だから従僕はいらんって!
帰宅した私を、頭が出迎えた。一瞬土下座かと思ったが、違う。この礼には見覚えがある。
「ロザリンドさん、いやロザリンド様「断る!!」」
恭順の礼をとるジャッシュの言葉にかぶせて叫んだ。嫌な予感しかしない!銀狼族は誇り高いんじゃないんかい!
「ロザリンド、話ぐらい聞いてあげたら?」
「やだ!面倒な予感しかしない!」
「そうですよね、僕風情が父上を従僕にもつロザリンド様にお仕えするなんて許されませんよね…」
げ、ジャッシュから負のオーラが…!?面倒なやつめ!
「今日すでに酷い目にあわせた私に仕えるわけ?」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんになにやらかしたの?」
私への信頼度がうかがえる台詞だね、ジェンド。やらかしたけどね!
「女装させて誘拐させた」
「本当になにさせてるの!?お兄ちゃんは大丈夫なの!?」
「誘拐犯を捕まるための囮だったんだ。僕はたくさんたくさん悪い事をしたんだから、あの程度じゃ罰にもならないよ」
「お兄ちゃん…お姉ちゃん、あんまりお兄ちゃんを虐めないでね」
6歳にガチで叱られました。うん、気をつけます。ジャッシュは根っこが善人だし、からかい過ぎないようにします。
「どうしたら仕えさせていただけますか?」
「えええ…なんで私に仕えたいのよ。初対面で金的かますわ、女装させるわ、ロクなことしてないでしょうが」
「お姉ちゃん、初対面でって…」
ドン引きするジェンド。しかしジャッシュは優しくジェンドに言った。
「仕方ないんだよ、ジェンド」
「ええ!?本当にそんなことされてなんでお姉ちゃんにつかえたいの!?お兄ちゃんしかたないっていいすぎじゃない!?」
「僕は…憎いはずの僕を救ってくれて、こうして幸せな毎日をくれたロザリンド様にこの命と忠誠を捧げる所存です」
「予想外に重い!!命とかいらん!いのちだいじに!ハウス!むしろこの幸せはジェンドがあげたんだからきちんとジェンドに還元しろ!!」
「お姉ちゃん、僕じゃお兄ちゃんを助けられなかったよ。そこはお兄ちゃんが正しいよ」
「う…」
そして、事態をややこしくする馬鹿親父が来ました。
「主に仕えたいとはいい心がけだな!この機会にジェンドも主に仕えたらどうだ?」
「事態を余計ややっこしくすんなぁぁぁ!!」
私渾身のツッコミがヒットした。さすがは戦乙女のハリセン。素晴らしい威力である。そして馬鹿を張り倒した私にキラキラした視線を送るジャッシュ。
「父を一撃で倒すなんて、流石です!一生ついていきます!!」
は?お前、父をハリセンで殴り倒した女にそんな尊敬の眼差しを…困惑する私に、ディルクが言いました。
「獣人は強さ=魅力だから」
つまりジェラルディンさんは強い→更に強い私→尊敬→仕えたい。
「なんでそうなった!」
自分の思考に全力でツッコミを入れる私。そしてもはや土下座してでも私の従僕になる気満々なジャッシュ。
そこにマーサが来ました。
「お嬢様に1番に仕える者として、私が試練を与えます!」
「待って!試練て何!?だから従僕は要らないったら!」
「主の第1従僕は俺だ!」
そしてジェラルディンさんが食いついた。しかしマーサは勝ち誇った表情だ。
「ふっ、私はお嬢様が赤子の頃からお仕えしております」
「マーサが仕えてるのは父様だけどね」
「「…………」」
固まるマーサとジェラルディンさん。そしてジェラルディンさんがドヤ顔をした。
「やはり俺が1番の従僕のようだな」
「お、お嬢様!私とジェラルディン殿でしたら、どちらを信頼いたしますか?」
「マーサ」
「うわぁ、即決!」
いや、信頼なら間違いない。マーサ一択!でもさ、1番に私に仕えると言うと…
「お2人とも、お嬢様の1番の側仕えは私です!」
ラビーシャちゃんも来ちゃいました。
「私はご主人様に求められて専属メイドになりました!本来旦那様に仕えているマーサさんとも、なかば無理矢理ご主人様にお仕えしたくせに微妙にご主人様に迷惑かけてるジェラルディンさんとも違います!」
「くっ!」
「なん…だと!?俺が主に迷惑…」
がっくりとうなだれる残念な大人達。正論なんだけど…お師匠なマーサはさておき、実は地味にジェラルディンさんに怒ってました?
「主…俺は…」
「たまに迷惑です」
あ、やべ。正直に返事してしまった。ジェラルディンさんが拗ねた。丸くなっていじけてるわ。
「ええと…僕は結局どうしたら…」
「お嬢様にお仕えしたければ、私を倒してからになさい!」
「どうしてそうなった!?」
「待て、ジャスパー。ラビーシャ嬢、主の1番の従僕の座を賭けて勝負しろ!」
そして構えて戦闘しようとする2人。
「…外でやれぇ!!」
2人の首ねっこ引っつかんで玄関から外に投げました。さっきハリセン使った私が言えた義理ではありませんが、確実に何かしら破壊します。
「仕方ない、見に行くか」
ラビーシャちゃんはさておき、ジェラルディンさんは加減が下手くそだ。ラビーシャちゃんが怪我したら困る。追いかけようと歩きだすと
「いい加減にしてください!ご主人様に誠心誠意お仕えするのが本来、従僕のあるべき姿です!貴方達はなんですか!主様の1番を奪い合うのではなく、協力しその働きで評価を得るべきです!!」
ジャッシュがキレた。正論だなぁ。うちの困った部下2人がしょんぼりしてる。よし、決めた。
「ジャッシュ、採用」
私はジャッシュに告げた。
「…へ?」
「その調子でお父さんを調きょ……指導してください、お願いします」
「調教って言いかけた!?結構本気で困ってたんですね!?父がすいません!」
こうして、ジャッシュは正式に私の従僕になりました。ジェラルディンさんの矯正に対し期待します。
「お姉ちゃん、ぼくもお姉ちゃんにつかえる?」
「これ以上は勘弁してください!!」
そしてジェンドを本気で説得し、ジェラルディンさんに余計なこと言うからだとガチ説教をしました。
「大変だね、ロザリンド」
「癒して!ディルク癒して!!」
私はディルクをもふりまくり、どうにかストレスを解消したのでした。モフモフは正義です!
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