしたわ。私は貴方が好ましい。私のお友だちになってくださいませ」
「…………は、はい」
うん、あれは誰も勝てないね。シーダ君は真っ赤になって頷いた。これは…ひょっとしちゃう!?ミルフィのデレがMAXですよ!
「兄ちゃん、お姫様とお友だち?」
「よかったね、にいちゃん。お姫様みたいに綺麗だっていってたもんね」
多分、シーダ君ちのちみっこ達に罪はない。彼らは祝福しただけだ。
「お前ら全員しばくぅぅ!」
恥ずかしすぎてキレたシーダ君がちみっこ達を追い回した。ちみっこ速い!シーダ君とちみっこ達の追いかけっこはしばらく続きました。
長くなりましたんで切ります。わりとお似合いな気がするんですが、ミルフィとシーダ君…どうですかね?




