戦い終わって
「……ふむ、なるほどのう……鉱脈のダンジョン化が原因じゃったか」
「はい。ただ、モンスターたちはこちらに出てきそうにはありませんし、地下道に影響はあまり無いかと思われます」
特殊ダンジョンから帰還すると、俺はまずクイーンドリアードさんへの報告に来ていた。
ドワーフたちが採掘してこちらへの道を掘り当ててしまう、という可能性があるにはあるけど、採掘場所は第四階層や第五階層らしいので、こちらまで掘り進む可能性はほぼゼロだと思う。
「それなら心配する必要はなさそうじゃな」
「俺としても収穫がありましたし、いい経験もできましたので、いいダンジョンでした」
「さて、それでは礼をせねばの。そうじゃな……それではこれをやろう」
俺は、クイーンドリアードさんに枝と樹液を渡される。
もしかして、この枝は……。
「これは……クイーンドリアードさんの枝ですか?」
「うむ、ワシはスキルで自分の身体から枝葉を生やせるでの。それを切り取ったものじゃ」
「……痛くないですか?」
「なぁに、ワシほどにもなれば痛覚など魔法で消せるわ」
「そ、そういうものですか……」
ほんと、規格外だなあこの人……。
ただ、クイーンドリアードさんの樹液はランクがA+とかなり高かったし、枝の方も期待が持てるな。
さすがにこの場でステータスを見るのは失礼だと思うので、後から見よう。
「さて、それではお待ちかねのお楽しみ時間じゃのう」
「ええ、それでは俺たちの村までお越し頂きましょうか」
「ふぇー!」
「るー!」
そんな話をしていると、地下道からバンシーとアルラウネが俺たちに声をかける。
「ふむ、お主らもコウたちと遊びたい、と。コウ、大丈夫か?」
「はい、もちろんです。人数は多い方が楽しいですしね」
「許可が出たようじゃの。それでは行くとするか」
こうして俺たちは村へ向かったのだったが……道中でクイーンビーに見つかって、『ワタクシもレイおねえさまと遊びたいのですの!』と言われて、クイーンビーもついてくることに。
更に、村に遊びに来ていたシルフィーさん、ウルフレースをやっていたキングウルフさん、村に技術を学びにきていたバンシーさんも加わって、かなりの大所帯に。
そして、キングウルフさんの走りを見にきていたプレイヤーも、上位種の人たちが集まっているのを見て興味津々で……。
「……コウさん、こんなに上位種の方々を集めて、今日は何をするんですか?」
「レックスさん。いえ、実は……」
俺はライアたちやクイーンドリアードさんたちと、ここでトランプをするために集まったことを伝える。
レックスさんは少し考えた後、小声で俺に言う。
「……それなら、イベントとして他のプレイヤーさんたちにも参加してもらう、というのはいかがでしょうか? そうすれば、コウさんの負担も減りますし……」
「なるほど、それなら俺が出突っ張りでトランプをしなくても大丈夫そうですね……」
俺はクイーンドリアードさんたちに許可を取ると、誰でも参加可能なトランプのイベントということを他のプレイヤーたちに伝える。
それを聞いたプレイヤーたちは、他のプレイヤーたちや上位種の人たちと交流したいということで参加することに。
更に、掲示板でこのイベントが紹介され、時間が進むごとにどんどん人が増えていき……。
気づけば、約千人もの人が集まっていた。
さすがに全員が上位種の人たちとトランプをするのは時間的にも無理なので、また別の日に同じイベントをすることに。
クイーンドリアードさんたちとのスケジュール調整は俺がやることになるのだが、喜んでもらえるなら本望だ。
「……それでは皆様、新規イベントの最中ですがゆっくりした時間をお過ごしいただければと思います。また、このトランプイベントは後日も開催します。日程が決まり次第、掲示板でお知らせしますのでお待ちください。……それでは、今回のトランプイベント、開催です」
その後、俺は主にライアたちや他のプレイヤーのペットモンスターたちとトランプをして楽しむことに。
ライアたちも同じ種族や別の種族の子たちと楽しんでいるようで何よりだ。
……そんな中、ふとキングウルフさんの方を見ると……。
「……? キングウルフさんの手札が浮いてる……?」
キングウルフさんの手札はふわふわと浮いていて、場に出す時にはそれがシュッと飛んでいく。
もしかして、風魔法の応用だろうか? これができれば、スコールも一人でトランプが楽しめそうだな。今度キングウルフさんにやり方を聞いてみよう。
……結局、このイベントは盛況のまま深夜まで続き、俺が寝たのは深夜の2時になるのだった……。こりゃ寝坊確定だな……日曜だからいいんだけど……。
**********
「……あー……やっぱりな……」
次の日。……いや、日付が変わって寝たから今日になるのか? ……目が覚めたのは10時過ぎ。大寝坊である。
昨日はライアたちもおねむだったようで、1時前には寝落ちしていた。……今ログインしたら、ライアたちはまだ夢の中だろうか?
「……ま、せっかくだから今日は遅めのログインでもいいかな」
俺はご飯と野沢菜、味噌汁で簡単に朝食を済ませ、お風呂の掃除などをしてからログインしようとしたのだが……。
「……なんだ、このメッセージ数とコメント数……」
タケルとタイガさんとアトラスさんとアテナさんからメッセージが来ていて、ギルド名義でアップしている特殊ダンジョンの動画には攻略の問い合わせが多数……。
モンスターハウスの動画はアトラスさんが撮影していて、トランプイベントで後から合流した時にアップ許可をお願いされたけど、まさかここまでコメントが来るとは。
正直、ライア……ドリアードのスキルありきの攻略だったから、あんまり参考にならないかもと思ってたんだけどなあ。
とりあえず順番に見ていこう……一個一個を確実に終わらせていけば、いつかは全部終わるはず……。
「まずはメッセージからだな……どれどれ」
タケルとタイガさんはモンスターハウスの後のゴーレム戦についてかあ……バイスさんはあれからゴーレムを改良してるから、同じ手は効きそうにないんだけど、どうしたものか。一応、同じ手は通用しないと思う、と念押ししたうえで、俺たちの攻略方法……火攻めを送信しておくかな。
それから、バイスさんが強敵を探しているのも追記しておこう。もしかしたら、こちらで実力を認められる可能性もあるし。
アトラスさんとアテナさんはドワーフの村で得たスキルで新しい装備を作りたいから、装備の内容を教えて欲しい……か。二人とも、地属性の属性補正が付きやすくなるスキルなんだな。
アトラスさんにはショートソードとハンマーを、アテナさんにはライアたちの服をお願いしよう。
「……で、あとは動画へのコメント返信だけど……AIで同じようなコメントはまとめて……っと」
『ドリアード以外のスキルでもモンスターハウスは攻略できますか?』
タケルやタイガさんはメッセージでバイスさん……ゴーレム戦の質問を送ってきてたので、しばらくすれば動画がアップされそうだし、アップされたらそちらを紹介しようかな。
『自分のパーティーとは合計レベルが違うのか、動画よりも強いモンスターが出てきます。メンバーを入れ替えてレベルを調整した方がいいでしょうか?』
そういえば俺たちのパーティーの合計レベルを書いてなかったな……合計レベルを追記しておこう。
モンスターの構成も聞いておこうかな。参考になるか分からないけど、構成次第では同じような戦術が使えるかもしれないし。
『うちのギルドにはドリアードがペットモンスターの人がいません。ドリアードをペットモンスターにする方法が知りたいです……(切実)』
実はうちのギルドも初期ペットモンスターがドリアードの人以外、ドリアードがペットモンスターの人はいないんだよね。
結構仲良くなったつもりではあるんだけど、それ以外の条件があるのかな。バンシーたちも未だにペットモンスターになる兆しはないし……。
ドリアード以外のスキルでも突破できるように、俺の方でも戦術を練ってみるか……?
「……よし、こんなものかな」
俺はメッセージとコメントに返信を終えると、ワールドクリエイターズにログインする。
「おや……ライアとブラウンはまだ寝てるのか」
時間は11時過ぎ。
いつもは起きてレイたちと遊んでいる時間なのに、まだベッドで寝息を立てている。
俺は二人からずれた布団をかけなおすと、音を立てないように外に出る。
「るー!」
「がう!」
一方、レイとスコールは既に元気に庭を駆け回っている。
レイは外で根を張って寝るから、朝日で起きたのかな。スコールも穴を掘って、周りを枝や落ち葉で固めて暖かい寝床を造っているので、同様に朝日で目覚めたのだろう。
時々は中で一緒に寝ることもあるんだけど、こっちの方が落ち着くとか。本能ってやつなのかな。
「そうだ、スコール。トランプイベントのキングウルフさんは見てた?」
「がう!」
「あの時、キングウルフさんは札を浮かせていたけど……あれをスコールが習得できれば、みんなと一緒にポーカーみたいなゲームでも遊べるかも」
「がーう、がう」
なーるほど、みたいなイントネーションで返事をするスコール。
どうやら興味があるみたいだ。今はポーカーなどは俺がサポートしながらトランプをしているけど、キングウルフさんと同じことができれば、俺も含めた対戦ができるかもしれない。
「ちょっとキングウルフさんの所に行ってみる?」
「がう!」
「よし、それじゃ早速村に行こう!」
**********
「──なるほど、それで我に教えを乞いたいと」
「はい、もし可能でしたら……ですが」
「ふむ……スコール、3日ほど我と共に修行をするか?」
「がう!」
「『もちろん』、か。分かった、それならば……コウ、しばしスコールを預かるが、いいか?」
「大丈夫です。キングウルフさん、スコールのことをお願いします」
……そういえば、ペットモンスターと一時的に離れることって可能なんだろうか?
今まではずっと一緒だったんだけど……。
【INFO:スコールが一時的に離脱しますが、よろしいですか?】
……あ、確認されるんだ。『はい』を選択して……っと。
「ところで、お礼はどうしましょうか?」
「……ふむ、それなら蜜をもらえるか?」
「分かりました。……あ、こういう蜜もあるんですけど……」
俺はクイーンビーのハチミツを取り出すと、蓋を開けてキングウルフさんに差し出す。
キングウルフさんはハチミツの匂いを嗅ぐと、目を見開く。
「……よし、これでいいだろう。これで行くしかあるまい」
尻尾の方を見ると、見たことないぐらいブンブン左右に振り回している。そんなに気に入ったんだ……。
そんなあざといモーションを見ながら、俺はハチミツの2つ目を取り出してキングウルフさんに手渡す。
「いいのか? 習得できるかどうか分からんのだぞ?」
「習得できてもできなくても、キングウルフさんの時間を使って頂いているので、対価を出すのは当然でしょうし……あ、この2つは前払い分です」
「そうか。それならば我も全力で教えねばな。…………ハチミツのために」
最後はボソッと言ってたけど、丸聞こえですよ……。まあ、威厳のために聞かなかったことにしておこう。もう、クイーンドリアードさんと同じで、あってないようなものだけど……。
さて、俺はルァイド……ドワーフの村でものづくりについて聞き込もうかな。
杖を作っているドワーフの人もいたから、俺も杖をパワーアップさせたいしね。
あと、キングウルフさんへのお礼に、クイーンビーのハチミツをもらっておかないと。
またレイと交渉してクイーンビーに渡すレイの蜜をもらわなきゃ……。
こうして、ダンジョン攻略が終わっていつもの日常が戻ってきたのだった。




