呼ばれた理由
すいません、下ネタ注意。苦手な方はスルーしてください。
今回、私は正式に招待状をもらってウルファネアに来ています。私は気がつくべきでした。あるいは、下調べをすべきでした。最低でも、ジャッシュ辺りに聞くべきでした。
気がつける所は…ヒントはあったんです。でも気がつきませんでした。知ってたら、気がついたら来なかった!仮病でもなんでもしてお断りすべきでした!今、私は猛烈に後悔している!!
「今年も開催になりました!ウルファネア王室主催、筋肉祭り!!」
そう、私は筋肉祭りの為に呼ばれたのです!肉の聖女だからか!?ちくしょうめ!素顔出したくないからさっき買ったヴァルキリーのお面をかぶってます。ちなみに幻術魔法は解除しました。
いや、確かにマッチョ率が高いとは思ったんですよ。でもウルファネアはクリスティアより強そう=マッチョが男性は好まれるから、マッチョ率が元から高めなんで気づけなかった。今思えば、マッチョドリンク(プロテイン的な成分入り)やら、マッチョ焼き(要はマッチョな人形焼き)やら…マッチョ製品も沢山あった。文化の違いかなとかのんびり考えてた自分を殴りたい!
筋肉祭り…それは筋肉の祭典。ウルファネアで最も美しい筋肉を決める祭りである。上位者は筋肉パレードの参加という栄誉を与えられ、優勝者は賞金と城で騎士として働ける権利を得る…らしい。
「帰りたい…」
ディルクも英雄の1人として審査員になりました。私はもともと審査員にするために呼ばれたらしいです。
「すまない…」
「恩を仇で返すとはまさにこの事ですよ!ジェスの馬鹿!」
「知らなかったんだ!まさか筋肉祭りだから肉の聖女を呼ぼうとか、アホな案が可決されてたなんて…主、本当にすまない!」
土下座されました。やめてください。王族の土下座とか、本気で困ります!
「主じゃないったら!呼ばれたものは仕方ない。正直ゴリマッチョは好まないのですが、頑張ります」
王宮の庭が解放され、ステージが作られていました。審査員は王様、ジューダス様、ジェス、私、ディルクです。他に筋肉評論家の怪しげなマッチョ親父と去年の優勝マッチョが居ます。ちなみに私の右がディルクで左が優勝マッチョなんだけど、場所取り過ぎじゃないかなと思う。優勝マッチョでかいし太い。ディルクに席を寄せてひっついたら嬉しそうにされました。くっ、人前でなければ(自主規制)
筋肉祭りは始まり、ステージには筋肉ムキムキなオッサン…いや、若いのが多いけどオッサンにしか見えない。
それぞれにコメントして点をつけるのだが、私にも順番が回ってきた。
「聖女様はいかがですか?」
「ダメね。なってないわ」
「おやぁ?立派な筋肉だと思いますが…」
「見た目だけね。しなやかさがない。筋肉は飾りじゃない!実用性があってこそよ!」
「えええ?ちょっと、ロザリンド?」
出場者と私が険悪なムードになったため、慌てるディルク。しかし、彼は更に驚く事になる。
「ディルク、脱いで!」
「…は?」
「ディルク、脱いで!!」
「ええええええ!?や、ちょっと!?破ける!破ける!無理矢理脱がさないで!!」
私に無理矢理脱がされ、晒されたディルクの上半身。相変わらすいい腹筋ですね。
「見なさい、この実用性に富んだ素晴し過ぎる筋肉を!無駄なくしなやかで柔軟な筋肉を!!この筋肉こそ至上!無駄なき美の前にひれ伏すがいい!」
熱くディルクの筋肉を語る私。しかし、嘲笑が響いた。
「そんなヒョロイ体が最高とか笑わせてくれるなぁ。肉の聖女様とはいえ、しょせん小娘。子供に筋肉の良さはわかんねぇだろ」
「分かりますよ?ただ、貴殿方の筋肉は不自然過ぎて美しくありません。むしろ醜くいびつに見えます。筋肉は鍛えすぎると内臓を肥大させ、心臓に負荷もかかる。歴代の優勝者は短命でしょう?ちょっと調べれば分かりますよね?」
場内が静まり返った。
「…聖女様、それは本当ですか?」
隣の筋肉…じゃなかった、前年度の優勝者が青ざめてます。
「…はい。残念ながら嘘は言ってません。事実です。内臓の不調等はありませんか?」
「…あります。まさか、まさか筋肉が体を蝕むなんて…!」
「いや、今から緩やかに筋肉落とせば多分大丈夫ですよ」
「俺は納得がいかねぇ!強さこそ、力こそ筋肉!そこのモヤシが最高の筋肉だって言うなら、俺と戦わせろ!」
「ふむ。一理ありますね。ディルク、どうする?」
「え?手合わせってこと?いいよ」
と、いうわけで筋肉ムキムキvsディルクとなりました。司会者さん達が椅子と机を避けて、ステージを広くします。
改めて見ると、体格差がすごい。ディルクも身長高めだけど、絡んできた筋肉ムキムキは2メートルはある巨漢だ。
しかし、ディルクは英雄並みの身体能力をもつ男である。
「だぁ!」
「この!」
「おらぁ!」
筋肉ムキムキは果敢に攻めるが当たらない。私がやっても当たらないぐらいなんだから、当たるはずない。ディルクは余裕そうだ。筋肉ムキムキがディルクを捕え…てない!ギリギリで避けて、腕を伝うように走り、首に手刀一撃をおみまいした。筋肉ムキムキは気絶し、あっけなく倒れた。
「えっと…全員相手しますか?」
皆が呆然としている。ディルクは首をかしげた。多分ディルクなら参加者全員を一気に相手にしても大丈夫だろう。しかも魔力操作もしてなかったね。筋肉があったって、実戦で使えるかはまた別の話だ。
「いや、あいつは今年の優勝候補だったんだ。俺たちではあんたに勝てないだろう。肉の聖女様のいう通りだ…見せかけの筋肉に気をとられ、本質である強さを見失っちまった」
「そうだな。肉の聖女様のいう通り、あんたの筋肉はしなやかで強く、美しい」
どうでもいいけど、肉の聖女肉の聖女連呼すんな。
「なるほど!では皆様に問いましょう!今年の優勝者は!?」
高らかに、ディルクがコールされちゃいました。
は、ははははは。これはもしかしなくても私のせい?
「ロザリンド…」
「はい」
「後で埋め合わせして…」
騎士団での経験からか、ディルクは早々に抵抗を諦めたみたいです。なんというか、絶望した表情だ。
「…なんなりとお申し付けください。マジでごめん!」
心から謝罪しました。いや、うん…なんというか、筋肉ムキムキばっかり見てたらお腹一杯で暴走しました!でも筋肉つけすぎは身体に良くないから、健康的な意味ではよかったよね!
そして、筋肉パレードの準備がされているわけだが…
ズドドドド…と轟音が鳴り響きました。え?何の騒ぎ?
「ディルクさまぁぁ!!」
「逃がすな、追えぇ!」
「メチャクチャはえぇ!?」
「諦めんな…ぎゃあああ!」
しばらくして、ディルクが逃げてきた。
「あんなの無理!絶対やだ!」
「へ?」
別室でお茶して、ディルクを待ってた私。半裸のディルクに泣きつかれました。素晴らしい眺めですね。眼福です。ごちそうさまです。
「あんなピッチピチパンツ1枚でパレードとか、何の罰ゲーム!?」
「ああ…筋肉パレードだもんね。筋肉を見せるためか」
「納得しないで!とにかくロザリンド!俺を連れて逃げて!!今すぐに!」
「いや、一応外交で来てるから…」
普段なら喜んで!なんだけど、正式訪問した他国の祭典をボイコットはちとまずい。
「ええ…」
ディルクが涙目で可愛い…ではなく、ボイコットしなくていい状況にしたらいいわけだ。
「なんとかするよ。行こう、ディルク」
ディルクは素直についてきました。
「あ、ディルク様!」
「囲め!」
「逃がすな!」
ちょ!ブーメランパンツのマッチョに囲まれた!でかいし怖い!!じりじり近寄んな!怖い怖い怖い!ハァハァすんな!いや走り回らされた結果なのは理解してるが怖すぎる!!
「ディルク…」
あううう、怖いよぅ…これ説得どころじゃない!涙目でディルクを見たら、キレてました。なぜだ。
「あのさ、君達。俺を追いかけ回したのはまだいい。君達はお祭りのために頑張った。でもさ、俺の大事なつがいを怯えさせるとか、何?」
やばぁぁぁぁい!怖いがカッコいい!え?私のためにキレてるの?まーじーで?怖いせいかカッコいいせいか…いや両方だね!ドキドキしてます。しかし、普段温厚な人がキレると超怖いね!
今度はマッチョ達が怯えてます。うん。私も怖いよ。仕方ないね。
「ディルク、怒ってくれてありがとう。さすがに怖かったわ」
「うん」
ふんわり笑うディルク。うん、ディルクは笑顔が1番ですね。
「さて、私は貴殿方に不服を申し立てに来ました」
「はい?なんでしょうか」
優勝候補だったマッチョが聞いてきた。
「ディルクの下半身は私のモノです」
場がしん、と静まった。うん。言い回しを間違ったな。いいや、そのまま押しきるぞー。
「ディルクの下着姿を見ていいのは私だけです。百万歩譲って上半身の露出は許しますが、下半身はダメです。つがいとして許可できません」
「いや、しかし伝統でして…」
仕方ない。ならば具体的に見せてやる!
「ゴラちゃん、カモン!」
「呼ンダカ?」
ゴラちゃんは可愛く首をかしげた。
「い・ま・だ・け!限定で服なし巨大化を許可します」
「ハアッ!」
変態…じゃなかった、葉っぱゴラちゃんを指差して私は言った。
「貴殿方はこのゴラちゃんと露出度がさして変わりません。いいえ、股間のラインがくっきり出るぶんゴラちゃんより卑猥です」
「あれより…」
「卑猥…」
ショックを受けるマッチョ達。いや、たいして変わんなくね?
「私は愛するつがいをこんな卑猥な姿で人前に出したくありません!楽しむなら2人きりです!」
「その情報は要らなかったよね!?他人に見せたくないまででよかったよね!?」
「つい本音が…2人だけならいいよね?」
「う…………ちょっとなら…」
首をかしげてねだったら、まさかのオッケーきました!後で絶対着せるからね!
なんかマッチョ達が股間隠してモジモジしてる。今さら恥ずかしくなったのか。
「わ、我々はどうしたら…」
「ウルファネアには筋肉を見せつけるに相応しい、素敵な民族衣装があるじゃないですか。それでいきましょうよ」
パレードは大盛況です。何故か私もディルクとフロートに乗ってます。なんでだ?私は要らなくね?私は顔を出したくないんで相変わらずお面をつけてます。
「聖女様、万歳!」
「筋肉肉肉!」
「ロッザリンドォォ!!」
「肉肉!筋肉!」
「ロッザリンドォォ」
誰か変なコール&レスポンスやりだした!微妙に筋肉ぶっこんできやがった!上手いこと言うんじゃない!
「あれが筋肉の聖女様?」
「まだ子供なのね、筋肉の聖女様」
筋肉の聖女でもなぁぁぁぃ!!
くそう、誰だ筋肉でコール&レスポンスしやがった奴!このままでは筋肉の聖女になってしまう!
「筋肉の聖女様、万歳!!」
「筋肉!筋肉!」
「ロッザリンドォォ!」
「ムキムキ筋肉!」
「ロッザリンドォォ」
やめろぉぉぉ!!それ、私が筋肉ムキムキみたいじゃないか!確かに筋肉あるけど!ムキムキではなぁぁぁい!!
私は多大なストレスを緩和するため、素晴らしいつがいを眺めてストレスを発散することにしました。
「はぅ…ディルク素敵…」
「あ、ありがとう」
ディルクはウルファネアの民族衣装・アオザイを着ています。しかも胸元をはだけてチラ見えのオプション付き!後でなで回したい!いや、絶対触る!
他のマッチョもはだけさせたアオザイを着ています。この世界でもチラリズムはロマンらしく、ブーメランパンツよりもチラ見え筋肉は好評だったようです。翌年から筋肉祭りはウルファネア武術大会になり、パレードはアオザイ着用でとなりました。
こうして、筋肉祭りは聖女の称号を微妙に変えながら終了しました。
どうしてこうなった!?




