朝の一幕
さて、朝になりました。目の前に素晴らしい大胸筋…いい匂いがします。さらにはもふもふです。なんと幸せな感触…
すりすりして感触を楽しむと、柔らかく抱き締められました。しかも頭を優しく撫でてきます。二度寝したくなる素晴らしい撫でテク!しかし、よく考えたらこの姿はマズイ!昨日結局全力でもふり倒した結果、ディルクはまだブーメランパンツのみです。そしてもふもふしているので獣化してますね。
「ディルク、ディルク!」
ディルクをてしてし叩く私。ディルクは起きてくれましたがまだ眠そうです。
「うん?ろざりんど…おはよ…」
うわ、口を舐められ…いやいや、舌を入れないで!?
「んう、ダメ!至急服を着てください!着替えてないでしょ!?」
「服…?……!?…………!!」
ディルク素早く着替えました。チラッといろいろ見えました。眼福です。しかし、着替え早かったですね。
ディルクが着替えを終えた所で昨日の気が利く侍従さんがノックしてから入り…笑顔でリターンしようとしました。
なんでだ!?なんか用事だよね!?
「失礼いたしました。まさかお楽しみ中とは「違います違います違います!大丈夫です!何かご用ですか!?」」
涙目で訴えるディルク。侍従さんは顔を赤らめていたが、用件を済ませることにしたらしい。
「そうですか?では、ロザリンドお嬢様、例の件は大丈夫ですが、いかがしますか?体調は…」
そも体調崩す行為はしてません。何したと思われてるか怖くて聞けないわ。
「問題ありません。すぐに着替えます。案内していただけますか?」
「かしこまりました」
そして、私は厨房です。今日はもうメニューも決めてありますよ!お屋敷のシェフさんには悪いですが、ディルクに温かい朝ごはんを作れるチャンスです!はりきって作っちゃいますよ!
恰幅のいいゴリラ?の獣人なシェフさんは気のいいおじさんで、嫌な顔をせずに調味料や食材を出してくれました。
「ありがとうございます」
「へ?あ、いや、ドウイタシマシテ」
お礼を言ったらシェフさんがやたら挙動不審になりました。私、なんか変なこと言いました?
「あの、私、何かおかしい事を言いました?」
「い、いや…お嬢ちゃんはクリスティアの貴族令嬢なんだよな…ですよね?」
「はい、一応。喋りにくければ敬語は不要ですよ」
「えぇ?じゃあ敬語はやめるけどよ…自分ちの使用人にもそんな感じなのか?」
自分の家…同じ立場といえば…ダンか。
「はぁ、まぁ…よく一緒に食事を作りますよ。工夫したり、意見を言い合ったり、試食してもらったり…」
「お嬢ちゃんが変わってんのは分かった」
「え?」
「俺はクリスティア育ちでな。下働きでクリスティア貴族の厨房に居たんだが、汚らわしい獣人が作った料理なんぞ食いたくねぇと言われてな、クビになったとこをたまたま旦那様に拾われてな」
「…すいません」
「いや、逆にいい職場に巡りあえて良かったさ。お嬢ちゃんみたいな貴族も居るんだなぁ」
「…やはり、異文化交流は必要か」
「…お嬢ちゃん?」
「いえ、ジェスと取り引き…すいません、余計な話をして。始めましょうか」
そして、出来ました!
オムライスとスープにサラダです。オムライスは超大盛り。フードファイトな量ですが、このぐらい当たり前と言われました。皆さんたくさん食べるんですね…
「お待たせしました。私のスペシャリテ・オムライスです!」
ふふふ…私、オムライスには自信があります!私のオムライスはケチャップライスにオムレツを乗っけたもの。
「こうやって食べるんですよ」
オムレツを縦に真っ二つに切ると、半熟卵がとろ~りです。そこにケチャップでハートを書いてディルクに渡しました。
「愛情たっぷりですから、たくさん食べてね。このハートマークは愛情という意味です。つまりディルク大好きという私の暑苦しい愛情を示します!」
ディルクが真っ赤になりました。とりあえず一口。
「おいしい!ものすごくおいしいよ、ロザリンド!」
「おねーちゃん、おえかきしてほしいにゃあ!」
「ぼくもほしいにゃあ!」
双子ちゃん達にはケチャップで猫さんを描いてあげました。
「にゃーにゃーだ!」
「にゃーにゃーかわいいにゃー!」
君達も可愛いです。さりげなくもふる私。柔らかくて極上のモフ心地ですな!
ラァラちゃんにはウサギさんを描いてあげました。
「ウサギさん…かわいい。ありがとう」
ふんわり微笑まれました。さりげなくもふる私。サラッサラで絹糸みたいにスベスベでした。
後はそれぞれ食べ始めてたんで、私も席につこうとしたら、袖をつかまれました。ラグラス君です。
「おれにもなんか描け」
「…描いてください」
それは物を頼む態度じゃないよね?と言ってやる。ごねるかと思いきや、ラグラス君は素直に描いてくださいと言った。なのでヴァルキリーを描いてやった。うむ、いい出来だ。
「…………………すげぇ」
「わぁぁ、かっこいいにゃあ!」
「かっこいいにゃあ!」
「わぁ…すごい」
ラグラス君のお皿に興味津々なちみっ子達。
「…兄さん、これ食べるの?」
「「「…………………」」」
しん、と静まり返る全員。双子が涙目である。
「…おれは朝飯抜きはキツい」
そりゃそうだ。スープとサラダだけじゃ足りないだろう。ラグラス君が意を決した様子でスプーンをオムライスに入れようとした。
「だめぇ!」
「こんなすごいえをたべにゃいで!」
「………………」
ラグラス君がめっちゃ困ってます。なんだこれ、面白いな。傍観していたが、オムライスは温かい方がおいしい食べ物である。
「また今度絵は描いてあげるから、食べなさい」
「わーい!いただきまぁす!」
「いただきまぁす!」
「…おいしい」
「…………うまっ!」
さて、子供達がオムライスを食べ始め…大人はすでに完食してました。早い!
優雅に食後の紅茶を飲むフィーディアさんが、とんでもない爆弾を投下しました。
「それにしても、ディルクちゃんたらロザリンドちゃんの匂いがすごいわねぇ。ロザリンドちゃんは厨房の匂いで紛れてるけど…お盛んねぇ…若いっていいわねぇ」
「えふ!?」
「ごほっ!?」
むせる私たち。完全に不意打ちでしたよ。
「姉上!」
「分かってても皆黙ってたのにわざわざ言わないでよ姉さん!」
「フィー、お前はどうしてこう…仕方ない娘じゃのう」
「お姉様、朝からそういう話は…」
そういや匂いでバレるんでしたね。大人は夜の事を察しつつ、フィーディアさん以外は黙っててくれたようです。
い、いたたまれない!私は必死に誤魔化すために声を出した。
「お、おかわりいる人!」
全員がお皿を差し出しました。いつの間にか子供達も完食してます。追加はチャーハンでしたが、これも好評でした。うまい具合に話は流れてくれました。
むしろ私が少食だと心配されましたが、皆さんの食事量が通常だとするなら、いまだにウルファネアは深刻な食糧難なのではないかと不安になりました。
お昼も作る約束をして、私とディルクはいったんお城に行くことになりました。




