大海嘯
さて、これからどうするかなと思ったら、シーダが話しかけてきた。
「本当に案内料くれるのか?」
「先払いがいい?ウルファネアのお金は無いから、モノになるけど」
「…例えば?」
「肉とか野菜とか」
「本当か!?」
めっちゃ食いつかれました。なんで?シーダに理由を聞いたら、ウルファネアはマジで国民が餓死しかねないレベルの食料危機になりつつあるようだ。
シーダの家の畑に連れていってもらった。肥料をやっても水をやっても育たない。かろうじてやせ細った野菜ができる程度だという。
「まずいなぁ…」
確かに大地のマナ…魔力が枯渇しかかっている。ユグドラシルを復活させても作物がこれでは食料危機が解決されるのはかなり先。餓死が先か、解決が先か…かなり厳しい状況である。
しかもウルファネアの民は基本大雑把なので作物を枯らすことがもとから多いらしい。
「ロザリンドちゃん、ルー君オススメのお野菜はどうかなぁ。ユグドラシルさんが復活したらこの土ならよく育つよぉ」
「…アレ?」
「ロザリンドちゃんは嫌みたいだけどぉ、獣人はおおざっぱな人が多いから多分きにしないよぉ」
「えええええ…まぁ、候補にはしとこうか」
「兄ちゃん、おきゃくさん?」
「おきゃくさん?」
「兄ちゃん、おなかへった」
出るわ出るわ…鼠さんだから多産なの?全部で10人か。可愛いなぁ。シーダの兄弟だね。
「シーダ、アンタが捕まったらチビ達が路頭に迷う。私に雇われる気はない?」
「…アンタに?」
「うん。ユグドラシルが復活したら試験的に作物を育てて欲しい」
「…いいけど」
「契約成立!とりあえず、案内料ね」
私は鞄から肉と野菜を取り出した。肉は普通にオークとかだけど、量はある。
「…こんなに?」
「兄弟の分よ。盗られたら困るからさっさと食べちゃいなさい」
「…ありがとう」
「…あれ、なんだ?」
アルディン様が空を指した。空が黒い。雲…いや、あれはまさか!
私は鞄から英知のサークレットを取り出し黒いモノを確認した。
「…遅かった!全員、城へ!!大海嘯が来ます!」
大海嘯とは、リンの世界だと遠浅の海岸,特に三角形の河口部で,波長の長い潮汐の波が河床との摩擦や川の断面積の減少などのため潮差を著しく増大,前面が直立した水壁となり音を立てて上流へ押し寄せる現象のこと。
この世界の場合は何らかの原因で魔物が大量に押し寄せて来ることだ。しかも今回は魔力の枯渇で餌が減り、かなりの大群だ。下手をしたらウルファネアは滅亡する。
「大海嘯!?」
「とにかく、城に行きますよ!状況を伝えないと!シーダ達も必要なモノだけ持って避難しなさい!」
私達は全員、城へと駆け出した。




