鉱石喰らい対策②
「……よし、まずは素材の確認から……」
【風樹の枝:ランクC、永い永い間、強風の吹き荒れる場所に根差している風樹の枝。強風に対抗するべく、木ではあるが風属性を持つに至った。何かを造る際に使用すると、強めの風属性が付く特殊な木材。強風で葉を飛ばされないように、葉の根元を小さな枝で巻いて補強をしている。環境に合わせた進化って凄いね】
……なんで最後が感想になってるんだよ! ちゃんと説明しようよ!
と、思わずツッコミを入れてしまう。
まあ、思いもよらない進化って割とそういうものではあるけど。
俺も初めて竜血樹を知った時は、自然の進化ってすげーってなったものだ。
……おっと、話が逸れてしまった。
強めの風属性が付くということは、+30ぐらいされるのだろうか? それに風の魔玉を付ければ更に+20され、かなり強めの属性補正が付くはず。
とりあえずは1つ杖を造って確認していこう。最初から属性魔玉を付けて失敗するわけにもいかないしね。
まず、俺はチェンジプラントで杖の形を変えていこうとした……が。
「あ、あれ……? うまく変形できない……?」
チェンジプラントを使っているはずなのに、枝が思うように形を変えてくれない。
今までこういったことはなかったはずなのに……。
「もしかして、風属性だからか……?」
水は火に強く、火は風に強い。そして風は地に強く、地は水に強い。
……そう、属性相性が悪いのだ。
以前、地属性の木材をチェンジプラントで加工した時は、いつもより加工しやすいと思っていたのだが、あれは同属性だからという理由だったのか……?
こうなると、チェンジプラントを使うよりも、手彫りで造った方がいいのだろうか。
一応、小振りではあるが、枝自体は手で持てるぐらいの太さはあるので、チェンジプラントで太くして耐久性を上げる必要はなさそうなのが救いか。
「手で木材を加工するのも久しぶりだなあ……」
俺は久々に作業場でノミなどの工具一式を取り出し、風樹の枝の加工を始める。
魔玉を入れる台座は普通の木材をチェンジプラントで加工して造り出し、これを風樹の枝に取り付ける方向でいこうかな。
久々の手作業で少し苦戦するものの、久方ぶりにノミでの加工音が耳に入ってきて、これはこれでいいなと改めて思うのだった。
この一定のリズムが好きなんだよね。また加工するところを録画して、加工音の環境音動画を録ろうかな。
そんなことを考えながらも作業は進んでいく。
そして気付くと、周りにライアたちが集まってきていた。リラックスしている顔で作業を見ていたので、みんなもこの音が好きなのかな。
……そうやってみんなに見守られながら、台座の取り付けを終えて杖の加工を完了する。
すると、ライアたちが拍手を送ってくれる。中でも、ブラウンはものづくりが好きだから、杖に興味津々のようだ。
「……よし、ステータスを見てみよう」
【風樹の杖:ランクB、風属性+30、火属性-30、MP+20、魔力+75、魔防+25、風樹の枝から造られた杖。風属性のスキルの威力を底上げできるが、火属性には弱くなる。……ところで、普通の杖は風属性でなくとも燃えやすいと思うのだが、火属性の-補正がないのは不思議だよね】
そうだね。
……いかん、思わず説明文に同意してしまっていた。
まあその辺は属性相性のルールが複雑になるからということにしておこう。
さておき、風属性+30が造れたのなら、これを装備して木材に風の魔力を籠めて風属性+15のアクセサリーを2個作って……これだけでも+60になるのか。
そして、その+60で+30のアクセサリーを作って……と、そううまく行くだろうか。
地属性+30の魔力で地属性+15のアクセサリーを作った時も、ライアがいなかったら成功しなかっただろうし、2倍の+60ともなると至難の業になりそうだ。
ま、とりあえずは当たって砕けろだ。最初っから成功できるなんて思っていないしね。
【INFO:ホームへの入場申請があります】
アクセサリーを造ろうとして木材を用意したところに入場申請が届く。相手を見るとタイガさんだった。
何かあったのだろうか?
「おお、コウ殿。少しいいだろうか?」
「もちろんです。何がありました?」
「うむ、実は鉱石喰らいのことでな。接近戦では分が悪いので、遠距離攻撃主体で攻略しようとしているのだが、風属性の杖や矢が手に入りづらくてな……そこで、コウ殿に協力のお願いに伺ったのだが……」
「あ、それなら今やってますよ」
「なんと!?」
俺は風樹の杖を造り、そこからアクセサリーや風属性の矢を作ろうとしていたことをタイガさんに話す。
「……なるほど、大量生産できれば効率よくダメージを蓄積できるか……」
「タイガさんのパーティーだと属性矢がよさそうですね。完成したらアルテミスさんにお渡しします」
「ご助力感謝する。……ところで、もう1つ相談なのだが……」
「俺でできる範囲のことでしたら」
「……実は、デュラハンがどうやってもペットモンスターにならなくてな……無傷で倒して力の差を見せてもダメ、瀕死まで追い込んで回復アイテムを渡してもダメ、気に入りそうな装備をプレゼントしてもダメ……と、思いつく限りのことは試したのだが……」
わぁ、デュラハンガチ勢だ。
でも、お気に入りのモンスターをペットにしたい気持ちは痛いほど分かる。
俺も昔、仲間モンスターで1/256の確率を引くのをがんばってたなあ……。結局は仲間にできずに次のゲームに移行しちゃったけど。
しかし、デュラハンのガードは固いな……騎士だからか?
……ん? 騎士?
「あの……これは予測でしかないんですけど」
「それでも構わぬ。ぜひ試したい」
「デュラハンって見た目は騎士ですよね? それなら一騎打ちで倒してみるのはどうですか?」
「……ほう。確かに、一理あるな」
「ただ、途中まで他の人も含めてダンジョンを進んで、デュラハン戦だけ1人で戦うか、それとも最初から自分1人でダンジョンを進んでデュラハンと戦うかの二択なんですけど……後者は結構難しいと思うんですよね」
「それなら、五層から逆走すればすぐに辿り着けるはずだ。儂は速さにもステータスを振っているから、五層から昇るのは難しくない。早速試してくるとしよう、助言をありがとうコウ殿」
こうして、タイガさんはすぐに特殊ダンジョンへ挑戦しに行ったのだった。
それにしても、速さにも振ってるタンクかあ……確かに複数のモンスターが出現したら、素早くフォローに回らないと後衛が攻撃されるだろうしね。
……さて、俺はアクセサリー作りに戻ろうかな。
**********
「……よし、予想通りだな」
俺は風樹の杖の魔力を普通の木材に送って風属性の木材を作り、更にそれをアクセサリーに加工する。分かりやすく今回はブローチにした。
ちなみに、やはり風属性の木材にはチェンジプラントが上手く働かないようで、今回リングを作っていないのは輪にする工程が難しいからだ。下手すると割れちゃうし……。でも、いつかは作ってみたいところではある。
ブローチの風属性の補正値は+15で、これも予想通りである。
これを2つ付けて、次は風属性+60の補正値での魔力を木材に送ってみよう。
「がう!」
俺が木材を用意し始めると、スコールが俺に声をかける。
そして、俺が作った風属性のブローチを脚でぺちぺちする。
「もしかして、スコールも欲しいの?」
「がーう」
めっちゃ尻尾を振って、期待の眼差しで俺を見ている。
確かにスコールは風属性だし、キングウルフさんから風を操るスキルを教えてもらってたし、風属性のアクセサリーが欲しいのかな?
他の子たちはそういう素振りを見せないから、苦手属性のアクセサリーは遠慮しておくって感じなのだろう。
「それじゃ、すぐに作るね」
「がうっ!」
俺は属性付与を失敗しないように、ブローチを外して補正を+30にする。
そして風属性のブローチを2つ作り、ブローチの端に穴を開けて、更に普通の木材をチェンジプラントで加工し、スコールの首よりも一回り大きい首輪を作って、それにブローチを取り付ける。
首輪は2つに分割してはめ込み式にして、取り外ししやすい仕様にしてみた。
早速首輪を付けてあげると、めちゃくちゃ尻尾をブンブンして喜んでくれる。キングウルフさんもだけど、尻尾で感情が分かるのかわいいよね。
「きゅー!」「るー!」「ふぇー!」
そして、スコールがうらやましいのかライア、レイ、ニアのおねだりである。
……こりゃしばらくはこっちの作業をしなきゃ。
「ら!」
そして、ブラウンは剣に竜が巻き付いたアクセサリーを俺に見せて、こういうのが欲しいアピールである。
修学旅行のお土産的なやつを、まさか作る側になるなんてな……。
……そして、元の作業に戻れたのは1時間ちょっと後だった。
風属性の補正値+60で木材に魔力を送って……と。
試しに+30の時と同じ感覚で魔力を送ったのだが、なんと成功してしまう。
そして、それで試しに杖を造ってみたが、風属性の補正値は+15。
+30の時と同じ感覚だから、補正値も+30の時と同じになったのかな?
そう思って、今度は少し送る魔力を増やしてみる。
すると、またしても成功。……だが、造った杖の補正値は+15。
……んん???
「……もしかして、籠められる属性魔力の量には限界がある……?」
しかし、それだとドワーフの人が造った地属性の補正が+60もあるエルダートレントの杖は何なんだろう……。俺が造ったエルダートレントの杖は+30だったし。
そんな時、ふとバイスさんの言葉を思い出す。
『ああ、俺がドワーフだから無駄に地属性の補正が入ってさあ……』
もしかして、人間だと素材や造る装備にもよるけど属性魔玉を使わない場合は+30が限界……?
ドワーフだと更に補正が付くとかだろうか?
試しに風樹の杖に風属性の魔玉を付けたものを造ってみる。すると、補正値は+50となった。
それを使っていろいろ試してみるものの、造れたアクセサリーは+15が限界だった。
うーむ、この辺は色々試してみたいけど、まずは鉱石喰らいの対策が優先だよね。
風属性補正+50の杖と+15のアクセサリー、それから属性矢を大量に作って、タイガさんとタケルのパーティーに渡してみるかな。
**********
「おお、コウ殿! やったぞ!」
「おめでとうございます!」
俺が『属性杖などを渡します』というメッセージを送ってしばらくすると、タイガさんがデュラハンを連れてホームにやってきた。
どうやら『1人でダンジョンに入って、1人でデュラハンを撃退する』がペットモンスターにする方法だと分かったとか。
「1人だとデュラハンの攻撃がかなりきつくなかったですか?」
「いや、むしろパーティー総合レベルが下がるから、4人の時よりもかなり楽だったな」
「なるほど……1人旅はそういうメリットもあるんですね」
「普通は複数人で戦う方が楽だと思うのだがな……こういうパターンもあるとは」
「ですねぇ」
昔、パーティー人数が多いほど敵のHPが増えるゲームとかあったなあ。
あと、1Pの能力値が敵のステータス決定に参考にされるとかも。
その辺の仕様を知らないと苦戦するのも多かったなあ。
「……さて、それでは風属性の杖、アクセサリー、矢をお渡ししますね」
「おお、ありがたい。代金は後ほどギルドから支払うとしよう」
「ありがとうございます。使用感なども伝えて頂ければ改良していきますので、よろしくお願いします」
「うむ、それでは早速鉱石喰らいの相手をしてくるとしよう」
さて、どんな感じになるのか……。
「あ、戦闘が始まったみたいだな……」
今回のイベント戦では、イベントページから鉱石喰らいの現在HP、各プレイヤーの与ダメージ合計ランキング、各パーティーの戦闘中継などが見られるようになっている。
タイガさんたちのパーティーの1戦闘での最高与ダメージと、戦闘中継を起動して……と。
俺はそれを大画面で表示しながら、ライアたちとトランプを始める。
時々戦闘中継を見ながらなので、時々判断ミスをするものの、テレビを見ながら遊んでる感覚でこれはこれで楽しい。
そして、タイガさんたちの戦闘が終わると、最高与ダメージがなんと2倍も更新されて大賑わいに。
また、その戦闘を中継で見ていたプレイヤーから、今までに見たことのない杖の入手方法の質問が大量に投稿されることに。
「……こりゃ、しばらくは風樹の杖づくりに専念しないといけないかなあ」
そんな事を考えながらも、今日はライアたちとゆっくりとした時間を過ごすのだった。




