幕間 白石宗実、浜田景隆
すいません。この話を投稿することを忘れてました。
この話で幕間は終了です。
1573年、伊達家米沢城にある執務室に白石、浜田の両名は主君の輝宗に呼ばれていた。
二人は輝宗に呼ばれた理由を考えるが理由がはっきりと分からない。ただ、二人に共通する点はあった。
中野宗時が裏切った時に、白石宗実の父白石宗利と浜田景隆の父浜田宗景は輝宗の中野宗時を討つ軍命に背き、輝宗の軍に援軍として出陣せず居城に籠ったという過去があった。
二人の父は宗時を取り逃がした後、輝宗より二人の息子に家督を譲り人質として米沢城へとのぼることで、減俸されることは無かった。しかし、主君の命に背いた事で家中では二人は裏切者であるという誹りを受けており、他の家臣達の手前もあり中野宗時が逃げ込んだ相馬との戦の折には先陣をかってでることが多かったのである。二人は何とかして、汚名を注ぎたいと常々思っていた。
「宗実、景隆、本日そなた達を呼んだのは、ここにおる梵天丸からの頼みを聞いてやって欲しいからじゃ」
「殿、それはどのようなことでしょうか…」
不安な顔で宗実が輝宗に問いかけると、父が俺に呼んだ理由を話すように目配せするので俺は、二人に詳細を伝えることとした。
「白石殿、浜田殿、本日お二人にお願いしたいこと。それは相馬領に逃げておる中野宗時に継ぎをつけてもらいたい」
「梵天丸様、まさか我々に相馬と内応するように言われまするか」
「浜田殿、その通りでございます。内応するようにお願いしたい」
「しかし、我らは中野殿とあまり知古ではございません。父であれば中野殿と接触することは可能であると思いまするが。某らでは分不相応と思われまする」
景隆はあまり面識がない中野宗時に文を送ってもよりより返事はこないだろうと考えていた。
「白石殿はどう考えまするか」
「某も、浜田殿と同じでございます」
「二人とも同じ意見ですか…。某の話を聞いていただきたい」
そう言って、俺は二人の顔に目を向ける。宗実は豪胆な顔をしており実直な印象である。景隆は冷静な顔をしており物事において慎重な者の印象を受ける。二人を何とかして信用させたい。そう思って俺は口を開いた。
「白石殿、浜田殿、お二人は今の当家での立場をどう思われておりまするか。某が推察するに、他の家臣達が色々と言っておること知っておりましょう。まず伝えておきますが、父上はお二人のことを信頼しております。そのためお二人の家を取り潰すことなく存続させているのです」
宗実と景隆は二人とも俺の言葉に頷く。それを確認した俺は話を続けた。
「父上から伺いましたが、相馬との戦の折にはお二人とも先陣をかって出ているとか。他の家臣達から、何時裏切られるか分かった者ではないと思われているからでありましょう。それを某は取り去りたいと考えておりまする」
「そのことと。内応とを結び付けられましても困りまする。我らが内応することで、かわるとでもお思いですか」
景隆はそう言って首を振る。
「内応しお二人には相馬を謀ってもらいたいのです。相馬家を倒すために…」
「まさか。梵天丸様は相馬を屈服させると言われまするか。しかし、相馬が我らのことを信用するかどうか。盛胤であれば、気付くのではございませんか」
「正しく浜田殿。盛胤であれば、気付きましょうが、盛胤との間に中野宗時をはさめばそれは変わります。中野宗時のお蔭で、盛胤は城を手に入れておりまする。宗時に借りがありまするし、宗時は伊達家において家老を務めていた者。その者が言う事であれば、こちらの情報を良く知らない盛胤が信じる可能性も高いと考えます。それに直ぐ戦に及ぼうとは考えているわけではありません。内応には時間をかけて頂いてかまいません。まずは、中野宗時とのことで、毎回のように相馬との戦において先陣を切らせられる。そのため自分たちの領の農民達に不平不満がたまっている。ということから話を持ち込んでもらいたい」
「それを信じましょうか」
「景隆殿、恐らく信じると考えまするな」
「それはどうしてでございましょうか」
「実は、相馬領においてそういう噂が流れているようです」
「まさかその様なことが…」
景隆は顔を青くする。
「某の忍びの者に調べさせたところそう言う噂が流れているとか…」
宗実と景隆は顔を見合わせる。その時、輝宗が二人に声をかけた。
「小競り合い程度の戦でも、相馬との戦の折にはそち達の兵は先陣で戦っておる。他の家臣達は先陣を切ることは無いからの。それも当然であろう。それでだ。もし内応がなり相馬との戦において勝つことが叶えば、その功によってそち達の父親達を返そうと思う」
「「誠でございますか」」
二人の声が重なるとそれを聞いた輝宗が頷く。
「これより伊達家は兵農分離を行っていく。これはまだ、家臣達皆には伝えていないがな」
「兵農分離でございますか」
「宗実、そうだ。これよりは、農民は農を専門にやらせていく。しかし直ぐに、兵士として“もの”になるとは限らんがそち達が先陣を切る際には、優先的にその兵を部隊として引きいらせよう」
「それであれば、民たちの不満は無くなりまするが…」
「景隆、悪いようにはせん。先ずは内応の件、考えてくれぬか」
「殿にそこまで言われては私に断ることは出来ませぬ。内応の件お受けいたしまする」
景隆が承知すると。宗実も同じように頷いた。
時は移り1575年
相馬との戦の最中、景隆は2年前のことを思い出していた。内応は上手くいった。ここまで上手くいくとは考えていなかったが…。政宗様の言う通りに動き、内情を中野宗時に伝えるだけであったが、2年間長かったな。
それもこれで終わりだ。そう心に決めて景隆は、目の前の相馬勢へと突撃してゆくのであった。