攻略フラグを回避せよ!
私はオタクだ。
漫画もゲームもアニメも大好きだし、私はしないがコスプレも見てる分には大好きだ。
そして、まあ世間一般で腐女子とカテゴリされる人間でもある。私が腐女子になった切欠は割愛する。私がオタクで腐女子のカテゴリに存在する人間であることが分かればおkだ。
そしてここからが重要だ。
愚痴めいたものになるかもしれない。というか愚痴だ。魂の叫びだ。割と本気で声にだして絶叫したいけど今は朝だし、人様のお宅だし、この家に私以外誰もいないのは知ってるけど近隣住民に心配されて家にこられるのは勘弁願いたい。今の私は朝っぱらから絶叫なんてするキャラじゃないから、言い訳に苦労しそうだし。
さて、ゲームステータスで言うところの混乱状態に陥ってる私のためにも思い返してみよう。
朝、小鳥(たぶんスズメ?)の鳴き声で目覚めたところはいい。むしろ爽快な朝の目覚めって感じで好印象。ここまでは良かったんだ。
私がここで体の違和感に、周囲の変貌に気づかなかったら、清々しい普通の朝だったんだ。
「…? …は、何…これっ」
すらりと伸びた、細くしなやかな腕。女の私以上に白く、けれど力強い”男”の腕。それが一番最初に飛び込んできた、明確な変化だった。節くれだった手もすらりと伸びた足も低く艶のある美声も、女でもやしだった私にはなかったものだ。とても分かりやすい異常事態だった。
「私の体じゃない。…って、誰の体よ!」
今まで横になっていたベッドから飛び起きるようにして、私は視界に入った姿見の前にかけよった。
鏡に映ったのは、無駄に美形な男。私の驚愕の表情をそのまま真似るように、鏡の中の男も目を見開いてる。いや、真似てるんじゃない。鏡の中の男が、今の私…らしい。
そして鏡をまじまじと見続けていた私は、気づいてしまった。この体の本来の持ち主に気づいてしまったのだ。
回想終了。そしてエマージェンシー。
いまだに私はこの体の持ち主の予想を覆せないでいる。うん、ああ、叫びたい。
のっそりと鏡の前に座り込んでいた体を動かし、ふらふらと私はベッドに歩み寄る。先ほどは慌ててたから気づかなかったけど、部屋の中も大分違う。
むしろ私の汚部屋と比べたらこの部屋が可哀想だ。裁判沙汰になるかもしれない。
ぽすんとうつ伏せでベッドに倒れこみ、ふかふかの白い枕に顔を押し付けて準備完了だ。
私はオタクだ。そして腐女子だ。二次創作だってバッチコイ。男同士の恋愛マジぷまいですな人間だ。もちろん男女の恋愛だってぷまいです。漫画もゲームもアニメも大好きだし、ネット小説だって日課のごとく巡ってる。転生もトリップも憑依やアンチだってお手のもの。オリ主最強は書き方による。そんな人間でした。
だけど私は主張したい。
転生もトリップも憑依も最強もその他諸々全部、私が何の実害を被らない第三者の立場で読み手として感情移入し楽しむのが好きなのであって、決して私が実際に転生やらトリップやらその他諸々を体験したいってことじゃないことをだ。ついでに、
「BLゲームの攻略対象キャラに憑依トリップとか考えたこともないってえのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
まさしく叫ばなきゃやってらんねえって心境だ。うん、知りたくなかった心境だな。そしてふかふか枕GJ。結構大声で叫んだけど、外に聞こえるほどの大きさではなくなったと思う。枕さんマジかっけえっす。
「…とりあえず現状把握と、今がいつなのか。そして本当にゲームの中の世界またはそれに準ずる世界なのかを確認しないとね」
夢オチは望み薄だ。あまりにも感触がリアルすぎる。匂いや床を歩いたときの感触まである夢なんてないはずだ。ならば私がすべきは事態を把握することに尽きる。もっかい寝て戻るなんて楽観的な考えは捨てるべきだ。ネットのテンプレが実際適用されるかも分からないし、本当の私の体がどうなったかも分からない。そしてこのまま呆然と無為に過ごすのも時間の無駄だ。
「さしあたってはこの家の探索と、この体のスペック確認かしら。身長差がありすぎて転ぶなんて真似したくないし。…どじっこ美形なんてフラグは絶対回避しなきゃ…」
本当にここがゲームの中の、もしくはそれに準ずる世界なら男性同士の恋愛もあるかもしれないし。何が切欠でそういった対象になっちゃうかも分からないんだから回避できるフラグは回避しておこう。
そして目標としては、
「…目指せリアルBL傍観…っ!」
なってしまったものは仕方ない。ならば、うん。この世界でも第三者として、隠れ腐女子人生を謳歌しとこうじゃないか。目指せ楽しい人生。ストレスは溜め込まないに限る。たぶんネットなんてあるわけないし、ストレス発散法は読書かBL観察しかなさそうだ。そして手軽さで言えば後者が断然手軽。
私が憑依しちゃったのは攻略対象キャラだ。明るい人生設計のための最終目標としてスローガンを掲げておこう。
「目指せ攻略対象脱退。目指せ脇役男子Eってね」
あの手この手で脇役になろうとする彼女のはーとふるすとーりーです