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政宗の結婚

年が明け、1577年の4月となった。伊達家の領は、芦名領、下野の領土を得たことで、142万石、45000の兵、鉄砲4000丁、馬16000頭、騎馬鉄砲隊1000人、投石器10器、南蛮船1隻、安宅船4隻が現在の伊達の戦力である。


政宗の結婚式は、4月の吉日に行われることになっていた。今回は、北条氏政の娘亀姫との結婚式となった。北条家からは、北条幻庵と北条氏照が亀姫の婚儀に、米沢城を訪れていた。


米沢城の与えられた部屋で、幻庵と氏照が話をしていた。


「大叔父上、政宗殿をどう見る?」


「まだ、会ったことがないが、この4年の間に伊達領が発展したのは、政宗殿が内政に参加しだしてからのようだ。内政や外交においての手腕は凄まじいと言って過言ではないな」


「わしもそう思う。しかし、年齢が年齢であるから戦の経験がまだ無いが、これから覚えていけば北条にとっても危険な存在になると思うが」


「わしに言わせれば、縁組のおかげで、北条と伊達の関係が強化され北条に何かあれば伊達が味方になって助けてくれると、わしは思うがの」


「そうなればいいが…」


「忍びからの報告によれば、伊達は北条を敵対していないむしろ、友好を望んでいるようだぞ」


「ふーむ。大叔父上、政宗殿をためしてみるか」


「どうためすのじゃ?」


「友好を考えているのであれば、これからの北条の発展について是非にも助言をいただいてみようと思う」


「なるほど、それによって政宗殿をためすのであるな」


「はい」


その会談から時間がたち婚儀は、昼から始まった。中央の右側に政宗がすわり、左側に亀姫が座る。政宗の右隣りに輝宗、義姫、亀姫の左隣りに幻庵、氏照が座っており、両脇に伊達家家臣、北条家家臣が連座していた。両家の堅苦しい挨拶のあと、政宗と亀姫は酒を酌み交わし夫婦となった。


政宗は、亀と初めてその時に顔合わせをしたのであるが、その美しさにビックリした。自分と年齢はかわらない女性であるが、大人びて見えたのである。現実世界の自分は、結婚できなかった。しかし、政宗となって結婚することが出来た。それは、本当に嬉しかった。


政宗と亀姫が並んで座っていると、そこに幻庵、氏照が挨拶を行った。

全家臣が見ている前で、今回の結婚の祝いの言葉を発した後、考えていた質問を政宗に行うためである。


「政宗殿、幻庵、初めてお会いしましたが、なかなかの武将と見たそれで結婚式にこういう話はどうかと思ったが、政宗殿に相談したいことがあるのだがよろしいか」


政宗は、結婚するのであるから農具の作り方などを、教えるように言われるのかと思った。

しかし、それは出来ることではない。もし言われれば断らなければと考えていた。


「幻庵殿、何であろうか。もし、出来ることならば考えるが」


「伊達様が、下野の半分を落としたことで、我々が注意するのは佐竹家、里見家となりました。しかし、佐竹家は伊達家と同盟しているため伊達家に攻め入ることが出来ない。そのために佐竹は北条と戦をするしかない状況に陥っています。里見と戦うことになれば、佐竹は自ら滅びの道をとることになりますからな」


政宗は、内政に関することではなく、軍事に関することであったので内心安心していた。

幻庵の言葉に頷き賛意を示す。


「里見、佐竹が組めば、われわれが里見に戦にでれば、佐竹が出てきて、佐竹に攻め入れば、里見が出てくるといった三つ巴の戦になると考えるのですじゃ。それで、政宗殿にどうすれば北条は楽にそれぞれの所領を得られるか助言を貰えないかと思いましての」


政宗は、この話がでたことが本当に嬉しく思った。なぜなら、彼が考える同盟の話が北条に出来るからである。

「幻庵様、それならばいい案がございまする」


「政宗殿、それはどういったことであろうか」


幻庵と氏照は、政宗の言葉をまった。まさか、政宗が北条にとって有益になるようなことを考えているとは、思ってもみなかったのである。


「北条家に佐竹の娘を迎えるのです。そうすれば、伊達、北条、佐竹の3国同盟が結べまする」


「しかし、それでは佐竹は里見を倒した後で、領土をもつ事が出来ないのではないのですか。それだと佐竹には何も得るものはないかと」


「それならば、佐竹に下野の南半分の12万石と上野の15万石を与えればいいかと。里見家の下総国を半分の20万石を落としたら、与える条件をつければよろしいと思う。上総国で38万石を安房国で5万石を北条の領土に出来ると考えれば、27万石を佐竹に与えたとしても30万石は、手に入るのではないだろうか」


二人とも驚きの顔をしていたが、あることに気付く


「それならば、北条が攻め入る場所が、なくなってしまうではないのかな」


当然そうくるだろうと、政宗は考えていた。


「今は、同盟を上杉と武田と結んでいらっしゃるが、本当にそれが続くと考えておられるのですか」


幻庵は、驚いた顔になった。確かに二つの家は、北条に攻めかかってきた相手である。

武田においては、いつ裏切って来てもおかしくない。上杉にしても今は上洛を考えているため、関東に目を向けていないが、もし関東に目を向けてくれば、また戦が起こる。


しかし、上野を佐竹に与えたらどうか。上杉や武田と戦になっても、佐竹がまずは戦ってくれる。武田が北条を裏切ることになったとしても、南の里見氏や東の佐竹氏を警戒せずとも武田と戦うことができる。


確かに利がある同盟だ。幻庵と氏照は、お互いに顔を見合わせた。検討に値することであるからである。


「政宗殿、結婚式の時に、このような質問をしてすまなかった。帰って氏政殿に先ほどの話を進言してみようと思う」


「それは、ようございました。政宗、安心いたしました」


婚儀が終わり、伊達家と北条家の宴が夜遅くまで続くのであった。


5月になり、武田家より松姫との結婚が行われた。武田家からは、仁科盛信、高坂昌信が米沢を訪れた。


高坂昌信は、伊達家との同盟を重視していた。この数年で、伊達家は領土が3倍に増えた、その躍進に政宗の力が働いていることは、十分に理解できていた。大久保長安を伊達家に出したのも、これからの同盟が特に重要であると理解していたからだ。


下野を攻略した伊達家とは、もうすぐ領土が接する。織田家と徳川家と戦うには、北条だけでは、心もとない。伊達家からの援軍がくれば、武田家は織田や徳川と戦になったとしても、負ける可能性は減ると考えていた。


武田家は、内部に勝頼に従わない者たちがいる。自分が、生きている間に勝頼に何かを残したいと昌信は思っていた。


婚儀の席で、昌信は政宗に武田家のことを頼もうと考えていた。


「政宗殿、私の願いを聞いていただけないだろうか」


「某がかなえることが、出来ることであれば…」


唐突な昌信の願いに政宗は驚いていた。


「我が武田家は、周りに敵ばかりでござる。家臣の多くは織田と、徳川の戦において亡くなってしまいました。私は、上杉の抑えのために戦には出ませんでしたが、我が古くからの友人たちは、長篠の戦において皆死んでしまいました」


昌信は、親しかった友人たちを思い浮かべた。


「政宗殿に願いのは、武田が攻められた場合の援軍をお願いしたい」


政宗は、隣に座る松姫を見た後、昌信に顔を向けた。


「高坂殿、我が伊達家は武田家に何かあれば援軍に向かいましょう。しかし、武田家の家臣には裏切る気配があるものが数名居るように思われますが…。その処分をどう考えているのか、教えていただきたい」


昌信は、驚いた武田家中において勝頼になにかと従わないものがいたからだ。


「恥ずかしい限りですが、家中の者を切ることはできないのです。一門の者たちですから」


昌信は、勝頼がどうすることもできないことを政宗に言った。


「では、彼らを重要な位置からとうざけては、どうだろうか」


昌信はしばらく考える。


「とうざけると言っても、どこに送るかが問題になると思いますが…」


政宗は、にやりと笑い昌信を見た。


「飛騨を攻めて、そこに新たに土地を与えたらどうであろうか」


昌信は驚いた、飛騨を攻めるなど考えてもいなかったからだ。


「飛騨に従わない家臣を送れば、裏切られてもそれほど痛くもないと思いますが…」


「政宗殿、勝頼様に飛騨攻めを行うように相談いたしまする。そこに、裏切りそうな家臣を送れば、武田家の行く末も安定しましょう」


昌信は、伊達家と同盟がなったことがこれからの武田家を支えると確信した。

松姫との婚儀がなり、翌月には田村家の愛姫を政宗は娶るのであった。


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