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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・また来ちゃったよ!ウルファネア編
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緑の手と意外な繋り

 打ち合わせのあと、私は応接間の扉を開けて



…………………閉めました。



 うん、見なかったことにしたい。しかし、無情にも扉は再度開かれた。


「お話し中、申し訳ありません!巨大な野菜が多数、城下町に現れました!聖女様の仕業………ではないみたいですね」


 以前の巨大な野菜は私でしたが、私はいままで話し合いしてましたから無実です。国のトップがアリバイを証言しますよ。

 つまり、巨大なお野菜を作った犯人は………


「何やらかしたんですか、兄様ぁぁぁぁ!?」


 犯人は兄です!思わず叫んだ私。


「おお、兄君も来ているのか」


「ロザリンド、どうするの?まぁ、害はないみたいだし、敵意もなさそうだけど…」


「とりあえず、兄様に確認しましょう」







 私はディルクに抱っこしてもらい、移動しました。お姫様抱っこですよ!速くて怖いから、ちゃっかり抱きつきましたよ!てへ。ディルクはいつもいい匂いです。






「ロザリンド、お帰り!」


 あ、これダメなやつだ。私は兄を見て悟った。護衛(ゲータ)が謝罪のジェスチャーしてるわ。ゲータは悪くないよ。私にも止められたかは微妙だから。トサーケンは巨大な野菜に怯えてる。まぁ、仕方ないよね。

 兄は瞳がキラッキラしてます。ああ…うん。興味ある何かがあったんだね。シーダ君が明らかに戸惑ってるんだけど、何やらかしたのかな?というか、2人ともお野菜さん達になつかれてない?


「ロザリンド、すまん」


「え?」


「その…あの野菜は半分俺のせいなんだ」


 シーダ君、意外なことに天啓・緑の手を持ってたそうです。でもよく考えたらユグドラシルのマナが枯渇した状態でも痩せ細ってるとはいえ野菜を育ててたわけだから、あってもおかしくないわ。

 そして、初めて会った自分と同じ天啓をもつ相手に、兄は大興奮。緑の手は複数で魔法を使うと効果があがるらしく、結果があの巨大なお野菜さんの群れというわけだ。


 兄はうきうきしている。楽しそうだしいいか…と思いかけたが、よくない。どうすんの、あのお野菜!


「…野菜をどうしようか」


「近所のおばさんに捌いてもらうか」


 シーダ君は近所のおばさん達に半分分けるからとお野菜さんのカットを依頼。近所のおばさん達は、素晴らしい剣捌きでお野菜さんを食べやすい大きさにカットしていく。半分ぐらいにお野菜さんは減ったが、まだ30以上はいる。


「仕方ない。鞄に入れて、お城に売るかな」


「…入るわけないだろ、大丈夫か?」


「まぁ、全部は無理かもしんないけど、入る入る」






 結果、全部入りました。体長5メートルはあるお野菜30体が、全部入っちゃいました。どうなってんだよ!?自分でやっときながら驚きです。


「…その鞄、どうなってんだよ!」


「魔法で空間を拡張してあるんですよ。しかし、まさか全部入るとか…予想外ですね」


「予想外なのかよ!」


「自分で作っといてなんですが、限界がどのくらいか調べてませんでしたし…どうせなら自動で食べやすい大きさにカットしてくれるとかだと便利ですよね」


 私はうかつでした。驚きすぎて軽い気持ちで発言したら、私の(ウェストポーチ)が輝きだした。


「ええええええ!?」


「ロザリンド!?」


 しかし、鞄は輝いただけだった。ま、まさか…!まさかだった。先ほど収納したお野菜さんが綺麗にカットされている!!私は(ウェストポーチ)さんを外した。


「いいですか、私に都合よくなんなくていいんですよ!普通に鞄さんで大丈夫なんです!」


「…なんというか」


「シュールな光景だな」


 兄とシーダ君があきれてます。地面に置いた(ウェストポーチ)に必死で語りかける私。私の奇行に兄のテンションも下がったらしく、兄が正気に戻りました。

 お野菜は城に売りつけましたが、兄はシーダ君をクリスティアにお持ち帰り…じゃなかった、連れて帰りたいご様子。熱心に説得してます。


「いや、俺は病気の母親とチビが居るから!」


「病気の?早く言えばいいのに。アリサー」


「はぁい」


 アリサがどうにかできるたぐいの病気だったんであっさり治しました。


「シーダ…」


「母さん」


 抱き合う母子。ちみたん達も混ざります。


「まま、お病気治ったの?」


「ロザリンドお姉ちゃんありがとう!」


「ロザリンドお姉ちゃん、おかしちょうだい」


 ちゃっかりおかしをねだられたんで、シーダ君の兄弟におかしをあげました。


「シーダ、お前に負担をかけてばかりだったけど、ようやく母さんも動けるのよ。好きにしていいの」


「母さん…でも、俺家族を守るってミチュウ兄さんには約束したんだ!」


「みちゅう?」


 最近聞いた覚えがあるんだけど…ミチュウさん?


「ええとお兄さん、東の公爵に仕えてたりしない?」


「会ったのか!?兄さんは無事だったか!?」


「見る限り怪我はなかったよ」


「そうか」


 シーダはにっこり笑ったが、なんか違和感がある。口が悪いけど、まともそうなミチュウさん。兄弟を生活に困る状態で放置するかなぁ…気になる。

 さっきレオールさんに通信魔具渡したし、話せるかな?


「通話、レオール」


「聖女様、どうされました?」


「聖女はやめてください。ロザリンドでお願いします。ミチュウさん居ます?」


「はい、居ますよ。ミチュウ、我が主がお前に用があるようだ。くれぐれも粗相のないように」


 余計なことを言わないでくださいよ、レオールさんや。


「あ?これに話せばいいのか?つーか俺に何の用だろ」


「にーちゃん!」


「にーちゃんの声だ!」


「…兄さん?ミチュウ兄さん?」


「あ?シーダ?ロザリンド様、どういうことですか?」


「ミチュウさんは、シーダ君達が生活に困窮してたのを把握してました?」


「…え?」


「シーダ君が盗みをしようとするほど生活に困窮してたのを把握してました?」


「ロザリンド、やめろ!」


「ちゃんと話し合うべきです。レオールさん、聞いてますね?私がミチュウさんに代わって仕事しますんで、ミチュウさん貸してください。魔法で送迎もします」


「あ、僕も仕事手伝うよ」


 というわけで、ミチュウさんはシーダ君ちへ。代わりにレオールさんの執務室で働く私達。門外漢のトサーケン以外も手伝ってます。特にディルクは最近似たような仕事してますし、ゲータは数字に強い。書類はどんどん減っていき、休憩になりました。


「…ロザリンド様とお兄様はおいくつですか?」


「7歳です」


「9歳です」


 レオールさんの耳と尻尾がしんなりした。なんか落ち込んでます?


「はぁ…私はなんて無能なんだ」


「…この2人と比べたらだめですよ。大半が無能になっちゃいます。そもそもロザリンドは3歳から、ルーは5歳から仮とはいえ宰相秘書官してたんですから、色々おかしいんです」


「は?」


「え?」


 ゲータとトサーケンが驚いた。そういや知らなかったよね。というか、おかしいって身も蓋もないな。


「一応補足しますと私は贈り人もちですから、純粋におかしいのは兄様です」


「ロザリンド?」


「あいたたたたた!?兄様、ギブギブギブ!!すいません、ごめんなさい、許してくださぁぁい!!」


 兄からウメボシをくらいました。地味に痛い!


「仲がいいんだね」


 レオール様は苦笑している。この人、最初とイメージまったく違うなぁ。今はギラギラしてなくて、地味でセンスがいい。ちなみに、レオール=フェルゼンさんなんだって。うん、カナタさん…ツッコミは任せた!


「魔にとりつかれてた理由が劣等感だって言ってましたよね?」


「ああ、私は何一つシュシュリーナに勝てなかったからね」


「ふぅん…勝ちたいんですか?」


「まぁ…ね」


「ちなみに、模擬試合ならいくらでも勝ちようがありますよ?手段を選ばなければ」


「…………いや、正攻法でいきたい」


 真面目なんだなぁ。本来のこの人は。だからミチュウさんも見捨てなかったのかな?


「正攻法…ね。正攻法でも戦力に差があっても、やり方によっては覆せます。要はやり方ですよ。私だって実力ではディルクに49連敗しますけど、1回は勝ちました!」


「「ロザリンドに49連勝!?」」


 え?そっちに驚くの?兄様もゲータも信じられないご様子です。


「まぁ、ロザリンドにヴァルキリー使われたら負ける可能性はあるかな…ヴァルキリー無しで、だからね」


 補足するディルク。レオールさんは何か考えている。


「勝敗なんて、ゲームでもない限りは基本そうそう決まりませんよ。私はレオールさんをさほど知りませんが、デスクワークや交渉関連はレオールさんが上では?」


「それは…まぁ…」


「幸せも比較も同じですよ。上には上が、下には下がいます。上を見すぎては卑屈になります。下を見すぎては傲慢になります。要はバランス。上を見習えば向上心に繋がる。下を振り向けば自信に繋がる」


 難しいな、どうしたら伝わるかな?


「勝てないと決めつけてしまいながらも、貴方は自分を高める努力をやめなかった。それは確実に貴方の力になります。きちんと自分の努力を認めてください。そうすればもう魔に負けませんよ」


 うん、思いこみ大事。今後定期的に魔を抑えてもらうかもだし。


「ありがとうございます、我が主!!」


「ロザリンドはやる気にさせるのがうまいよね…」


「ああ…恋愛以外だとかなりの人たらしだよな」


「「あまりにもしっくりきた!」」


 ディルク・ゲータ・兄が話してるのが聞こえました。誰が人たらしですか。一言だけ言っときます!


「私がたらしこみたいのはディルクだけです!」


「あ…………うん」


「「「「ごちそうさまでした」」」」」


 ディルク以外からごちそうさまされました。ディルクは嬉しそうにしてます。そんなお馬鹿なやりとりしてたら、悲壮感ただよう連絡がありました。


「ロザリンド様…話は終わりました」


「だ、大丈夫ですか?」


 何故人は、大丈夫じゃない時に限って大丈夫?と聞いてしまうのか。迎えにいったら、ミチュウさんがうちひしがれてました。ご家族も困ってます。


 結局、ミチュウさんの仕送りが着服されていて、ミチュウさんはレオールさんがおかしくなってたのをどうにかするのに手いっぱいだったため気がつかなかったみたい。

 シーダ君もユグドラシルによる影響で生活が苦しくて、ミチュウさんに連絡できなかった…というわけだ。


「畑はうちの元奴隷組をよこしますから、シーダ君通いにしない?魔法で送迎しますから、学校行こうよ。対価は兄様の研究手伝いでどうかな」


「いいのか!?」


 ミチュウさんの方がくいついた。ミチュウさんは、シーダ君が優秀なのに学校に行けないのを気にやんでいたそうな。


「よろしくお願いいたします」


 お母様、土下座はやめてください。ミチュウさんも土下座はしなくていいです。とりあえず、やめさせました。なんかやたら獣人に土下座されてる気がするのはなんでだ。


「俺は…」


 迷う様子のシーダ君。背中を押してあげましょう。


「シーダ君、将来の仕事選択範囲拡大と給料アップのためですよ。私達は優秀な人材ゲット。互いの利になると思いませんか?」


「……わかった。お願いします」


「交渉成立!」


 というわけで、シーダ君はちょくちょくクリスティアに来ることになりました。

 予想外に長くなりました…なんでだ?


 ちなみにミチュウさんは出稼ぎにでてましたが、野盗にやられてボロボロなとこを魔に憑かれる前のレオールさんに拾われました。恩があるから見捨てなかったし、世話を焼いてたわけです。

 本来の仲はとてもいいです。互いに不足を補いあう主従だったりします。


 将来シーダ君の進路をミチュウさんとルーが取り合いしそうな気がします(笑)

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