クラスメイトの誰かの思惑は、こんなでした。
やってみたかった乙女ゲーもの。
思いつきです。
続くかも未定なので、先ずは短編から。
良くある出だしで誠に申し訳ないが、私は転生者だ。
そう、良くある設定だと自分でも思う。
良くある設定だが、私的には問題はない。
何故ならば、思い出した前世から現世を推測するに、一時期流行っていた
乙女ゲーム「清風学園~恋始めちゃいました~」の世界だと分かったからだ。
勿論、例に漏れず前世の私も廃人とまではいかないが、のめり込んでプレイ
していたクチだ。
更に喜ばしい事に、私は自分がヒロインでも攻略キャラなイケメンでも、
はたまた死亡フラグ---は大げさだとしても、やはり最後に哀れな末路の
ライバルキャラでもない。
ならば、そこそこにゲームを愛していた私の取る行動は一つのみ。
傍観者だ。
あ、今フラグ立ててるこいつ、て思ったでしょう?
ないない。
フラグなんか私如きモブだと立ちようがないの。
何でかって?
…だって現世の私ってば、某味のある俳優・ぬっくんそっくりな影のうっすーーーい男子生徒なんだもの。
いや、ぬっくんがいけないとかじゃないよ?
でもさ、ぬっくんでどうフラグたてるのさ?
しかも、イケメン相手に。
BLにだって持ち込めば、…て、それもどこに需要があるの?って感じだし。
寧ろ、この温和と卑屈が協和しているぬっくん相手に何が出来ると言うのか。
ナニも無理だろう。
げふん。
そもそも、このぬっくんフェイスにイケメンが惚れ込んできたら、その時点で私が愛したゲームではなくなって私がイケメンに幻滅するから、ボーイズラヴにすら発展しない事請け合いだ。
ならば、ヒロインはって?
イケメンを押しのけてヒロイン来ないでしょ、ぬっくんに。
てか、私が無理だ。
精神的に。
だって、体は男だけど、心は女なの!
って、オネエと同じ事言ってみる。
いや、うん、本当に前世思い出したら、それに引きずられるみたいに精神も女の子が勝っちゃってさ。
嘘。
女の子とか書いたが、前世ではしっかりと人生の酸いも甘いも味わった熟女だった私だ。
昭和の良き時代に生まれて、バブルの片鱗を齧ったかと思えば、泡はじけて。
それでもまだ就職氷河期なんてない時で、そこそこの会社で総合職につき。
笑顔が素敵な営業マンだった旦那に口説かれ、交際1年で結婚。
嫁姑バトルでは、旦那がマザコンと判明し、再教育して、無事姑とは絶縁をもぎ取った。
その後には子供も二人産んで、その子らも無事社会人になったし。
途中、育児に参戦しないで浮気に走った旦那に対しては、相手の女を巻き込んでの修羅場もきちんと演じ、旦那の土下座で本鞘に収めたので熟年離婚は回避した。
まあ、本鞘後は旦那にはときめきなんぞかけらもなく、それで娘に進められて乙女ゲーに手を出して嵌まったんだけどさ。
大人のドロドロも清濁有りと学んだな、前世は。
…てか、主に旦那の所為でドロドロしてたな。
いや、まあ。
そう、、一通り、良くある人生を歩んだのだ。
で、だ。
そんな事を思い返しちゃうと、前世の浮気女の修羅場の形相だとか姑のあの「夫が自分の味方をした」時の勝ち誇った顔だとか女の本性がちらついて、今更女性相手にトキメキなんか湧かないよね~萌もないし。
現世の結婚願望は齢8歳にして、私の頭に落ちてきた植木鉢ごと粉々に砕けました。
これで前世がリターンしてきた訳ですね。
因みに、落とし主の3階に住んでいた、ちょっと近隣の迷惑ものだった山田さんは
「やべっ!」
って顔したのに、知らん振りされたから、流血したまま警察に駆け込んでお巡りさんに捻じ込んでもらったら、次の月には引っ越して行った。
以来、近所のおばちゃんに感謝されて、小学生の頃はおやつに困らなくなったのが嬉しかった思い出だ。
まあ、小さい武勇伝はさておき。
だから、私決めました。
何が何でも、傍観者で「清風学園」の舞台をこの目で見ようって!!
人生は他人のドロドロを楽しむに限るのだ!!
余談ではあるが、そんな決意を新たに自室で拳を突き上げる私を、ほんの少しばかり開いていたドアの隙間から家族が心配そうに見つめていたとは知る由も無い。