夢から覚めたら
眩しい光を感じて目を開ける。起き上がった途端に衝撃がきた。
「ぐは!?」
「ロザリンド!」
「兄様?」
「ロザリンドちゃんたら…ねぼすけさんね」
「母様?」
「おはよう」
「おはようございます、父様」
え?私は何故に寝起きで兄に抱き締められているの?兄よ、ちと痛いのですが。というか、ここどこ?なぜ両親がここに?
「魔の気配は完全に消えてるわね。体調は?」
金色に柔らかな輝きを放つ、ゴージャスな巻き毛の…あ、チタですね。思い出してきました。魔に包まれたんだっけか。
「ん?うん。大丈夫」
「ロザリンド、半日も目を覚まさないから心配したんだよ!この…ばか…っく…えっく…」
「あ、あう…すいません」
兄がマジ泣きです。あああああ、すいません!心配かけてすいません!土下座でもなんでもするから泣かないで!抱きつく兄の背中を宥めるようにナデナデしました。精霊さん達も勢揃いで私を見てます。皆が微妙に涙目です。ご、ごめんなさい。
「ちなみにここは何処ですか?」
「我が家の客室じゃよ」
「お祖父様…」
「城から連絡を受けてな。家族にはわしから連絡した」
「申し訳ありませんでした」
兄が抱きしめるのをやめたので、きちんとお祖父様に頭を下げた。
「いや、無事で良かった。ディルクも力になったようだな」
「…はい。彼女は自力でなんとかできたみたいですが、お祖父様のおかげで早く目覚めるきっかけにはなれたと思います」
ディルクが優しく微笑んだ。夢で迎えに来てくれたのは、やはりディルク本人だったみたいですね。
「ロザリンド、夢の中で何があったの?」
「え?んーと…多分魔は私の負の感情を高めたかったみたいですが、私メンタル超強いですし…結論を言うと、魔に嫌われました」
しん、と場が静まった。私、変なこと言った?あの最後の叫びはそうだと思うの。
「魔に意思があると?」
お祖父様は信じられないご様子です。
「多分、あります。レオールさんのはどうだか分かりませんが、ジューダス様に憑いてる奴は意思があると思われます。最初はリンが成人まで生きられないと告知されて、絶望してやさぐれてた場面を見せられまして」
「え?」
ディルクが青ざめた。家族が悲痛な表情になる。いや、昔の事だよ?今は身体、健康だから気にしてない。
「今は健康体ですし、うへぇと思ったぐらいですね。効果がないとわかると、今度は私がひたすら死に続ける映像を見せられました」
「ロザリンド…」
私より皆が泣きそうなんですけど。いや、ハクは泣いてるな。泣くな、私は大丈夫だから。不愉快ではあったけどね。
「そもそも、私は天啓で同じような映像を散々見てましたし(むしろ体感出来る分天啓の方がたち悪かったし)リンはその未来を変えるために居ます。むしろこんなパターンもあったよね、原因はなんだっただろうと考察してました。なので、それも効かないとわかると多量の巨大な虫が出てきました」
「え…」
兄が気絶しそうです。大丈夫か、兄。虫が嫌いだもんね。
「さすがにびっくりしましたが、魔物だと思えば気になりませんでした。全部剣と魔法でなんとかできましたしね。そこで、あれ?これ夢かな?なら主導権はこっちにあるよねと夢を取り返しました」
「なんというか…ロザリンドだな」
「さすがロザリンドとしか言えない。普通は巨大な虫なんか倒す発想がないし、夢を取り返すとか思いつかないよね」
付き合いが長いスイとハルがあきれてます。いや、ねえ?気がついたなら取り返すでしょ。普通はそもそも気がつけない?
ああ…そうかもしんないね。私はロザリアと夢で遊んだりもしてたからなぁ。
「その時に、どうしておまえばっかり愛される!おまえなんかいらない!!と言われました。だから意思があると思われます」
「ロザリンドは夢の中でも戦ってたんだね」
「はい。お迎えありがとうございます。取り返してすぐにディルク達が来てくれました。出口はわかりませんでしたし、助かりました」
「ディルクの魔力操作は見事なものじゃった」
「魔力操作?」
「ディルクは魔力を操作して魔を制御し、ロザリンド様を見つけ出した。魔を操るのが我が血筋です」
お祖父様が私に礼をとった。ウルファネア王族以外にはあまりされたことありませんね。え?なんで忠誠の礼!?
「え?」
「ロザリンド様…いえ、聖女様。これは我が国の創立にも関わる国家機密にございます。城にて話を聞いていただきたい」
「ええ?それは(嫌だけど)構いませんが…な、何故にお祖父様は忠誠の礼を…」
「我らはきっと貴女をお待ち申し上げていたのです」
面倒な予感しかしない!え!?マジで!?どうなってるの!?
「に、兄様…」
兄に助けを求めたが、更に落とされました。うん、人選間違った!
「僕らは家で待ってるよ。とりあえずロザリンドはぐっすり寝てたわけだし、今夜は寝かせないよ」
うああ…兄様いい笑顔…説教宣告いただきました!し、仕方ない。ここまで心配させてしまったのだから、説教されないとかありえないよね。自業自得です。
「はい…帰ったら覚悟してます」
「その、聖女様は善意で第2王子殿下をお救いしようとされたので…「それはそれ、これはこれです」」
うなだれた私に助け船を出そうとしたお祖父様。それを黙らせるとは、流石は兄!いや、言い訳しません。私が逆の立場でも同じです。仕方ないです。
「あ、でも兄様は帰らないで欲しいです。せっかくだからシーダ君の畑を見ていってください。私もちゃんと説明しましたが、兄様と話した方がいい部分もあるでしょうし」
「うん、わかった」
「帰りに迎えに行きます。一緒に帰りましょう」
「じゃあ、待ってるよ」
「時間が余ったら、ここの庭園を散歩しましょう。兄様、ここの薔薇は凄いですよ」
「そうなの!?」
兄様の瞳が輝いた。それでこそ兄です。
「多分兄様が1泊したくなるレベルだと思います」
「帰りに絶対散歩しよう!」
「はい、約束です」
私は兄と約束しました。なんか皆から微笑ましいという視線を受けてる気がするのは気のせい?父、母、精霊さん達全員から抱きしめられました。うん、皆…ごめんなさい。
私はディルクとお城に行くのですが、結論からいって兄をシーダ君のとこに行かせたのは大正解でした。それはまた、後でのお話です。
うん…チタの話までなかなか行かない…
シリアス先輩のせいです!多分!きっと!…すいません!




