特殊ダンジョン攻略準備
「……おっ、ものづくりのアンケートの結果が出てる……どれどれ」
・普段からものづくりをする:28%
・普段はあまりものづくりをしない(必要な道具のみ):63%
・普段はものづくりをしない:9%
……ということは、ある程度ものづくりをしているプレイヤーでないと、ブラウニーをペットモンスターにできないってことなのかな。割合もペットにできた人とできない人の割合とほぼ一致してるし。
確かにユニークスキルがものづくりに関係しているし、ものづくりをしているプレイヤーが恩恵を受けられるモンスターではあるんだよね。
この結果を基にして、『ものづくりの回数がブラウニーをペットモンスターにできるかの判定に使われているのではないか?』という情報を発信してみたところ、ブラウニーをペットにできなかった攻略班の人たちが調査を始めてくれた。
また、普段はものづくりをしていないけど、ブラウニーのためにものづくりを始めたプレイヤーも出てきたようだ。ノームに引き続き男の子のモンスターなので、そういう需要があるのだろう。
男の子率が高いものの女の子のブラウニーもいるようで、小さくてかわいらしいからかわいい服を作ってあげたというプレイヤーもいて、服をプレゼントしてもブラウニーが去ることはないことが判明する。
これに一番喜んだのはアテナさん。
知った瞬間から凄い勢いで服を作り始めたのだとか……そして、ブラウニーが服作りを手伝うことで、服のステータス補正値が上がるのも確認できたとのことだ。
また、アトラスさんの方も、鍛冶を手伝ってもらうことで装備のステータス補正値が上昇するのを確認できて、今はノームが操るリビングアーマーの装備を造っているのだとか。
ほんと、一家に一人という宣伝文句が付きそうなぐらい、ものづくりには欠かせないパートナーになりそうだな。
「……よし、動画の更新もできたし、ブラウンの家具を作ってあげようかな」
俺はウィンドウを閉じると作業室に向かうのだった。
**********
「らー!」
俺はブラウンに椅子と机をプレゼントすると、目をキラキラ輝かせて大喜びしてくれる。
驚かせるために、スコールに頼んでブラウンと一緒に遊んでもらっていた甲斐があったな。
作る際にはライアとレイも手伝ってくれたので、そのこともブラウンに伝えると、ブラウンは2人にお礼をする。
「ら!」
「きゅー」
「るっ」
……おそらく、ブラウンが一番小さくて年下だから、2人はお姉ちゃんっぽく振る舞いたかったのかな。
一緒に遊具で遊んでいる時もブラウンを優先してあげてたしね。お姉ちゃんとしてしっかりしていて俺も嬉しくなってくる。実際の年齢差はどうなのか分からないけど。
そんな微笑ましい光景を見ながらゆっくりしていると、さっそく動画の方にコメントが付き始める。
その中にはブラウニーをペットモンスターにできなかったプレイヤーから、ある程度ものづくりをしてから再度挑戦するとペットにできたという報告もある。
やはりブラウニーをペットモンスターにするには、ものづくりをすることが必要不可欠なようだ。
確かにタイトルがワールドクリエイターズだし、運営としてもものづくりをある程度はして欲しいのだろう。
そして、ブラウニーをペットモンスターにできたプレイヤーで、一緒に作業してくれるからものづくりにハマってしまったという人も出てきているようだ。ものづくりの楽しさを知ってもらえて俺としても嬉しいところである。
「……さて、それじゃブラウン、ブラウンを俺の知り合いに紹介したいけどいいかな?」
「ら!」
クイーンドリアードさんには既に会ったけど、キングウルフさんたちにはまだブラウンを紹介できていない。
日曜でせっかく時間があるんだし、各地を回って紹介してあげないとね。ブラウンのレベル上げも兼ねられるし……。
俺はブラウンを連れて、各地を回ることにした。
**********
「かわいいですの! ブラウンちゃん、ワタクシはあなたのお義姉ちゃんのクイーンビーですの!」
「らっ……」
うーん、圧が強い。いや、キャラが濃い?
そのせいか、ブラウンが俺の後ろに隠れてしまった。
「うう……お義姉ちゃん悲しいですの……」
クイーンビーがうなだれる。まあ、初対面で拒絶されたらそうなるよね……。
そんな中、一匹のビーが巣に帰ってきたのだが、ブラウンがその動きをじーっと目で追っている。
「ビーが気になるですの? 蜜を集めて戻ってきたので、ハチミツを作るところですの。見ていきますの?」
「ら!」
お、ハチミツ作りもものづくりだし、ちょっと気になるのかな?
これがきっかけで仲良くなってくれればいいんだけど。
「……ブラウンが巣の中に入っても大丈夫?」
「もちろんですの! かわいい義弟のためですの、恥ずかしいところも全部見せちゃいますのー」
「らー!」
「俺は身長が高いからハチミツづくりの邪魔になりそうだし、クイーンビーに案内をお願いできるかな?」
「大丈夫ですの! それじゃ行きますの!」
「ら!」
……ふぅ、なんとか打ち解けてくれたようで何よりである。
若干心配ではあるけど、クイーンビーは悪いようにはしないだろう。
それから、一匹、また一匹と帰ってくるビーたちを見ながら、俺はのんびりと2人の帰りを待つことに。
ブラウンたちが巣に入ってから10分ぐらい経っただろうか。クイーンビーが慌てて巣から出てきた。
「た、大変ですの! ブラウンちゃんがハチミツ作りを手伝ってくれたんですの!」
「あ、ブラウンはものづくりを手伝うのが好きだから、ハチミツ作りも手伝いたかったのかな」
「なるほどですの……あ、これを見て欲しいですの」
クイーンビーはビーのハチミツが入ったビンを俺に手渡す。
……なんだか、以前もらったハチミツよりもいい匂いがするような……?
「もしかして、品質が上がってる……?」
「たぶんそうですの。だから驚きましたの……。ワタクシの蜜でもできるか試したいから、もう少しブラウンちゃんをお借りしてもいいですの?」
「もちろん。ブラウンが手伝いをどんどんやりたいようなら、気長に待っておくよ」
「ありがとうですの!」
その後、クイーンビーのハチミツでも品質が上がるのを確認し、クイーンビーはそのハチミツを俺たちにくれた。あとでライアたちに食べさせてあげよう。
そして、そのころにはすっかりブラウンとクイーンビーは仲良しに。
ブラウンが帰る際にはハグをして別れを惜しむまでになっていた。最初の印象は最悪に近かっただろうに、ここまで変わるものなんだなあ……。
その後も俺たちは道中でブラウンのレベル上げをしつつ、キングウルフさんやバンシーさん、シルフィーさん、アルラウネさん、エルダートレントさんたちにブラウンを紹介したのだった。
**********
そして、各地を回ってホームに帰ることには日が暮れ始めていた。
途中、時々ライアたちに交代してはいるものの、ほぼブラウンとの2人旅だった。
元々は地下にいたせいか、地上のものが珍しいようで結構寄り道もしちゃったな。
「らー♪」
「きゅー♪」
そして、その事をライアたちに話し始め、ライアたちもそれを楽しみながら聞いているようだ。
「……ん? アテナさんとアトラスさんからメッセージか」
アテナさんはブラウンの服についての相談、アトラスさんは装備に関しての相談か。
俺はティルナノーグに行って話したいことを伝えると、すぐに返信が来る。
「それじゃあブラウンに同じブラウニーの子たちを紹介しようか」
「らー!」
どうやらブラウンも同じ種族の子に会えるのが嬉しいらしく、喜んで俺についてきてくれることに。
ギルド内ではペットモンスターを全員出せるし、前より賑やかになるだろうから楽しんでくれるといいな。
「コウさん、早速ですけどブラウンちゃんの採寸は大丈夫ですか?」
「もちろんです。ブラウン、アテナさんがブラウンのために服を作ってくれるみたいなんだけど、採寸をしても大丈夫?」
「ら!」
ブラウンは採寸を快諾してくれる。
ものづくりが好きなだけあって、服の作り方にも興味があるのかな。
「それじゃ、しばらくブラウンちゃんをお借りしますね」
「分かりました、ごゆっくりどうぞ」
俺はアテナさんとブラウンを見送ると、広場に遊具を出してライアたちをギルドメンバーの子たちと遊ばせてあげることに。
俺が設置を終えると、アトラスさんが話しかけてくる。
「コウ、ブラウンとのものづくりはどうだ?」
「順調ですね。ポーションの効果が上がるのを確認しました」
「なるほどな。おれも装備のステータスが上がるのを確認できた。で、今はリビングアーマーの装備一式を造ってるんだが……」
「何か問題でもありましたか?」
「いや、装備を造ること自体は問題はないな。相談はアテナが帰ってきたらだな」
「分かりました」
3人でないと相談できないことか……でも、アテナさんは武器を造らないし……。
「コウさん、ブラウンちゃんの採寸が終わりましたよ」
そんなことを考えていると、いつの間にかアテナさんが戻ってきていた。爆速だなあ……。
すぐにでもブラウンの服を作りたいからこその速さなのかもしれない。
「お、ちょうどいい所に。アテナ、コウ、ちょっと相談があるんだが……」
「私もですか?」
「ああ。……今回の特殊ダンジョン、おれたちで踏破してみないかって相談だ」
「お、俺たちでですか?」
「で、でも、私は上位ランカーの人たちみたいにレベルも高くないですし、戦闘の練度もあまりないですよ?」
「それは俺も同じです」
というか、同レベルの人たちと比べても、戦闘面に関しては劣っていると自覚はしている。
戦闘は本当に最低限の回数しかこなしてないしね……。
「そうだな、それじゃこれを見てくれ」
「これは……リビングアーマーの大剣ですか?」
「ああ、ブラウニーのスキルで更に強力になってる。これを使うのさ」
「でも、特殊ダンジョンにはノームは連れて行けな……あっ、そういうことですか」
「そう、ノームがいなくても、新システムでノームのスキルを使えば動かせるってわけだ」
「なるほど、だから私も必要だったんですね」
「そういうことだ。それに、コウにもマジックポーションやマジェネ効果のあるポーションオブフォレストをブラウニーと一緒に作ってもらえば……」
確かに、ブラウンと一緒にそれらを作れば効果が上がり、ペットモンスターのスキルを使う際のMP消費量増加にも耐えられるはず。
……それに、品質の上がったビーのハチミツをマジックポーションの材料にすれば、更に効果が高くなるだろうし、MP回復には困らなくなると思う。
更に、ブラウンのスキルの効果増幅を使えば更に回復量が上がって、より長期戦を戦い抜けるはず。
「分かりました、せっかくの提案ですし、俺は乗りますよ」
「そうですね、私も行ってみたいです。ただ、3人で行くんですか?」
「ああ、パーティーの合計レベルによってダンジョンの難しさが変化するなら、少人数で合計レベルを抑えた方が楽かと思ってな」
「なるほど、確かに。それなら、俺は人数分のポーション類、それから杖を準備しましょうか」
「私もできるだけ高ステータスの防具を作っておきたいですね」
「よし、それじゃ決まりだ。おれは装備一式を造るから、次の土曜日に潜るか? ……もし、その時までに他の誰かに踏破されたとしても、作った高ステータスのものは他のダンジョンで使えるだろうし、無駄にはならないはずだ」
「そうですね、トレントの島のダンジョンもまだまだ挑戦できてないですし、そちらに転用してもよさそうですね。他のパーティーに売ったりもできますし……」
こうして、俺たちは特殊ダンジョンの攻略の準備を進めていくのだった。




