第3話 マーガレット
俺は別室に案内され、食事をごちそうになった
「もうずいぶんと前です。マーガレットと出会った時のことは忘れもしません。とても美しいのに誰にでも優しく少し変わった人だった。一目ぼれでしたそれから毎日のように彼女のところに行っては、話をした。あの頃が一番幸せでした。しかしその幸せは長くは続かなかった。」
昔を懐かしみながら王様は話し続ける。
「マーガレットは元々病気がちだがある時不治の病にかかってしまった。それと同じころ私たちの国は隣国と戦争になってしまい彼女とはなかなか会えなくなってしまった。やっと戦争が落ち着き彼女のもとに帰った時に彼女は弱り切っていました。彼女に近ずくと私の指を見てこう言いました。あなたの昔からつけていたそのリングが欲しいと。私は新しくきれいなものをあげるといったのですが彼女はこれがいいと耳を貸さず。仕方がないので裏に名前を彫って彼女に与えました。その時の彼女の喜んだ顔が愛しくてたまらなかった。それからまた戦争が激しくなり私は戦地へ戻りました。その間にマーガレットは亡くなり、この屋敷に泥棒が入ったと聞かされたのは戦争が終わった時でした。彼女の死体を見ると指輪がなくなっていたのです。まさか地下に閉じ込めた泥棒が持っていたとは。疑いもしませんでした。」
王様の何とも長くも切ない話を聞き終わった俺は返す
「本当に見つかってよかった。彼女も喜んでいると思います。」
「してなぜマーガレットの話を知っておられたのですか?えっと失礼ですが名前おきいておりませんでした。」
「あ!私は高木です。えっと以前誰かから話を聞いて偶々そうなのかなって!」
と苦しさでどうにかなるくらい苦しままぎれの言い訳をいう。リングさんがおしえてくれた!なんて口が裂けても言えない。もう面倒ごとはごめんである。
「はて?この話を誰かにしたかの?まあよいわ!とにかくお礼だ!まずはこれを受けっとってくれ!」
後ろからバフンと大きな袋が机に置かれた。
「これは一部に過ぎないが金貨だ!1万枚以上はある!1000枚あれば生きるには困らんぞ!」
「いやいやいや受け取れませんこんなに!」
「こちらでは不服でしょうか?でしたらこれに宝石と女もつけましょう!」
「いやそういう問題ではなくて!持てないですよそんなにたくさん!」
「そうでしたかでは必要でしたらいつでもこちらの王室にいらしてください。あ!そういえばいいものがありますよ!」
奥の棚からごそごそと何かを取り出す
「以前東の商人から頂いた通行証です!これがあれば世界のどこでも行くことができますよ!」
そういって持ち歩けるだけの金貨と通行証を俺にくれた。
王様からの好意で今日は泊めてもらうことにした
やっとしっかりと横になることができる。ため息をつきながら俺は考えことをしていた。
「一体なぜ俺はリングの声を聞くことができたのだろう。そいえば触れている時だけ会話できたような、ちょっと触ってみるか!」
近くにあった電球を触ってみるが何も声が聞こえない。部屋の中のあちこちに触ってみるが声は聞こえない。すると古そうな置物を見つけた。恐る恐る手を置いてみると、
「なんだこいつみたことねえ奴だな!なんか用か!」
わあ!驚きはしたがやっとわかった。どうやら古いものとだけ会話ができるらしい。
「あの、あなたはなんでしゅべれるのですか?」
「あ?お前はなんでしゃべれんだよ!」
当たり前のことを聞いてしまった。確かに自分がなぜしゃべるかなんて考えたこともない
「初めからしゃべれたのか?」
「そういえば言葉としてしゃべれるようになったのは最近だな。それまではぼんやりとしたものだけがあってだな。それに俺たちは基本無口なんだ。だがこんな俺でも毎日丁寧に手入れしてくれるもの好きがいてな。そいつがよくしゃべりかけてくれるんだ。それからだな」
なるほど。もしかしたら物も俺たちの話を聞いて言葉を学んでいるのかもな。
ありがとう。とだけ言ってベッドに戻りあることを思いついた。
次の日の朝、王様に今日この王室を出ることを伝えると王様は驚き、悲しんでいた。初めのころとはまるで別人である。
「俺もやりたいことができたんだ!この世界を回ってビンテージ品を集めて自分の店を出す!その時は少しだけお金を出してくれないか?」
王様はブニャッと笑って「やはり変わっておられる」とだけ言って握手をした。その時である。
「ありがとう。本当にありがとう。」
王様の指には少し傷があるがそれでも眩く輝くリングがあった。