第1章
「つまりは…となるわけで、ここが…。」
先生の声、黒板の叩く音、シャーペンが滑る音、すべてが遠く聞こえる。
(はぁー、早く授業終わらないかなー。)
なんて考えてみる。チラッ、と目を動かしてみると珍しく真面目に授業を聞いているアイツが見える。
(はぁー、ムズムズする…。何この感じ、気持ち悪い…。)
考えるのも面倒になったので、ふて寝でもしてやろう。そう決意し、意識を飛ばしたのがついさっきのこと……。
「…衣。…きて。」
誰かの声が聞こえる。ま、気のせいか…。
「結衣ー!起きて!!もう放課後ですよー!!」
ん?この声は…。
「…香詠?」
「もぉー、やっと起きたー。優介君も遥君も待ってるよー。」
「んー…。」
ボーっとする頭でカバンに荷物を詰め込み、ノソノソと歩き始める。後ろから香詠がニコニコしながらついてきてる。…なんで、この少女はいつも笑顔なのだろうか。ま、それが香詠の良いところなんだけども…。
「ねぇねぇ、結衣。」
「ん?」
と、振り向かず返事をする。
「最近結衣元気ないね。何かあったの?」
全く、この娘はいつもふわふわしているのに、こういうときは鋭いんだから。
「別に。ただちょっとモヤモヤするだけ。」
ちょっと冷たく返しちゃったかな?ま、実際に特に何かあったわけじゃないし、何か突っかかってるけどソレがなんだかも全然わかってないし。何かあったの?と聞かれても、何も。と返すしかないのだけれども。
「ホント~?結衣は溜め込んじゃうことがあるから心配なんでよね~。」
「アタシからすれば、何もないところで転んじゃう香詠のほうが心配だけどね。」
「ちょ、それは関係ないじゃん!!結衣の意地悪~!!」
「はいはい。意地悪でけっこーですよー。」
二人でギャアギャア騒いでると、高身長の男子生徒二人がこっちに手を振ってきた。
「結衣ー!!香詠ー!!遅いぞー!!」
「二人ともごめんね?結衣が起きなくって…。」
「結局結衣はあのまま起きなかったんだw」
「うるせぇー。眠いもんは眠いんですー。」
「まぁまぁ、遥君も結衣も早く帰ろう?ね?」
「そーだな!!あっ!!そうだ、帰りどーせみんな暇なんだし、どっかよって帰んね?」
「優介にしてはいい提案じゃない?アタシ賛成ー。」
「私も行くー。」
「んじゃ俺もー!!」
「よしっ!!じゃあ行くか!!!!」
私たちは今日も平和な夕焼け空の下、4人で歩いて行った。