属性装備を量産してみた
「……よし、結構な量の地属性の木材ができたな」
最終的に120を超える地属性の木材が完成し、これで属性鉱石を使わなくても属性装備が量産できるように。
これもライアと、バンシーの杖の素材になった枝をくれたバンシーのおかげだなと思い、バンシーの杖を見てみると……あれ? 少し痛んでいるような……。
もしやと思い使用回数を見てみると、49/250となっている。
もしかして……魔力を素材に籠めるだけでも使用回数が減ってしまうのか……?
試しに、もう一つ木材に魔力を籠めてみると……。
「48/250……やっぱり、1回減ってる……」
そう美味い話は無いようで、無限に属性付きの素材が造れるわけではないみたいだ。
まあ、デメリットが無ければ強すぎるのも確かか。……魔力を籠めるのに失敗すると素材を無駄にしてしまうのも、相応のデメリットではあると思うのだが。
「それじゃ、次は杖を造ってみようかな。できたらドワーフの店に持って行かないと」
俺はチェンジプラントで木材を変形させて杖の形を造り始めたのだが……。
なんとなく、いつもよりも思い通りに変形させられているような……もしかして、地属性がチェンジプラントと相性が良いのだろうか?
……おっと、いけないいけない。今は杖づくりに集中しないと。
「……よし、できたかな」
俺は杖を手に取ってステータスを確認してみる。
【アースワンド:ランクB、地属性+15、風属性-15、MP+26、魔力+64、魔防+31、杖の素材に地属性が付与されているため、地属性の補正が付いた杖。いい仕事してますねえ】
「おお……」
結果に思わず声が漏れる。
元々は普通の木材だったのに、ステータスがかなり高く設定されている。これが属性を付与する効果か……? ドワーフの店で見た杖も、普通の杖よりも補正値が高かったし。
属性補正が+15なのは、補正値が+30のバンシーの杖を装備して作ったから、それの半分が木材に付与された感じなのだろうか?
この辺はまだまだ研究のし甲斐がありそうだ。
防具も造れるようになれば、夢の耐性+100オーバーもできて、クイーンドリアードさんの攻撃もほぼノーダメージで受けられるかも。
……でも、その場面を想像しても、絶対にクイーンドリアードさんにその上を行かれる未来しか見えない。あの人はそういう人だ。
まあ、それはさておき、約束通りにドワーフの店に杖を持っていこう。
俺はライアたちに声をかけて、エインズの町からポータルでルァイドに向かうのだった。
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「……こりゃ驚いた。こんなに早くコツを掴んじまうとはねえ」
「いえ、そこはこの子……ライアのおかげですよ」
「ほう、その辺を詳しく知りたいね」
「実は……」
俺は老齢のドワーフの女性に、ライアが魔力の流し方について教えてくれたことを伝える。
「なるほどね、この杖はコウとライアの愛の結晶ってわけさね」
「あの……言い方……」
「ほっほっほ、ものを作る人にとっちゃ、作り出したものは我が子同然だから似たようなもんだろ?」
「そ、そういうものなんですかねえ……」
「きゅー……♪」
ライアがなぜか嬉しそうに頬を染めている。
逆に、レイはちょっと不機嫌になってるんだけど……。
「るー! るーっ!」
「れ、レイ?」
「どうやら、自分が除け者にされたみたいで怒ってるのかもね。次はその子と一緒に造ったらどうだい?」
「そ、そうします。レイ、後から一緒にするから落ち着いて……ね?」
「るっ」
と、とりあえずレイの機嫌は直ってくれたようだ……。
あとからレイとも杖を造ってみようかな。
「さて、わたしからもエルダートレントの枝を使った杖を……といきたかったんだけど、もう少し時間がかかりそうでねえ。よければ、また時間をおいてから来てみておくれ」
「分かりました。それではこちらも引き続き杖を造ってみます」
「ええ、楽しみにしているよ」
こうして、俺たちはドワーフの店を後にするのだった。
……それにしても、熟練者の方でもエルダートレントの枝の加工は苦戦するんだなあ……さすがランクB+と言ったところか……。
**********
「さて、それじゃレイ、一緒に杖を造ろうか?」
「るーっ!」
レイが嬉しそうに手を振り上げる。さっきの不機嫌はどこへやらである。
……とは言っても、2人で魔力を籠めるのは難しそうだ。そして、成功できるのかも分からない。
それでも、レイのために一緒に造ると決めた。
ちなみに少し調べたところ、属性補正値はプレイヤー側も敵の地属性モンスターも同じなのだが、プレイヤー側とモンスター側で少々異なる。
プレイヤー、ペットモンスター側は『地属性の付いた攻撃のみに補正が付く』のに対し、モンスター側は『全ての攻撃に補正が付く』。
例えば、プレイヤー側は地属性のシードバレットには補正が付くのだが、物理攻撃には補正が付かない(属性武器除く)。
ヘルプではそこまで詳しく記されているわけではなく、プレイヤーたちの経験則をまとめているのを見ただけなのだが……それでも、違いは明白なようだ。
もし、これで地属性の補正が高いものが造れたら、特殊ダンジョン攻略にうってつけの装備になるわけだが……。
「木材は大量に買ってきたし、マジックポーションの在庫もあるし……よし、それじゃ早速やってみよう」
「る!」
俺たちは隣り合って木材に向かい、魔力を籠め始める。
レイが俺に合わせてくれているようで、魔力が均等に木材へと注がれていく。
そして、俺が魔力の注入を止めると、レイもそれに合わせて魔力の注入を止める。阿吽の呼吸とはこのことだろうか。
さて、できあがった木材は……。
【地属性の木材:ランクC、何かを造る際に使用すると、地属性の補正が付く特殊な木材。属性鉱石と併用することで更に補正値を上げることができるが、そのぶん-補正も大きくなるので注意が必要】
……説明文は変わっていないが、実際に杖を造ってみたら違いがでてくるだろうか?
俺はチェンジプラントで杖を造っていき、完成させてステータスを見てみる。
【アースワンド:ランクB、地属性+30、風属性-30、MP+28、魔力+63、魔防+30、杖の素材に地属性が付与されているため、地属性の補正が付いた杖。いい仕事してますねえ】
「地属性の補正が上がってる……」
「る? る?」
今度はレイが『すごいでしょ』と言わんばかりに、えっへんと胸を張る。かわいい。
もしかして、複数人で造ればそれだけ補正も上がっていくのかな。それならライアも加えて3人で……とも思ったが、今回はそれとは違う方向でのアプローチをかけてみる。
「レイ、よかったらもう少し付き合ってもらえる?」
「るー!」
そして、作り上げたのは地属性の付与された木材が10個。
これでいろいろ研究してみよう。
「ありがとうレイ、助かったよ」
「るっ」
レイは俺の方に頭を差し出してくる。なるほど、撫でて欲しいんだな。
俺は1分ほどレイの頭を撫でてあげる。……ライアがこっそり見ていたのに気づかず。
その後、ライアにも同じことをして、研究を再開することに。
「……さて、と。さっきは地属性の木材をまるまる使って杖を造ったわけだけど……分割して小さいものを造ったら、地属性の補正も分割されるのだろうか?」
木材をまるまる使った場合は補正値は30、半分に分割して使ったら補正値はそれぞれ15になるのだろうか?
もし30のままであれば、大きい木材に属性を付与して、それを分割すれば効率よく素材が造れるわけだが……。
「まずは木材を半分にして……と」
俺はチェンジプラントで木材を切り分けて……正しくは、半分のところに溝を作って、物理的に折るだけど……木材を半分にする。
そして、片方を木製のブローチに、もう片方を木製の指輪に加工する。
……さて、結果の方は……。
【ウッドブローチ:ランクC、地属性+15、風属性-15、MP+10、魔力+15、魔防+17、木でできたブローチ。小さいながらも性能はなかなかのもの】
【ウッドリング:ランクC、地属性+15、風属性-15、MP+12、魔力+18、魔防+15、木でできた指輪。さり気ないオシャレに。】
……今回の説明文は普通だなあ……と思ってしまったのは、変な説明文に毒され過ぎてるぞ俺。
しかし、予想通り素材を半分にすると属性補正も半分になるんだな。補正を高くし過ぎて苦手属性の-が高くなり過ぎるのを防ぐには使える……のか?
「よし、それじゃあ付けてみるか」
俺はアクセサリーを2つとも装備する。すると、ちゃんと地属性の補正が+30される。
「それなら更に……」
俺はもう1つ補正が+15の指輪を造り、装備してみるが……。
「やっぱり、そう美味い話はないか……」
補正値は+30のままである。
ステータスウィンドウを開いて俺の装備を確認すると、アクセサリーの装備欄は『ウッドブローチ』と『ウッドリング』の2つになっている。
まあ、装備欄のアクセサリー枠は2つしかないからね……ステータスが反映されるのも2つまでなんだろう。
効果は反映されなくても複数付けられるようになっているのは、アクセサリーをたくさん付けておしゃれをしたい人向けなんだろう。
「さて、あとはこれを量産して……」
俺は属性補正付きのアクセサリーを量産するために、ライアたちにお願いして地属性の木材を更に造り始めるのだった。
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「コウ殿! おかげで特殊ダンジョンを踏破できたぞ!」
「オレもだ! まさか、地属性補正のアクセサリー2つ装備で、あそこまで攻撃を軽減できるとはなあ……」
後日、アクセサリーを16個(1人2つを8人分)造り、タイガさんとタケルのパーティーに渡し、バイスさんのゴーレムと戦ってもらったところ、補正によるダメージ軽減によって勝利を収めたのだ。
これが本来の倒し方だったのかな。俺たちのがちょっとイレギュラーだっただけで。
「しかし、うっかり装備を外し忘れて、道中のクー・シーで全滅しかけてしまってな……」
「オレのパーティーはそこで全滅したぜ……-補正には気を付けないとな」
なるほど、そこは-補正の欠点だな。属性スキルだけならまだしも、通常攻撃にも属性が乗ってるのがここにきて効いてくるわけか。
ちなみに、魔女のように複数の属性スキルを使う場合は、そのスキルの属性での判定になるらしい。
魔法使い系のモンスターには気を付けないとな……。
「しかし、属性鉱石なしでこの補正値の装備が造れるなんてな。こりゃ売れまくるんじゃないか?」
「でも、俺1人で造るには限界があるし、動画にして情報を共有することにするよ。というか、もうアップしてる人もいるんじゃないか?」
俺たち以外にもドワーフの村に入れるプレイヤーはいるんだし、情報を聞き出しててもおかしくはない。
「いや、儂が見た範囲ではアップされておらんな」
「情報を知ってても、造るのに成功したプレイヤーがいないんじゃないか? フリーマーケットでも属性鉱石なしでの属性補正のある装備なんて見たことないしさ」
「なるほど……それなら、ドワーフの人に許可を頂いてからアップしますね」
「コウは律儀だな……」
「もちろん、動画で得た収入は還元します」
「律儀過ぎる……」
と、そんなことを話していると、アルテミスさんから久々の入場許可を求められる。
すぐに対応すると、アルテミスさんがホームに入ってきて……。
「コウさん! あ、あの……ライアさんたちをモチーフにした地属性のアクセサリーって造れますか……?」
「え、ええと……こんな感じでしょうか?」
俺はチェンジプラントでドリアードのシルエットのブローチを造ってみせる。
「こ……これです! 1万Gだしますので、ぜひ他の子たちのも……!」
「高い高い」
俺はドリアード、アルラウネ、ブラウニーのシルエットのブローチを造り、アルテミスさんに渡す。
代金として1万Gを払おうとするアルテミスさんだが、俺は1500Gだけ受け取ることに。
「はああ……これでいつでもライアさんたちと一緒……」
「なあタイガ、あいつ大丈夫か?」
「……いつものことだ」
恍惚とした表情を浮かべるアルテミスさんと、苦笑いのタイガさんとタケル。
まあ……賑やかなのはいいこと……なのかな。
その後、属性装備の造り方を解説した動画をアップすると、しばらくして地属性補正のある装備を造る人が次々に出てきて、フリーマーケットなどで装備が売られることに。
そして、それに伴って特殊ダンジョンの踏破者も増えていくことになるのだった。




