プレゼント作戦
「ふぇー♪」
アテナさんにバンシー……ニアの服をお願いし、ホームに戻ってきてからはニアはみんなとトランプなどで遊んでいる。
ライアたちも妹ができたみたいで嬉しいのか、ニアの要望に応えてずっと付きっきりで遊んでくれているようだ。
スコールもトランプでみんなと遊べるようになって、尻尾をぶんぶんしながら楽しんでいる。キングウルフさんにお願いして正解だったな。
「さて、スコールのためにマジックポーションを作らないとね」
みんなと遊べるようになったと言っても、MPを常に消費してしまうのでマジックポーションは欠かせない。
本当ならハイマジックポーションがいいんだろうけど……レシピがまだ不明なんだよなあ。
……ということで、マジックポーションを量産しているとアテナさんが訪問してくる。
「あれ? もしかしてもう完成したんですか?」
「はい! ニアちゃんのためにがんばりました!」
採寸して1時間も経ってないのに……どれだけ早く着せたかったんだろう。それとも……。
「これは……ワンピースですか?」
「はい、普段もワンピースを着てるので、着慣れたものがいいかなと思いまして。デザインも普段のワンピースをベースにして、そこにフリルやリボンを足してかわいさを追求しました。あと、スカート丈も短くして、ハイソックスと合わせて絶対領域も堪能できるように……」
「あ、目の色と同じ赤色のリボンはお揃いでいいですね」
「……分かってくれますか! これ、お揃いもなんですけど、差し色になってるのもポイントなんですよ!」
その後もアテナさんが熱く語っていると、声に気付いたみんなが作業場に入ってくる。
「ふぇー!」
そして、ワンピースの存在に気付いたニアが目を輝かせてはじめた。
採寸もしていたので、自分のだと分かっているのだろう。
「あ、それじゃあコウさん、ニアちゃんをお借りしますね」
「分かりました。ぜひ着せてあげてください」
「ニアちゃんは自分で着られるかな? できたらコウさんが喜んでくれるよー」
「ふぇ!」
ニアは手をぎゅっと握り、がんばるぞ! とポーズを決める。
見た感じは小学生低学年かそれより幼いぐらいだけど……うまく着替えられるかな?
「ふぇー♪」
そして3分ほど経つと、アテナさんの作ったワンピースを着たニアが帰ってくる。
水色を基調としたワンピースに、ワンポイントで差し色の赤いリボンが胸元に付いている。
更に、丈は短いものの裾にフリルが付いていてかわいさも強調。ハイソックスも合わせていわゆる絶対領域が完成されている。
「ふぇ?」
「うん、かわいいよ。よかったねニア」
「ふぇーっ」
どうかな? という感じでこちらを見るニアに答える。
それを聞いたニアはアテナさんの方を見て、ペコリと頭を下げてお礼をする。
「ふふ、どういたしまして。あ、コウさん、一つ注意があるんですけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「ニアちゃん、実は下着穿いてないんです。私のホームでいったん手持ちのぶんを穿かせてあげようとしたら嫌がったので、今は穿いてませんから……スカートが捲れる遊具はしないように気を付けてくださいね? 一応、これから採寸した下着を作ってきてもう一度説得してみます。それでは!」
「えっ、ちょっ、アテナさ……」
俺が言葉を終える前に、アテナさんはホームへと帰っていった。
……分かっているのなら、なぜスカート丈を短くしたし!?
「えぇ……」
まあ、ホーム内なら誰も見てないし、謎の光機能があるからいいんだろうけど……。今後、外出の際には注意が必要だな……。大事なところを隠す謎の光機能を切ってる人もいるだろうし。
……元のワンピースを着ていた時に装備記憶しておけばよかったなあ……スカート丈を戻すために今から元のワンピースを着せるにはいったん脱がせる必要があるから……。
それにしても、ライアやレイ、クイーンドリアードさんも元々は裸だったし、見えても気にしないのがこの世界のモンスターなんだろうか……? それなら、なんでバンシーやシルフは服を着ているのか……?
そんなことを考えながら、俺はマジックポーションを作る作業に戻った。
**********
「……ということで、これが下着になります」
「アテナさん、それでは説得をお願いできますか?」
「そうですねえ……ちょっとチャレンジしてみます。ニアちゃーん!」
「ふぇー!」
アテナさんは再び、ニアを連れて別室へ。
これで穿いてくれれば万事解決なんだけども。
「あ、コウさん。ニアちゃん、ちゃんと穿いてくれましたよ」
「よ、よかったです……どうやって説得したんですか?」
「下着を穿いた子の方がコウさんの好みだって伝えました」
「えっ?」
「……というのは冗談で、ライアちゃんやレイちゃんも穿いてるので、これが人間といる時は普通なんだよーって説得しました」
「ほ、本当によかったです……というか、最初からその説得をしてたらよかったような……」
危うく俺が変な性癖持ちだと思われるところだった……。
でも、これで動き回ってもある程度は大丈夫かな。
……とりあえず、装備記憶はしておこう。
「……さて、実はコウさんにお聞きしたいことがあるんです」
「俺にできることでしたら何なりと」
「ニアちゃんをペットモンスターにした方法ってどんな感じだったんです?」
「ええと、それは……」
俺はニアに地属性のブローチをプレゼントしたら、ペットモンスターになったことをアテナさんに説明する。
地属性がよかったのか、ブローチがよかったのかはまだ分からないが……。
「なるほど……それなら、ケット・シーちゃんにプレゼントすればもしかしたら……」
「ええ、俺も他のモンスターたちでも同じことができないか考えていたところなんです」
「うーん……ケット・シーちゃんにプレゼントするとなったら、何がいいですかね?」
「猫……猫といえば……長靴……?」
「なるほど……それなら、ブーツを造ってみましょうか? あとはマントもいいかもしれませんね」
「確かに、レイピアを使うならその辺もいいかもしれませんね」
などなど、ケット・シーへのプレゼントの話に花が咲く。
最終的に、帽子、マント、ブーツの3点セットを造ってプレゼントすることが決まった。
俺も造るのを手伝おうかと進言したが、『自分で全部造ってあげたいです』と言われたので、アテナさんに任せることに。
確かに、アイテムは誰が造ったのか分かる仕様もあるし、そこを参照してペットモンスターになるかどうか決まる可能性はあるな。
ニアに贈ったブローチも俺が造ったものだし。もし、他の人が造ったものだったらペットモンスターにならなかった可能性もあるんだよね。
「それではコウさん、プレゼントを造り終わり次第ダンジョンに潜りましょう。アトラスさんにも声を掛けておきますね」
「分かりました。俺も準備をしておきます」
……もしケット・シーがペットモンスターになったら、クー・シーも相棒がいなくなって寂しくなるだろうし、クー・シーにもプレゼントを渡したいところではあるな……。
しかし、牛の大きさの犬……何を贈ったら喜んでもらえるのだろうか……。
「ふぇー!」
俺が考えていると、ニアから声を掛けられる。
トランプを持っているところを見ると、どうやら俺ともトランプをやりたいようだ。
「うん、それじゃあ俺も混ぜてもらおうかな」
俺はバンシーと一緒にホームでトランプをする動画を撮り、それを公開することにした。
ペットモンスターでないとホームにモンスターが入れないことを知っている人たちは、俺がバンシーをペットモンスターにしたことに気付くだろう。
だから、動画の最初にバンシーをペットモンスターにした方法を付け足して……と。
その後、公開した動画を見てバンシーにプレゼントをした人がいたのだが、何人かは無事にバンシーをペットモンスターにできたらしい。
ただし、相当親密でないとダメなのか、成功した人はまだまだ少ないようだ。
そして、プレゼントをすることで他のモンスターもペットモンスターにできるのではという情報が広まっていき、調査班が多くのモンスターを調べ上げたところ……。
エインズの町周辺のモンスターでは、ボアをいわゆる餌付けをすることでペットモンスターにできることが判明した。イノシシを家畜化する感じなのかな……。
ボアはダンジョンの隠し階層で上位種のラッシュボアが出現するのが分かっているので、進化で即戦力になるモンスターとして人気が出始めたようだ。
こうやって、新しい情報がどんどん波及していくのを見るのは楽しいな……。今後、どんなモンスターが同じ方法でペットになってくれるか楽しみだ。
**********
「さあ、それでは出発しましょう!」
「元気だなあ、アテナは。さっきまでアイテムを造ってたんだろ?」
「ケット・シーちゃんをペットモンスターにできるかもしれないんです! 興奮しない方がおかしいですよ!」
「もし、ペットになった時のために、名前は考えておいてくださいね?」
「うっ……」
俺たち、全員名付けが苦手なんだよなあ……。
やはりその場で付けるのは難しい、難しいのだ。
「こ、コウさぁん……」
「ええと……猫、猫……神様ならバステト神がいますが……」
「テトちゃん……だとなんか歌が得意そうですね……」
「猫……キャット……合わせてキャス……?」
「アトラスさん、それいいですね、それでいきましょう!」
「性別は考えなくていいのか……?」
「我輩って言ってたので、オスっぽいんですけどねえ」
いかん、入る前から大問題発生だ。まだペットになるとは決まってないのに。
キャスだと女の子っぽい名前ではあるんだよね。
「……ま、道中で考えながら潜るか」
「ですね……」
そして、ケット・シーが出現する第三階層の中ボスの部屋へ。
結局名前の案は決まらないままなのだが……。
「ニャ! コウたちじゃないかニャ! もしかして、仕掛けを動かすのニャ?」
「いえ、今回はケット・シーちゃんにこれを渡したくて……」
アテナさんはアイテムポーチから帽子とマントとブーツを取り出し、ケット・シーに手渡す。
「ニャ!? こ、これを我輩に……?」
「気に入ってくれると嬉しいんですけど……」
「す、すごく嬉しいニャ! 我輩、アテナに恩返ししたいニャ!」
「あっ」
アテナさんが思わず声を漏らす。
……もしかして。
「アテナさん、ひょっとしてペットモンスターに……?」
「はい、そのようです。ど、どうしましょう、名前が決まってないのですが……」
「性別はどっちなんだ?」
「予想通り、男の子みたいです」
「それなら……地属性だからアースをもじって、アルスとかどうですか?」
「……頂きます!」
こうして、ケット・シーことアルスがアテナさんのペットモンスターになったのだが。
「アテナ、お願いがあるニャ」
「わ、私でよければ……」
「クー・シーも連れて行っていいニャ? ずっと一緒だったので、離れるのは寂しいニャ」
「私はもちろんいいけど……クー・シーちゃんはいいの?」
「クー!」
どうやら、ケット・シーをペットモンスターにすると、クー・シーも一緒にペットになるみたいだ。
逆に、クー・シーを先にペットにしても同じことが起こるのだろうか?
「どどど、どうしましょうコウさん。名前を全く考えてなかったです」
「性別は……?」
「女の子みたいです」
「うーん……雌牛のカウを反転してウカとかどうだ?」
「アトラスさん……いいじゃないですか!」
……こうして名前問題も解決し、最終的に2人ともアテナさんのペットモンスターになることに。
まさか、2人揃ってペットになるとは思ってなかったな……。
ケット・シーをペットにしておけば、他の子たちとも意思疎通が簡単になるけど、俺はどうしようかな……。既に結構な大所帯だから、毎日の魔石の費用もバカにならないしさ。
まずはうちの子たちが進化して喋るようにならないか、そこを求めていこうかな……幸い、アルラウネ……レイは2回目の進化の方法は分かってるんだし。あとはレベルを上げて、進化対象の魔石さえ手に入れば……。
俺は、次の休みにトレントの島のアルラウネたちを訪ねることにしたのだった。




