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唯一知られていないこと
唐突だが、俺には、隣に住む幼馴染みがいる。彼女にはよく世話になるし、世話もする。おそらく、彼女が知らない俺なんて無いんじゃないかと思うぐらい、彼女にはいろいろ知られている。
それもそのはず、彼女と俺の年齢差は6つ。つまり、彼女が小学校に入った年に俺が生まれたのだから、知られていない方がおかしい。
オムツの交換や、遊び相手、ミルクを作る、何のその。幼いなりに母性があったか、うちの両親が忙しいのを良いことに要らぬ面倒まで引き受けていたらしい。
俺が小学校に上がった時、彼女は中学生になり、大好きなバスケでもやるのかと思いきや、似つかわしくない美術部になんか入って、暇な時間を作っては俺の面倒を見に来てた。
彼女は、高校生になるとアルバイトを始めた。作るよりも食べる方が好きだったくせに、ケーキ屋で働き出した。誕生日に作ってくれるケーキは、少しだけ楽しみだった。