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外交戦(修正)

相馬、田村、大内、畠山連合軍との戦が終わり、伊達家の領地は相馬家の10万石、畠山家の3万5000石を得たことによって、53万5000石となり17000人の兵を動員できるようになった。


戦後の処理として、小高城は相馬義胤、二本松城は伊達実元に下されることとなった。相馬義胤は、負けた武将にも関わらず小高城の城主となった理由は、義胤を伊達家の一族とすることが正式に決まったためである。


他の家臣から不満は出たが、相馬の領地として認められたのは1000石と小高城のみになり、他の領地は今回の戦に出陣した家臣にそれぞれ加増されたことにより、不満もそこまではでなかったのである。


また、白石、浜田には約定通りに人質として差し出していた父親たちを、それぞれの領地へと送り返しただけではなく、白石、浜田両名の汚名を晴らす場を設けたことで家臣達のわだかまりも減ることとなった。


相馬家との戦も終わり、時は過ぎ9月になると米沢城下では農民の稲刈りが見られるようになった。そのころ、米沢城の執務室では、輝宗、政宗、実元、元宗、政景、基信の6人が集まっていた。これからの戦略と戦が終わった後に政宗から、色々な外交の提案がありその結果を皆に伝え話し合うためである。


「みな、今回の戦はよく働いてくれた。政景は戦にでなかったが、北の最上の抑えよくやってくれた。最上が戦の間に、攻め入って来るのではないかと心配したがそれもなく相馬との戦に集中することができた」


「兄上、そのことで一つ報告させていただきたい。最上が動くことができなかったのは、父親の義守と義光の間で戦が起こったためであるようです」


本来なら、1574年に最上義守と最上義光の争いが起こる天正最上の乱であるが、これが1年遅れて起こったためであった。史実であれば、伊達輝宗が義守の援軍に行くのであるが、相馬連合軍との戦があったために援軍の要請はあったが、援軍に向かうことはできなかったのである。


今、最上領では天童頼貞、白鳥長久、延沢満延、蔵増頼真の4人が義守と共に戦を行っている。一度は援軍の要請を断っていたが。再度援軍を求める遣いが先日、義守より来たのである。


「わしは、援軍を出すべきだと思うのだが、皆はどう思う?」


輝宗が集まった者達を見渡す。父と目が合うと俺は考えていた案を皆に投げかけることにした。


「父上、某は援軍に賛成でございます。義守殿が義光殿に勝てば、我が伊達家への義守殿の信頼は増すばかりかと。また、援軍の恩賞として領土を得ることができるように話をもっていけばいいかと。これは好機だと某は考えます」


そう言うと俺は、父上以外に集まっている者達に目を向けその様子を伺う。実元殿は目を閉じて何か考えている様子。元宗殿は顎に手を当てながら俺のことを値踏みするように見ており、政景殿と基信は俺の意見に賛成なのか頷いていた。


「しかし、今は9月あと2月もすれば雪が降り出します。それまでに、戦が終わるのか。援軍に出て、何も得ることができないのであれば兵士を出しても無駄だと考えます。相馬との戦で、我が軍の損害は少なかったものの300人の死傷者、500人の怪我人を出しておりますし、新たに加わった4000の兵の鍛錬もする必要があります。手に入れた、土地の開拓も大事でございますれば、援軍にでるかどうか。ためらわれるところでございます」


俺が話し終えると、基信が続けて話し出した。


「政宗様の言われる通りでございます。新たに相馬領で発見された金山がありますので。これを掘り出せば伊達家の収入も増え、新たな兵も増やすことができます。兵が整い金山の開発が進んでからでも遅くはないかと」


相馬領における新たな金山は政宗が発見した。現代人の記憶があるために、どこに金山や銀山その他の資源があるか知っているためである。相馬領の金山が開発されることによって、伊達の軍勢は3000増やすことができるようになり、兵力も20000に達するがそれは掘り出してからの話である。


「そうは言っても、義姫が援軍の話を毎日のようにするのだ。自分が援軍に向かうとまで言っておるのだ」


輝宗は苦々しげな表情を作り苛立ちを表す。


「輝宗殿も大変な娘を、嫁にされましたな」


そう言うと実元が大声で笑う。それにつられ全員が笑いだした。全員の笑いが収まったところで政景が発言を求める。


「兄上、援軍の話はひとまず受けたらどうでしょうか。反乱を起こした武将たちが義光に倒されてしまいますと。家中を統一した義光がいつ伊達領に攻めてくるか…。分かったものではありませんぞ!!」


「政景殿の言うことも一理ありますな。どうしたものか」


実元が渋い顔をさらに渋くする。


俺は政景殿の意見を聞き援軍に行くべきだと考える。もし義光が家中を束ねれば好きな時に、伊達領へと攻め寄せて来るだろう。そうなれば、これから倒そうと考えている芦名、葛西、大崎氏を倒す際に足かせになる。『やはり援軍に行くべきか…』と俺は考え政景殿に賛意を示すことにした。


「父上、政景殿の言われるように援軍の件、受けたらどうでしょうか。兵数は5000を持って援軍に向かうのはどうかと考えます。最上には、内輪もめをしてもらった方が我らの奥州平定の足かせにはならないかと」


政宗の意見を聞いた輝宗は、政宗に何か考えがあるのだろうと考えると。政景と政宗の意見を受け入れることにした。


「そうであるな。分かった。藤次郎の案を採用し、兵数5000で向かうことにしよう。総大将は政景、副将に藤次郎、その他には桑折、石母田、相馬とする。相馬には、小高城を認めたのであるから働いてもらうことにしよう。最上の件はこれでしまいにするが。他にも皆と話し合わなければならないことがある」


そう言うと輝宗は次に外交について話す事にした。内容は相馬との戦が終わって直ぐに政宗から提案があったことである。


その外交の結果、伊達家において此度の発展を思い起こすと輝宗の顔は笑顔が絶えない。


「まず先日、兄の岩城親隆から伊達の傘下になりたいと連絡があった。何でも、妻である佐竹からもらった嫁が義重の力を背景に、岩城の祭りごとに介入してきておるらしい。それで実家である伊達と領土が接することができたために。これからは伊達の一族として戦いたいということである」


「どこの家でも、嫁は怖いものですなぁ。兄上」


政景が同情するように、輝宗にいうと輝宗は弟に苦笑いを浮かべなら続きを話す。


「これで伊達の領土も、12万石増えることができたわ。兄には、1万石を与え11万石は伊達の直轄領になることも決まった。また、田村氏と大内氏であるが。政宗の提案で我が傘下に入るように勧告を行ったところ、この2つの家も我が伊達の傘下に入ることが決まった」


「輝宗殿、定綱殿でござるが。あの者、気を付けた方がいいかもしれません。先日の戦でも畠山退却後、負けが見えた時に退却をいの一番に行っております」


輝宗は、実元の言いたいことが分かっていたが。定綱を戦に出さなければいいと考えていた。


「分かった。定綱には注意するとしよう。それから田村清顕の一人娘である愛姫を、政宗に嫁がせることが決まったわ。男子が生まれれば、田村家に欲しいということであるので、政宗、男子を生ませるのだぞ。北条の娘が正室で、田村の娘が側室である。北条から娘が来たら、田村の娘とも婚姻を行う。それまでは田村の家元に置いておく話になった。北条から正室が来てもいないのに、結婚はさせられぬからな。」


輝宗の話を聞いた俺の顔は熱を帯びる。こんなにもとんとん拍子に縁談が決まっていくとは、俺自身も思っていなかったからだ。しかし、生前に結婚もしたことがなかったが、結婚することができると思うと何か希望が自分にわいてくるように感じた。


「田村と、大内が我が伊達の傘下になったこともあり。領地が接した弟の石川昭光からも連絡があってな。伊達の傘下に昭光も入ることが決まった。これによって、伊達領は、岩城領12万石、田村領9万石、大内領3万5000石、石川領3万石によって伊達領は81万石となったわ。政宗の提案のおかげであるな」


父上に皆の前で誉められた俺はとても嬉しかった。いつも、自分の事を考えてくれる父上を本当に信頼し尊敬していたからである。


輝宗は政宗に目を向け話を始める。


「藤次郎、お前を息子に持ってわしは本当に嬉しい。後は、芦名と白川と二階堂を倒すのみであるな。しかし、二階堂を攻めれば芦名が、白川を攻めれば佐竹が出てくるわ。今回の岩城の件でも佐竹が怒っているだろうからな。動員兵力は、伊達家の方があるが。もし、芦名と佐竹が同盟を結んで一緒に攻めてくるようなことがあれば同じ兵力であり。どちらが勝つかは五分五分になるからな。わしは、芦名と佐竹が同盟を結ぶ前に芦名を攻め滅ぼそうと考えている。来年春には佐竹と最上の抑えに5000の兵を残すとして、22000の兵力で芦名と戦を行おうと思うが皆はどう思うか」


そう言うと、実元は驚きの顔が…。政景は考え込み。元宗は戦意を漲らせる。基信はこのことを知っていたのか頷いていた。当の俺は、父のこの考えを知らなかったため大変驚いたが、時期的にも適当だと考え。忍びを使って調べる必要があると思い父に進言することにした。


「父上、私は賛成いたします。この秋にでも、芦名の家臣に裏切りそうな者がいないか、黒脛巾組に調べさせておきまする」


輝宗はそれまで綻ばせていた顔を引き締めると俺を怒鳴りつける。


「藤次郎、知り得た情報は小さいことでも必ず報告するのだ。先日、わしの知らない情報があったのでな。忍者の使い方を、お前に知ってほしいから任せている。必要ないと思ったことでも、必要な情報があるのだ。芦名の家臣を切り崩せるのであれば、切り崩したいから情報は必ずわしに報告するのだぞ!!」


俺は父上に叱られると直ぐさま頭を下げた。


「父上、申し訳、御座いませぬ。必ずご報告いたします」


「藤次郎もまだ、9歳である。いくら麒麟児と呼ばれようとも、失敗をしてどんどん大きくなれ、父は期待しておるぞ」


「はは」


俺は、父の激励に答えるとそれまで下げていた頭を上げ父の目を見る。母に嫌われていようが、父のこの優しさがあれば頑張れると心の中で誓うのであった。


「輝宗殿。わしは北条にでも行って、春に佐竹をけん制してもらえるように頼んでくるとしよう」


実元が物見遊山な感覚で輝宗に北条領へ赴くことを提案する。


「お願い致します」


実元の後ろに控えていた政景が次に声を上げる。


「兄上、わしは最上との戦が終わり次第、新規召し抱えの兵の練武をお行うことにしましょう」


「政景、頼んだぞ」


輝宗が政景に視線を写し声をかけると。実元の隣に座っていた元宗が政景に同調する。


「某も政景殿と共に新規召し抱えの兵の練武を上げておくとしよう」


「元宗殿、お願い致します」


最後に残った基信が頭を下げ輝宗に進言した。


「それでは某は、春の戦にそなえ兵糧、煙硝、騎馬、鉄砲の準備をいたします。その頃には、騎馬隊4000、鉄砲800丁、揃えておきまする」


「基信まかせたぞ」


「それでは、今日の会議はここまでとする」


「「「「「はっ」」」」」


それから2日後、政宗が最上領に出陣する日が来た。

その日の朝、乳母の喜多と出陣の準備をしているとそこに母が来た。

珍しいことである。相馬連合との戦のおりも、政宗の初陣であったにもかかわらず、母は政宗のもとに来ることはなかった。その母が来たのだ。


「これは、母上」


「政宗殿、この前の初陣お疲れ様でした。今日は、母の故郷である最上への援軍の戦。輝宗殿から、みなが援軍を断っているにもかかわらず。政宗殿が援軍に行くべきだと進言してくれたおかげで援軍が決まったとのこと。母は本当に政宗殿に感謝しています。本当は初陣の時に渡したかったのですが…。初陣までに出来上がらなかったから、渡すことができなかったこの数珠を持って行って下さい」


そう言うと俺に綺麗な数珠を渡してきた。今まで母に物を貰ったことが無い。何か母が企んでいるのか俺は考えるが思いつかず。その数珠を受け取ることにした。


「母上が、手で編んでくれたのですか」


「母が政宗殿の命が無事に戦から帰ってくるように…。と願って作った数珠です。政宗殿、無事に帰ってくるのですよ」


母上が俺の目をじっと見つめてくる。俺は始めて貰った母からの数珠を右手に握りしめると母に頭を下げた。


「母上、ありがとうございます。政宗、この数珠を肌身離さず持ち。無事に帰って参ります」


喜ぶ政宗と政宗に微笑む義姫の親子の様子を喜多は嬉しそうに見つめているのだった。


数時間後、米沢の城門を先陣 相馬勢1000、第二陣 桑折勢750 第三陣 石母田勢750

本陣 留守勢2000 最後に政宗の指揮する500の後詰の部隊が、最上との戦に出陣していく。目指すは最上領、寒河江城。


最上家臣、天童頼貞と攻めることになるのであった。


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