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VRMMOでものづくり始めました  作者: SAK


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89/90

四層の隠し部屋

「おっ、コウじゃねえか。久しぶりだな」

「バイスさん。ルァイドに用事がありまして、ポータルで来たところなんです」

「そうか、それなら用事が終わったらオレの工房に来てくれ。ちと相談があってな」

「分かりました、それでは後ほどお伺いします」


 俺は久しぶりにドワーフの村、ルァイドに来ていた。

 用事があるのはもちろん、杖のお店だ。



「お久しぶりです、今日はこれをお持ちしました」

「どれどれ……おお、エルダートレントの杖じゃあないか。コウも造れたんだね」

「はい、まだ未熟なので補正値はそれほど高くありませんが……」


【エルダートレントの杖:ランクA、地属性+30、風属性-30、MP+43、魔力+158、魔防+42、装備条件『魔力255以上』、エルダートレントの枝を使って造られた杖。加工者によってエルダートレントの意匠が入っている。これには枝を提供したエルダートレントもにっこり。ぜひ見せてあげよう】


 ……なんか変な説明文だけど、後で見せに行こうとは思っている。

 ちなみに、ドワーフの職人さんが造った杖のステータスはこちら。


【エルダートレントの杖:ランクA、地属性+60、風属性-60、MP+52、魔力+172、魔防+50、装備条件『魔力255以上』】


 見比べると、地属性の補正値、ステータス補正値すべてが俺の杖を上回っている。これが熟練の技……いや、業か。


「ほう、見事な腕じゃないか」

「ありがとうございます。ですが、補正値がまだまだでして……」

「あとは回数をこなせばうまく造れるようになってくるはずよ。わたしも長年杖づくりをやってるからこその補正値さね」


 確かに、こなした年月の差はあるよな……俺も杖も杖以外もどんどん作っていかないと。

 ……ちなみに、杖を加工するためだけに、レベルアップでのステータスボーナスを魔力に結構な量つぎ込んだ。

 まあ、シードバレットなどの威力も上がるし、魔法系のアイテムを作る時には有利に働くだろうから、上げておいて損はないかな。MPも連動してアップするし。


 ただ、エルダートレントの枝の他の使い道はまだ見いだせてない。

 加工する際に魔力が結構必要だから、俺以外の人の魔力の数値を考えるとなかなか難しいんだよな……最悪、俺が杖として加工するという方法はあるんだけど。


「ところで、ちょっと相談があるんだがね……」

「お世話になっていますし、俺にできることであれば」

「実はねえ……エルダートレントの枝を融通して欲しいのよ。わたしが杖を造ってから、どこでそれを手に入れたのか、自分たちにも譲ってくれないかって言われるようになってねえ」

「なるほど……」


 さすが、ものづくりが好きなドワーフたちだ。エルダートレントの枝は垂涎の品なんだな……。

 エルダートレントさんは気軽にボキボキ折ってくれたんだけども。


「それでは切り分けた枝を15本……ぐらいあれば足りますか?」

「もちろんだよ。でも、さすがにその量だとコウの分が足りなくならないかい?」

「俺としては1つ造れたので結構満足してるんですよ。それに、欲しがってる人の手に渡って欲しいというのもありますしね」

「そうかい……それじゃあ遠慮なく頂いておくよ。他のドワーフに渡す時に、ちゃんと対価はもらっておくからね」

「分かりました、よろしくお願いします」


 他のドワーフの人たちが造る杖はどんなものになるんだろうか。楽しみがまた増えたな。


 そして、俺の用事も終わったのでバイスさんの工房へと向かうことにした。




**********




「おう、用事は済んだのか?」

「はい、あとは自由時間です」

「そうか、それなら相談なんだが……オレの造った人造ゴーレム試作一号機、あっただろ?」

「ええ、めちゃくちゃ苦戦したのでよーーーーーく覚えてます」


 ホント、あの強さは反則じみてた。

 それでも、地属性補正で対策をすればランカーの人たちを始め、上位の人たちはゴーレムを倒していたので、バランスは取れてる……のだろうか。


「あのあと結構な数の人間に倒されてさあ……やっぱり、地属性だから補正値を上げられるときついんだよな」

「そ、そうですね……」


 い、言えない。その補正値を上げるアクセサリーを造ったり、情報を提供したりしたのが俺だなんて。


「そこで、だ。ゴーレムの素材に地属性以外の属性を持たせたいんだが……協力してくれねえか?」

「属性鉱石を使えばバイスさんでも造れそうに思えますが……ダメなんですか?」

「ああ、俺がドワーフだから無駄に地属性の補正が入ってさあ……」

「あー……」


 確かに、エルダートレントの杖の地属性補正値は凄かったけど、なんにでも地属性の補正が付くからこういう悩みもあるのか……。

 そういえば、複数の属性が付いている場合はどういうダメージ計算になるんだろうか。


「協力してくれたら礼はするからさ。頼むよ」

「分かりました。それなら、ゴーレムでダンジョンの壁を掘り進めることは可能ですか?」

「ああ、普段から鉱脈を探してガンガンやってるぜ」

「それなら話が早いです。実は……」


 俺は特殊ダンジョンの四層と五層の地図を見せる。

 そして、東側に不自然な空白があることを伝える。


「確かにこりゃあ怪しいな。もしかしたら未知の鉱脈があるかもしれねえ。よし! それなら先に協力するぜ」

「いいんですか?」

「ああ、もし鉱脈が見つかったら属性鉱石が大量に出てくるかもしれないだろ? そうしたらゴーレムのいい材料になると思ってな」

「なるほど、それではお願いします。他のメンバーとの時間の調整がありますので、後日日程をお知らせしますね」

「ああ、オレならだいたいはここにいるから、いつでも来てくれ」


 こうして、バイスさんにダンジョン調査の協力を取り付けることができたのだった。




**********




「……ということで、バイスさんとゴーレムの助力を得られることができました」

「ほんと、コウは人脈が広いな……」

「今回は偶然ですよ、偶然」


 バイスさんに話しかけられてなかったら、協力してもらうことはできなかったしね。

 さて、時間はいつにするか……。


「ダンジョンを掘っても構造は1日で戻るんだろ? それなら朝早くからした方が良さそうだな」

「となると、休日になりますね。土日か、それとも祝日か……」

「私はどちらも大丈夫です」

「おれもだ」


 ……となると、バイスさんが早く掘りたそうにしてるし……。


「次の祝日にしますか? 2日後なのである程度の消耗品の準備もできますし」

「よし、それじゃあそうするか。おれはツルハシとシャベルを用意するかな。土を掘るなら風属性のツルハシが良いって最近噂になってるから、それも試してみたいところだ」

「土だけに地属性……だから風属性で掘りやすくなるんですかねえ……」


 まさかそんなものにまで属性が設定されてるなんて……まだ噂ではあるんだけど、ワールドクリエイターズ運営ならやりかねない。


「私は敵の対処ができるようにアイテム作りですね。シーダちゃん……アラクネの糸を使うと、敵の動きを封じるアイテムができるんですよ。ゴーレムの場合はあんまり効果がないですけど、もし隠し部屋が見つかった時に、まだ見たことのないモンスターが出るかもしれませんし」


 確かに、ミミック以外にもまだ見つかっていないモンスターがいる可能性もあるな。

 未知の敵に備えておくのも重要だろう。


「俺はいつも通りマジックポーションなどですね。今回は切削の他にもツルハシでの肉体労働もありますし、ハイポーションも多めに準備しましょう」


 ポーションやハイポーションにビーのハチミツを入れても効果が上がるので、最近は毎日通ってるんだよね。おかげで毎日レイに蜜をお願いすることになってるんだけど……ちなみに、対価は一緒に遊ぶことだ。


「そういえばさ、バンシーのスキルとかはどんな感じなんだ?」

「あ、今はレベル上げ中なんですけど、結構有用なスキルでしたよ。こんな感じです」


 【即死無効(パッシブスキル):即死攻撃を無効化する】

 【泣き声(アクティブスキル):敵にしか聞こえない音で精神にダメージ。対象の敵のMPを-50。消費MP50】

 【金切り声(アクティブスキル):半径50メートル内の敵を50%の確率で混乱させる。消費MP30】

 【沈黙(アクティブスキル):対象の敵のスキル、魔法を70%の確率で封じる。消費MP40】

 【お手入れ(ユニークスキル):防具の使用回数の減りが緩やかになる(プレイヤー含む)】


「おお……って思ったけど、結構燃費が悪いな……」

「そうですね、その代わり強力なものが多いんですけどね。混乱させるのは五層のモンスターハウスのような所ではかなり有用でしょう」

「そのスキル、今回の攻略前に欲しかったですよね」

「ええ……でも、今後も同じような構造のダンジョンがあるでしょうし、その時に使いましょう」


 ちなみにバンシーは魔力型のステ振りなので、バンシー自体にはMPが潤沢にあるんだよね。

 だから、バンシーをペットモンスターに起用している時は、かなり活躍してくれるだろう。


「……そういえば、このお手入れってなんだ? バンシーにそういう特性があるのか?」

「バンシーは鎧や兜などを洗うことで死を予言していたという逸話からでしょうね。さすがにマイナス効果にするのはアレなので、プラス効果としてのスキルにしたのだと思います」

「なるほどな……」


 こういう逸話からスキルを設定してくれるのは、元ネタを探すのが楽しいからいいんだよね。


 その後もペットモンスターの話に花を咲かせた後、それぞれの作業に戻ることにした。




**********




「よーし、いくぜ野郎ども!」

「バイスさん、テンション高いですねえ」

「そりゃあ新しい鉱脈が発見できるかもしれねえからな!」

「鉱脈だったらおれも興味があるな」

「お、分かってくれるか! やっぱり鍛冶には鉱石が必須だからな!」


 うーん、なんともエクスクラメーションマーク(!)の多い会話だ。

 バイスさんは豪快な人だからなあ。


「それでは五層から逆に四層まで行きましょうか?」


 五層はボス部屋でモンスターハウスではあるものの、敵の動きが鈍いため速攻で階段を昇れば四層に行けるんだよね。

 四層のボスのデュラハンとは戦わないといけないけど……。そういえばデュラハン、タイガさんがめちゃくちゃ気に入ってるらしく、どうにかしてペットモンスターにできないかと相談されたなあ……。


「そうだな、できるだけ体力は温存しておきたいから、速攻で四層に駆け上がるか!」

「殿は俺がやりますね。バインドで敵を封じれますし」

「おう、頼んだぜコウ」




 その後、俺たちは四層まで駆け上がり、デュラハンはバイスさんが持ってきたゴーレムの武器でなんと一撃のもとに倒してしまう。


「バイスさんも無機物操作が使えるんですか?」

「ああ、オレは地属性だな。ゴーレムを動かしてるのもこれだぜ!」

「……あれ? ドワーフって基本的にMPが低いと聞きましたが……MPが枯渇しないんですか?」

「そうだな、オレの持ってるユニークスキルが『MP消費減』で、使用するMPを9割カットしてくれるんだ」

「「「9割!?」」」


 何そのプレイヤーが持ってたらぶっ壊れと言われそうな効果。

 もともとMPが低いドワーフだからこそ許されるユニークスキルなのか……?


「ま、上限が低いからマジックポーションは欠かせねえがな」

「なるほど……それならあの巨体を操っていたのも頷けます」


 てっきり、他の何かで動かしてるのかと思った。

 そうでないと、すぐにガス欠になるだろうし。


「ま、そういうことで掘り進めるのもゴーレムを使って楽々できるぜ」

「頼りにしてます。……あ、この辺ですね」


 俺はウィンドウでマップを表示し、東の端であることを確認する。

 問題はどの辺から掘り進めるかだけど……。


「なあバイス、採掘者のカンでどこがいいか分からないか?」

「おう、それじゃあちょっと待ってな」


 バイスさんはそう言うと、壁に手を当てたまま壁伝いに歩き始め、時折コンコンとノックをした。

 そして、しばらく歩いた後に、俺たちを呼び寄せる。


「ここだな。オレのカン……というかノッカーから教えてもらったスキルで調べたんだ」

「ノッカー?」


 アテナさんの頭の上に?マークが浮かぶ。

 ノッカーとは鉱夫の妖精で、鉱脈の位置をノックで知らせてくれるのだ。

 だから、バイスさんもさっきノックをしてたのか。

 俺はアテナさんにノッカーの説明をすると、バイスさんがそれを聞いて喜んでくれた。


「ほお、人間でもノッカーのことが分かるやつがいるなんてなあ。オレとしても嬉しいぜ」

「そのノッカーのスキルで鉱脈を掘ってたんですね」

「ああ、普段は五層でやってるんだが……この辺は深いところほどいい鉱石が出やすいんだ」

「なるほど……。それでは、ここを掘り進めていきましょうか」

「「「おーっ!」」」


 こうして、俺たちはバイスさんの示した壁を掘り進めていった。

 俺は切削で、バイスさんとアトラスさんはツルハシで。

 アテナさんはモンスターに警戒しながら、スキルで俺たちにバフをかけてくれる。



 そして、掘り進めること20分……ついにその時は訪れる。



「……切削!」


 俺が切削を発動させると、壁に穴が開く。どうやら隠し部屋につながったようだ。


「皆さん、部屋につながりました!」

「おおっ、マジか!」


 俺が声を掛けるとみんなが部屋に入ってくる。

 周りを見渡すと、鉱石と思しきものがあたりに落ちている。


 ……ん? なんで掘り起こしてもないのに落ちてるんだ……?


「……おい、静かにしろ。ヤバいやつがいる……」


 バイスさんが小声で俺たちに伝える。

 そして、部屋の奥の方を指差す。

 そこには、大きなシルエットが存在していた。


 俺たちはバイスさんに従い、それに気づかれないようにいったん通路を引き返していく。


「……鉱石喰らい(オーアイーター)だ」

「鉱石喰らい?」

「ああ、鉱石を喰らって成長するモンスターだ。いつから棲みついてたかは分からねえが、ここのダンジョン化で無限に鉱石が喰らえるだろ? つまり、あいつも無限に……というか、成長限界まで成長するはずだ」

「そんな……」

「もし、あいつに成長限界が来て外に出たら……ルァイドが壊滅するかもしれねえ。コウ、オレたちに強力してくれるか?」

「分かりました、俺たちだけでなく、冒険者を募りましょう」

「……感謝する」


 こうして、俺たちは鉱石喰らいの情報をプレイヤーに伝えることになるのだった。




【INFO:緊急イベント、鉱石喰らいの撃破が開始されました。】


【鉱石喰らいの撃破:依頼文】

 特殊ダンジョン内で成長を続ける鉱石喰らいの撃破を依頼する。

 鉱石喰らいはその名の通り、鉱石を喰らい続けることで成長するモンスターだ。

 このままダンジョンに居座れば成長を続け、甚大な被害を巻き起こすことになるだろう。

 その前に鉱石喰らいを撃破し、成長を阻止するのだ。


【鉱石喰らいの詳細】

 ・日を跨ぐことで復活した鉱石を喰らい、HPが回復します

 ・一時的にボス部屋にポータルが設置されます。ただし一方通行であり、ポータルから町には戻れません

 ・各パーティーが与えた合計ダメージが、その日の開始時の鉱石喰らいのHPから引かれます

 ・HPが引かれた後にHP回復が行われます。倒した場合はHP回復は行われません

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― 新着の感想 ―
今話を読んで、ずっと『エクスクラメーション』を『エクスフラメーション』と勘違いしていた事を知りました。穴があったら入って、その底をさらに掘って隠れていたい。 鉱石喰らいかぁ。早朝から断続的に攻撃するし…
鉱石で回復するならオーバードーズ起こしたりしない?……まあそう都合よくいくわけがないだろうけど
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