魔獣さん達
学校に来たら、子分…じゃなかった、クラスメートに囲まれました。
「姐御、旅行決まりましたよ!なんか夏休み前に行くらしいです!」
ジェスが頑張ったのか、やはりウルファネアに行くらしい。準備しなきゃなぁ…私はコッソリため息をついた。
たまには1人になりたい…いや、もふ丸はいるけどね?そう思って早退して我が家の庭に来たんだけど、庭にはスノータイガー君達が来てました。こないだのご褒美(ご飯)が欲しいのかな?
「ご飯いる?」
「ガルゥ…」
スノータイガー君はお腹を見せて転がった。
「撫でろってこと?」
「ガル!」
スノータイガー君はコクコク頷いた。
「もふもふ~なでなで~」
「ゴロゴロ…」
もふもふを堪能していると…ん?魔獣達がなんか並んでないか?
「……え?」
いや、整列してるよ!めっちゃ綺麗に並んでるよ!行列ができちゃうマッサージ…違うわ!
「…み、皆もなでなでしてほしい、とか?」
いや、まさか。そんな馬鹿な。しかし頷く魔獣達。
ま じ か
スノータイガー君に終了を告げ、カミナリトカゲのシットリ感を楽しみ、パラライズスネイクのスベスベを堪能し、ウォータースパイダーは案外腹毛がもふもふ系だなぁと感じました。私、虫はコックローチ以外なら平気です。
他にもクリスタルラビットがお膝に乗ったり、ウィンドホーク君の羽つくろいをしたり…触れ合いました。皆さん満足げです。
「ガルゥ…」
あれ?行列が…増えてない?なんで私の精霊さん…コウとアリサも並ぶの??これいつ終わるの?よく見たら君は2周目じゃないか、スノータイガー君よ。しかし彼に言ってもガルゥしか返ってこない。もふ丸(通訳)は肩で昼寝している。
私はコウの番を待った。コウは子犬サイズのドラゴン姿でした。
「コウ、この行列は何?なんなの?」
「お姉ちゃんになでなでされたいから並んだんだー」
「…へ?」
うちのドラゴン可愛い…ではなく!私のなでなでで魔獣が並ぶ?
「なんで?」
「お姉ちゃんが大好きだから!」
コウ!コウがデレた!
「コウ!お姉ちゃんも大好きだよ!」
「きゃ~」
「ママ、ママ、アリサもー!」
ギュウッと抱きしめるとアリサも来ました。よしよし、一緒にギュウしてやろう。
なぜだ。魔獣さん達、めっちゃ羨ましそうなんだが。気のせいか?
「コウ、通訳して。なんで私になでなでされたいの?」
「お姉ちゃんが大好きだから」
いやだから…いや待て。まさか…自意識過剰だよね!
「この行列は私が大好きだからなでなでされたい行列?」
「ガルゥ!」
「ギャウ!」
「ピィ!」
頷かれたよ!?そして私に貢ぎ物をそれぞれよこした。貴重な薬草やら宝石やら魔石やら…かなり高価な品々だ。
「だから高価なモノは…コウ、この贈り物はなんか意味あるの?」
「魔獣があるじに贈り物するのは、あるじにオレこんなにすごいんだよ!かまって!って意味」
「おうふ…つまり私は純粋に私を慕う魔獣さん達に思わせぶりな態度を取る悪女的な感じ?」
「ガルゥ、ガル!」
「お姉ちゃんにその辺通じてないのはりかいしてたから、ちがうって。がんばって贈り物すればいつかは所有魔獣にしてもらえるかもって思ってたみたい」
「どっちにしろ私がタチ悪い気がするよ!?」
「…お姉ちゃんよりはもふ丸じゃない?」
「へ?」
「アルジ、ゴメン」
お前寝たふりしてたな、もふ丸!
「アルジ、ヒトリジメシタカッタ。アルジ、ヤサシイ。マジュウ、タノメバケイヤクスル」
否定できない。これほどに熱心に私に貢ぎ物をしていた魔獣さん達を無下にできるほど私は冷たくない。
「そっか…」
私はもふ丸を撫でた。もふ丸は甘えてスリスリしてくる。
「筆頭魔獣はもふ丸だから、この子達はもふ丸が面倒見るんだよ」
「アルジ…ワタシ、ユルス?」
「うん。許してあげるよ。私は仕事や学校もあるからたまにしか相手できないけど、それで良ければ契約するよ、魔獣さん達」
魔獣さん達は結局全員私の所有になりました。そして、次なる関門が待ち受けています。
家族(主に兄)です。
「サボテンは、いい。でも、魔獣まで放し飼いはマズイでしょ!ご近所様が怯えたらどうするの!?」
「兄様、こんなに可愛いんだよ!?ご近所様は、最近我が家へのツッコミは諦めてるから大丈夫だよ!むしろサボテンもアウトだから今更だよ!」
「くっ…否定できない!ご近所様も爆発とかが、おきない限りは最近何があってもウチだからで済ませてるフシがある…か、可愛くてもダメ!こんな大きな魔獣飼えません!」
魔獣達はそれを聞いて皆小さくなりました。特に手の平サイズのスノータイガー君とクリスタルラビットは殺人クラスの可愛さです。
「父様!お願いします!飼っていいよね!?ね!?」
父は無表情で子猫サイズのスノータイガー君をもふった。あの…スノータイガー君怯えてるよ。可愛いと思ってるのは私には分かるが、スノータイガー君には伝わってないよ!
「許可する」
「やったぁぁ!」
「父様!?」
家長は父!父の許可さえ得てしまえば私のモノです!そしてよく耐えた、スノータイガー君!ねぎらいのなでなでにスノータイガー君はウットリ。
結局、彼らは私のお部屋で寝ることに。精霊さん達も来ましたよ。もふもふやらスベスベやらシットリやらに囲まれ、幸せな眠りにつきました。




