大海嘯とユグドラシル
そして出撃したわけですが…私はやたら余裕です。ヴァルキリー強い。私はヴァルキリーの肩に乗って、敵を撃つと念じたらヴァルキリーが魔法弾で撃ってくれます。片手からサブマシンガン的武器~と思ったら出来たよ。
近い敵はもふ丸が毛針で串刺しです。もふ丸も強い!
まぁ、近い敵は前衛3人が薙ぎ倒しまくってるからめったに来ないんだけど。
普段見てる余裕がないからイマイチ実感沸かなかったのですが、流石は世界最強。超強いわ。ジェラルディンさんは獣化して敵を(比喩でもなんでもなく)蹴散らしている…剣も使ってるけど素手でも充分強い。本当になんでこんなとんでもない男が私の従僕なんだろう…
ディルクはジェラルディンさんが出過ぎないようさりげなく調整しつつ、荒っぽいジェラルディンさんをフォローしている。たまにコンビを組むせいか、かなり連携ができて…いや、ディルクが合わせてるだけだね。
ディルクカッコイイ!今日の装備は私が新しくプレゼントしたダークドラゴンの鱗で作った鎧です。ディルクの黒髪に映える黒い鎧。色々仕掛けもあって武器が仕込めたり等、使いやすさを追求してあります。
ディルクがチラッと私を見ました。
「ロザリンドが危なくない位置にいると安心だね」
普段からダンジョン攻略とか行くと、ディルクは私を心配してくれてますものね。むしろ今の私は楽過ぎで少し申し訳ない。歩いてすらいないし。攻撃当たらないし。
カーティスは逆に超マイペースに動いてます。とにかく目の前の敵を最低限の動きで仕留める…という感じ。
「あ、やべ」
ショートソードが折れました。投擲用のナイフに切り替えたものの、やや使いにくそうです。
「カーティス、これ!」
「おー、サンキュー」
カーティスに渡したのは風魔法の魔力付与付き双剣です。カーティスは風属性が得手なんで、使いこなせるはず!
「軽い…いいな、これ!ロザリンド、これ欲しい!」
「元からアンタ用に作った奴だからあげるわよ!」
「マジで!?ラッキー」
軽い会話をしながらも、カーティスは次々に魔物を切り伏せる。まるで優美なダンスのように、無駄のない自然な動きで次々と確実に仕留めて行く。流石はウルファネア最強の暗殺者である。
ハクが戦うのを初めて見たんですが、強い。超強い。(物理的に)ちぎっては投げちぎっては投げ…知らなかった。ハクはロールキャベツ系男子でしたか(明らかに違う)
そういや自分で狩りして生肉食べてたっけか。ハクを見る目が変わりそうです。
うちのモグラさんは(物理的に)肉食でした。
「ぎゃあ!」
「回復」
「ありがとうございます、聖女様!」
「違います」
回復・補助魔法と遠距離攻撃によるサポートのみする私。なんか、リアルでゲームしてるみたい。 やっとユグドラシルが見えてきた。ユグドラシルに魔物が襲い掛かるが、まずい!ヴァルキリーの射程外だ!
「ヴァルキリー、急いで!」
しかし、私は間に合わない。もうダメだと思った瞬間、ユグドラシルに襲い掛かった魔物はクリスタルドラゴンに叩かれた。
「ルラン!?」
「ジャッシュに頼まれた!加勢する!我が同胞達も居るぞ!」
空がキラキラしてる!クリスタルドラゴン大集合ですね!
「ドラゴンがこんなに!?」
ウルファネアの騎士達が騒ぐ。普通驚くよねー。
「ハルー」
「はいよ」
ハルの拡声魔法で全体に届くよう叫んだ。
「クリスタルドラゴンは我が盟友である!この危機を乗り越えるため、助力に来てくれた!傷つけてはならない!」
「おおおおお!」
「流石は聖女様!」
「クリスタルドラゴンすら従えるとは…流石英雄様の主!」
なんかガチで聖女認定されてないか…誰だよ、最初に言い出した奴は!責任者出てこい!
「着いた!」
私はようやくユグドラシルにたどり着いた。ヴァルキリーはそのまま。魔力を使いすぎると指輪になってしまうから。結界をはり、ユグドラシルに呼びかける。
「ユグドラシルさん、起きて」
おい。ムニャムニャもう食べれない?完全に寝ぼけていらっしゃる!!スゲーな、この状況でか!
「スイ」
「ロザリンド、目が怖い」
「この寝ぼすけさんをたたき起こそうと思います」
「…うん」
真顔の私に怯えたのか、スイもふざけませんでした。
「魔力を無理矢理そそいだら…」
「確実に起きると思います」
「よし」
「ためらいがない!?また変な進化したらどうすんの!?」
「とりあえず、今より悪くはなんない!」
「確かに!サポートするよ!」
何かを諦めて開き直ったスイと私の魔力がユグドラシルにそそがれ、ユグドラシルが…ユグドラシルさんが…
「ロザリンドはどうなってんの?」
「いや…これ私のせいなの?」
金色に光輝くユグドラシルさん。
「…とりあえずユグドラシルは起きたよ。どうするの?」
「ユグドラシルさん、大海嘯が起きてます!周囲に結界はって自衛してください!あと謝りますから魔力供給を絶たないで!」
『ふぁぁ~あら?確かに大変ねぇ。わかったわ。ロザリンドちゃんの願いだものね』
「ありがとう!」
『大地に恵みを』
大地にマナが戻っていく。金色はマナのためすぎだったらしく、私達のせいではなかった。よかった。レジェンディアユグドラシルとか進化したらどうしようかとチラッと思ったよ。
『私のせいでごめんねぇ。おわびにこれアゲルわ』
「へ?」
金粉みたいなキラキラを吹き付けられました。
『魔物はその輝きを嫌うから。村なんかにまくといいわ』
それをなんで私にまいたか。嫌がらせか。私めっちゃ物理的にキラキラしてんですけど。スイ笑ってるんだけど。
「じゃあ遠慮なく貰っていきます。またね、ユグドラシルさん」
『うん。頑張ってね~』
結界を出ると、クリスティア騎士団と冒険者達が来てました。
「嬢ちゃん、無事か!?…それなんだ?」
「ロッザリンドォォ!!」
主張しないで!君の名前はロザリンドロボじゃないでしょう!
「…ヴァルキリーです」
「嬢ちゃんのか」
「…はい」
ルドルフさんはそれ以上つっこまず、話を変えた。
「しかし、今回の大海嘯はスゲーな。あのクレーターとか、どんな大物が出たんだ?」
「……」←こんな大物。
「と、とにかくディルク達はどこですか?」
「あっち」
「わぁ…」
なんていうか…
「道が出来てますね」
「しかし、スゲー数の死骸だな」
「ルドルフさん達クリスティア騎士団及び、冒険者さん達にお願いします」
「おう?」
「…この死骸を精肉してください」
「…俺達は何しに来たんだ」
「すいません。予想以上でして」
主にヴァルキリーの威力とジェラルディンさん達の能力が。もはや9割倒してるよ。
「まぁ、クリスティアとウルファネアの平和のためだ。そう言わずに頼むよ」
通信魔具からアルフィージ様のつべこべ言わずにやれコール。仕方なく皆解体し始めました。
「アルフィージ様、私はラビーシャちゃんと魔獣達を見てきます」
「ラビーシャ?」
「私のメイド兼護衛ですよ。私の魔獣と精霊を連れて近隣住人の救助・避難と保護をさせてました」
「…いつの間に」
「大海嘯を見てすぐ」
「……わかった。行ってきて。大半は片付いてる。あの化け物並の3人を害せる魔物も居ないだろう。ただ、残りはまばらにいるからくれぐれも気をつけて」
「はい」
私はヴァルキリーの肩に乗り、走ってもらいました。楽ですな。
「ラビーシャちゃん!」
「ご主人様…なんかキラキラしてません?」
「…うん。このキラキラをまくと、魔物が来なくなるらしいよ」
「うげ。これ聖樹の結晶じゃないですか」
「それ何」
「超レアモノですよ。魔物が来なくなるんで主要施設に必ず使われます。それだけあれば、ローゼンベルク邸が3件建ちます」
「…………」
「どうします?」
「使う」
「マジですか!?」
「マジマジ。コウ達をずっと各地に置いとけないし、仕方ない」
「ご主人様は…」
「お人よしですよ。さっさとまいちゃお」
しばらくしたら大半を倒しまくった4人が合流しました。
「ロザリンド、心配したよ!ユグドラシルがものすごく輝いてたし…なんでキラキラしてるのかな…いつもロザリンドは綺麗だけど」
今は物理的に輝いてますよ。現実に。
「ディルク、お疲れ様。ユグドラシルさんにやられてキラキラしてるだけです。それより怪我をしてないみたいでよかった」
「うん」
ディルクにぎゅーしてもらいたかったのですが、血がつくからと断られました。浄化するから!とごり押しして浄化してからぎゅーしてもらいました。
「いや、マジでキラキラしてんな。ロザリンドマジ面白いわ」
「…ありがとー。カーティスもお疲れ」
「主、命令は果たした」
「うん。よくやった」
撫でると尻尾をフリフリするジェラルディンさん。わんこだね。
「無事でよかったぁ」
「ハクもお疲れ様。頑張ったね」
ハク…血まみれでなければ癒されたんだけどね。後でお風呂ですね!
そして、私達はウルファネア王都に凱旋したのです。




