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ケーキなボクの冒険  作者: 丸めがね
竜の舌の洞窟へ。シロクマのベイド、赤のドラゴンの欠片とは
76/207

その76 ブルーの過去

暖炉の前、ブルーはリーフを毛布でくるんで話し始めた。


「私は27年前、ヒョウガの国の第2王子として生まれた。その時には5歳の兄と、2歳の姉がいた。」


ヒョウガの国は北の大地。十分な作物も家畜も育たない。

ただ鉱山と芸術品、兵力が豊かで、それを資源にして他国に輸出し、外貨を稼いでいる。


他国とは主に南端のグレンの国、そして大国ツバサの国。


そんな国の王子として生まれたブルーは、幼い時に養子という名の人質としてツバサの国に行かされた。

それが7歳の時だった。


すでに姉、カナシャは同じ理由でグレンの国で生活しており、5歳年上の兄は次期王としてヒョウガの国を父王、母女王とともに守っていた。


だからブルーはあまり本当の家族と暮らしていない。



ブルーの行ったツバサの国には王女が3人いて、ゆくゆくはそのうちの一人の姫と結婚する予定だった。

姉カナシャも、グレンの国の王子と結婚することになっていた。


そのカナシャの、グレンの国第一王子との婚約が決まった翌日、事件が起きた。


ヒョウガの国にいた王、女王、兄王子が暗殺されたのだ。



急遽ブルーとカナシャはヒョウガの国に帰り、調べた結果、ツルギの国とホシフルの国が関係していることがわかった。



「・・・あとは、お前も見たとおりだ。ホシフルの国に話し合いに言った姉上は、あのような無残な姿になって帰ってきた。そこで今度は私が、ホシフルの国に潜入したのだ。

布商人になり、ムラサキの町で店を買って、様子を探っているときにお前が来た。

あの時店を襲ってきた5人組の男たちは、私の正体に気付いたホシフルの国の兵士たちだった。」



リーフは少し長くなった話をじっと聞いていた。

「そう・・・。色々大変だったんだね、ブルー。でもボクが・・・」


ボクが知りたかったのは、もっと違うことだった。ブルーが何が好きか、嫌いか、悲しい時どう思ったのか、嬉しかったのはどういうときなのか、そういうこと。

そしてリーフのことをどう思っているのか。


でも聞けなかった。


聞くのも女々しい気がするし、ブルーが自分のこれまでを話してくれただけでも凄いことだし。


しばらくの沈黙の後、ブルーはリーフを毛布ごと抱き上げてベッドに運んだ。

(もう、覚悟を決めるしかないのかな・・・。)ギュッと目を閉じる。


ブルーは小刻みに震えるリーフに言った。

「ここに、眠りの薬がある。これからのこと、お前がつらければ、これを飲みなさい。

次に目覚めるのは朝だ。」


「眠ってる間に・・?」

それなら、何も感じなくて済むかもしれない。


「ください、それ」

リーフは魔法の瓶のような薬を受け取って、飲んだ。


「しばらくしたら意識がなくなるだろう」


「・・・」まず目がトロンとしてくる。

ブルーはリーフを寝かせてキスをした。

いや、とか、いやじゃない、とかいう感情も薄れてくる。


ボーっとする頭でリーフはしゃべり始めた。

「ブルーさん、今度はボクのことを話しますね・・・。ボクは、本当は日本という国で生まれて・・・・・・・・・・・・」




ここからリーフが覚えているのは、ブルーの綺麗な髪だけ。裸になった自分の胸の上で彼の頭が揺れていた。





朝。朝が来た。目が覚める。洞窟の中なのにどうして分かったかというと、白い小鳥が籠の中でで鳴いたから。

「コケコッコー」


「コケコッコ?」


白い小鳥はよく見ると、小さなニワトリだった。



「おもしろいなぁ、インコみたいなニワトリがいるんだ。」


リーフがもっと近くで見ようとベッドの上で起き上がる。


「あ・・・」

リーフは裸だった。ブルーはいない。

あの、眠りの薬の瓶だけがベッドの横の小さな机に置かれている。


「そうか・・、うん。終わったんだろうな」

泣かないと決めたからか、実感がないからか、不思議と悲しくはならなかった。

太ももにある妖精の紋章が熱く感じたので見ると、形が少し変化していた。


「ブルーのドラゴンの欠片を吸収したんだ・・・!」リーフは確信した。


こうなったら、もう男(?)リーフ、腹をくくるしかない。欠片を集めて赤のドラゴンを復活させ、黒のドラゴンから世界を救う勇者になろう!と決心する。

「そういえば、この世界はもともと”ファイナルドラゴンファンタジア”のゲームの世界だったなぁ」

ちょっとおもしろくなるリーフ。こんな形でも世界が救えるならいいじゃないかと思う。


振り切った気分のリーフがインコニワトリの籠まで歩いたとき、扉が開いて、ブルーが入ってきた。

小鳥を見るリーフに微笑む。

「それは朝告げ鳥だよ、リーフ。結婚の翌朝に夫が妻に送る風習が我が国であるのだ。」


「ふーん・・・。ん?結婚?」


「お前を、ほかの男に触れさせない方法があるかもしれない。だから私の妻になりなさい、リーフ。」


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