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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・日常と騒動編

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ジャスパー死亡の裏側

 ロザリンド視点に戻ります。時間軸もロザリンドがナイフを振り上げた所からです。

 シリアス先輩はお休みとなりました。

 私はナイフをためらいなく振り下ろし…床に突き刺した。多少髪が切れて、銀髪が床に落ちる。


「…なんちゃって」





「……………へ?」





 全員が硬直する中で、私はへらりと笑った。


「ジェス、責任とるんだよね?息子みたいな甥のために」


「…ああ」


「国を一生騙し通す覚悟はある?それなら、この男の命は救ってあげる」


「…ある」


「では、ジャスパー。身分も何もかもを捨てて生きるつもりはありますか?」


「…僕は…僕は生きたい!」


「ならば、私が知恵と力を貸しましょう。この貸しは大きいよ?」


 2人は力強く頷いた。






「では作戦を伝えます。名付けて、ジャスパー死亡大作戦!」


「へ?」


 皆ポカーンとしてますな。私は作戦の概要をざっと説明した。時間がない。私はスイにエルフ村への協力要請を依頼。

 ジェスと綿密なる話し合いをした。勝負は明日だ。それから、ユグドラシルの件はジェスが私を夏前には呼べるよう捩込むと約束した。ジェスって意外に権力あるの?まぁいいや。







 ジェス達は護衛を撒いてここに来ていて、翌日の朝に護衛と合流した。ユグドラシル休止のヒントがあるかもしれないと、護衛に告げてエルフ村に行くことに。


 そして、森で闇様登場!普段より張り切ってでかくなってますね。闇様には素早くジャスパーをパックンチョしてもらって、空に飛び去っていただく。必死に追いかける護衛さん達。しかし追いつけるわけがない。他に魔物もいるんだから。しかも割と強いし。


 更に森の適当な場所にタップリ採血しといたジャスパー本人の血を撒き散らし、銀髪を血溜まりに散らす。殺害現場の出来上がりである。

 血がつくと殺人犯にされかねないのでアリサに浄化で綺麗にしてもらった。転移の魔石でさっさと撤退する。カメラ的な魔具をコッソリセットしておいた。


「これはジャスパー様の血の匂い…」


「この出血では、もう…」



 生きてるけどな。護衛さん達はうなだれる。


「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!」


 迫真の演技だな、ジェス。本気で取り乱してるようにしか見えないよ。主演男優ですね!


「ジュティエス様…お気持ちは解りますが…」


「ジャスパー!ジャスパー!!うあああああああ!!」


「ジュティエス様!魔物が血の匂いで集まってきています!…失礼!」


「仕方ない、退くぞ!」


 取り乱すジェスに当て身を食らわせ、護衛達は離脱した。なかなか優秀だね。まぁ、ジェスによく撒かれてるみたいだけど、今回の判断は正しい。実際カメラ的な魔具付近に魔物がチラチラと映っている。血の匂いに惹かれたんだろうね。


「不審がられてる様子もないし、とりあえずは大丈夫そうだねー。第1段階は突破したかな」


 思ったよりジェスの演技は素晴らしかったわ。ラビーシャちゃん程ではないけど。私はポフンとベッドに寝転んだ。隣には愛しのマイダーリンディルク。


「なんというか…よくこんな手を思いつくよね」


 はう…ディルクのナデナデとか幸せ…

私の隣に座るディルクのお膝にスリスリする私。ディルクは苦笑して優しく撫でた。


「俺はなんだかんだで甘い君が好きだよ」


「あはは…甘いのは否定出来ないわ」


 だが、恐らくはジャスパーを引き渡してもジャスパーを切られて終わりだ。しかもクリスティアとウルファネアの関係が悪化する危険もあり、黒幕の思惑通りになるかもしれない。それは避けたいし本人も望んでいないのだから、ジャスパーを引き込むのは多分間違ってない。


「お姉ちゃん、お兄ちゃんが帰ってきたんだけど…」


 すっかりお姉ちゃん呼びに戻ったジェンドに連れられて玄関に立つよだれまみれの男とすまなそうな闇様。別に闇様は悪くないよ。予想の範囲内だよ。くわえたらよだれまみれになるよ、うん。


 予定通りに適当な人里離れたとこまで飛んで、ジャスパーの転移の魔石で転移した2人。


「闇様お疲れ様でした。素晴らしい仕事ぶりです。ジャスパーは風呂に直行。ディルク、ついでにお風呂でジャスパーをこの魔法薬で黒染めして。全身くまなくね。普段見えない部分もがっつり染めて」


「…ええと…普段見えない部分…?」


「私はディルク以外の男性の全裸は見る気がないし興味もないんで、お願いします」


「じ、自分でやります!」


 顔を真っ赤にしたジャスパー。


「いや、塗るのは自分でいいけど尻とか見えない部分はあるから、獣化した状態でまんべんなく塗りたくって染まったかチェックしてもらって。ディルクは元から黒だからかかっても影響ないし」


「諦めて。君のためでもあるから」


 ディルクもやりたくないだろうけど、了承してくれました。



 数分後。



 真っ黒に毛を染められたジャスパーと心配して一緒に確認しているジェンド。そして私を撫でるディルク。いちゃつくな?いいえ、彼は私を癒すという重大な任務をしているのです。だって、ついジャスパーを蹴飛ばしそうなんだもん。生かすと決めても腹立つんだもん。いや、ジャスパーじゃないか。


「これで『ジャスパー』は死亡したね、ジャッシュ」


 偽名は本名と似せるといい。呼ばれて反応出来なかったらまずいからね。

 ジャスパーはジャッシュになり、毛並みも魔法の毛染め薬で永久染色です。更に香水で匂いをごまかせばOK。



 ちなみに魔法の毛染め薬は売ろうかと思って作ったものですが、犯罪者に悪用されたら困るとディルクに止められお蔵入りしていた品です。何が役立つか解りませんね。


「さて、仕上げだね。アリサ、出番だよ」


「はーい」


 アリサはジャッシュの呪いを解いた。暗示は死亡でも解除される。術者も死亡による解除だと認識するだろう。


 私はジャッシュに話しかけた。


「当面は騎士団で書類仕事してもらって、ルランへの償いはクリスタルドラゴンの里へお菓子の運搬係にでもなってもらうかな。コウとハクは?」


「ぼくはジェンドやぼくとたまに遊んで欲しいかな」


「はい、喜んで…でもいいのでしょうか。僕は呪いを無意識に生み出し、周囲を不幸にします。意図しなくとも…そんな僕が一緒に遊ぶなんて許されるんでしょうか」


「あー、それね。アンタの本当の天啓は呪いじゃないのよ」


「へ?」


「アンタの本当の天啓は運気増幅。アンタが幸せなら、周囲の運気を引き上げるの」


「は?」


「考えてみなさい?アンタが楽しかったり幸せな時って何も起きなかったでしょ?逆に落ち込んだり泣くと不幸が起きる。違う?」


「え…あ…」


 ジャッシュはボロボロ涙をこぼす。ジェンドが心配そうに涙を拭ってやる。


「僕はジェンド達といてもいいんですか?もう誰も僕のせいで傷つかない?」


「いや、生きてく以上、いさかいはあるから誰も傷つけないのは無理じゃない?アンタの天啓がという意味なら、アンタの心次第だね」


「嬉しい…嬉しい!」


「わぁ?お兄ちゃん?」


 ジャッシュはジェンドを抱きしめて号泣しだした。追い詰められてたんだなぁ…ジェンドがよしよししてあげてます。なんか癒される光景ですね。


「よかったですねぇ、ご主人様ぁ…じゃなかったぁ、ジャッシュさん」


「君は…すまない。僕のせいで」


「ボクに呪いをかけたときぃ、泣いてましたねぇ。ボクは今ぁ、幸せですよぉ。だからもうぅ、泣かないでいいんですよぉ。ボクへの償いはぁ、ジャッシュさんが幸せになることですよぉ」


「うん、うん…ありがとう」


 泣きながらも幸せに微笑んだジャッシュ。とりあえず、彼は大丈夫だろう。ウルファネアと違い彼を迫害するものはいないから。


 それにしてもいい子だ…!うちの聖霊さん達、おりこうさん過ぎる!


「ハク、屈んで」


「えぇ?はぁいぃ」


 よしよししてやると、嬉しそうに笑った。可愛いな!でかいけど!


「ハクはなんていい子なの!」


「えぇ?えへへぇ、ほめられたぁ」


 さすがは我が家の癒し系!成人してても可愛い!


「お姉ちゃん、ぼくは?」


「お姉ちゃん、僕もおりこうだよね?」


「アリサは?ママ、アリサもいい子だよね?」


 わらわらとコウ、ジェンド、アリサが寄ってきた。


「もちろん皆おりこうさんです!ハナマルですよ!」


 まとめて抱きしめると、きゃーと楽しげな声が響いた。





 我が家の可愛い子供らとキャッキャしてたら、スイから通信が来ました。


「面白過ぎることになってるよ」


 そうスイに言われました。嫌な予感しかしないんだけど。


「どうなってんの?」


 スイが簡潔に報告してくれました。スイはエルフ姿でエルフ村に居たのです。必要ならフォローするために。今はハルに防音結界をはってもらって報告に来たらしいです。


 意気消沈しながらも、ジェス達は村にたどり着きました。


「ふむ、蛇ですか。冒険者殺しやもしれませんな」


 そんな話しをしながら、本題のユグドラシルの話しになりました。


「もしかしたら、そちらのユグドラシルも呪いにかかっているやもしれませんな。我が村のユグドラシルはロザリンドちゃんという女の子が助けてくれましてな…」


「…そして、そこからジジイによる孫みたいに可愛いロザリンド自慢」


「なんで!?」


「…ジジイはロザリンドが大好きだから?」


「嬉しいけど恥ずかしいわ!」


「更にロザリンドを褒めたたえる村人達」


「なんで!?」


「ロザリンドは最近村のアイドル的な存在らしいから?」


「どうしてそうなった!?」


「いや…僕もなんでかは知らないけど、面白いから放置してた」


「スイの確信犯ー!!」


「あはは、そして村人によるロザリンド布教活動が今。なんかロザリンドが聖女みたくなってるよ」


「ぎゃあぁ!止めてください!もうスイではだめだ!面白がってる!ハル!ハルー!」


「はいよ」


「村人さんとお祖父様を止めて!」


「ゴメン、頑張ったけどあの人数はどうにもならなかった」



 なんてこった。確かに私もあのパワフルなエルフ達をどうにか出来る気がしない。私は絶望しました。すまん、ジェス。








 夜更けにジェスから連絡が来ました。

無事ジャスパーは死んだ事になったらしいです。


「ところで…お前エルフ村で聖女みたく言われてたぞ」


「気のせいです」


「話が長くて大変だった。気のせいではないだろう。現物を知ってるだけに違和感があったがわりと事実っぽい話もあったんで、嘘だか本当だか判断しにくかった」


「気のせい!または全部嘘で!」


「お前は変わってるな。だがありがとう、ジャスパーを頼む」


「…拾ったからには面倒見ますよ。彼はジャッシュになりました」


「そうか」


 ジェスの声は優しかった。そして通信を切りました。

 窓の外、美しい月を眺め私はとりあえずエルフについては考えないことにしました。どうにか出来る気がしない!!


 余談ですがジャッシュは結局、ジェンド達のお家に引き取られ、騎士団でお仕事しつつ暮らしています。いつもニコニコ幸せそうです。

 嬉しい誤算だったのは、ジャッシュは意外にデスクワークが得意で私の後任として申し分ないレベルだったこと。ドーベルさんが喜びました。

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