決着
「いやぁ、スカッとしたぜ! ありがとうなコウ……ん? 疲れてるのか?」
「え、ええ……色々ありまして……」
鉱石喰らいとの戦闘から撤退し、ダンジョンを逆走して脱出したあと、俺たちの戦闘動画にたくさんのコメントが付いていて、それの返信に追われていたのだ。
バイスさんと人造ゴーレム試作一号機はどうやったらパーティーとして参戦してくれるのかとか、バンシーがペットにならないのでコツを教えて欲しいとか、俺に補助要員としてスポット参戦して欲しいとか。
バイスさんの参戦は普段からの付きあいがあるからだと思う。アイテムを提供する以外にも交流があるのは確かだし、他のプレイヤーとの差はそれぐらいしか考えられない。
バンシーは……これも普段の交流が大きいのかな。俺もバンシーがペットモンスターになるまでかなり長かったし。好感度が一定以上+土属性のアクセサリーのプレゼントでおそらくペットモンスターになってくれるはず。
俺のスポット参戦は……マジックポーションやポーションオブフォレストの消耗が激しいし、複数のパーティーに参戦してたら絶対に時間もアイテムも足りなくなるのでお断りしておいた。一部のパーティーだけに参戦したら不公平になるからだ。
更に、特殊ダンジョンにはペットモンスターが連れて行けないから、ライアたちと一緒にいる時間が減って、みんなの不満が溜まるだろうしね……。
……とまあこんな感じで対応は大変だったものの、鉱石喰らいとの戦闘はリアルタイム配信+アーカイブ配信で別々の集計になっており、それぞれがかなり視聴されたため報酬がもらえたのでイーブンってとこかな。
イベントボスだから特別動画扱いで、普段の動画配信よりも報酬は低めなものの、それでも数万Gが一気に入ってきたのでとてもありがたい。
ちなみにバイスさんも人数に集計されていたため、バイスさんの分の報酬もあるのでこれは還元することにした。
「──ということで、この動画が視聴されればされるほどお金が入りまして。これがバイスさんの分になります」
「おいおい、いいのかこんなにもらっちまって。……そうだな、それならこれでまたクレセントアックスを造っちゃくれねえか?」
「え? でもこれだとこの前よりも数倍の金額に……」
「なーに、鉱石喰らいに一泡吹かせられたんだ。お前らの協力がなければできなかったし、そのためにアイテムもたくさん使ったんだろ? その金額も上乗せってやつだ」
「コウ、もらっておけよ。その代わり、前よりいいのを造ろうぜ」
「お、楽しみにしてるぜアトラス!」
「任せときな!」
バイスさんがアトラスさんの肩をバンバンと叩く。鍛冶を教えられてたのもあるからだろうけど、いつの間にやら親友みたいな立ち位置になってるな……。
「それにしても人間のスキルってモンはすげえな。こうやって記録に残せるのか──って、ん?」
「バイスさん、どうかしましたか?」
「いや、戦いに夢中で気付かなかったが、ほら、ここの壁」
「鉱石がありますね。食べ残しでしょうか?」
「いや、この色は……風の属性鉱石か? もしかして、苦手属性の鉱石は食べられないのか」
「もしそうなら、あえてこれを食べさせたら……」
「お、それいいじゃねえか。次に戦闘になった時に試してみるか。人造ゴーレム試作一号機で無理矢理口にぶちこんでやるぜ」
もしこれで何かあるのなら、それがいい結果につながる可能性はあるかもしれない。
普通の鉱石でHPが回復するなら、逆に減ったりしないかな?
「……ちょっと掲示板にも書いておきましょうか」
「そうだな、調査する人数は多ければ多い方がいいだろ」
「分かりました、それでは……」
俺はそのことを掲示板に書き込み、再びバイスさんと雑談を始めるのだった。
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「……ふぅ、今日は疲れたな。そろそろゆっくりしようか」
「きゅー♪」
「るー♪」
「ふぇー♪」
俺が椅子に座ると、みんなが集まってくる。
ライアとレイは俺の両隣、ニアは俺の膝の上がいつの間にかそれぞれのポジションになっている。
そういえばニアはまだ進化してないけど、もし進化してライアたちと同じぐらいの大きさになったら……なんか犯罪臭が凄い絵面になるな……いや、今でも両隣の2人がそんな感じだけど。
ちなみにブラウンはスコールに乗って庭を駆け回っている。男の子同士気が合うのだろう。ブラウンに紹介された竜が巻き付いたアクセサリー、スコールも欲しがったし……。
「ニアは2人みたいに進化……大きくなりたい?」
「ふぇ!」
ニアは元気よく手を挙げる。どうやら進化をご所望らしい。
しかし、ジャイアントオーガの魔石じゃ進化しなかったからなあ。レアモンスターだから条件が厳しいのかもしれない。
でも、いつかは進化させてあげたいところだ。
「しかし、始めた当初はこんなに大所帯になるとは思ってなかったな。テーブルも大人数で使える大きいのを造らないとなあ」
……テーブル……大人数……。
「……あ」
「ふぇ?」
「いや、エルダートレントさんの枝で、トレントの島のみんなで使えるテーブルを造ったら喜んでもらえるかなって」
「るー!」
レイも同意してくれる。続いて他のみんなも。
……よし、そうと決まれば!
俺はエルダートレントの枝をキングウルフさんの歯で切り分けていく。
ノコギリみたいにギコギコする必要はなく、有利属性のためか少し力を加えてスーッと引くとスパっと斬れるのだ。これがスパッと斬りか……。
とりあえず、台と足を4つのテーブルにしてみよう。台は円形、人数は……円形だと13人にしたくなっちゃうけど、12人ぐらいのがいいかな。
エルダートレントの枝は普通の工具だと歯が立たないので、足ははめ込み式にしよう。歯で角柱の穴を造るのは難しいけど、今がんばって練習しておけば後々の役に立つはず。
ということで、台の底面4か所に穴を開け、そこに足をはめ込んで……足は末広がりにして安定性を向上させよう。
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よし、こんな感じかな。
みんなにも手伝ってもらって、思ったよりも早く完成できた。
足の取り付けは穴に差し込んだ後にハンマーで叩いて調整するのだが、そこをみんなにやってもらっていた。
「ふぇ! ふぇ!」
ニアがハンマーを持って、まだまだできるよ! とアピールしてくる。ものづくりが楽しくなったのかな。そうなら嬉しいんだけど。
「それじゃあ、今度はアルラウネのみんなが座る椅子を造ろうか?」
「きゅ!」
椅子の方はシンプルに足4つ+座面+背もたれの構成にする。
アルラウネさんたちは下半身が花なので、座面が大きい、ひじ置きはない椅子が使いやすいかな。
「よーし、それじゃあ目指すは12個、みんながんばろう!」
「るーっ!」
「ら!」
いつの間にかブラウンも帰ってきている。ものづくりしてるのが分かるのだろうか。
スコールも手伝いたそうにしてるけど……。そうだ。
「スコール、ちょっとこの枝を爪で削れるか試してみてくれる?」
「がう……」
スコールは試しに枝をガリガリと引っ搔いてみる。
何回か引っ掻くと、少しだけ削れたようだ。
「それじゃあ、こんな花みたいな模様を刻んでくれるかな?」
「がう!」
スコールも手伝えるのが嬉しいのか、尻尾を振って背もたれの背面に模様を刻んでいく。
属性相性がいいからなのか、スコールならエルダートレントの枝を削れるんだな。
こうして、椅子の製作がどんどん進んでいき……。
「よし、完成だ! 次の休みに持って行こうね」
「きゅっ!」
テーブル1個と椅子12個。なかなか大変だったけど造り甲斐があったな。
喜んでもらえるといいんだけど……。
「あ、そうだ」
造るのに夢中ですっかり忘れてたけど、掲示板に書き込んだのはどうなってるかな……と。
俺は掲示板を開くと、該当のスレッドを探していく。
「……ん? 随分と立てた回数が増えてるな?」
俺が書き込んでからPARTが3ぐらい増えてるんだけど……。
そう思いながら開くと、かなりの賑わいを見せていた。
『鉱石喰らい、風属性の鉱石を食べさせると耐性が大ダウンするみたいだ』
『接敵してすぐに咆哮をするから、そこを狙ってポイすると楽だな』
『しかも3分ぐらい動きが鈍くなるから、接近戦も楽になるぞ!』
『3分……よし、カップラーメンのタイマー代わりにさせてもらうか』
『それは動画の再生時間見なよ……』
『お前頭いいな』
『更にボス部屋に食べ残してる鉱石があるけど、あれ、確実に風属性の鉱石だ。1個しか落ちてないけど』
『永久機関完成したな……』
『いや、ボス部屋の鉱石の復活は日を跨いでだから、一日に何回も挑戦するにはクォルトゥス鉱山で掘る必要があるぞ』
『風属性の鉱石の株価上がりまくりだな……よし!』
『掘るのか?』
『(大量に出てくるクズ鉱石)』
『フラグを立てるのは止めろォ!』
おお……まさか風属性の鉱石にそんな効果が……。
これなら更に有利に戦いを進められそうだ。
**********
そして、風属性の鉱石で鉱石喰らいが弱体化することが広まってから数日。
ついに鉱石喰らいが撃破されることになる。
俺たちがバイスさんにクレセントアックスを新しく造って、バイスさんが引き続き参戦したのも大きいかもしれない。バイスさんが貯め込んでいた風属性の鉱石を持ち込んで、ひたすら喰わせては攻撃しての繰り返しをしてたそうだ。
『オレが加工すると風属性が-になって風属性の鉱石の意味がなくなるから貯めてたが、まさかこんな形で役に立つとはな』
とはバイスさんの言。
確かに売り払うなりなんなりしてもいいだろうに、『いつか使うかも』で貯め込んでたんだな。
……まあ、俺もポーション(失敗作)を貯め込んでジャイアントオーガにぶち込んだけど……。
さておき、鉱石喰らいが撃破されたことで掲示板はお祭り騒ぎ。
これで新しい機能か町が公開されるはずだしね。
……と、日付が変わって10分ほど経った頃、運営からのお知らせが届く。
【INFO:緊急イベント『鉱石喰らいの撃破』の達成により、下記が追加されました】
・新規マップ:フォーリア森林
・新規マップ:フィア (妖精の里)
・新規プレイヤー素体:妖精
※フォーリア森林はヴァノリモ大森林から南西方面に存在します。フィアにはポータルがあるため、一度訪れることでエインズの町からポータルで移動できるようになります。
へえ、獣人、エルフ、ドワーフに続いて今度は妖精か。
妖精は冒険者のパートナーってイメージがあるから、自分が妖精になって冒険するのは珍しいかもしれない。
プレイヤーの使用できる種族として存在するなら、ペットモンスターにはできないだろうし、そこは残念かな。……精霊ではあるけど、シルフがほぼ妖精みたいなものだから、妖精はプレイヤー限定なのだろうか?
『妖精はプレイヤー用かあ……』
『ペットモンスターにしたいのか?』
『ああ、スキル名を叫んでもらって「耳元で怒鳴るな!」って返すのが夢だったんだよね……』
『あー……分からなくもない』
『……さておき、妖精はMP、速さ、魔力特化か。小さいぶん、装備も制限されそうだな』
『でも、小さいから使う素材が少なくて済むし、その辺は経済的かも。その代わり、使いまわしができないってことでもあるけどさ』
『なるほど。あとは飛べるのも利点か』
『トレントの島にも飛んで行けそうだな。まあ、あそこはまだ攻略できるレベルじゃないけど……』
『ウンディーネがいるらしいから、ペットにしたいんだけどね……』
『分かる。ウンディーネいいよね……夏場に一家に一人欲しい』
などなど、掲示板も大盛り上がりである。
既に妖精に素体変更したプレイヤーもいるみたいだし、使用感や新規の情報も明日には出回りそうだ。
「とりあえず、鉱石喰らいが無事に倒せたのを確認できたし、そろそろ寝ようかな……。フォーリア森林、どんなところなんだろう……楽しみだなぁ」
俺はVR機器の電源を切ってからベッドに入り、明日以降の行動を考えながら眠りにつくのだった。




