その64 北の山越え
リーフの扱いは酷いものだった。
北に向かう準備のため、黒いマントと皮のブーツは渡されたものの、放り込まれた荷馬車の荷台はひどく冷え込んだからあまり意味がなかった。
いつの間にか集まった、ブルー王の家来と思われる数人の男たちは毛皮とか着こんでいてあったかそうだ。
もちろんブルーもひときわ立派な毛皮を着ている。
「・・ずるい・・・」
人質という立場を忘れて腹を立てるリーフだった。
ムラサキの町から北へ二日も行くと、山が近くなり、チラチラ雪が降ってきた。
リーフは薄い毛布のような茶色のガザガザした布を体に巻き付けて我慢した。
「さっ…寒い・・・!凍え死んじゃうよ・・・・・!」
リーフはケンカしていたはずのクルクルを抱きしめながらつぶやいた。
すでにクルクルは生きる湯たんぽになっている。
「抱いてくださいと頼めば、わたしのマントに入れてやるが?」
ブルー王は震えあがるリーフを面白そうに見ている。
リーフは悔しくて
「けっこーーーです!」と強がった。
耳、足や手の先が、頭が痛くなるほど冷たくなる。
(もっ、もともと冬とか寒いのは苦手なのに~~~今すぐお風呂に入ってコタツで日本茶飲みたいっ)
と願うリーフだった・・・。
道はさらに岩が増えて悪くなり、傾斜が出てきた。
山越えに入るのかもしれない。
「これからは雪が深くなる。途中で馬車を置き、馬で登ることになろう。
リーフ、お前は馬に乗れるのか?」
リーフは乗れるわけないので首を振ろうとしたが、ハッと考えた。
(一人で馬に乗れば、逃げられるチャンスがあるかもしれない!そう言えば小さいころどこかの動物園で乗ったし・・・いけるかも!)
「・・・乗れます・・・」
「そうか」
この世界では、馬に乗れるのは普通なことなんだろう、疑われることはなかった。
景色に木々が少なくなってきたころ、ほろ馬車は静にとまった。
気が付くと足元には10センチぐらいの雪が積もっている。
「ここからは馬車を捨てて馬に乗る」
家来たちが準備をし始めた。
リーフには、中でも一番小さな馬が用意された。小さいと言っても、実物の馬は思ったより大きかった。
(・・・足が届くかな・・・)
そもそもリーフ、馬の上に登れるかも怪しい。
(女の子になるとさらにチビだからなぁ・・・)
馬の前であたふたしていると、ブルー王がやってきた。
「乗れないのか?」
「乗れますっ!」
「乗って見ろ」
急いで馬にへばりつくリーフ。
やっとのことで乗るには乗れたが、これからどうしていいのか全く分からない。
「やはり、お前は誰かと一緒に乗った方が・・」
「大丈夫です!!」
一か八か馬の腹を蹴ってみる。すると少し進んだ。
(よし、いける!)
調子に乗ってもう一蹴り、二蹴りとやってみる。
三回目の時、リーフのブーツから出ていた金具が馬の腹に突き刺さる。
馬は激しくいなないて、左右に揺れリーフを振り落とそうとした。
「ええっ!!」
リーフは落とされないように必死に馬の鬣にしがみつく。
騒ぎに気づいた家来たちが馬をなだめようとしたが、馬は興奮が収まらず走り始めてしまった。
「わわっ!ちょっと待って・・・とまってーーーーーー!!」




