元服前(修正)
薬を飲んだ後、俺は医者に勧められるまま寝ることとなった。
その日の夕方、布団で俺が寝ていると。廊下をドカドカと勢いよく歩きながら近づいて来る音がする。その音で俺は眼を覚まし、音がする廊下へと目を向ける。
すると部屋の前で歩く音が止まると同時に障子が開かれた。障子が開かれた先には、鎧を着た一人の若い武将がそこには立っていた。俺のことを見ると、その若い武将は足早にこちらに歩いて来る。俺、高浜正志は初めて会ったが俺の中にある梵天丸の記憶のおかげで、その若い武将が誰であるかがわかった。俺の父である伊達輝宗であると…。輝宗は寝ている俺の布団に近付くと布団の横に座り俺の顔を覗きこみ声をかけてきた。
「梵天丸、そちは何をやっておるのじゃ!!相馬との戦が終わり陣を畳んで戻る途中に早馬より、お主の怪我を知り居てもたってもいられず。兵達を家臣にまかせ戻ってきたのだ。心配したぞ。傷は大丈夫か。」
そう言うと同時に俺は輝宗に急に抱きしめられた。
鎧が体や頬に当たって凄く痛い。俺が痛みから顔を歪めると。輝宗は抱きしめた俺を離して、俺の顔をしげしげと見つめてきた。
俺は父である輝宗に何と声をかけたらいいか戸惑ったが、父が俺のことを心配していることは伝わってきた。少しでも父を安心させたい。そう思うと自然と声が出た。
「父上。心配おかけして申し訳ありません。まだ目は痛いですが某は大丈夫です」
輝宗は安心したのか微笑むが強い口調で俺を叱りつける。
「梵天丸!!お前はこの伊達家を継ぐ者なのだ。軽はずみなことをしていいものではない。そなたの命は、伊達家にとってなくてはならないものなのだ。大事にするのだぞ。」
輝宗は、そう言って優しく俺の頭を撫でた。その手からは、俺に対する優しさが感じられる。しかし、次の瞬間には輝宗は次に俺の側に控えている小十郎に向き直った。
「小十郎、お主。守役でありながら此度のこと、いかがいたす諸存じゃ」
小十郎は、輝宗から強く叱責されるや、すぐ様頭を下げ輝宗に問に答える。
「殿。此度のこと某に全ての非がありまする。申し訳ござりませぬ。殿が思うようにいか様にご処断くだされませ」
小十郎が頭を下げた状態で輝宗の問に答えるがいなや。意識もしていないのに俺の口から自然と声がでた。
「父上、此度のことは某が小十郎に頼んだのです。小十郎は悪くありません。某の右目が醜く…。あまりにも醜く…。それが理由で母に疎まれる原因ではないかと…」
突然、俺の目から涙があふれ出た。悲しくて涙が止まらない。声が出せなくなるほど咽び泣いた。輝宗はこの時、突然声を発した梵天丸に驚いたが。泣いている梵天丸を見ている間に、小十郎に対する怒りが少しずつ抜けていくことに気がつき胸の中の梵天丸のことを思う。
嫡男である梵天丸は、疱瘡にかかったことにより右目が見えなくなり顔が醜くなってしまった。妻である義姫は、顔が醜くなった梵天丸を遠ざけ一つ下の年で容姿がいい弟の竺丸を可愛がる。梵天丸は、小さい頃から母から遠ざけられ乳母の喜多その弟の小十郎に育てられていた。そのためか自分の気持ちを出さず一人で過ごす事も多く心を閉ざすことが多かった。回りの重臣や一門たちからは、最近では弟の竺丸を当主にとの声もあがるようになってきていた。
回りの重臣とは違い輝宗は梵天丸が可愛い。この子を守りたいと思っていた。
しかし梵天丸に自分が声をかけても、最近は返事することも一言、二言とあまりかえってこない。その梵天丸が行動に出た。自分が忌み嫌う、右目を信頼する小十郎に傷つけさせたのだ。そして自分に思いを打ち明ける。輝宗はこの時、梵天丸自身が今回の件で何か以前とかわったことに気がついた。それが何かは良く分からなかったのだが…。
「小十郎、此度の件はそなたも考え抜いてのことであろう。また梵天丸も思うところがあったのであろう。此度は許す。これからも梵天丸に仕えてくれい」
輝宗に声をかけられた小十郎は頭を下げる。
「ははっ。これからも梵天丸様に忠義をつくすことを誓いまする」
小十郎は輝宗に対し顔を上げることなく輝宗の声にこたえる。
輝宗には、小十郎の表情は頭を下げているため読み取ることが出来ないが、本心から梵天丸のことを思っていることが輝宗にはわかった。小十郎とのやりとりが終わると、次に輝宗は乳母の喜多を見て声をかけた。
「義姫は、ここに来たのか」
喜多は、答えるか戸惑った後、輝宗の目を見ることが出来ず。頭を下げて答えた。
「いいえ、まだ来られていません」
輝宗は、怒りに顔をゆがめ。怒気を強めると。
「何!!あやつめ、息子である梵天丸が心配なのではないのか。竺丸ばかりを可愛がりおって…」
輝宗の手が自然と握りこぶしをつくっていることに俺は気付いた。その瞬間、梵天丸の心が俺に伝わってくる。母や弟がこのままでは責められると思った俺は、これはまずいと思い輝宗を見つめて声をかける。
「父上、平気でございます。某には父上がおりますゆえ。それに弟の竺丸も好きでございます」
それを聞いた輝宗は、満面の笑顔を作り自然と握った握り拳を緩め梵天丸に声をかける。
「お前は…。梵天丸…。わかった。また来るからそれまでに梵天丸。早く傷を治すのだぞ。喜多、小次郎。後のことは任せた」
頭を下げたままの喜多と小次郎に輝宗は声をかけると、梵天丸の部屋を出ていくため立ち上がって廊下へと向かって歩き出す。
父の愛情を感じた俺はいつの間にか声を発していた。
「はい。父上、傷を早く治します」
もともとの記憶である梵天丸の心が反応したのかもしれない。輝宗が部屋を出て行ったことを俺は確認すると、喜多と小十郎に声をかける。
「喜多、小十郎。此度は某のせいで二人に迷惑をかけた。すまない」
そう言って、俺は二人に頭を下げる。
喜多は優しい顔を俺に向けながら、俺に話しかけようとした小十郎を手で制止すると話し始めた。
「梵天丸様、頭をお上げ下さい。私達姉弟は、あなた様のためにならば何でも致します。何かあればこれからも私達に御命じ下さい」
俺は頭をあげると喜多と小十郎を見る。昨日から寝ていないのか疲れた様子ではあったが、二人とも俺に優しく微笑み頷いてくれた。二人を見ると俺はこの時、心から満面の笑みをつくることができたのだ。
「そうか二人ともありがとう。眠くなってきた。二人とも昨日から寝ていないのであろう。ゆっくりこれから休んでくれ」
俺は、喜多と小十郎に声をかけ終わるとまた寝ることにした。その後、どれだけ時間がたったか分からないが、ふと目を覚ました時には喜多、小十郎は部屋の中には居なかった。外が暗くなっていることから、部屋に戻って寝ているのであろう。別の侍女が、部屋の隅に座って居た。
目が覚めたてしまったので俺はこれからやることを整理していこうと思う。俺は今、7歳であり今年は1573年(天正元年)だ。俺の歴史の知識が間違っていなければ、伊達家の現在の所領は40万石である。100石で5人の軍役であるから。10000人の兵士を動かすことができる。
なぜ俺が伊達家の所領が分かるかというと俺は米沢市出身である。当然、米沢市と言えば上杉氏がどちらかといえば後世有名であると言える。俺も小さい頃は米沢といえば上杉氏だと思っていた。
しかし小学生の頃、日曜日に大○ドラマで独眼竜政宗というドラマを見たんだが。それが面白くてビデオを買ってまで何度も見て母や弟には呆れられた。気付けば伊達政宗に魅了されていた。それ以来、伊達家のことや歴史に対して興味を抱いて色々なことを調べた。調べる内容はいつの間にか歴史だけでなく当時の技術で最先端である鉄砲や、南蛮から日本に伝わってきた農作物にいたるまで調べてしまっていた。
調べるにつれ、刀にも興味をもち幼少のころから無理やり両親にやらされていた柔道をやりながら、剣道も小学生から始めそれは高校卒業まで続いた。
また俺が学生の時は、実家が農家だったこともあり農学部に進学したが、農家だけでは生活が苦しいこともあったため就職は実家を継がずになぜか鉄工所に就職した。その時の知識をこの時代に活かせるのではないかと思う。
内政に関してだが今の伊達家は、土地を開発すればまだまだ石高を上げることができる。最上川の水を、米沢平野にさらに引くことができるように、治水を行えばいい。開墾すればあと10万石は増えるはずだ。これは、梵天丸が今まで見て回った領内の様子を思い出す事で想像できた。
しかも、森に生えている木は材木になりやすい木ばかりであるから、これを売れば結構な金になるだろうし、船を作ることもできる。海までは切った木を、最上川を使って流し運べばいい。
鉱山であるが、我が領内に掘られていない金山、銀山、銅山、鉄山が数か所ある。ここを掘って収入を得ることができれば、兵農分離ができるし鉄砲を買うこともできる。鉄砲は自国で生産すればいいし、鉄の鉱山などもあるから領内にて生産すればいいな。煙硝は、自国で作ることことにしよう。
実家が農家だったから、農具に対しても詳しい知識を持っている。未来で使われている、農具などを開発し売れば収入になるし。肥料も作り方を農民に教えれば生産は上がるだろう。伊達家の領土は海に面した場所もあるから、塩を作る塩田を作ればこれでも収入が増える。楽市楽座を行い商売を発展させることもできるな。伊達家には大きな港がないから、まず第一に大きな港を作る必要があるな。港としてめぼしい港は、塩釜港を開発するのがいいな。平成に存在する仙台市にも近いし。
これは、面白くなってきたな。色々なことができるぞ。しかし、これをどうやって認めてもらうかだ。父上に話すか…。疑われるよな。虎哉和尚のもとにあった、本や自分で書いてそれを基にしたと嘘をつくことにするか。しかしこれも説得力にかける。
そういえば伝説に、梵天丸の名前の由来は、母である義姫は子を授かるのなら「文武ノ才、忠孝ノ誉」ある男子を願い高名な僧に祈祷を依頼した。するとある夜、夢枕に白髪の僧が現れ、「宿を借りたい」と言う言葉と共に義姫は束帯を授かったそうだ。修験道において束帯の事を梵天と呼んだことから幼名が梵天丸となったとある。意識を無くして寝ていた時に、夢の中でその白髪の僧から知識をもらったと言えばどうだろうか。傷が治ったら、父上に相談にいこうと考えている間に俺はまた眠ってしまっていた。
数日後、傷が癒えた俺は父上に顔の傷が治ったことを知らせるために、父上の執務室へ行くという旨を喜多と小十郎に言うと、小十郎も父の執務室へ付いてくると言うのだが、大事な話があるから一人で行くと言い聞かせ。一人で父の下へと向かうこととなった。
「父上、梵天丸に御座います。お話したきことがあり、まかり越しました」
すると、輝宗から部屋へと入る許可が出たので部屋へと俺は入ることにした。部屋の中には、叔父である伊達実元と大叔父の亘理元宗、家臣の遠藤基信が居た。俺は、輝宗に促され部屋の中央へと座った。
「梵天丸、いかがいたした」
「はい。父上。話をするに致しましても。人払いを願いたくお願いいたしまする」
「二人きりでだと」
輝宗は梵天丸が何の話をしに来たのか気になり、他の者達に暫く下がらせることとした。
「すまないが皆、席を外してくれまいか」
三人が席を外すと輝宗は、梵天丸に話を促した。
「父上。実は某が眠っている時に、私の夢の中に白髪の僧があらわれ某に知識を与えてくれたのです」
「白髪の僧とは、義姫の夢枕に出た僧なのか」
「おそらく。そうでございます」
輝宗は、梵天丸の話に興味を抱きだした。義姫の夢枕に立った僧がまた現れた。これは、伊達家にとって何か起こるのではないかと。
「どのような知識を与えてくれたのだ」
「はい。白髪の僧は、某に内政の知識、鉱山の知識、軍事における武器の知識等の様々な知識を与えてくれました。それで、私はその知識を生かしたいと考えたのでございます。しかし、某が動こうとも、齢7歳でございますれば皆が動いてくれましょうか。それで父上に相談に来たのでございます」
輝宗はこの話を聞いても信じる事はなかなか出来なかったが、梵天丸が必死に訴える様は嘘をついているという訳ではないと感じる取ることができた。それで梵天丸に何か一つ機会を与えてみて事がなれば信じてみる価値はあるのではないかと考える。
「梵天丸。すまぬが俄かにはその話を信じることは難しいぞ。それでな。何か一つ、そなたが得た知識でこの伊達領に得るものがあれば、少しずつではあるが信じる者も出てこよう。どうだ。何か一つでもあるか」
輝宗に言われたことはもっともと考えた俺は、鉱山開発を輝宗に伝えてみることにした。未だに伊達領では鉱山開発が進んでいなかったためである。
「分かりました父上。では、鉱山の場所をお教えいたしますので、鉱山開発を進めていただけませんでしょうか。効率よく鉱山の金や銀を取るすべも存じておりますので」
「何と。鉱山の場所を知っておるのか。それから鉱山の開発方法まで…。場所はどこで、何の鉱山があるのだ」
「はい。金山、銀山、銅山、鉄の鉱山が各々3か所ございます。場所は、私自身が一緒に行きますればそれでどうでしょうか」
俺はそれ以上に鉱山の場所を知っていたが、山深い場所にもあるために今からでも開発できる場所を父に伝えることにした。
「そなたは病み上がりじゃ。我が領土の地図を基信に持ってこさせよう。そこに鉱山の場所を書いてくれれば、家臣達にさがさせよう。それでどうじゃ」
「分かりました。では、遠藤殿にお任せすることにいたしまする」
父に呼ばれた基信が持ってきた地図に、鉱山の場所を書いたあと父の執務室を後にした。
鉱山の場所を教えてから3カ月後、俺は父の執務室に呼ばれる事となった。執務室内には、前回に執務室に居た、実元、元宗、基信の三人と父が座っており4人に囲まれるようにして四人の中央へと俺は座る様に促された。
「梵天丸、そなたが指示した鉱山の場所を基信に調べさせたところ。その全てにおいて、鉱山を見つけることと相成った。わしは、先日話してくれたことをここに居る三人には話しておる。それでこれからの伊達家のことをそなたの知識を含めて話してくれんか。伊達領の地図も用意しておいたのでそれを使ってもかまわん」
俺は父に声をかけられた後、俺の周りに座っている三人の顔を覗き見る。三人とも顔つきを見る限りは懐疑的な顔つきをしており、ここで三人を説得できれば伊達家の未来も変わると俺は考えた。なぜなら伊達家において三人は重要な部署を任されていたのである。実元は外交を、元宗は軍事を、基信は内政を任されていた。気を引き締めるため深呼吸を1度すると俺は話し始める。
「それではまず内政のことであります。米沢盆地ですがもっと開けることができまする」
用意されていた地図には、周辺の城や川、橋、が描かれている。
「最上川の水を引き込む治水を、行うのです。場所は、絵にある場所から南に抜けさらに南にある川まで行いまする。この治水工事によって、あと10万石は石高が増えると考えます」
四人の表情は唖然としていた。梵天丸が指示した場所はかなりの大掛かりな治水工事になるためである。しかし、確かにこの治水を行えば、領地が豊かになることは確かである。治水を引き込む場所も的確な場所である。
「確かにこの方法であれば、土地は広がる。必要な資金については、梵天丸が教えてくれた金山などからの収益を回すこととしよう。梵天丸他にあるか」
それから俺は未来の知識を活かして、農具、兵農分離、塩、楽市楽座、鉄砲の生産、煙硝、海外から家畜や馬を仕入れること、港の整備、忍者集団について四人に説明した。朝に始まった会議は夜遅くまで続いた。最後に父上は俺を見て。
「梵天丸。お主のその知識、我らが伊達家の力となろう。お前が大きくなり、家督を継いでくれることが楽しみになってきた。この件は、実元殿、元宗殿、基信に任せるが、梵天丸も手伝えるところは手伝ってくれるか」
「分かりました。基信殿と叔父上達に助力いたします」
実元、元宗、基信も、はじめは俺のことを疑っていたが俺の話を聞くにつれ少しずつではあるが信じるようになっていった。四人との会議より2年の歳月が過ぎ1575年となった。
2年間は、怒涛のように過ぎ去った。
内政面において塩は、良質の物が今までの2倍とれるようになり、農地は治水工事も進んでいる。あと3年ほどで終わるだろう。鉄砲に関してであるが、伊達領でも生産するために堺から鍛冶職人をやとい。堺の商人安井道頓を御用商人に迎えることに成功したことで、海外から豚、牛等の家畜や馬、野菜の種や苗を手に入れることも進んでいる。
特に力を入れたのは豚や鶏であった。豚は免疫力が強く、抵抗性だけでなく環境への適応性にも富んでいるため飼育は容易であるだけではなく、1度に多くの子供を産むこともあり道頓に頼み込み多くの数の豚を手に入れることができた。その豚や家畜、馬のエサは、夏に大きく茂った草や米の茎部分をエサとして与えた。
また塩釜港の整備も進み毎月のように、船が訪れ色々な品物を持ってくるようになった。孤児や家をなくした民を迎え入れ、大人は工事などを行わせ、孤児は孤児院で勉強をさせることにし、将来伊達家に忠誠をつくす文官や武官・兵士へと育てることにし、寺子屋をつくり無料で子供たちに字や算数を学ぶ機会を増やすこととした。
始めは寺子屋で子供を学ばせることに反対の村人達が多かった。なぜならば、子供といえども重要な労働力である。その労働力を奪われることを良しとはしなかった。村人達に納得してもらうために、学ぶ時間は朝のみとし学びに来る子供達には食事を出すことにしただけでなく。兵士になった者達は、元々が農民の者達だったこともあり戦闘訓練だけではなく、農家の仕事や森林の伐採をし、田畑を増やす仕事を行うこととしたため次第に受け入れられていった。
街中においては仕事の案内所も作って、日雇い仕事や自分達がなりたい仕事を紹介できるようにした。少しずつではあるが、人々がなりたい仕事につけるようになるだろう。警察(奉行所)、消防(火消)もつくった。奉行所や火消になった者達は、他家に対しての戦には参加はしないが伊達領内に攻め寄せてきた敵との戦には、参加できるように戦闘訓練も行うことにした。他家へ攻め込んでいる間に伊達領に兵士が居ない場合、臨時に兵士となり防衛戦を行うためである。
金銭においては、永楽銭が主流であるが海外からの輸入に頼っていたので、自国で生産できるように金銭の製造も開始した。
今の伊達領は治水、農地、鉱山の開発で人が集まってきている。俺が、父に相談してから一気に膨れ上がったのだ。伊達領へと他家から人が流れ込んできている。関所を撤廃して以来、商売をする者達や移住を望む者達で伊達領は賑わっていた。
移住者達には、新しい村や町を造る労働力となっており、新たな町や村が伊達領には増えることとなった。
軍事力では兵士が訓練を行っていることもあり、他家に比べ兵は強くなったことから他家より攻め寄せてくることが少なくなった。兵士達が安心して戦える制度として遺族年金を作った。死んだとしても、家族には月々いっていのお金が入ため兵士は安心して戦うことができる。戦によって怪我をした兵士は、寺子屋で勉強を教える先生にすることとした。これなら、足や手がなくなっても仕事につくことができる。
医療分野においては、医者の人数も増やす事も考えた。南蛮の知識を持つ医者を連れてくることを、道頓に頼むと先日、一人の南蛮の知識をもつ医師を伊達領に連れて来ることに成功した。
医師だけではやれることに限界があると考えたため、俺は医師だけでなく看護師の育成も行うことにした。医師や看護師になるのは、寺子屋で成績が優秀なものをつけることになっている。医師の人数が増えるまでには数年かかるだろうが、先行投資しておくことにした。
諜報分野では、忍者も主に伊賀者をやとって黒脛巾組を作った。近隣の情勢を探らせている。
現在の俺は、内政の功績を家臣全員に認めてもらえることができた。弟の竺丸を推す声もあったが、伊達家中では『梵天丸様が早く大人になれば』という声が生まれている。また周りの国には、伊達の跡取りは、麒麟児であるとの評判が広まった。
この2年間は内政だけに専念し、戦も仕掛けてこられないかぎりは戦を行わなかったので領内は発展することができた。
そして2年が過ぎ俺は今日、9歳の誕生日を迎えることとなり父から元服の話を貰った。俺を元服をさせる理由として、俺が伊達家の内政に参加していることもあり、『いつまでも元服をしないまま祭り事に関わるのはどうだろうか』という話が家臣達からあがってきたためだ。元服をすませると戦に出る事ができるが、体がまだ出来ていないので戦に一緒について行くだけではあるのだが…。
俺の元服にともなって実元殿の息子である時宗丸(成実)も元服した。急ではあるが俺の結婚相手も決まった。相手は、何と史実とかわって北条氏政の娘亀姫である。一歳年下で、すごい美人らしい。佐竹や芦名などの大名との関係を考えて北条家に接近することになったためだ。元々の歴史においても北条家との誼は良かったらしい。
俺が誕生日を迎えた数日後、元服の日が訪れた。元服は父の輝宗が烏帽子親を務めることとなり、元服式の場所は伊達家居城米沢城で執り行われることとなった。元服式が開かれる大広間の上座には俺の目の前に父である輝宗が座り、下座には正装した家臣達で溢れている。
朝早く始まった式は順調に進み式の最後、輝宗が烏帽子を俺の頭に被せると声をかけてきた。
「梵天丸。今日から、お前は伊達家中興の祖第9代当主・大膳大夫政宗様にあやかって、伊達藤次郎政宗とする。藤次郎これからもわしを手助けしてくれ」
そう言って俺を見つめる親父はスゲー嬉しそうだ。家臣たちも何か笑顔だし。俺は家臣全員に祝ってもらいこの日、初めて酒を飲んだ。スゲー不味い。次は酒でも造ろうかな…。考えている間にその日は、昼前には潰れてしまった。