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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・また来ちゃったよ!ウルファネア編

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西の農場とシュシュさん

 西の公爵領へは、ヴァルキリーの飛空艇モードで行きました。


 大興奮でした。子供から大人まで。


「おおお、飛んだ!飛んでおる!素晴らしいな、ロザリンド様!!」


「にゃー!おそらびゅーん!」


「にゃー!はやいにゃー!」


「すっげえぇぇ!たけぇ!速い!超すげぇぇぇ!」


 大興奮するお祖父様&双子ちゃん&ラグラス君。お祖父様、様付けやめて。むしろちゃんにして欲しいです。


「おお…た、高い………」


 微妙に怯えてるディスクさん。お耳と尻尾がぴるぴるしてます。大丈夫か?顔色悪いよ?


「わぁ…すごいわ、町がオモチャみたいねぇ…」


「はわ…ステキです」


 静かに喜ぶミュディアさんとラァラちゃん。お耳と尻尾がご機嫌に揺れてます。


「それでな!カナタはな!」


 そして、マイペースに私とディルクへ延々つがいの素晴らしさを語るシュシュさん(長いからシュシュでいいと強引に押しきられた)と、死んだ魚の瞳でスルーし続けるシュシュさんの従者で蜥蜴の獣人、アンドレさん。


 超個性的な面子で移動しております。


 シュシュさんの話したカナタさんという多分同郷贈り人とのなれそめを要約します。

 シュシュさんは男性的な外見がコンプレックスだったそうです。ちなみにシュシュさんは長身で肩幅がっちり。スレンダーな美女なのです。シュシュさんの婚約者は彼女の外見が気に入らないと、一方的にひどい言葉を浴びせて婚約破棄したそうです。同じ公爵ですが、向こうが高位で泣き寝入りするしかなかった。そんな中、彼女は願った。心が悲鳴をあげていて、死にたいと思いながらも願った。


『私の外見など気にせず愛してくれる人に会いたい』


 そして、その願いに引き寄せられたのがカナタさん。


「あ、オスカ○ぽい美女がおる。え?これ夢なん?夢でもええわ、超好み!」


「びじょ?」


 カナタさんは混乱していたものの、普通にシュシュさんを好みだと言ってくれてそれはもう毎日熱心に口説き、シュシュさんを見事射止めました。シュシュさんもカナタさんがつがいだと分かっていましたが、人間は獣人と違い浮気もありえる。自分に自信のないシュシュさんに何度も可愛いと言ってくれたカナタさん。シュシュさんはカナタさんがつがいでなかったとしてもきっと好きになったと照れながら微笑みました。

 現在は婚約中で引退したシュシュさんのお父さんを説得するために頑張って商人として働いているのだということです。


「カナタはな、カナタはな」


 一生懸命カナタさんについて話すシュシュさんは大変可愛らしい。


「聖女様、よく付き合えますね」


 蛇だけど死んだ魚みたいな目をするアンドレさん。


「聖女ではありません。恋する女性は皆愛らしいものです。私も女性ですし恋の話はわりと好きですから苦痛ではないですよ」


 ちなみに聞くのは好きですが、話すのは苦手です。


「…尊敬します」


 心から、と言わんばかりにため息をつかれました。いや、たまにだし私はいくら話されても構いませんよ。






「ふむ、ここらで良かろう」


「え?」


 明らかに住民が不審がって武装してますよ?もう少し離れたとこに降りた方がいいと思う!


「私が行こう」


「大丈夫、大丈夫。シュシュお嬢様派手だし、仮に間違ってちょこっと刺されても生きてるから」


「どの辺りが大丈夫なんですか!?刺される時点でアウトです!ハル!拡声!」


「はいよ」


「こんにちはー!王都から王命で来ています!シュシュリーナお嬢様もおります!武装を解除してください!着陸します!潰されたくなければ、総員退避!!」


 さすがは獣人。素早く全員逃げました。そこを見計らってさっさと着陸。シュシュさんが先頭で皆さんに事情を説明してくれました。


「さぁ、ロザリンドちゃん。よろしく頼むよ」


 なんかすっかり仲良くなっちゃったシュシュさんにエスコートされ、農園に行きました。


「ヴァルキリー、魔術師モード!」


「ロッザリンドォォ!!」


「だから私の名前を叫ばない!」


「スイマセン…テンションアガルトツイ…」


 私にペコペコするヴァルキリー。うん、シュールな光景だね。


「きょじんさんおしゃべりできるにょ?」

「できるにょ?」


 双子ちゃん達がおめめをキラキラさせてヴァルキリーに話しかけた。


「ハイ。シャベレマス」


「しゅごいにゃあ!」

「かちこいにゃあ!」


「アリガトウゴザイマス」


 ヴァルキリーも双子ちゃんの可愛さに癒されたのか以前のようにへこみませんでした。ナイスフォロー!


「つうか、普通に会話すんなよ…」


「我が子ながら大物になりそうねぇ…」


「………しゃべるんだ…」


 ラグラス君、ミュディアさん、ラァラちゃんがそれぞれ呟いてました。私も最初はびっくりしたよ。


「さて、もう一仕事頑張るよ!スイ、アリサ、ゴラちゃん、ハル!力を貸して!」


「「「「「はい!」」」」」


 やっぱ返事が1人多いような…おかしいなぁ。なんでだろう。しかし余計な雑念は失敗のもと。魔力をヴァルキリーで増幅し、構成した術式に魔力を通していく。


「緑の豊穣」


 緑の魔力がユグドラシルのマナを引き寄せ、更に増幅し…農園を中心に緑が繁っていく。


「にょきにょきにゃー!」


「おおきくにゃあれー!」


「わあ…」


「すげえ…」


「まさに奇跡…」


「あらあら…すごいわ」


 お祖父様はさっきの事があるので周囲をディルクと警戒している。


「奇跡だ!」


「きっとヤオヨローズの神様だ!」


「え?それ違う!なにそれ違う!八百万だよ!いや、八百万の神でもないけど!」


「ヤオヨローズ様!」


「ヤオヨローズ様万歳!」


「ひ、人の話を聞いてぇぇ!?」


 私の悲痛な叫びが響く。そこにシュシュさんが颯爽と…


「皆、落ち着け!ヤオヨローズとは数多の神々という意味だ!ロザリンドちゃんは数多の者を救う神!つまりセンジュカンノーンだ!」


 更なる爆弾を投下した。なんでやねん!そもそも神じゃありません!


「それもちがぁぁぁう!!私に千本も腕はない!」


「む?しかし贈り人は神の加護と寵愛を得る…神子だな!よし!神子様を讃えよ!!」


「……違うのに…」


 もうなに言っても無駄な気がしてきた…いや!まだある!手段はありました!


「ハル、拡声」


「ん?おー」


 すうっと息を吸う。ラビーシャちゃん、私に(演技)力を分けてくれ!


「私は神子・カナタ殿の願いによりこちらに参りました。私とカナタ殿は同郷にございます。カナタ殿は此度のことに大変心を痛めておいででした。私も微力ながらお力になりたいと願った次第でございます」


「…ロザリンドちゃん?」


 秘技!手柄をすり替え!

カナタさんがこれでシュシュさんと結婚できればいいよね!


「私ではなく、称えるべきは神子・カナタ!危険を承知で食糧買い付けに行っているカナタです!私は彼の願いがなければ来ませんでした!さぁ、カナタコールです!カーナータ!」


「カーナータ!」


「カーナータ!」


「カーナータ!」


 これ確実にカナタさんびっくりだよね。でも仕方ないよね。見たことも会ったこともないけど許してください、カナタさん。


 私は、カナタさんにまんまと手柄を擦り付けることに成功しました。


「神子様、これもってけ」


「神子様、これうまいぞ」


 擦り付けることには成功したが、神子様の称号とお野菜のおすそ分けからは逃れられな…あれ?こ、これは…!!


「…チョコ?」


「よく知っていたな。これはこの地域の特産品だ。正確にはちょこれいとと呼ばれる高級菓子だぞ」


「…カカオがあるんですか!?」


「かかお?ちょこの原料か?あるぞ」


「商売しないから!自宅で楽しむんで売ってください!」


 シュシュさんがドン引きしてましたが、チョコとカカオをゲットしました!


「ご機嫌だね、ロザリンド」


「チョコはおいしいですよ!ディルクにも食べさせてあげます!」


「うん?ありがとう」


「はい、あーん」


 チョコ一欠片をディルクに食べさせる。


「え?あ、あーん」


「おいしい?」


「……………う、うん……」


 口もとをおさえてやや挙動不審なディルク。私も1個食べてみる。おいしいけど…ちょっとざらつく。うーん、改良の余地ありだね。




「あれだな。ラブラブだな」


「ラブラブですね」


 シュシュさんとアンドレさん…西の農場の皆様が私達を生暖かく見守っていたのに、私は気がつきませんでした。

 ちなみにカナタさん、帰国してからなんでやねん!連発。帰ってきたら農場は復活してるわ、神子様呼びだわ、知らない相手と知りあいにされてるわ………

 ツッコミが追いつきませんでした。


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ユハズ先生も絵が綺麗なので必見ですよ!!悪なりコミカライズ、スタート!! 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!コミカライズのリンクはこちら!」 小説二巻、発売中です。書き下ろしもありますよー 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!二巻のリンクはこちら!」
― 新着の感想 ―
[気になる点] 現実の犬猫だとチョコは毒なのですが、こちらの獣人にはその心配はないようで。 でもディルクの口に合わなかった風なのは、その辺を意識してとか?
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