枕投げは旅行の醍醐味
ジェスへの報告が終わって、クラスメート達と合流しました。本来はウルファネアの宿に1泊予定でしたが、町はまだ肉祭りムードですし私が囲まれそうなんで城にお泊まりすることに。まだ7歳ですから皆で雑魚寝です。ちなみに先生は疲れきってしまい、警護の関係で騎士達も雑魚寝なんでまずかろうと別室で爆睡中です。
「皆さん、学生の旅行といえば枕投げ!とんでもないことになりましたが、さすがにこれ以上は無いでしょう。皆で楽しみましょう!」
団結力とノリのよさはピカイチな我がクラス。皆賛成してくれました。枕投げのルールを説明すると、皆楽しげに聞いています。
我が家と違い、手加減が微妙なのはカーティスのみ。カーティス不参加にすればいっかと思ってたら、意外にもカーティスが参加したいと言い出した。
「楽しそうだから俺もやりたい!」
「手加減下手くそのくせに!許可できない!」
いつまで経っても平行線な私達にクラスメートが提案した。
「なら、ハンデは?」
結局、カーティスは後ろ手に両手を縛られての参戦となりました。
「だ、大丈夫なんですの?」
優しいミルフィが心配するが、カーティスはあれでもウルファネア最強の暗殺者である。むしろ生ぬるいハンデと言えよう。
カーティス参加に伴い、魔力操作と魔法使用可。獣化も可というルールに。ただし室内破壊はペナルティ。
「じゃ、始め!」
審判は兄と真っ黒様です。どちらかというとインドア派だもんね。
「ちょっと!?姐さん、あの騎士さん強すぎません!?」
「だから混ぜたくなかったんだよ」
やはり後ろ手縛りぐらいではハンデにならなかった。カーティスは器用に足で枕を蹴り飛ばし、次々にクラスメートを沈めていく。
「あはは、流石は私の護衛騎士だね」
真っ黒様楽しそうだね。私も参加してなきゃ高みの見物だったろうけど、カーティスは容赦なく女子でも顔面狙いである。
「きゃあ!」
なんということだ、私の天使・ミルフィの顔面に枕が…
「おのれカーティス、ミルフィの仇は私が取る!」
「え?」
「総員、枕を集めなさい!」
「はい!」
「かしこまりました!」
「ガッテン!」
団結力がある我がクラスメート達は素早く枕を私に集めた。私は指輪でピッチングマシーン…いや、枕ガトリングを作り、ひたすらカーティスに連射した。
「うわわわわわ!?これ反則じゃないのかよ!?審判!」
「面白いからあり」
「異議なし」
楽しそうですね、兄様達は!
「ふはははは!兄様は面白いものの味方です!逃げるな、カーティス!」
「誰がこんなのに当たるかよ!つか、アルフィージは俺の味方じゃないの!?」
「基本的には味方だが、レディの顔面に枕をぶつける馬鹿はロザリンド嬢に枕で攻撃されても仕方ないと思う」
「うわ!?」
アルフィージ様直伝、やたら滑る氷魔法でカーティスがこけた。
「カーティス、覚悟!!」
「ぎゃあああ!痛い!?ちょっと、これ威力おかしい!つうか顔面アウトだろ!審判止めてくれ!超痛い!」
「しかし、変わったマンドラゴラだな」
「僕もどうしてこうなっちゃったか分からなくて」
わざとかたまたまか知らないが、めっちゃよそ見してる審判。あ、アルフィージ様はわざとですね。流石は真っ黒様。自分が楽しければ部下も見捨てるんですね。
「よそ見すんなぁぁ!」
涙目で叫ぶカーティスに、皆で爆笑しました。
「え?ロザリンド、顔面アウトしたら射ったらダメだよ」
「はーい」
「それと、以前も思ったけど、これ枕投げじゃないよね」
そういえば、そもそも枕投げてないや。私より枕投げを知らないはずの兄につっこまれました。
無言で視線をそらした私に再び皆は大爆笑。
「こら、皆。寝てる人も居るんだから静かにね」
先生…ではなくちゃんとお仕事してたディルクに注意され、皆大人しくお布団に入りました。




