思ったより愛されてました
そういえばミチュウさんの仕送りは、はたしてどこに行ったのか。ミチュウさんはウルファネア東部と王都を定期的に往復する商人さんがいるそうで、そちらに依頼してたそうな。ちなみに商人さんの所属は…
「ロザリンドも知ってるだろ?アーコギ商会」
「……………ああ」
大海嘯が起きる前、元奴隷を買い取ったとこか。あの豚獣人とはあまり話したくないなぁ。ちなみに商人さん自体はいい人だそうで、シーダ君ちを心配しておすそわけしてくれたり、ミチュウさんの事を話してくれたり、チビちゃん達の手紙を無償で届けたりしてくれてたらしい。とりあえず調べよう。乗り掛かった船ですからね。
「ラビーシャちゃんに頼むかな」
「ああ、あいつ泣き叫んでたから多分今は親父のとこに居ると思うぞ」
「…………何故に?」
「お嬢様が倒れたと聞いて、自分も行くと聞かなくてな。くじで外れたから諦めろ、マーサさんも我慢してると言ったんだが」
私はどこにつっこんだら…マーサも来たかったのね。
「何故にくじ?」
「ロザリンド?我が家にロザリンドが大好きで心配する人間がどれだけいると?使用人はもちろん、子供達も連れていってと泣き叫んでたよ?人間どころか魔獣達も悲しげに鳴いたんだよ?サボテンが青くなって白くなって泣いて萎びかけたよ?ユグドラシルも危うく枯れかけたよ?」
兄は呆れた様子で説明してくれました。我が家は私が寝こけてる間に大変なことになってたようです。
「お…おうふ……」
帰ったら家族サービスしよう!予想外に大惨事でした!もう土下座…いや、五体投地か!!
「とりあえず、行ってくる!」
そんなことを考えたが、今はやることがあります!私は転移の魔法を起動した。
転移先は孤児院です。ラビーシャちゃんいるかな?入ろうとしたら、泣き叫ぶ声が聞こえた。
「うわあああああん!!離してよ!お嬢様、お嬢様のとこにいくぅぅ!!お嬢様、お嬢様、おじょうざまぁぁぁ!!うわあああああん!!」
あまりにも悲痛なラビーシャちゃんの叫び。あの…半日以上経ってもこれ?え?大丈夫じゃないですね!私は固まったがすぐさま扉を開けた。
「ラビーシャちゃん!心配かけてごめんね!私は元気です!」
いつも綺麗に結われた髪はボサボサ。泣きはらし、暴れたためか傷だらけ。抱きしめて、すぐに傷を治してあげた。
「おじょう…さま?」
「うん!」
「お…じょ…うわあああああん!」
「ええ!?」
また泣き出した!?
「助かりましたよ。自力ででも、ウルファネアに行くと聞かなくて…」
ラビオリさんはもっとボロボロでした。ラビーシャちゃん強いですものね…ラビーシャちゃんは泣き疲れて寝てしまいました。
「さて、お嬢様のご用件は何でしょうか?」
ウルファネアでの一件をラビオリさんに話した。
「ふむ。でしたら、私とゲータでも大丈夫でしょう。商人の風上にも置けませんね。お任せください。完璧に調べてみせます。ミケルさん、居ますね」
「にゃあ!?す、すいません…」
気配…というより音で気がついていた様子のラビオリさん。ミケルは盗み聞きして申し訳なさそうです。
「いいんですよ。貴女もお嬢様を心配していましたからね。私は数日間留守にします。孤児院をお願いします」
「は、はい!お任せください!」
ミケルはラビオリさんに了承した。というわけでラビオリさんに任せる事になりましたが、問題はラビーシャちゃんかな。そんなことを考えていたら、ラビーシャちゃんが起きてきた。
「お嬢様ぁぁぁ!」
「ぐはっ!?」
勢いよく抱きつくラビーシャちゃん。うん、よしよし。先ほどよりは落ち着いたみたいですね。
「私も行きます!連れてってください!!」
ラビーシャちゃんは本気でした。お断りできる気がしませんでした。
「ラビーシャ、ならお前も手伝いなさい」
こうして、ミチュウさんの消えた仕送りはワルーゼ家に調べてもらうことになりました。
調べものはワルーゼ家にお任せで、次は庭園になります。
ロザリンドにしてみたら、ラビーシャがあそこまで泣くとは思ってませんでした。