ミミック対策
「おっ、ミミックの対策がアップされてる……」
先日の大規模探索からしばらくして、ミミックの攻略方法が編み出されたのだ。
俺は最近仕事が忙しくて、ここ最近はライアたちに魔石を食べてもらうのと、HPとMPをものづくりで消化するぐらいしかしてなかったんだよなあ。
さて、どんな対策が出てきたのか……。
『たぶんこれが一番確実だと思う』
1.ノームをペットモンスターにして、無機物操作(地属性)を使えるようにする
2.籠手のような地属性の防具を作製する
3.宝箱を開ける際に、無機物操作(地属性)で籠手を動かして宝箱を開ける
4.ミミックだった場合は籠手に攻撃が行くので、その隙に他のメンバーでミミックに全力で攻撃する
『ただし、攻撃に耐えきられた場合は更にミミックの攻撃が飛んでくるので注意。できるなら3人+無機物操作(地属性)で籠手と同時に武器を操作しての攻撃もいいが、消費MPがバカにならないので気を付けて欲しい』
『やってみた。確かに籠手にミミックが釣られるので良さそうだな』
『ただ、籠手に攻撃されると使用回数が一気に減ってしまうから、そっちでも消耗が激しいな。それだけミミックの攻撃が強いってことか』
『ミミックの魔石などのドロップアイテムを狙うのならこれで倒すのが一番良さそうだな。宝箱からいろいろなアイテムも手に入ってバランスもいい』
……なるほど、ミミックを倒す方向で対策されたんだな。
この方法ならミミックのアイテムと宝箱のアイテムが両取りできるのがいいところだな。
ただし、ノームがペットモンスターであること、地属性の籠手を造ることができることなど、敷居は結構高そうに見えるな。
また、普通の宝箱を無機物操作(地属性)で開けた場合、MPが無駄に消費されることも指摘されている。
「もっと簡単な方法があればいいんだけど……思いつかないなあ」
いわゆる『鑑定』みたいな宝箱の中身の判別ができるスキルもないし、今のところはこれが一番の対策なのは間違いないかな。
籠手の作製はアトラスさん、無機物操作(地属性)はアテナさんが使えるし、俺たちも可能ではあるんだよね。ミミックを一撃で倒せる火力が出せるかはまた別の話だけど……。
「らー!」
俺が対策に思いを巡らせていると、ブラウンから声を掛けられる。手には出会った時にあげた、ブラウニーに似せたこけしサイズの人形を持っていた。
どうやら、庭の方に来て欲しいと言ってるみたいだけど……。
「分かった、すぐに行くよ」
俺はブラウンを追ってホームの庭に出ていくのだった。
「ら!」
ブラウンは庭に到着すると、庭の木と人形を交互に指差す。
もしかして、庭の木で大きい人形を作って欲しいのだろうか。
「なるほど、あの木で人形を作って欲しいんだね?」
「らっ」
「分かった、それじゃあやってみるね」
俺はチェンジプラントで少しずつ木の形を変えていく。
人の形に整えて、ブラウンの特徴である帽子と服を作り込んでいって……と。
「よし、こんな感じかな」
「らー♪」
元の木よりもだいぶ小さくなってしまったけど、ブラウンが喜んでくれたようで何よりだ。
……そして、それを後ろでじーっと見ていたライアたちにも同じものをせがまれることになるのだが……ま、楽しいしスキルの練習にもなるからいいかな。
後日、アルテミスさんがその人形たちを見て、興奮して倒れたのはここだけの話にしておこう。
**********
「クイーンドリアードさん、それではこちらが納品物になります」
「うむ、ご苦労じゃの。……そして、これは新しい遊具か」
「はい、こうやって玉を剣の各所に乗せたりする遊びでして……剣玉というものになります」
「なかなか面白そうじゃのう、よし、後で楽しませてもらうとしよう」
あれ? クイーンドリアードさんってこういうときは真っ先に遊び始めるんだけど……何かあったのかな。
「コウよ、そちらのライアが相談があるようじゃぞ」
「ライアが……ですか?」
「うむ、ワシが翻訳してやろう」
俺はライアとクイーンドリアードさんの会話をしばらく見守ることに。
そして、クイーンドリアードさんから出た言葉とは……。
「……ふむ、コウの使うスキルで、胸を大きくして欲しいそうじゃな」
「……へ?」
胸を大きくするスキル? そんなのあったっけ???
「ええと……?」
「お主、木を変化させて人形を作ったとか。それを応用して身体の一部を変化させて欲しいということじゃな」
「『チェンジプラント』でそんなことできるんですか……?」
木だけではなく、植物系のモンスターも操作できるのだろうか……?
「ま、結論から言うと無理じゃな。チェンジプラントは植物には使えるが、ワシらみたいな生物には使えんのじゃよ」
「きゅー……」
クイーンドリアードさんの言葉を聞いて、ライアが落ち込んでしまう。髪の毛みたいな葉っぱも若干しおれてしまった感じになっている。
……どうして胸を大きくしたいと思ったのだろうか……と思ったが、目の前に凄い大きい人がいるから憧れたんだろうな……。あと、ホームでも時々レイと比べたりしてるし……。
「大丈夫、俺は胸のサイズで好き嫌いは決めないから、ね?」
「きゅー……きゅ!」
俺の言葉を聞いて安心したのか、ライアは俺に飛びついてくる。
……そうか、チェンジプラントは植物は植物でも、生きているものには使えないんだな。
使えちゃったらトレントなども簡単に倒せてしまうだろうし。
……ん? 生きているものには使えない……?
「もしかして……」
「ん? どうかしたのか?」
「いえ、とてもいい情報をありがとうござました」
「ふむ……話が読めんが……ま、いいじゃろう。我を崇め奉るがよい」
「クイーンドリアード神社でも造りますかねえ」
「……変な方向で本気にするでない」
でも、これがもしできるのなら、クイーンドリアードさんが崇められる可能性は充分にあるはずだ。
**********
「……で、おれたちに特殊ダンジョンに同行して欲しいと」
「はい、ミミック対策になればと思いまして」
「ちょうどおれたちもコウを誘おうと思ってたんだ。陥没スキル持ちなのもだが、やっぱり連携が取りやすいからな」
「私も、普段組んでいるパーティーが一番ですね」
そうだなあ、確かに何かあったときはこの3人で冒険に出かけてるしね。
戦い方の癖もなんとなく分かっているので、援護もしやすいんだよね。
「一応、ミミックを倒す方向での装備も持ってきたぜ」
「ミミックの魔石は他の魔石に比べて高めですし、できれば自給自足したいですよねえ」
「もし、他のモンスターの進化に使うのであれば更に高くなりそうですしね。私のルシードもそろそろ進化させてあげたいのですが……」
そういえばシールドのルシードはまだ進化してないな。
ミミックは無属性みたいだし、もしかしたら無属性同士でワンチャンあるかもしれない。
「よし、それじゃコウにはこれを渡しておくぜ」
「……超絶デカいハンマーですか……」
「これで左右からミミックを叩きつければひとたまりもないと思うぜ」
「……逆にハンマー同士がぶつかりそうな気もしますが……」
「……あ」
どうもロマンを詰め込みたかったみたいで、そこまで考えるのを忘れていたらしい。
分かるよ……でっかいハンマーって男のロマンあるしね……。
小さい女の子が身長よりも大きいハンマー振り回すのも好きだし。
「とりあえず、アトラスさんにハンマーを振ってもらって、俺は補助しますね。バインドを使えばミミックの足止めもできそうですし」
「ああ、なるほど。確かにミミックをバインドで縛れば攻撃も防げそうだな」
「その辺も確かめてみたいですね。……それでは出発しましょうか」
**********
「……久々に来ましたが、やはりこの宝箱の量は圧倒的ですね……」
「全部で30個あるらしいぜ。そのうち半数がミミックだそうだ」
「2分の1でミミックを引くんですか……それは発見初日で阿鼻叫喚になるわけです」
それにしても、ミミックの数を確かめたってことはミミックを全滅させたパーティーがいるんだな……。力こそパワー! みたいな……。
「それと、アイテムもレアなものが多いらしいんですよね。ハイマジックポーションだけでなく、低確率で蘇り草なども入っているみたいです」
「なるほど……それは欲しいですよね。運を上げる装備を持ってきた方がいいかもしれません」
「でも、ほとんどのゲームで運って効果が出てるか分からないよな。極振りしてもあんまり効果がないとかあるしさ」
運はね……本当にリアルラック頼りになるからね……。
どうしても確実な効果の出るステータスに振りがちなんだよなあ。
「……さて、それじゃあコウの考えてる方法を見せてもらえるか?」
「分かりました」
俺は宝箱に近づき、『チェンジプラント』で宝箱を変形させようとする。
しかし、宝箱は無反応を貫いた。
「ふむ……それじゃあこっちは……」
俺は別の宝箱にチェンジプラントを使ってみる。
すると、宝箱の一部が変形を始めた。
「うお……マジかよ」
「なるほど、確かに宝箱にも木材は使われてますしね……」
最初は、椅子などを作った時に表示される『完了した後は手を加えることはできません』仕様でダメかと思ったけど、あくまでこの仕様はアイテムや装備に限るんだろうな。手を加えて完成させたものに、更に手を加えるのがダメってだけで。
宝箱も誰かが造ったものならダメかもしれないけど、この宝箱はダンジョンで自然発生したものだから大丈夫とか、おそらくそういう仕様なんだろう。
……なんか仕様がガバガバに思えてきたけど、プレイヤー有利なら使わない手はない。修正される可能性もあると言えばあるけど……。
「では、同じようにしてチェンジプラントを全部に使ってみますね」
その後、全ての宝箱にチェンジプラントを使った結果、15個に反応があった。これは、普通の宝箱の総数と同じなわけで……。
「すげえじゃねえか! これなら効率的に宝箱だけを開けられるな」
「ミミックを倒す場合も、無機物操作を無駄に使わなくて済みますし、マジックポーションの消費も抑えられますね……」
「後日、動画に撮って共有しましょう。……さて、まずは……」
「変形させた宝箱の中身の確認だな!」
俺たちは3手に分かれて宝箱を開けていった。
最初はチェンジプラントによる変形でも中身が破損しないか不安だったけど、中身は無事で杞憂に終わった。
ちなみに回収できたアイテムはハイマジックポーション×7、Dランクの蘇り草×2が当たりだろうか。
Dランクの蘇り草は蘇生確率が20%と、Cランクの25%に比べて低い。
ただ、ここで量産できる可能性を考えると、それでも充分に強いと思う。
「よし、それじゃミミックも試してみるか?」
「そうですね……それではアテナさん、お願いします」
「分かりました!」
アテナさんが籠手を操作してミミックを開け、俺がハンマーで一撃を入れてバインドで拘束、その後にアトラスさんと俺が交互にハンマーを振り下ろし続け、通算5撃目で無傷で撃破。
普通に戦うと強いだけあって経験値も美味しく、更に魔石のおまけ付き。……ということで残りのミミックも同様の方法で狩りつくし、魔石を3等分したのだった。
「……こりゃあ、かなり稼げるな」
「ええ、日を跨がないと宝箱が復活しないので、無限にとはいきませんが……」
「あとは四層以降の隠し部屋調査も楽しみだ」
「ですね」
三層の隠し部屋は二層の隠し階段から行ける、ミミックのいる宝箱部屋だったけど、そこから四層への階段はなく、隠し階段も見つからなかった。
そのため、四層の東の壁を掘り進める必要があるのだが、ツルハシで掘るにも限界があり、更に1日経過で掘った壁が元に戻ってしまうのだ。ちなみに、切削中に壁が元に戻ったら、いしのなかにいる……となるわけではなく、強制的にダンジョンの外に追い出されるようだ。
そんなわけで、今は陥没スキルが使える人が急ピッチで使用回数を増やし、切削スキルを覚えようとしているところらしい。
ちなみに、俺が覚えた時に使用回数を見てみたのだけど、なんと500回。なので、現在マジックポーションの価格が高騰していて、売る側の俺としてはありがたいんだよね。
今回は効率的にアイテムを稼げる方法が確立できたので大成功だろう。
もちろん、元々あった籠手でミミックを開ける方法も併用されて最大効率で稼げるようになったので、一時期他のことに離れたプレイヤーも今では稼ぎに戻ってきているようだ。
あとは切削スキルを覚えたプレイヤーが増えて、四層以降の隠し部屋が見つかるのを楽しみに待とうと思うのだった。




