挑発しまくろう
どうでもいいですが、キラキラはお風呂に入っても一晩寝てもキラキラで、スイにどうにかしてと泣きついたら、光・結界・浄化の高等複合魔法だからハルに言ってと丸投げしました。ハルと頑張ってどうにか解除成功しましたよ。
現在私は久しぶりに幻影魔法でディルクと同年代になってます。この間身体が大人になったりしましたし、イメージばっちりです。胸がばいんばいんです。
そして、ディルクとこれでもか!というぐらいにイチャイチャベタベタしまくっております。趣味じゃないですよ、作戦です。なんという役得…ディルクもあんまりベタベタしたらダメとか言いつつ口だけです。
ディルクと腕を組んで歩く。これ、本来の姿だと難しいから嬉しい。いつも通り尻尾が足に絡んできた。うん、幸せ。
城の回廊を歩いていると、昨日私の威圧に負けなかったお姉様が反対からやって来た。私を睨み付けるあたり、ガッツがあるんで嫌いじゃない。でも私は見せつけるためにディルクにスリスリした。
「ディルクぅ、あのお姉さん、こわぁい」
女性がムカつく女を演じる私。ふだんと違い、甘ったれた声を出してディルクにぎゅうっとしがみつく。
ん?ディルク、どうした。何故プルプルしてんのよ。気持ち悪かった?
「可愛い…こんな甘えるロザリンドはレア過ぎる…」
マイダーリンは悶えていたらしいです。結構以前から思ってたが、ディルクはチョロくないか?確かにレアかもしれない。お化け屋敷でキャーとか言えない。無言かガチでびっくりしたらギャーとか言いそうだ。
ちょっとサービスしよう。ちょっとだけ。
「ディルク…怖い」
悶えるディルクに草食動物みたいにプルプルしてディルクの服の裾を握る。
「あのこわぁいお姉さんから、守ってくれる?」
こてん、と首をかしげた。ディルクは真っ赤になりつつも、しっかり返事をしてくれた。
「うん!ロザリンドは絶対俺が守るよ!」
「嬉しい」
いや、守られるようなタマじゃねーだろというツッコミは無視します。私だって女の子扱いされたいです。ディルク限定でですが。
「ワタクシが怖いですって?魔物の群れに立ち向かう野蛮な小娘が?」
「うん。ヒステリックにキーキー言わないでくれる?ディルク、あのおばさん怖ーい」
「おば…」
お姉様のお顔がひきつりました。お?効果あり?
「年上の女性はおばさんでしょ?」
ニヤリと嫌ぁな笑顔を浮かべる。はっはっは。超睨んでる。効果は抜群だ。
「お姉さんも年上の女性でしょう」
怒りに震えながらもお姉様は反論した。まぁ、同意しますが、私は貴女を挑発したいんですよ。
「ええ?人を小娘呼ばわりする失礼な年上女性はおばさんで充分おつりがきますよね?ババアと呼ばなかっただけ優しいと思います」
「なっ!?」
「しかも、私一応賓客ですよ?ウルファネアの品位が問われますよね。私は見た目こそ大人ですが、小さな7歳の子供に大人げない」
「あ、あんたが年上を敬わないからでしょう!?」
「貴女のどこに敬う価値がありますの?」
「この、小娘がぁぁ!!」
アッサリ切れちゃいました。貴族として大丈夫?お姉様は山猫か何かの獣人だったのか、爪を出して私に襲いかかってきた。
応戦しようとした私を背に庇い、ディルクが簡単にお姉様に関節を極めた。お見事!あまりにも洗練された動きに、この騒ぎを遠目で見ていたギャラリーから拍手をされました。
「確かに挑発した私の婚約者も悪いが、君はやりすぎだ。それから、彼女を…私のロザリンドを侮辱する者を私は許さない。分かったら失せろ」
少し乱暴にディルクは山猫のお姉様を解放した。彼女は憎悪と憤怒の表情を見せたが、敵わない自覚があるのか退いていった。ふむ、挑発としてはまあまあだったかな。
「ディルク、守ってくれてありがとう」
「どういたしまして。大丈夫だった?」
ディルクは優しく私を撫でてくれた。幸せだなぁ。しかも、ディルクのさっきの発言で私はご機嫌です。
「うん。ディルクのおかげで平気だよ」
「ずいぶんご機嫌だね」
「そりゃあ、もう!さっきディルクに嬉しくなること言われましたから!」
「何か言った?」
多分無意識だったんだよね。でも嬉しい。
「私のロザリンド」
「…………うん?」
「ディルクのロザリンドって宣言されたのが嬉しくて」
にやけてしまいますね。私はディルクのなんだって、ディルクが言うのは珍しい。
「そ…れは、その…事実だし」
「うん!私はディルクのロザリンドだもんね!」
「そうだよ。ロザリンドは俺だけのだよ」
キスをいただきました!でもね、ディルクさん?
「えと、さすがの私もこれだけギャラリーが居ると恥ずかしいから、これ以上は2人きりでがいいなぁ」
「え」
めっちゃ見られてましたのよ。あれだけ騒げば仕方ないよね。
「早く言ってよ!!」
ディルクは私を抱っこするとものすごい勢いで逃走しました。速かった。本気のディルクは速かったです。いや、落とさないと理解してても恐怖のスピードでした。
それからしばらくして私とミルフィが庭園を散歩していると、また山猫のお姉様に会いました。いや、待ち伏せしてましたけどね。
山猫のお姉様は周囲にディルクが居ないのを確認すると、高圧的な態度で話しかけてきました。懲りないなぁ。
「不愉快よ!道を空けなさい!」
私は首を傾げた。
「何故?」
ミルフィはいきなり怒鳴った山猫のお姉様にびっくりした様子だが、私に任せる事にしたようだ。
「邪魔だからよ!」
「では、ご自分が避ければよろしいのでは?」
「口の減らない小娘が!」
いや、短気だね。また爪を立てて私に襲いかかる。
「きゃああ!?」
ミルフィが悲鳴をあげた。大丈夫だよと彼女に微笑み、私は山猫のお姉様に一本背負いをくらわせた。
「にゃあっ!?」
山猫のお姉様は信じられない、といった様子だ。普通人間は獣人に素手で勝てないからね。
「躾のなっていないバカ猫。勝てない相手に喧嘩を売るなんて愚かね。私は公爵令嬢。クリスティアで王に次ぐ権力を持つ家の人間よ。お前は何一つ私に勝る部分がない。強さ、身分、名声、美しさ、若さ、素晴らしいつがい。全てにおいて劣るお前に道を譲るわけがないわ。見逃すのは今回までよ、おばさん」
「許さない…!」
山猫のお姉様は私を睨みつけると走り去った。
「びっくりしましたわ。ロザリィ、怪我はありませんね?」
「大丈夫」
「あの女性はディルク様に昨日ベタベタしていた女性達の1人ですわね。貴女があんな風に他人を貶めるなんて、他にも理由がありますわよね?」
「まぁね」
ミルフィは納得したみたいだ。本当に彼女は聡い。
「あまり無茶したら駄目ですわよ。ちゃんと貴女を心配する人間がいることを覚えていてくださいまし」
「分かった。心配してくれてありがとう」
ミルフィをギュッとしました。私の親友は可愛いです。
さて、これだけ挑発しまくったのだから…何か仕掛けてくれるかな?
長くなったので切ります。ロザリンドは相手を挑発しまくり手を出させようとしています。
わりと直接つっかかるタイプは嫌いじゃないので山猫のお姉様を嫌ってはいません。ディルクにベタベタした件については多少根に持ってます。




