賢者と魔具と奥方様
私はミケルと自宅に戻ったものの、気になったんで賢者のジジイの汚部屋にお邪魔しました。とりあえず、スペースを空けるためにためらわずに積まれたものをポイポイぶん投げる。
「ちょ、いきなり来て物を投げるな!」
ちなみに奥方様から許可を貰ってるんで、遠慮は全くない。
「割れる割れる!それ割れる!」
数日開けただけで復活した汚部屋に苛立っているのもある。
「ごめんなさい!謝るからそれだけは勘弁してぇぇ!?」
賢者と呼ばれている汚部屋の主が私の腰に巻き付き懇願した。
「…嫌です。座れないじゃないですか」
私はにっこりと微笑んだ。さらに映像記憶魔具を起動した。
『マジでそれだけは勘弁してぇぇ!?次やらかしたら、何を破壊しても何も言わないから!!』
「2週間前の僕の馬鹿!」
ざっと掃除をして、本題に入りました。
「ミスリルと…銀かな?ちょっと分けて」
「いいけど、何する気?」
金属の塊に熱を加えて魔石を埋め込み、宝物庫で貰った腕輪を再現する。さらに聖樹の結晶、マグチェリアの花、ユグドラシルの果実を魔力を使って融合させた。
第2王子にあげた魔具を上手く再現出来たようだ。
「じい様、これ鑑定して」
賢者の天啓は魔眼。魔力を解析して魔具を見ただけで効果を理解することができる。
「聖属性の浄化効果がある腕輪だね。こんな強力な魔具はなかなかお目にかかれない…」
「じゃあ、これも」
「はいはい」
私がモノを手渡すと、室内に光が溢れた。
「永き時を経た叡知の使者!賢者G☆SAMAここに降臨!」
「ギャハハハハハ」
「なんじゃこりゃあ!?」
ウサミミ付きミニスカワンピース、ニーハイブーツのじい様である。じい様はスカートを押さえて涙目だ。足も白くて細く、毛もない。普通に可愛い。
「なんという悪戯をするんだ!この悪魔弟子!」
しかし、魔具に対し暴発なんかの危険もあるから対策をしているじい様も餌食にするとは恐ろしい杖だな。
「その杖はお土産にウルファネアからいただいた大聖堂に伝わる杖です。国宝らしいですよ」
「確かに魔力が増幅されてる。こんなに古い魔具がまだきちんと作動するなんて」
「ウルファネアの救世の聖女が作った嫌がらせの黒歴史的魔具ですよ」
「マジで!?」
じい様が超食いつきました。救世の聖女は魔具製作者には神様なんだってさ。知らなかった。
じい様が私にその話詳しく!とか言ってたら、玄関のドアが開きました。
「ただいま…」
帰宅した奥方様はドアを閉めました。ドアを開けました。
「ハニー!?こ、この格好は違う!弟子の悪戯で僕の趣味じゃないから離婚しないでぇぇ!?」
黒髪短髪、アイスブルーの瞳をした男装の麗人な奥方様。ついたあだ名は女性でありながら氷の貴公子。そんな奥方様は無表情で魔法少女じい様を見ている。
じい様は本気で離婚の危機だと感じたらしく、必死だ。
奥方様がすがりつくじい様に触れ、ディープなキスをかましました。
「んぅ!?ふ…んー!」
長い!そしてじい様がぐったりした。酸欠?
「こんな可愛い格好をして…誘っているんだな?」
「ち、違う…ちょ、待って!弟子居るから脱がさない…そそくさ帰るな、弟子ぃぃぃ!?」
かっこいい奥方様は賢者の衣服を剥ぎ取りつつ、にっこりと笑って私に手を振った。
「素晴らしい土産をありがとう。おいしくいただくよ」
「あ、その杖に触ると似たような格好になっちゃうかもしれないんで気をつけてくださいね」
「分かった」
「ちょ、そこは…せめて弟子が帰ったらに…いやぁん!」
賢者が大変なことになってきたので、注意事項だけお伝えして撤退しました。なんというか、大変楽しめたそうで後日奥方様からお礼の品まで贈られました。でも杖は返品されました。残念だ。
ちなみに奥方様は杖が欲しかったんですが、あれは国宝だからとじい様が必死で説得したため返却されました。