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従者と交渉とサボテン

 お嬢様は限界だったらしく、聖獣様に倒れ込んで熟睡してしまった。聖獣様はのしのし歩くと自分のスペースだろう、クッションにお嬢様を背中に乗せたまま横になった。

 器用にお嬢様をそっとクッションに下ろし抱え込んでいる。寒くないよう尻尾でくるんでいる。


 お嬢様、王様の前で話の途中に聖獣様布団がわりに寝るやつがどこにいる。いや、ここにいたわ。

 お嬢様の心臓は、毛ぐらい生えてておかしくない。むしろ鋼鉄製かもしれない。


 お嬢様が眠ったのを視線で確認し…おいおい、羨むな。悔しそうな顔すんな、ばかやろう。さっきから王様にケンカ売るんじゃねぇよ!お嬢様の度胸ありすぎな部分は確実にお前のせいだ!


「ルーファス、娘の精霊がサボテンを召喚したのは事実か」


「ああ。今日から使用通達を出した陳情書と経理の書類も娘が考えた」


「…は?」


 我が主…もうバカ主でいいや。バカ主はどやぁぁ!とドヤ顔を見せた。親バカぁぁ!!

 そこ要らない情報だろ!娘自慢はおうちで好きなだけしとけぇぇ!!目ぇつけられたら厄介だろうが!


「凄いだろう」


「ああ…うん」


 王様明らかにうちの主にドン引きしてる。動揺してる。


「聖獣の対応といい、なかなかに変わった姫君だな。普通聖獣に会えば泣き叫ぶだろうに」


 大分オブラートにくるんだな。色々お嬢様はおかしいけど、普通そうだよな。俺も昔、聖獣様に吠えられていまだにトラウマだよ。大概城に来た子供は洗礼受けるんだよな。

 平気なバカ主がおかしいんだよ。甘噛みでも頭かじられても平気とか、お前は昔っからおかしかったよ。王様あの時もドン引きしてたな、懐かしい。


「ロザリアは勇敢だからな」


 そこ、ドヤ顔すんな。多分褒めてねぇから。勇敢と無謀は紙一重だし、だから娘自慢は家でやれよ。

 バカ主に任せてたら、纏まるもんも纏まらない。


 口の中で小さく呪文を唱える。伝声の応用魔法。直接話したい相手の鼓膜だけに音を伝える魔法だ。


『陛下、交渉だ』


 相手も即座に同じ魔法で返してきた。


『なんだ』


『お前、さりげなーく期限ギリギリの自分の仕事を混ぜてたよな。勝手に』


『……何のことだ』


 昔と違って顔色は変わらないが、目が泳いでいる。


『気のせいか?なら主に言ってもいいよな?』


 ブリザードは確実だろうな。バカ主は敵に容赦しねぇぞ。ここ最近のオーバーワークを更に悪化させてたことが知れたら…とりあえず俺なら土下座一択。命が惜しい。


『…望みはなんだ』


『人員確保まではサボテンも使用を認めろ。アレは意外に賢いし、トゲが刺さっても大して痛くねぇ。不審者対策にも使える』


「刺さったのか?」


 あ、バカ!普通に話しやがった!!


「…刺さる?サボテンか?」


 王様は手で合図して影の護衛以外下がらせた。もう内緒話の必要はないから魔法を解除する。


「サボテンだ。あと、人員確保までお嬢様と坊ちゃんを仮の秘書官にする」


「…大丈夫なのか」


「うちの子供は優秀だ」


 親バカ黙ってろ。確かにアンタの子供は異常レベルで優秀だがな。


「保証する。お嬢様に比べたら、俺無能だから」


 遠くを見る俺。いや、普通が1番だと思う!平凡平和って素晴らしい!


「解った。許可しよう」


 王様はため息をついた。交渉成立だ。さっさと退室しようとする俺に、主が話しかけた。


「アークは別に無能ではないだろう。事務処理は専門外だっただけだ」


 空気を読まないうちの主は慰めなんてしない。むしろできない。無能にははっきり無能というし、できないものを無理強いしない。認めていれば、素直に認めていると言う。困った奴ではあるが、こういう所が憎めない。


「はいはい。ありがとさん」


 自然と、口の端が緩んだ。 


「ところで、サボテンに刺されたのか」


 それ蒸し返すか。お前は昔からどうでもいいとこにこだわる時があるよな。


「自分の無能さにしょげてつついたらトゲ飛んできた」


「…それは危険なのではないか」


「それが、肩凝りが治った」


「刺されてくる」


 謁見の間を出ようとするバカ主。またんかい。俺を置いて行くな。


「後にしろ。で、お嬢様の精霊に聞いてみたら、サボテンは悪意がない者には攻撃しない。俺の疲労に気がついて治癒針を刺したんだろうとさ。お嬢様は心配してたけど、苦情の中に怪我人は居ないだろ」


「いないな」


 こうして、サボテンは正式に許可された。後で主だけでなく、王様も肩凝り治しに刺されにきたのは言うまでもない。


 国のツートップが何やってんだよ、全く!



 アークと王様と父は幼なじみなので、割と仲良しです。

 基本、天然と超天然記念物に挟まれ、アークのツッコミがおいつかない感じです。


 そして、回を増す毎に父の天然レベルが上がってく不思議。


 次回から主人公視点に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 応援ツイートなう
[良い点] 読むの2回目ですが、やっぱり声出して笑ってしまう。個人的にサボテン欲しい。小さいやつとか可愛い気がする。
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