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それぞれの思惑

政宗が弟の小次郎と一緒に内政に力を入れていたころ、輝宗のもとに葛西領北にある和賀氏が恭順の使者を派遣してきた。和賀氏は、二子城を居城とする大名である。1573年に南部家に負け現在は南部氏の家臣になっていたが、南部氏との間はうまくいっておらず。葛西領を伊達家が手に入れたこともあり、伊達家の家臣になりたいと使者をだしてきたのであった。


この使者の申出を受けた輝宗は、和賀氏が家臣になることを承諾し領土も安堵した。和賀氏の伊達家への恭順によって、戸沢家とも領土が接したのである。和賀氏が輝宗を訪ねてから、1ヶ月が過ぎ11月になった。





ここは、最上家山形城、この国を納める一人の武将が家臣と相談していた。それは、最上家当主の最上義光と氏家守棟であった。ようやく、天童頼定との戦も終わり、これからの戦略を考えていたのである。


「天童もようやく、方が付いた。本当に面倒をかけてくれたわ。天童と争っている間に、伊達家は力をつけてしまった。今となっては、最上家と伊達家との間には、かなりの領土の差が出てしまっておる。これからの最上家の動向であるが、守棟よ何か意見があれば聞こう」


守棟は、天童との戦において、延沢満延を義光に寝返らせた武将であり、今回の戦では一番の勲功を上げた武将で、義光が謀略を唯一相談できる武将であった。また、守棟の父である氏家定直は、義光が家督を相続する際に義守を説得したことにより、義光が最上家を継ぐことができた。義光が一番信頼する功臣が守棟であった。


義光が疑問をなげかけると、守棟は暫く考えた後、何かを思いついたのか重い口を開いた。


「それでは、お館様には申し訳なきことなれど。意見を述べさせていただきます。伊達家と戦になれば最上家の苦戦は必至、ここは伊達家との誼を大事にすることが大事かと」


義光は、腕を組んで考えている。義光も伊達家との争いは、最上家にとって不利益になると思っている。しかし、今回の戦において天童の支援を伊達家が行っていたことを、義光は調べ上げていた。


伊達家の天童支援、このために義光は伊達家を受け入れる事が、なかなかできなかったのである。東北に残った、諸勢力を味方に引き入れ伊達家を攻めれば、勝ちを得る事はないだろうが、現状を維持することはできるかもしれない。


しかし、それでは自国の領は増える事は、殆ど無いかもしれないのである。伊達家は兵農分離を行っている。戦をすれば兵士の能力では伊達家が上である。戦の展開によっては、勝てるかもしれないが、なかなか難しい。


東北に残っている武将において、最大の版図を有する南部家は家中内に争いがある。安東家が伊達家と戦を行うのであれば、戸沢家や小野寺家を通らねばならない。安東家が自分たちの領土を通るとなれば、戸沢家も小野寺家もあまりいい顔をしないであろう。


さらに最上家は、隣接する大道寺家がある。戦をするにしても、最上領に兵を残さねばならない。最上家としては、伊達家を味方にしていた方が、領土を増やす好機が得られる可能性が高かった。


最上義光は決心したのか、腕組みをやめ決心したのか守棟に語りかけた。


「やはり、伊達家と争うことは辞めておこう。それで、伊達家のこれからの動きを考えると、小野寺家、南部家、戸沢家と戦を起こすであろう。我らと伊達家が一緒に攻め入る事ができるのは、小野寺家である。そこで、来年の春に伊達家に援軍を頼み、小野寺家を攻めようと思うのだが、どう考える」


それを聞いて、守棟は安心した。もし、伊達家と対抗することを考えると、大宝寺家が最上家に攻め入られる可能性が増える。小野寺家を攻めるために、伊達家が1万の兵をだしてくれれば、最上領に守備のために兵を残す事も可能である。


まず、小野寺家を攻め伊達家が、南部家や戸沢家と争っている間に、大宝寺家を潰し安東家を伊達家と攻めることができるようになれば、最上領はさらに増えるであろう。伊達家には、妹の義姫も居る。無理する必要はない。


「お館様の意見に、賛成でございます。しかし、伊達家に援軍を頼むのであれば、それなりの者を遣わす必要があるかと」


「それならば、守棟。伊達家に援軍の件を、お主にまかせたいのだが、援軍の要請を頼んで来てくれまいか」


「しかし、援軍を頼んだとして援軍を伊達家が出してくれた場合の、報奨はどういたしますか」


その頃、最上領内はあまり裕福ではなかった。内乱のために、出せる金額が少なかったのである。何としても、伊達家には少ない報奨で援軍に出てもらいたい。しかし、それでは伊達家は納得しないであろう。


「守棟、伊達家は天童を支援しておった。そのことを、我らが気付いているという話を、手紙で義姫に伝え、輝宗に義姫から天童の件を問いたださせるのはどうであろうか。そうすれば、伊達家に援軍の依頼をして、援軍に来たとしても、報奨の件も少なくてすむのではないか」


守棟も義光の考える策が一番妥当だと考えた。


「お館様の策が、良いかと思いまする。義姫様から、伊達殿へ問い質した時の様子の返事が届き次第、米沢城を訪れ伊達家の援軍を得てまいりましょう」


「守棟まかせたぞ」


守棟は、決意に満ちた表情で義光に頭を下げるのであった。





ところは、かわって南部家


南部家三戸城では南部晴政と九戸政実がこれからの南部家の戦略を話し合っていた。九戸政実は、弟に九戸実親がおり実親は晴政の娘を娶っており、晴政方の筆頭武将であった。南部家の家臣内で一、二を争う戦上手である。


第一に考えなければならなかったのは、伊達家との間であった。伊達家は、次に狙うとすれば戸沢家、小野寺家、南部家である。今、南部家中は晴政派と、養子である晴直の派で争いが起こっている。


この争いが長引く理由は、南部家中でも重要な人物である北氏、八戸氏が信直に助力していたためであった。南部家が二つに分かれていれば、伊達家が兵を集めて攻め寄せてくれば、両方とも討たれるか、同盟を結んだどちらかの勢力が討たれる結末しか考えられない。


晴政は、自分が南部家の版図を拡大したという自負があった。自分が増やした領土を、伊達家に与えたくはない。また、家臣も納得しないであろう。それならば、伊達家と盟約を結ぶことが一番の選択であると考えていたが、和賀氏が伊達家に寝返ったことは、晴政は許す事が出来なかった。


しかし、それでは養子の信直に伊達家と同盟され、南部家に伊達家が攻め込んで来れば、家督を奪われた上に自分は殺されるであろう。ここは、屈辱に耐えて同盟を結ぶ選択しかないと考えた。


そのことを考えていたので、鬼の形相になっている顔のまま、向かい合って座って九戸政実に話しかけた。


「政実、伊達家との同盟を考えているのであるが、お前はどう考える」


その言葉に、政実は頷きつつも自分の考えを晴政に述べた。


「伊達家と同盟を結ぶにしても、相手に理がありませぬ。狙っているのは、我が南部家の領土かと。考えられるのは、信直殿の味方につき世継ぎにするかわりに、南部の領土を得えようと考えるのが妥当かと」


晴政は、伊達家を味方につけたいと思っていた。自分の子供に、南部家を継がせたいのである。しかし、伊達家を味方につけるのであれば、援軍として伊達家が出陣した場合、その見返りとして自分の領土を伊達家に与える必要がある。


悩みに悩んでいた。


「それならば、伊達家にいくらか南部領を与え。津軽家を攻めて領土を取り返すのであれば、どうでしょうか」


政実の提案に、晴政は決意を固めるのであった。


「それならば、政実が使者となって、伊達との同盟の話をまとめてきてくれないか」


政実は、自分にまかせてもらえるとは、考えていなかったために驚いた表情になった。しかし、次の瞬間には晴政に信頼されていることが、嬉しくてたまらなくなった。どちらかといえば、謀略よりも戦の方が得意なのである。


その自分に任せてくれると、晴政は言う。自分が何とかしないといけないと、政実は考えた。


「殿、某にお任せ下され。必ずやこの同盟が、なるように努めまする」


政実は、そう言って晴政に頭を下げるのであった。


その頃、南部晴政と対立している南部信直は、北信愛の居城である花巻城に居た。城には、八戸政栄が訪れており、これからの戦略を練っていた。北信愛は、南部家の内政や外交面において活躍する武将である。八戸政栄は、三戸南部氏の一族の頭領であり、南部家の一門であった。


信直は、自分が命を狙われていることを心よく思っていなかった。晴政に願われて、養子になったのである。それなのに、晴政に子供が生まれたとたん自分の命を狙い始めた。これが、腹立たしかった。許す事はできない。信直とすれば、和賀氏が伊達家に付いたことによって、伊達家と領土が接したこともあり、伊達家の助力を得たいと思っていた。


北信愛は、伊達家と組むことはあまりよく思っていなかった。それでは、南部の領土の何割かは伊達家に渡さなければならない。信愛としては、信直に南部の領土を全て継承して欲しかったのである。


「信愛殿、ワシは伊達家と同盟を組み、にっくき晴政を討ちたいのだがどう思うか」


それを聞き、やはりと信愛は思った。信直の気持ちは、手に取るように分かっていたのである。


「信直様、もし伊達殿に援軍を頼めば南部領の半分以上を、伊達殿に取られてしまいましょう。それは、私達家臣は望んでおりませぬ」


それを聞き、信愛は憎らしげな眼で信愛を見つめた。


「では、どうするというのだ。八戸殿の八戸城は三戸城よりも北にあり、ここ花巻城よりも遠いではないか。弟の石川政信は、津軽為信との戦があるために、わしへの支援も難しい。わしの、立場が好転することは考えられないではないか」


必死になって信愛と、八戸に信直は訴えかけた。


「信愛殿と八戸殿には、某をかくまってくれ、味方になってくれていること、とても感謝している。このままでは、伊達殿が攻め込んできた時、一番初めに戦になるのはここ花巻城しかない。伊達殿に攻められた時に、晴政は援軍には来ないであろう。わしが、ここの城にいるためにな。信愛殿も伊達が攻めてくれば、援軍を晴政に頼むために、わしを引き渡すのであろう」


信直は、自分が今まで考えていたことを、信愛と八戸に吐き出した。不安だったのである。それを聞いて、信愛と八戸は顔を歪めたがそれは怒りではなかった。信直が誰も信頼していない現状を哀れんだのである。


しばらく、信直の気持ちが落ち着くまで待ち、その頃合いを見計らって信愛に八戸が語り出した。


「信愛様、伊達殿を味方に付けることなく、信直様に南部家を継がすことは出来ますかな。信直殿の気持ちは痛いほど分かりますな。もし、我々が何もしなければ、晴政様は伊達殿と同盟を結んで、戦をしかけてくるでしょう。そうなれば、我らは各個撃破されましょう」


信愛も、その話を聞き決意しかないのかと思うが、家中を割りたくはない。それならば、伊達には味方に付くと言っておいて、攻め寄せる日をのばし、その間に南部家の晴政派の家臣達を取り込んで信直を当主にしたらどうかと考えた。


それならば、南部家の領土はそのまま信直に引き継がれる。これしかないと、信愛は考えた。信直がそれを許すかは、分からない。しかし、信直を騙して伊達家と共同で晴政と戦うと言っておけばいい。失敗した場合は、わしが、全ての罪を受けようと考えた。


「信直様、八戸殿、某が伊達殿のもとに赴き同盟の話を進めましょう。そして、信直殿を南部の当主にいたしまする。それで、よろしいでしょうか」


それを聞き、落ち着いたのか信直は二人に向かって頭を下げた。


「先ほどは、取り乱しすまぬ。二人が某を助けてくれていることを、分かってはいるのだ。先ほどは、申し訳なかった」


それを聞いて、二人も静かに頭を下げた。


その後、信直が部屋を退室した後、部屋には八戸と北の二人が残った。


「八戸殿、信直様には先程、伊達殿との同盟の話をいたしましたが、私にも考えがあるのです。聞いていただけますか」


晴政の家臣達の切り崩しを、八戸に依頼するのであった。内容を聞いた八戸は頷き、これより晴政陣営の切り崩しが始まるのである。





ところは、かわって戸沢家


戸沢家、本城角館では、病でふせっている戸沢盛重と大叔父である戸沢政重が話し合っていた。伊達家との関係である。


「正重殿、わしがこのように病弱で申し訳ござらん」


布団に寝込んだ状態で、盛重は政重に謝った。


「盛重殿、わかってございます。ご心配めさるな。今日、殿のもとにまかり越しましたのも、伊達家との盟約の為でございます。家中では、伊達家と領土が接してしまった以上、伊達家が攻め寄せてくる前に、伊達家の家臣へと従属することを、家臣皆が納得いたしました。某も、同意見でございます」


それを聞き盛重は頷き、政重の手を取った。


「そうでございますか。それを聞き安心いたしました。政重殿、申し訳ござらんが使者をお願いできませぬか」


政重は、盛重の言葉に頷いた。


「分かり申した。伊達家が、小野寺家と同盟になって、我が領土へと攻めてくる可能性もありますので、伊達家への使者として直ぐに旅立ちましょう」


「お頼み申します。それと、来年には弟の九郎に、我が家督の相続をお願いいたす。病弱のわしより、九郎が当主になったほうが戸沢家にとっても、ようございましょう」


「全て、私にお任せ下さい。九郎殿の家督相続も、話を進めまする」


そう言って、政重は米沢城へと旅立つのであった。





ところは、かわって津軽家


石川城において、津軽為信と沼田祐光が話し合っていた。津軽家は、安東家と南部家を敵に回している。両国から攻められれば、津軽家は滅ぼされてしまうだろう。伊達家の存在が、津軽家のこれからを変えられる存在になると二人は考えていた。


「祐光、伊達家との同盟を行いたいのであるが、お主に使者をまかせたい」


「分かりました。それで、伊達殿には何か条件等つけまするか」


為信は、思案顔になった。国の大きさがあまりにも違いすぎる。しかし、ここで引くことは出来ない。


「伊達殿には、我らが手に入れた領土は、我らの領土と認めてもらえるようにしてくれ。それと、戦に出る場合は、我らに連絡を欲しいと。我らも戦に出れば、両面作戦が出来るであろうから、伊達殿にも理はあると思うが…」


それを聞いて、祐光は為信に頭を下げた。


「それでは、これより伊達領に行ってまいります」


こうして、祐光は伊達家へと旅立つのであった。





ところは、かわって安東家


檜山城、安東愛季は迷っていた。伊達家が、どう動いてくるかである。我が領土を攻める対象にするのか、それとも友誼を持って家臣にするのか…。もし、この冬に伊達家から使者がくれば考えるが、来なければそれでいいと思っていた。


伊達家の対応次第で、安東家も動こうと考えていたのである。





ところは、かわって小野寺家


小野寺景道は、横手城内で各東北の大名に密書を作っていた。伊達家を、包囲しようと考えていたのである。景道は、各大名に当てた書状を作成すると、包囲網について考えた。景道は、包囲網は成功すると考えていたのである。


伊達家をこのままにすれば、小野寺家は攻め滅ぼされてしまう。今、手を打たなければならないと。しかし、景道は気付いていなかった。各大名が伊達家に取り入ろうとしていることを…。





11月半ば、ここは伊達家米沢城


一番に伊達家に訪れたのは、最上家家臣である氏家守棟であった。一番近い事もかさなったのであるが…。


輝宗は、義姫に届いた手紙によって、義姫に詮索された。それは、苛烈で輝宗も義姫をなだめるのに苦労したのであった。義姫が詮索した。その情報を得て、守棟は伊達家を訪れた。


この時、城には元宗、実元、政景、政宗、遠藤らが居た。伊達家の忍び達によって、それぞれの東北の大名たちから使者が伊達家を訪れると連絡があったために、四人は米沢城に集まっていたのである。


城に通された守棟は、輝宗に挨拶を行うと本題を切り出した。


「輝宗様にお願いがありまかりこした次第でございます」


「それで願いとは何であろうか」


守棟を輝宗は見据える。


「天童を倒したことによって、最上内の内乱も終わりました。来年、小野寺領を攻めようと考えているのですが、伊達様には来年の四月に小野寺領を共に攻めて頂きたいのです。見返りは、金と食糧をお渡しいたしまする。それでどうでしょうか」


輝宗は、考えた。小野寺を攻めるのはいいが、最上に力を与えてしまう。しかし、これから最上に力になってもらうことも増えるであろう。それに、義姫から得た情報がおおきかった。最上家は天童を支援したことを気付いている。もし、最上が挑んで来れば、倒せないわけではない。


それだと、東北地方の統一に時間がかかるであろう。これからの伊達家のためを考えて、輝宗は援軍を承諾することにした。


「分かり申した。義光殿にお伝えいただきたい。伊達家は、援軍を送ると。それと、小野寺家への援軍であるが報奨は、伊達家は辞退いたしまする。最上殿との関係を考えると、今回はいりませぬ」


それを聞いた、守棟は喜色の笑みを浮かべた。輝宗は、事前に各武将に話をして、今回の戦においては、最上に借りを作ることにしたのである。


「ありがとうございます。伊達様、小野寺を攻める際には、ご助力をよろしくお願いします」


守棟は、それから最上領へと帰って行った。


次に米沢城を訪れたのは、戸沢政重であった。政重は伊達家に従属することを、輝宗に伝えた。


「政重殿、戸沢殿は我が家臣になっていただくこと、我らは喜んで迎え入れよう」


政重に、輝宗は笑顔で答えた。政重は許可を得られたことで、安堵した。そして、家中のことを伊達家に報告したのである。


「輝宗様、我らが殿は病がちであります。それで、来年になりますが。弟の九郎殿を後継者と考え、家督の相続を行う予定でございます。相続なりましたら、輝宗様に会いに訪れようと考えておりますが、よろしいでしょうか」


「それならば、九郎殿に会う時を楽しみにしていると伝えて下され」


そう言って、政重と他にも色々と話しあった。それは、戸沢領の隣にある安東家の話も含まれた。政重が退出した後、政宗より輝宗に1つ提案がなされた。これは、現代の知識がある政宗だからこその提案であった。


「父上の妹の、琴姫様を九郎殿と祝言を上げさせたらいかがかと。」


輝宗は、驚いた。末の妹である琴姫は12歳である。それを、戸沢家に縁組するのである。戸沢家の領土は、少ないなぜ戸沢家なのか。政宗に聞くことにしたのである。


「なぜ、戸沢家なのだ」


政宗は、輝宗の目を見て答えた。


「我らは、先日に最上家と小野寺家を攻める約定をかわしました。それによって、安東家を攻めるのであれば、戸沢殿の領土を通らねばなりません。南部家の領土が得られればいいが、その隣には津軽家がありまする。津軽家とは、同盟を考えておるところ。そうなると、安東領へと繋がる道には、かなりの価値がありまする」


「藤次郎、何の価値があるというのだ」


一呼吸おいて、政宗は話し始めた。


「まず、安東家と戸沢家は戦を行っているので我らが戦を行う際に、先ほども政重殿から話があったように、得る情報が多いこと。そして、小野寺家を攻めるときも攻めやすいかと。一番の目的は、安東家の港である土崎港を手に入れたいのです。手に入れば、山陰地方や、北陸地方への商売の幅が広がりまする」


それを聞いた。輝宗は、しばし考えた。琴姫は伊達家で唯一の、一門から出せる姫であったのである。後は、養女としてのみになってしまう。政宗の妹達は、まだ年若い。


「藤次郎、わかった。九郎殿と対面して、もしその人物に感じいったのであれば、琴姫との婚儀考えよう」


輝宗は、政宗にそう答えた。


次に米沢城を訪れたのは、北信愛であった。彼は、伊達家との同盟そして一年は待つように伝えてきた。これに輝宗は、いぶかしく思った。


「信愛殿、なぜ一年なのだ」


信愛は待っていたとばかりに、答えた。


「我らも、準備するのであれば時間を欲しいのでございます。他の家臣も、口説きたいのであります」


輝宗は、その言葉を聞いて思ったことを信愛に聞いた。


「それで、我らが援軍を出し南部晴政を倒した後、領土はどれだけ信直殿は求めているのだろうか」


これは、信愛自信も聞かれると考えていた。そのため、準備したことを語り出した。


「信直様には知行地として三戸において10万石。それから来年、一年頂きますれば我らの味方は、増えると考えておりまする。その際、その者達の領土を安堵いただきたいのです。その方が、伊達様も兵が減る事はないかと…。どうでございますか」


その言葉に輝宗は考えた。南部家の武将は強い。それならば、敵対するのではなく無理する必要はないと。領土を安堵したとしても、伊達家の家臣になるのである。


「わかった。それならば、その条件をのもう」


それを聞いて、信愛は安心した。


「ありがたき幸せにございます。帰って、信直様にお伝えいたしまする」


そう言って、信愛は輝宗の前から下がっていった。残った伊達の者達は、この時のちに起こる出来事を考える力はなかった。それが、後々に後悔の種になるのである。


次に米沢城を訪れたのは、沼田祐光であった。


「輝宗様、初めて御意を得ます。某は、津軽家家臣、沼田祐光と申します」


沼田祐光は、老けてはいたが威厳がある顔をした武将であった。


「津軽家は、伊達家との同盟をお願いしたく、まかりこした次第でございます」


「我が伊達家としても、同盟は願ってもない事だ」


輝宗は、もともと津軽家との同盟を考えていたので、快く受け入れた。


「これから、伊達様が南部を攻める際には挟み撃ちが出来まする。攻める際には、お互いの連携よろしくお願いいたします。それから我らが攻めて得た領土は、切り取り次第として頂きたく」


「わかった。切り取り次第としよう。津軽殿にもよろしゅう伝えてくれ」


「はは」


沼田は頭を下げ、伊達家を後にした。


最後に伊達家を訪れたのは、九戸政実であった。


「この度は伊達様にお願いがあって、まかり越しました」


政実は、輝宗に対して頭を下げた状態で声をかけた。


「それで、その願いとは」


「南部家との同盟であります」


輝宗は、やはりと思った。信愛からも同盟の使者が来ていたからである。


「それによって、我が伊達家に理はありますかな」


政実は、黙ってしまった。次に言葉が出てこない。時間が止まってしまったのである。政実の言葉が返ってこないために、輝宗から語りかけることにした。


「分かり申した。九戸殿、同盟の件は少し考えさせていただけませぬか」


それを聞き、政実は、頭を下げたまま輝宗に謝辞を述べた。


「ありがとうございまする。良き返事をお待ちしておりまする」


九戸政実には、使者の任はあっていなかった。晴政は、人選を失敗したのである。


その後、すぐに政実は南部領に戻っていった。九戸政実が退室した後、晴政との同盟の件は、一年間返答を返す事をのばすこととなった。



伊達家に東北の武将達が訪れてから数日後、政宗は今日も雪が降り始めたなか、輝宗に任されている仙台の開発を行い夕方になって城に帰った。城に帰ると、三人の夫人達が政宗を待っていた。一人は、北条から輿入れして来た亀姫。もう一人は、武田家から輿入れして来た松姫。最後は、田村家から輿入れして来た愛姫である。


亀姫は、青色が好きなのか良く青色の着物を着ている。政宗と同じ年齢の11歳であり、小柄で顔は、芸能人の綾瀬○るかに似ている。性格は優しく気が利く。趣味は、カルタが好きであった。


次に松姫は、16歳で政宗より年上。赤色が好きで赤色の着物を良く着ている。顔は、柴咲コ○に似ている。性格は、おせっかいで気が強いけれど、優しい一面がある。趣味が薙刀で、政宗が剣の稽古をしているといつも、横から挑みかかってくるのである。


最後に愛姫、9歳で政宗の二つ年下だ。親元を離れて寂しいのか、性格はどちらかというと暗い感じであんまり自ら話さない。9歳で寂しいのであろう。もう少し後に嫁いでくれば、良かったのであろうが…。趣味は、ママゴト遊びで先日、政宗が道具を買ってあげたら、とても喜んでたそうだ。顔は、長澤ま○みに似ており、ピンクの色が好きでその色の服を良く着ている。


政宗は、結婚してから城の二の丸に、妻達と一緒に住んでいた。三人の出迎えを受けると、三人が一緒に部屋に入ってきて、着替えを三人で手伝ってくれる。これは、政宗が決めたことではなく、三人の姫達によって決められたことであった。


次に、食事であるが普通は飯を食べるときには、妻と一緒に食べるが政宗には三人の妻が居るので、四人で食事をとることにしている。そこで、今日一日の出来事を皆で話をするのである。政宗は、家族が出来て本当に喜んでいた。


政宗は、彼女達の顔を見ると一日の疲れがおちる。食事の時に、亀姫が最近の政宗は顔がほころんでいるので、何かあったのか聞いてきた。小次郎との話をすると、三人とも喜んでくれた。


三人に今日の出来事を聞いていたら、本当に驚く話を教えてくれた。はじめ聞いた時、驚いて聞き返してしまった。


亀姫が教えてくれた内容は、何と父の輝宗が側室を隠していたということだった。輝宗は、義姫の他には側室を貰っていない。それは、義姫が怖いこともあるが、輝宗が義姫を愛していたからだった。


何でも、隠していた側室を母に相談した理由は、側室の一人が父の子供を産むからだそうだ。何でも今月には生まれるらしい。そうなって、父も覚悟を決めたのか、義姫に報告したようだ。


さらに、驚いたのが側室は3人も居たのだ。一人は、遠藤の娘でこの娘が今月、子供を産むらしい。もう一人は、浜田の娘らしいこの娘は、子供を妊娠はしていないそうだ。最後に、会津に居る富田の娘らしいのだが、この娘も妊娠していることが分かったらしい。


来年には、生まれるそうだ。俺の弟か、妹が出来ると聞いて驚いたが、父が母に殺されないか心配になった。娘達との出会いは、鷹狩の帰りや、会津を訪れた際に娘たちと知り合ったそうだ。しかし、あの気性の母だ父の命を心配した。


飯を食った後は、それぞれの部屋で寝ることになる。政宗は、毎日三人の部屋を順番に訪れることにしている。妻を大事に思っていた。でも、一緒に寝るだけで何もしていない、義姫から13歳になるまでは我慢するように言われている。


横に綺麗な女性が寝ていたら、普通なら我慢できない。政宗自身も最初の時は、我慢できないかと思っていたが、一緒に寝ていたら慣れたのであった。こうして政宗の日常は、過ぎていくのである。



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