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ケーキなボクの冒険  作者: 丸めがね
マーリン王子と騎士スカーレット、恐ろしい夜の悪魔
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32/207

その32 婚儀の前


その日、昼の間、マーリンの城内では慌ただしく婚儀の用意が行われているようだった。


ようだった、というのは、リーフは結局 部屋に閉じ込められてしまったので、周りの様子が音でしか分からなかったのだ。


アーサーとジャックのことも教えてもらえなかった。




最初に放り込まれた血だらけの部屋よりは全然マシな綺麗な部屋に入れられたが、頑丈な鍵を掛けられているのはおんなじだ。


なすすべもなく一人ポツンと過ごすリーフ。


一昨日までは(ダメダメながらも)平凡な高校生男子だったのに、どうして婚儀を待つ女子になっているのか。

夢でありますようにと何度となく願い、昼寝もしてみたのだが駄目だった・・・。



そんなむなしい時を過ごす中、時々、クッキーをくれたおじいちゃん兵士がリーフの様子を見に来てくれた。


「お嬢ちゃんが無事で本当に良かったよ・・・。わしゃ心配で心配で・・・。しかも。王子と婚儀を上げるということになってるじゃないか!めでたいことじゃのう!びっくりして腰が抜けるかと思ったよ・・!」


ガハハと笑う老兵士。


「おじいちゃん、あのときはお菓子・・・ありがとうね。ところで、ここから逃がしてくれない・・・よね?」


おじいちゃんは「何をご冗談を」とばかりにガハガハ笑うだけ。


まさか、一国の王子との婚儀を嫌がる娘がいるとは思えないのであろう。


それに、もしリーフを逃がしてくれたとしても、この老兵士が罰を受けることになったらと思うと、リーフは強く頼めずにいるのだった。


おじいちゃん兵士は腰を悪くしてしまい、城でのお勤めも今年で最後だという。

今はなんとか歩けているが、ほどなく立つこともできなくなってしまうだろうと。

この歳まで王子にお仕えできたことが誇りで、孫娘に語って聞かせるのが楽しみである、と。


「そんなこと聞いちゃったら・・・。無理は言えないなぁ・・・」

やっぱり気の弱いリーフだった・・・。



おじいちゃんが3回目に花を摘んで持って来てくれたとき、リーフは暇と不安に任せてあの紫の壺で作ったロールケーキをあげた。


「はい、よかったらどうぞ。」


あまい生クリームとイチゴを巻いてある。見たこともない、美しいく美味しい食べ物に老兵士はひどく感動した。


「ありがとう、ありがとう。なんと、天国の神様がつくったような奇跡の味じゃ・・・!

こんな素晴らしいお菓子を作れるとは、お嬢ちゃんはきっといいお嫁さんになるよ・・・」


それを聞いてリーフはむなしく笑い、ポロッと泣いてしまった。

(お嫁さんなんてなりたくないよ・・・)



さめざめ泣くリーフを見て、老兵士は、本当にこの小さな女の子が結婚を嫌がってることを知った。


「なにか事情があるんじゃな・・・。すまないが、わしは王子にお仕えする兵士じゃ、ここから逃がしてやることはできん・・・。」


そう言って、 立ち去ろうとした。腰から一本、鍵を落とす。


「タンスの後ろに隠し扉があって、海に通じているらしい・・・。なに、独り言じゃが。」


おじいちゃんはそう言って部屋を出て行った。


鍵を拾うリーフ。「タンスの後ろ・・・?」



ごつい木でできた重いタンスを何とかどかして、隠れていた部分の壁を見ると 、正方形の扉が出てきた。

人が一人、四つん這いになってやっと入れそうな 小さな扉だ。


鍵穴があって、さっき 拾った鍵を差し込むと、ガチャリと扉が開いた。


リーフの心の希望の 扉もガチャリと開いた・・・!


「やった!もしかしたら逃げられるかも・・・!ありがとうおじいちゃん!」




こころウキウキ、リーフが紫の壺を抱えて逃げようとしたとき、部屋の扉を開けてマーリン王子が入った来た。


逃げようとしたリーフと目が合った・・・!

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