その49 吠える
リーフは夕日に赤く染まるその人を見た。
ララだけど、ララよりもはるかに大きくなったその体の下には破れた服が落ちている。
リーフはララからもの凄い殺気を感じて後ずさった。しかし視線は外せない。
まるで銀色の獣のようだ、と思った。恐ろしくて、美しい。
そしてララの下半身を見ると・・・どう見ても・・・男だった・・・。
「えええええええーーーーーーっつ!!」腰を抜かすリーフ。
さっきまでの可憐な美少女はどこに消えてしまったのだろう。
目の前にいるのは、地獄で連勝している戦士のようにたくましい、獣のような男だ。
「どうしちゃったの・・・?ララ・・・」
リーフがしゃべると、それは吠えた。リーフは逃げようとするが足が震えてうまく動かない。
その手がリーフの胸ぐらをつかむ。
男の顔が口を開きながらリーフの顔に近づく。
「食べられる?!」
その時、
「やめろ!」
遠くからマーリン王子の声がした。スカーレットと、数人の兵士とともに駆けてくる。
王子は兵士の槍を取って投げた。槍は獣をかすって草の生えた土に突き刺さる。
「リーフを離せ、兄さん!」
「兄さん?!」
「ララ様があの状態になられては・・・」
ララは掴んでいたリーフを地面に投げつける。そしてその上にまたがり、殴りかかってきた。
「止めてララ!!」
一発目はかろうじてかわしたが、二発目は肩に入った。骨が折れてるかもしれないほどの激痛。
「くうっ・・・」苦しむリーフ。
側まで来たマーリンが剣を抜く。
「致し方ない・・・兄さん・・・!」
マーリンの剣はララを何度も切り裂いた。ララの皮膚は赤い血を吹いて破れたが、まったく効いていない。
しかもよく見ると、ララの傷は瞬く間にふさがってくる。
ララはリーフから離れ立ち上がり、マーリンたちと向き合った。
「ぐおおおおおおおおおおお」
鼓膜がおかしくなりそうな慟哭。
兵士たちがいっせいにララに向かっていったが、腕一本でなぎ倒された。
スカーレットが細く長い剣を、マーリンが大剣を構える。
激しい応戦、血しぶきが飛ぶ。
リーフは、マーリンたちが本気でララを殺そうとしているのではないかと思った。
(こんな姿になってるけど・・・、ララなんでしょう?)
さっきまでのララの愛らしい笑顔が目に浮かぶ。
王子の剣はララの太ももを突き刺した。間髪入れずにスカーレットがふくらはぎとアキレスけんを切りつける。
ララは地面に倒れた。
その瞬間を見逃さず、王子はララの首をめがけて剣を振り下ろす。
「やめてっ!」
とっさにリーフはララをかばった。
剣はリーフの右腕を抜ける。
リーフの頬と男の顔に赤い血が飛び散った。
「リーフ!」
マーリンがリーフから剣を抜く。
「何をしてるんだ、リーフ!だいじょうぶか?!」
「リーフ様!」
ドクドクと腕から血が流れる。(ボク、死んじゃうんだろうか・・・?)
腕はひどくしびれるが、あまり痛みは感じなかった。
王子の声もスカーレットの叫びも、周りの音が遠くなる。
背中にかばったままの男の形が変わった気がした。
リーフの背中から伸びてきた日本の手が、細く白い、綺麗な腕だった。
「リーフ・・・・・・」
「リーフ・・・」
(あ、ボクのララの声だ・・・)と思いつつ、リーフは意識がなくなっていった。
背中にやさしい体温を感じながら。




