特殊ダンジョン攻略①
「……そろそろ第三階層のボスですね」
「ああ、リビングアーマーとストーンゴーレムのコンビだ。先にリビングアーマーを落とせば楽勝なはずだ。頼んだぜ、アテナ」
「はい! すぐにノームちゃんの場所を見つけます!」
俺たちはボス部屋に突入する。
部屋の入口付近にはストーンゴーレムが、中央にはリビングアーマーが配置されている。
『…………見つけました、ノームちゃんは部屋の東側にいます!』
『なるほど、第一階層のように奥じゃないのか。その辺は対策してるんだろうな』
『それなら、俺とアトラスさんでリビングアーマーとストーンゴーレムを引きつけておきますので、ノームはアテナさんにお願いします』
『分かりました!』
こういう時にグループチャットは便利だ。
普通に喋っているだけで遠隔で会話ができるし、声はチャットの方に転送されるので敵に音声が漏れることはない。
敵から見たらすごく卑怯なんだろうけど……こちらもモンスターの言葉は分からないのでお互い様だと思う。
「……チェンジウェポン!」
俺はロングソードでストーンゴーレムの足を薙ぎ払うと同時に、当たる直前に風属性のハンマーに持ち替える。
ガン、と鈍い音がして、ストーンゴーレムの足にヒビが入る。有利属性を突いているとはいえ、一撃でここまでになるのか……。
「こいつはおまけだ!」
同じ箇所にアトラスさんがハンマーで追撃をする。
俺よりも力のステータスが上のアトラスさんの一撃を受け、ストーンゴーレムの足は崩れ落ちる。
「……!」
ストーンゴーレムが劣勢と見るや否や、リビングアーマーは俺たちの方に向かってくる。
その隙にアテナさんは東側へ走り出し、俺たちはチェンジウェポンで地属性の杖に持ち替えてリビングアーマーの剣を盾で受け止める。
「~ッ……!」
それでもかなりの衝撃が腕に走る。地属性補正でダメージを軽減しているのにこれか……確かにまともにやりあってたら、かなり消耗させられるはずだ。
「……!!」
リビングアーマーが追撃のために大剣を振りかぶると同時に、その場に崩れ落ちる。
どうやら、アテナさんがノームを撃破したようだ。
「よし、こっちも終わりだ!」
アトラスさんは倒れたストーンゴーレムの核にハンマーを振り下ろす。衝撃で核は砕け、ストーンゴーレムは消滅していく。
そして、リビングアーマーも同様に消え去っていく。アテナさんがノームと和解したのだろう。
「問題なく倒せたな。コウはダメージは大丈夫か?」
「属性で軽減したうえで盾で受けても、60もくらってますね……確かに、まともに相手をしてたらアイテムがいくらあっても足りないでしょうね」
俺はポーションを飲んでHPを回復する。10個までしか持って入れないので、できるだけ攻撃は受けるより避けた方が良さそうだな……。
「次の階層まで攻略情報が出回ってるんでしたっけ」
「ああ、次の階層は一本道らしい。で、ボスはデュラハンだな」
「一本道……ということは戦闘が避けられない感じですね……ゴーレムなら隙を突いて先に進めそうですが」
「おれのスキル……というか、シィルのスキルに速さバフのスピードアップがあるだろ? それを使って一気に駆け抜ける感じだ」
「了解です。デュラハンも地属性なんですよね」
「ああ、基本的に地属性だな、例外はクー・シーの風属性ぐらいか」
そういえばクー・シーだけ風属性だったんだよね。
ノームもリビングアーマーもブラウニーもトロールもゴーレムもケット・シーも地属性なのに。
「……はぁ、クーちゃんペットモンスターにしたかったなあ……」
「あの図体であの機動力だからなあ……馬みたいに騎乗して戦えるのは楽しそうだ」
「そのうちペットモンスターにする方法が発見されるといいんですけどね」
「ぜひ! 私たちで! 探しましょう!」
「分かった、分かったから落ち着けアテナ」
アテナさんはアルテミスさんほどではないけど、かわいい子には目がないからなあ……。
ケット・シーはかわいいだけでなく、人の言葉を理解できるし、ペットモンスターにできたら他の子との意思疎通もしやすいだろうなとは思う。
「では、そろそろ行きましょうか」
「だな。ザコモンスターが集まってくるだろうし……」
俺たちは階段を降りて、第四階層に入る前にスピードアップを全員にかけ、ボス部屋まで一気に駆け抜けるのだった。
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「……っ! なんだか寒気がしますね……」
他の部屋よりも暗いボス部屋に突入すると、背筋が凍るような感覚に襲われる。
そして、次の瞬間、部屋の黒いモヤのようなものが中央に集まっていき、モヤが晴れると首のない馬に跨ったデュラハンが姿を現す。
「おーおー、凝った演出してんなあ」
「馬も鎧を纏っていて、かなり硬そうですね……」
「それでいてスピードもクー・シーより少し遅いぐらいだからな。スピードアップのバフを絶やさないようにしないとな……」
「……来ます!」
デュラハンは槍を構えてこちらに向かって突進してくる。
俺たちは盾でガードしつつ横に避けたものの、ケット・シーのレイピア以上のリーチがあるため、重い一撃を盾に受けてしまう。
ダメージは50。ストーンゴーレムよりも威力は低いものの、動きが速くてこの威力だから、かなりの難敵だ。
「バインド!」
「……!」
俺はデュラハンが馬を切り返す際に若干減速したところを狙って、バインドでの拘束を試みる。
しかし、スキルが発動する瞬間に速度を上げてバインドを避けてくる。
「それなら私が!」
アテナさんはクー・シーの時のように、デュラハンの突進に合わせて地属性の大盾をぶつける。
しかし、デュラハンはジャンプしたうえで、それを踏み台にして高所から勢いを乗せた槍で突いてくる。
『盾を踏み台にしたぁ!?』って言いたいところだけど、今はそれどころではない。
しかし、反射神経もかなりのものだな……一匹だけでボス部屋を任されていることはある……。
むやみやたらにウインドカッターを撃っても避けられるだろうし、どうしたものか。
攻略情報としては、肉を切らせて骨を断つ戦法で、ダメージ覚悟で馬を潰して機動力を削げとあったけど、実際に対峙してみるとそれどころではないな……。
そんな事を考えていると、再びデュラハンが突撃をしてくる。
しかし、俺は正面から盾を構えて受け止める姿勢を見せる。
「コウ!」
「大丈夫です! 俺に考えがあります!」
俺はデュラハンを充分に引きつけてからスキルを発動させる。
「陥没!」
「……!?」
俺は突進してくるデュラハンの足元を陥没スキルで陥没させる。
デュラハンは段差に足を取られ、馬が転倒する。
しかしデュラハンは咄嗟にジャンプして馬を乗り捨て、槍でこちらに一撃を入れてくる。
「今だアテナ!」
「はい!」
アトラスさんとアテナさんは転倒した馬に向かって行き、ハンマーで脚に、大剣で胴体に攻撃を入れ、馬の方を再起不能にする。
さて、これで残るは騎士部分だけだ。
……その後、流石に騎士部分は重装備だけあって動きが鈍く、バインドで拘束をしながらウインドカッターなどの遠距離攻撃でのヒット&アウェイで攻撃を受けずに完封することができた。
「なるほどな、こういう攻略方法もあるのか……」
「うまく行くかは分かりませんでしたが……何とかなってよかったです」
俺たちはブラウンのスキル『効果増幅』でHPとMPをアイテムで回復させながら、戦闘のことを振り返る。
「でも『陥没』持ちじゃないと使えないから、万人向けではないですよね」
「いや、それでも被害を抑えられるから充分な攻略方法だと思うぜ。これのためにドリアードがペットモンスターのプレイヤーの株が上がりそうだ」
「しかし、前回のイベントの時からナーフされたとはいえ、まだまだ強いですよね。陥没と隆起スキル」
「ま、今回は任意のタイミングで発動できるシステムがあったからこそだな。ライアたちだと完璧なタイミングで使ってくれるとは限らないだろ?」
確かに、今回のデュラハンの敏捷性はかなりのものだし、指示を出していたら早すぎて避けられたか、遅すぎて効果がなかったかの可能性はあるだろう。
ペットモンスターを連れていない時に、ペットモンスターのスキルを使えるシステムだからこその攻略方法だな。
「……さて、次が本番だぜ」
「情報だけ見ると、クリアさせる気があるのかって感じでしたね」
「わ、私緊張してきました……」
「まだ踏破できたパーティーがいないので、ダメ元で気楽に行きましょう」
「そういうことだ。……よし、HPもMPも回復したし、行くとするか」
俺たちは速さバフをかけてから、未踏の第五階層に突入していく。
「……はは、実際に見ると圧巻だな……」
「本当にクリアさせる気があるのか疑うレベルですね……」
第五階層に入った俺たちの視界に入るのは、クレイゴーレム10体、ストーンゴーレム4体、リビングアーマー(ノーム)4体の計18体のモンスターで構成される、いわゆるモンスターハウス。
リビングアーマーは1体でもきついのに、それが4体である。この大所帯の中、ノームを見つけて撃破するだけでも一苦労だろう。
というか、俺たちのレベル帯でこれって、タイガさんやタケルたちはこれより上の相手と戦ってるのか……。
『アテナさん、ノームはどこにいるか分かりますか?』
『ええと……えっ!?』
『どうした? 何か問題でもあったか?』
『魔力の導線をたどると……ストーンゴーレムの頭の上です!』
『何ィ!?』
今までは壁付近に隠れていたのに、今回はなんとストーンゴーレムの頭の上。
攻撃する方法が限られる上に、下手をすればストーンゴーレムにノームへの攻撃を防がれてしまう。
更に、頭上からならこちらの動きが丸見えなので、ゴーレムとの連携も完璧にこなしてくるはず。
「ま、やるしかねえな……ゴーレムは動きが遅いとはいえ、ぐずぐずしてると囲まれるから、動きながら戦うぞ」
「「はい!」」
速さのバフがかかった俺たちは、まずは囲まれないように動き回りながら、弱いモンスターからダメージを与えていくことに。
動きが遅いため、孤立したクレイゴーレムから足を破壊して行動不能にしたいのだが……。
『ちっ、どうやっても4体のリビングアーマーがフォローに入ってくるな……』
『こちらの動きが丸見えですからね……先にリビングアーマーかノームを狙うしかなさそうですね』
『しかしどうする? ダメ元でウインドカッターを撃ってみるか……』
「ウインドカッター!」
アトラスさんはストーンゴーレムの頭上に向かってウインドカッターを放つ。
しかし、ストーンゴーレムがそれを腕で完全に防ぎ、ノームには届かない。
『……ちっ、やっぱり無理か』
『いえ、もう一回お願いできますか? 今度はノームよりも下の位置を狙ってください』
『下……? ああ、そういうことか!』
「ウインドカッター!」
アトラスさんは再びウインドカッターを放つ。今度の狙いはノームの位置よりも下、ストーンゴーレムの顎だ。
ストーンゴーレムは防御姿勢を取ってウインドカッターを迎え撃つ。しかし、狙いはそこではない。
「陥没!」
「むー?!」
俺は陥没スキルでストーンゴーレムの足元の地面を陥没させる。
そして、ストーンゴーレムの顎があった位置には、今はノームが存在し……ウインドカッターは見事に命中し、反動でノームはストーンゴーレムから転がり落ちていく。
ノームが戦闘不能になると、リビングアーマーの一体が停止し、床に装備が崩れ落ちる。
『よし、もう一回いくか?』
『いえ、警戒されるでしょうし……次は別の方法を試します。ゴーレムを集めることはできますか?』
『それなら私が囮になります。この中で一番速さが高いですし』
『それではお願いします』
アテナさんはゴーレムに近づくと、攻撃を誘って動きを止めさせてゴーレムを集める。
その間、俺とアトラスさんはウインドカッターでリビングアーマーを攻撃し、防御させて足を止める。もちろん、合間合間にノームへのウインドカッターも欠かさない。
しばらくすると、ゴーレムがアテナさんの周りに集まり、クレイゴーレムとストーンゴーレムが密集していく。
『アトラスさん、ストーンゴーレムの後ろのクレイゴーレムの足を狙ってください』
『よし、それじゃあ武器を持ち替えて……』
『アテナさん、退いてください!』
『分かりました!』
「「ウインドカッター!」」
俺とアトラスさんは同じクレイゴーレムの足に向かって、同時にウインドカッターを撃つ。
風属性補正がかかったウインドカッターの威力は抜群で、クレイゴーレムの足が切断される。
そして、バランスを崩したクレイゴーレムが、ストーンゴーレムを巻き込んで地面に倒れ込む。
「むーっ?!」
ノームが倒壊に巻き込まれて戦闘不能になり、リビングアーマーが更に一体動かなくなる。
『……これは……いけるかもしれねえな!』
『次は隆起で位置をずらしてウインドカッターを当てましょう!』
『よし!』
その後、隆起とウインドカッターのコンボで更にノームを戦闘不能に追い込み、残るノームは一体。
さすがに密集するのは危険だと学習したゴーレムたちは散開するものの、それもこちらの思惑内だ。
「隆起!」
今度は単発で地面を隆起させ、ストーンゴーレムを段差の上に移動させる。
そして、ストーンゴーレムが段差から降りるタイミングでバインドのスキルを発動させ、バランスを崩させてノームを頭上から落とし、ウインドカッターで戦闘不能にする。
クレイゴーレムとストーンゴーレムのみとなった今、あとはクレイゴーレムから順に倒していく簡単……ではないけど、リビングアーマーが存在するときに比べれば簡単な作業である。
ゴーレムたちの連携に気を付けつつ、各個撃破で敵を全滅することに成功する。
「……ははっ、まさか行けるとはな……今回は実戦経験を積んで、次回以降で本格的に攻略、と思ってたんだが……」
「ナーフされたとはいえ、隆起と陥没はまだまだ強いですね……」
「使い方次第でここまで化けるんですね……あ、とりあえず回復しておきましょう」
「そうだな、次の階層は未知の階層だから、準備は万端にしておかないとな」
俺たちはマジックポーションでMPを回復させ、次の階層に備えた……のだが。
「……ん? 次の階層への階段はどこだ?」
部屋を一周しても、階段が見つからない。まさかの行き止まりなのか?
しかし、それならどうやってここから出れば……。
『はっはっは! あいつらを倒すとは……やるじゃねえか、人間!』
突然、中央に魔法陣が現れ、そこから今まで見たことがないゴーレムが姿を現す。
しかも、他のゴーレムと違って剣と盾で武装をしている上に、人の言葉を話している。
「もしかして、ゴーレムの上位種……?」
「こいつを倒したら次の階層に行けるってことか……?」
「アトラスさん、アテナさん、来ます!」
俺たちは戦闘態勢を取り、未知のゴーレムを迎え撃つのだった。




