特殊ダンジョン攻略②
『さぁて、楽しませてくれよ!』
ゴーレムが剣を振りかぶり、こちらに向かって勢いよく振り下ろしてくる。
俺たちは剣を避けるが、剣が地面を抉り、地面の石が砕けて飛び散って俺たちに降り注ぐ。
「痛っ……これでもダメージを受けるんですか……?」
「ここまで力が強いってことは、まともに受けたら多分一撃死だぜ」
「いったん散開して戦いましょう」
俺たちはリビングアーマーの時のように、ゴーレムを囲むようにして展開する。
これなら攻撃に他の人が巻き込まれないから、戦いやすいはずだ。
「ウインドカッター!」
アトラスさんが杖に持ち替えてウインドカッターを放つも、ゴーレムは避ける素振りも見せず、胴体に受ける。
……しかし、かすり傷の一つさえ付いていないようだ。
『おいおい……風属性補正を乗せた火力でアレかよ』
『詠唱をして威力を上げるか……それともあのゴーレムは打撃に弱いんでしょうか……?』
『となると、まずは詠唱を試して……ッ?!』
ゴーレムが俺の方を向いて、大剣を振り上げる。
俺は盾を構えながら横に避けて大剣を避ける……が。
『はっはっは! そう簡単に逃がすかよォ!』
地面を抉った大剣が、地面を抉りながら横……俺の避けた方向に迫ってくる。
「ぐっ?!」
「コウ!」
そして、大剣の刀身の面部分で俺は弾き飛ばされ、壁に激突する。
『嘘だろ……地面からかなりの抵抗を受けてるだろうに、この威力かよ……』
『コウさん、大丈夫ですか!?』
『は、はい。ただ、今のだけで最大HPの半分以上のダメージを受けてますね……いったん回復したいところですが……』
『まずはお前からだなァ! さっきの戦闘を見せてもらったが、お前が一番厄介だからな!』
どうやら、普通のモンスターと違ってヘイトなどが存在しないのか、俺がターゲットなようだ。
「魔に研がれし風よ、鋭き刃と成りて我が敵を斬り裂け……ウインドカッター!」
アトラスさんが詠唱を加えたウインドカッターで背後からコアを攻撃する……が。
『効かんな……コイツの装甲は伊達ではない!』
……ん? コイツ? もしかして、このゴーレムは誰かが操ってるのか……?
しかし、詠唱付きのウインドカッターでも無傷となると、どうすればいいんだ……。
『さぁて、これでお前は詰みだな』
しかし、考えている暇もなく、ゴーレムは俺との距離を詰めてくる。
一歩の差が大きすぎて俺は壁際から逃げられず、もうこれ以上後には引けない。
アトラスさんとアテナさんが魔法で攻撃をしてくれているものの、ゴーレムはずっと俺を向いたままだ。
ゴーレムは大剣を振り上げ、俺に振り下ろす……前に!
「バインド!」
『ぬっ!』
俺はバインドでゴーレムの手を縛り上げ、大剣の動きを止める……が。
『ふんッ!』
「なっ……?!」
なんと、ゴーレムは盾を俺の方に向かって投擲してきた。
予想だにしないゴーレムの行動で一瞬思考が止まってしまい、俺は盾の直撃を受けてしまう。
「コウさん!」
『さて……あとはお前たちだな?』
くそっ……やはり上位種だけあって強すぎる……。
思えば、今までの上位種モンスターは誰とも戦っていないものの、レベル差は果てしないものだったし、こうなるのも必然だったのか……。
……あれ……? 盾が直撃したのに……身体が動く……?
俺は戦闘不能になったものだと思ったのだが……。
「そういえば……」
試しにと思って蘇り草を1個ポーチに入れていた。
25%での復活を引いたのか……これならゴーレムの隙を突けるが、どうすれば……。
俺は盾の陰からゴーレムの様子を伺う。
どうやら今はアトラスさんが接近戦を、アテナさんが無機物操作で遠距離攻撃を行っているようだ。
確かに足元に潜り込めば、踏みつぶされる危険はあるものの、大剣の攻撃は避けやすいか。
しかし、二人の攻撃でもゴーレムに傷が付くことはない。
『アテナさんかアトラスさん、火魔法は使えますか?』
『生きてたのかコウ! ああ、おれが使えるが……』
『それなら考えがあります! 俺はゴーレムに気付かれないように背後を取りますので、何とか凌いでください』
『簡単に言ってくれるな……だが、やぁってやるぜ!』
俺は、二人がゴーレムの気を引いてくれている間に、ゴーレムの背後に忍び寄る。
そして、ゴーレムが大剣を振りかぶった瞬間に隆起で足元を掬い、更にバインドでバランスを崩しにかかる。
『むっ……生きていたのか?!』
『アトラスさん、テイルウインドでゴーレムを倒してください!』
「おう! テイルウインド!」
アトラスさんがテイルウインドを使うと、バランスを崩したゴーレムが地面へと倒れ込む。
『アトラスさん、コアの部分にありったけの火魔法を!』
「よし! 喰らえ……ファイアーボール!」
『アテナさんは俺と一緒にコアに打撃をお願いします!』
「分かりました、無機物操作で……!」
俺は風属性のハンマーを、アテナさんは無機物操作で大剣を、ファイアーボールの合間にそれぞれコアに叩き込む。ゴーレムの拘束が解けそうになったらバインドを上書きする。
更に、さっきの間にこっそり習得していたファイアーボールで俺も火魔法をついでに叩き込むと……。
『あぢぢぢぢぢ! ま、参った! やめてくれ!』
ゴーレムから……いや、ゴーレムの中から声が聞こえる。
その言葉により、俺たちは攻撃の手を止めると、ゴーレムはゆっくりと身体を起こし、ゴーレムのコアの傍の胴体部分が開いていく。
そこから出てきたのは、豊かなヒゲを蓄えた少し身長が低い人間だった。
「もしかして……ドワーフの方ですか?」
「ああ、そうだ。……しかし、いつからオレがゴーレムに乗っていたと気付いてた?」
「『コイツの装甲』と言ってたあたりからですね」
「はー……そいつぁ失言だったな。で、オレが乗ってるから火で攻めたってことか」
「ウォーターでの水攻めも考えたんですけどね。熱せられた石って熱いので、火の方がいいかなと思いまして。ただ、石は熱伝導が低いので、ダメならウォーターで急激に冷やして壊そうかと思っていました。中まで熱くなったのは、どこかから酸素を取り入れないと酸欠になるので、空気の通り道があったからでしょうか」
「……なるほどな。はぁ……この戦力差があって完敗するとはなあ……気に入ったぜお前ら! ついてきな、オレたちの村に案内するぜ」
「ありがとうございます。アテナさん、アトラスさん、行ってみましょう」
俺たちはドワーフについていくと、ドワーフは壁に隠された紐を引っ張り、隠し通路が開いた。
……これはドワーフに勝たないと分からない仕組みだな……。
俺たちはドワーフに続いて、階段を降りていくのだった。
**********
「……さて、ここがオレたちの村、ルァイドだ」
案内された階段の先には、ドワーフたちの住む小さな集落があった。
さまざまな場所で鍛冶をしているのか、火が揺らめいているのが見える。
……それにしても、発音しづらい村名だな……ライドでいいじゃんとは思わなくもない。
でもまあ、バイオリンと書くよりはヴァイオリンと書く方がかっこいいと思ってた時期が俺にもあったしな……。
俺たちはドワーフに案内されて村の入口の門に行くと、別のドワーフに呼び止められる。
「おう、バイスじゃねえか。……ん? そっちは人間か?」
「ああ、オレの人造ゴーレム試作一号機に勝ったやつらだ。気に入ったんで連れてきた」
「へぇ、お前が気に入った人間ねえ。……ところで、お前らの中で鍛冶をするやつはいるのか?」
「それなら、おれがやってるぜ」
「人間の鍛冶師が手掛けた装備を見てみたいんだが……いいか?」
「それぐらいならお安い御用だ」
アトラスさんはアイテムポーチからリビングアーマー用の大剣を取り出す。
ドワーフはそれを手に取り、じっくりと観察していく。
「ほぉ……なかなかスジがいいな」
「鍛冶のスペシャリストであるドワーフにそう言って頂けると嬉しいぜ」
「ただ、まだまだ伸びる余地があるな。この後、時間があるならうちの工房に来い。いろいろ教えてやろう」
「直々にか……コウ、アテナ、村の探索は二人に任せていいか?」
「もちろんです、アトラスさんなら鍛冶スキルの向上は外せないでしょうしね」
「よし、それじゃあおれは教えを受けてくるぜ。長引くようならメッセージを送るから、ゆっくりしてくれよな」
こうして、アトラスさんは鍛冶師のドワーフと一緒に工房へと向かって行った。
その後も、人間が珍しいのか多くのドワーフに声を掛けられる。
女性のドワーフは服作りなどをしているらしく、アテナさんの作った服が気になって、今度はアテナさんが連れていかれることに。
アテナさんもドワーフたちの服作りの方法が気になると言っていたので、お互いにいい影響があるといいな。
「……そういえば、バイスさんはどうして俺たちと戦ったんです?」
「ま、人造ゴーレム試作一号機の性能テストだな。あの数のモンスターを倒したやつらなら、いいデータが取れると思ってな。実際に改善点は見つかったし、いいデータは取れた。ありがとな」
……これ以上改良されたら、今後ほかのプレイヤーが勝てる要素が見えないんですが。
などと言えるはずもなく、俺は『どういたしまして』と返すしかない。
「それにしても、ダンジョンの中に村があるなんて珍しいですね」
「いや、逆だ。村と隣接していた鉱脈がダンジョンになったんだ」
「鉱山がダンジョンに……?」
「ああ、『ダンジョン化』という稀にある現象でな。最近まではただの鉱脈だったんだが、ダンジョン化現象でダンジョンになっちまったんだ。ゴーレムやノームたちが棲みついたのもその時期だな」
ダンジョン化、そんな現象があるのか。
……もしかして、地下道にダンジョンの入口ができたのも、ダンジョン化の影響だろうか?
「ま、オレたちとしては今まで通り鉱石も採掘できるうえに、ダンジョン内の宝箱も取れるようになったから、利点しかないがな」
「採掘中にモンスターに襲われたりはしないのですか?」
「いや、オレたちはモンスターと共存してるんだ。長老がモンスターの言葉を理解できる人でな、お互い助け合おうと話をつけたから、敵対関係は一切ない」
「……もしかして、ノームたちの操っているリビングアーマーって……」
「ああ、オレたちが採掘した鉱石で造ったものだ。いい出来だろ?」
あー……ノームやブラウニーが造るには大きすぎると思ってたけど、これで合点がいった。
ドワーフが造ったから強いわけだ……どんだけ苦労されられた人がいるのやら……。
「……よし、村の案内はこんなとこかな。よければまた試運転に付き合ってくれ」
「いえ、俺たちよりも強い人はたくさんいますよ」
「ほう。それならそいつらを呼んでもらえるか? 村長に頼んで人間もいつでも出入りできるようにしておくからよ。条件は出されるかもしれねえが……」
「分かりました。それでは俺の知り合いに伝えておきますね」
「よーし、今から改良して待ってるぜ。それじゃ、オレは長老に説明に行ってくる」
俺はバイスさんと別れて、村をのんびりと見て回ることにする。
実は、案内されている時にいい匂いがしてて気になってたんだよね……名物、食わずにはいられないッ!
**********
【INFO:特殊ダンジョンの踏破者が出たため、ドワーフの村『ルァイド』へポータルから移動できるようになりました。ただし、村の中に入るにはドワーフに認められる必要があります。条件に関しては後述致しますので、そちらをご確認ください。】
俺がドワーフの村名物、燻製肉に齧り付いていると、運営からアナウンスが流れる。
なるほど、今回は全5階層だったんだな。そして、村に入る条件は……。
・特殊ダンジョンの第五階層を踏破する
・ドワーフにものづくりの腕を認められる
……前者は結構厳しいけど、後者ならそこそこいけるかな?
新しい村だし、入るためにものづくりを始める人も増えるだろうか。
……さて、アテナさんもアトラスさんもまだ帰って来ないし、そろそろ夕方なので先にお暇しようかな。
俺にはライアたちやクイーンドリアードさんたちとトランプ三昧という、本日最大のラスボスが待ち構えているのだから……。
こうして、俺はアテナさんたちにメッセージを送り、ルァイドを後にするのだった。




