↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケーキなボクの冒険  作者: 丸めがね
ヒョウガの国へ。エリー姫と馬番の少年クルト、苦悩のブルー
PR
82/207

その82 死者の唇

ブルーは言葉を飲み込むしかなかった。


ブルーのヒョウガの国が、ホシフルの国とツルギの国とに敵対する今、エリー姫のツバサの国から宣戦布告されるようなことがあれば、それはすなわちヒョウガの国の終わりを意味していた。


逆に、大国ツバサの国の支援は是が非でもほしい。


エリーはブルーの考えを見透かすように耳障りな高笑いをした。



そのころリーフは、ベイドとクルクルのためにお菓子を焼いていた。

その二人はリーフを残して、部屋の外に出てしまったが。

(まあいいか、どうせ暇だし。)

ベイドはリーフに、くれぐれも部屋から出ないようにと言い残す。


本日のお菓子は、カステラ。

ハチミツたっぷりである。

(これを焼いてたら、あの甘党の二人なら部屋に戻ってくるでしょう!)

リーフが混ぜた生地をツボに入れると、すぐにあま~い香りが辺りに広がった。


それは、ちょうどそばを通りかかった、エリー姫が連れてきた侍女にも気づかれていた。

侍女はそれをエリー姫に報告する。

姫は自分の家来を使って探らせた。


「このお城には、お菓子を焼くのが上手な者がいるようですね。」

その日の夕方には、エリーはブルーにそう言っていた。

「このお城の料理人でしたら、いずれは私の食事も作らせることになりましょう。楽しみですわ。

早速、その者をご紹介下さらないかしら。」


ブルーはお菓子と聞いた時点ですぐに、リーフのことだと気が付いた。

もちろんリーフを呼ぶわけにはいかないが、他の料理人を呼んだとしても、あのようなお菓子は作れず、エリーは死刑にしてしまうだろう。

エリーはブルーの、一瞬の迷いを見逃さなかった。

「ブルー様・・・。まさか、料理人以外でお菓子を作る者がこの城にいて、それがいわくつきの女、ということはありませんよね?」

「エリー姫、あなたは・・・?」


どこまで知っているのか、エリー姫は醜い顔を一層醜くゆがませてうすら笑いをした。



リーフは一人、部屋の中で待ちぼうけを喰らっていた。

焼きあがったカステラは美味しいのに、クルクルもベイドも帰ってこなかった。


ベイドは3年ぶりの城が嬉しくて場内をうろついているんだろうし、クルクルは好奇心旺盛だから城の隅々を探検しているんだろう。

「もう、ひとりで全部食べてやるっ!」

リーフが口にカステラを詰め込んだとき、パッとあたりが暗くなった。

ろうそくの火が消えたらしい。

窓があるとはいえ小さくて、ろうそくの光がなくてはほとんど見えない。上映前の映画館のようだ。

「え・・・暖炉も消えてる・・・。どうすればいいんだろう?」


リーフがオロオロして、寒さで身震いしていると、スウッと風が吹いてきた。生暖かい・・・

部屋の隅が不自然にボウッと光る。


その光は、人の形に変わった。

長い髪、青白い顔、悲し気な瞳・・・・


「幽霊・・・?!」恐ろしいが目が離せない。

「ああ・・・でもどこかで見たことがある・・・・あなたは・・・」


それは、ブルーの意識の中で見た、惨殺されたブルーの姉王女、カナシャだった。


カナシャはゆっくりとリーフに近づく。

血の通っていない手がリーフの頬に触れる。動くことも、叫ぶことも出来ない。


カナシャは、死んでもなお美しい顔でリーフを見て、動けない唇にキスをした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。