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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・日常と騒動編

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有能な従者

 ジャッシュはとても優秀でした。従僕というか、従者として。よく考えたら、ジャッシュはロザリアの専属従者として獣人であるというハンデを持ちながら選定され、仕えた男。能力が素晴らしいのは当然かもしれません。


 マーサに起こされ、着替えた私は紅茶をジャッシュに出されました。


「おはようございます、お嬢様。今朝はミントのハーブティーをどうぞ」


「…美味しい!」


 このハーブティーは私がいれたものより美味しいかもしれない。ジャッシュは誇らしげに微笑んだ。


「喜んでいただけて光栄です。お嬢様、お願いがございます」


「うん?」


「髪を結わせていただけないでしょうか」


「…いいけど」


 ジャッシュは上手かった。そして、髪は騎士団で仕事や訓練しても全く乱れなかった。すごい。後で聞いたら、やったことないからミス・バタフライにお願いして崩れにくい結い方をわざわざ習ったらしい。


 さらに、ジェラルディンさんが迷惑をかける回数が明らかに減った。


「父上、何度言ったらわかるんですか!」


 いや、私より早くジャッシュがジェラルディンがやらかしたのを見つけて叱っていただけらしいが、私の負担が大幅に削減されました。


 さらにさらに、私がお弁当作ってると下ごしらえとか皮剥きなんかの雑用を手伝いに来る。空き時間に自主的にダンの手伝いにも来るらしい。





「あ、これ美味しい」


 ティータイムのお茶菓子がいつもと違うものだった。素朴な味のクッキーで、優しい甘味がなかなか好み。ん?給仕してるジャッシュの尻尾がめっちゃぱたぱたしてる。


「…何かいいことあった?」


「ぅえ!?…あ!尻尾!?」


 尻尾がぱたぱたしてたのに気がついたらしく慌てて尻尾を止めるジャッシュ。意味ないよ。


「あ…うー、その、お菓子が美味しいと言ってくださったので、嬉しくて…」


「お菓子…?もしやジャッシュが作ったの?」


「は、はい…」


「よし、頭を出せ」


「は、はいぃ」


 殴られると思ってるのかな…尻尾が股に入ってるんだけど。私は気にせずジャッシュの頭を撫でた。


「…え?」


「ありがとう、美味しいよ」


「は、はい!おかわりもあります!あ、子供達にもあげたいのですが…」


「私は今ある分で大丈夫。子供達にあげてきていいよ。きっと喜ぶから」


「はい!ありがとうございます!」


 尻尾をブンブンと振り回しながら走るジャッシュ…意外に速いな!子供達も喜んだらしいです。こないだジャッシュに子供達がまた作ってとねだってたからね。


 たまに掃除やら、庭仕事やら…やたら働いている気がするのはなんでだ。お前騎士団でも仕事してるだろ。よく走ってるの見るんだけど。





 私はジャッシュのワーカホリックについてラビーシャちゃんに相談した。しかし、それが面白くないらしいラビーシャちゃん。テラスで拗ねながら私に愚痴ります。私はラビーシャちゃんに紅茶をいれてあげました。


「ご主人様の紅茶おいし~」


「…お嬢様が給仕を?」


 たまたま通りがかったジャッシュはキョトンとしていた。普通はしないよね。


「たまに自分でしたいのよ」


「…そうですか。しかしラビーシャさん、お嬢様に馴れ馴れし過ぎませんか」


「貴方に言われる筋合いはありません。私は庶民ですし、ご主人様にこうすることを望まれてますから」


 私は苦笑したが、事実である。彼女には奔放に振る舞うよう私が頼んでいる。


「そうね」


「…何故、と聞いても?」


「いいよ。彼女は私の専属メイド兼友人だから。公式ではわきまえてもらうけど、プライベートでは普通にしてと言ってある」


「…そうですか。差し出がましい真似をして申し訳ありません」


 ジャッシュが去って息を吐く。


「かたいね~」


「ご主人様、砕いてきますか?」


「物理的に砕くのはアウト」


「チッ」


 やはり物理…なんというかマーサのせいなのか、ラビーシャちゃんが凶暴になってる気がするのはなんでだ。


 ジャッシュはそれからもとても尽くしてくれた。


「ジャッシュ、お願いがあるんだけど」


「はい、なんなりと」


「三毛猫菓子店の限定フロマージュがどうしても食べたいの。20個買ってきて」

「かしこまりました」


 超人気店の限定スイーツなんですが、とても並ぶんですよね。さて、ジャッシュが居ない隙に準備ですよ!










「主様、これは…」


「慰労会です」


「慰労会?」


「主なら頑張る従僕を労うもの。ちょっと働きすぎです。休憩しろ。後はまぁ、散々な態度だったしお詫びと感謝ですかね」


「僕は少しでも、償わないと…」


「別に私に償う必要はないから。いつもありがとう」


「あ…う…」


「ご主人様がわざわざお茶菓子まで作ってくださったんだから、味わいなさ…顔拭いたら?」


「う…えぐ…おいひいれす」


 ラビーシャちゃんがドン引きするぐらいジャッシュの涙と鼻水が凄い。正直味が判る状態じゃない気がするが、多分喜んでいるらしいので…まぁいいか。


「で、本当になんでアンタは私に従うわけ。かいがいしく世話までして」


 やや落ち着いたジャッシュに話しかけた。


「色々ありますが、結局僕は天啓を理由に逃げていたんです。あの夢でそれがよく分かりました。僕はちゃんと嫌いだったこの天啓とも向き合いたい。そのきっかけと、やり直しの機会を貴女が…お嬢様がくださいました。たくさんの幸せをくださいました。お嬢様への恩は一生かかっても返しきれないほどのものです。お嬢様に従うのは当然です。かいがいしいのは、誰かの世話というのが楽しくて…お嬢様はお礼を言ってくださいますし、誰かに笑ってもらえるのがすごくすごく幸せで…すいません、ご迷惑なら控えます」


「まぁ、楽しいならいいけど。誰かを喜ばせるのもいいことだよ」


「ラビーシャさん、使用人としては貴女が先輩です。至らぬ点は多々あると思いますが、よろしくお願いします」


「うえぇ?は、はい」


 頭を下げるジャッシュにラビーシャちゃんが押されている。善人って絡みにくいよね。


「よし。話はここまで!皆で楽しみますよ!出てらっしゃい!」


「は?」


「お兄ちゃん、このクッキーぼくもお手伝いしたんだよ」


「マリーはクリームまぜまぜしたよ!」


「ジャッシュお兄ちゃん、僕たちも食べていい?」


「……(ニコニコ)」


 ネックスはお茶のおかわりを注いであげてますね。現れた子供達に困惑するジャッシュ。


「では改めて、ようこそローゼンベルク公爵家へ」


「は、はい!よろしくお願いします!」


 ジャッシュは今日1番いい笑顔をしました。

 よく働くので評価されてラビーシャちゃんやマーサからも認められるのはもう少し先のお話。

 マーニャが新人のくせにそつがないしサボりもしないとなげいていたのは、聞かなかった事にしました。サボるな馬鹿者。

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