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ケーキなボクの冒険  作者: 丸めがね
ヒョウガの国へ再び
162/207

その162 空と地から

「シャルルはアリスと、もう一人の男ヒューと共にホシフルの国に向かった・・・。3日前だ。まだ着いてはいないだろうが、普通では追いつかないだろう・・・。」

ブルーは言う。


「・・・連続で悪いけど、ブラックに運んでもらおうかな・・・。ブラックファイヤードラゴンのブラックなら、きっとすぐに追いつくよ。」とリーフ。


「いえ、申し訳ありませんがそれはおやめください。」ルナが止めた。


「ブラックは、平気な顔をしていましたが、この寒いヒョウガの国を全力で飛んでかなり疲れているはずです。昨日の今日であまり無理をさせますと、火山まで帰れなくなり力尽きてしまうでしょう。

もちろんブラックは、リーフ様がお呼びになれば喜んですぐに参りますでしょうが・・・。」

ルナはそう言うと顔をしかめた。


「しかし、この世界の一大事だぞ・・・。他に方法がなければ、ブラックには頑張ってもらうしかないんじゃないのか・・・?」ロバートは難しい顔をするルナに言った。



「他に方法は・・・あるかもしれない・・・。」

リーフが真っ先に思い浮かべたのは、ジャックのことだった。

怪鳥ジャック。

ジャックなら、ブラックほどの速さではないものの、シャルルたちに追いつくようにリーフを運べるだろう。


ロザロッソはリーフの考えを見抜いたようだった。


「ジャックね・・・。でも、今どこにいるのかわからないんでしょ?ここに呼ぶ手立てもないし・・・。やっぱりブラックに頼るしかないんじゃない?」


ブルーはジャックの名前を聞いて複雑な顔をした。詳しく聞いたわけではなかったが、ジャックがリーフを求める赤の欠片を持つものであろうことは分かったからだ。そして、リーフとすでに体を重ねたであろうことも。


「いや・・・」ブルーがその口を開いた。


「赤の欠片を持つものは、皆が思っているより特殊でね。いつもリーフのことを感じることが出来るんだよ。

それは明確なものではないが、ぼやけた色のように心に流れ込んでくる。

この世界には精霊のように無数の見えない、ごく小さな何かがたくさん飛んでいて、それは音より早く移動できるとある魔法使いが教えてくれた。きっとそれに似たものなのだろう。それは人間が”魂”と呼ぶものにも反応するという。

だからもし、リーフが強く願えば、ジャックには伝わるはずだ。」


「ボクが・・・願えば・・・。」

リーフは考え込んだ。


「そうだね。ボクがこの世界にいること自体、とても不思議のことだから・・・。そしてボクはもっと不思議なことをたくさん見てきたんだもの。きっとできるよね・・・!」


「そうよ、リーフ。願うことからすべてが始まるわ。」

ロザロッソは励ますようにリーフの肩を抱いた。


「ボク、やってみる。・・・ジャックさんを、呼んでみる・・・。


助けて、ジャックさん、ここにきて・・・。」



急に風が吹いた。

いつの間にか開いていた大きなベランダの窓が音もなく開き、白いレースのカーテンがオーロラのようにたなびく。


「その必要はない、リーフ。」

怪鳥ジャックがそこにいた。大きなハゲワシのシルエットが人間に変わる。


「オレの心は常にお前のもとにあり、オレの肉体は常にお前の意のままに動く。」


「ジャックさん!!」

リーフは思わず駆け寄った。

「困っているんだろう、リーフ。さあ、オレがすべきことを言ってくれ。それはすなわちオレがこの世に存在する意味だ。」


「ジャックさん・・・。」

ジャックは苦しみぬいてこの結論を出したのだろう、とリーフは思った。

少しやつれて見える。

リーフがジャックの手をそっと取ると、ひどく冷たかった。リーフはなぜだかとても泣きたくなって、ポロポロと涙が出てきた。


「どうしたんだ、リーフ・・・。」

「ボクにも分かるんだ、ジャックさんの気持ちが。心が、流れ込んでくるんだ。泣きたいのはジャックさんなんでしょう・・・?」

ジャックは、ただ穏やかに笑って見せた。




そこからのリーフたちの出発の準備は早かった。

ジャックはリーフとルナを乗せてシャルルたちを追い、ロザロッソとロバートは、ブルーの愛馬オリオンで駆けることになった。

ブルーはあらゆる方法を駆使して、赤の欠片を持つものを探し、アリスのことを伝えるということでヒョウガの国に残る。


「私もお前とともに行きたいが、リーフ。」ブルーは準備を終わらせたリーフに話しかけた。

「人には適切な役割というものがある。私はそれを全うしよう。まずは世界を救う、それからだ。」


「はい。」リーフはただそう返事をした。

体に残る、ブルー王の香り。きっとリーフの香りもブルーの体に残っているのだろう。


誰かとこうなることが、リーフはとても怖かったけれど、それは電話のダイヤルを回したように何かが通じ合うのを感じるということだ、と思うようになった。


扉は開いた。あとは進むしかない。


「さあ、行きましょう。」

ルナの言葉で一行は出発した。

空と地に分かれて。


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