ブラウニーとものづくり
「ただいまー」
俺は特殊ダンジョンの第二階層から帰還すると、すぐにホームに戻ってきた。
アテナさんとアトラスさんはブラウンが驚くかもしれないので、後から入ってきてもらう事にしている。
「きゅー!」
「るー!」
「がう!」
「らー!」
そして、俺がホームに戻るとすぐにみんなが出迎えてくれる。
……ブラウンはスコールの背中に乗っているあたり、既に打ち解けたようだ。
姿を見られるのを嫌がるという伝承と、出会った時は隠れがちだったから心配してたけど、このゲームではペットモンスターにした場合にはそういう特性は残っていないようだ。ライアたちががんばって仲良くなったのかもしれないけど。
他にも、お手伝いのお礼に服を贈ると家を去る、同じものをあげると怒ってしまう、豪華すぎるものを贈ったら働かくなるなど、伝承によってさまざまな特性があるが、おそらくこの辺もオミットされてるだろう。
そうでないと、アテナさんがブラウニーをペットモンスターにしたときに、速攻で出て行かれそうだし……。
「ブラウン、ちょっといいかな?」
「ら!」
「俺のともだちが来てくれるんだけど、ブラウンは大丈夫? あのダンジョンで一緒にいた2人なんだけど……」
「……ら!」
少し迷ったものの、右手を上げて返事をしてくれる。どうやら大丈夫なようだ。
俺は2人にメッセージを送り、ホームに来てもらう。
「お邪魔します」
「コウ、ブラウニーの調子はどうだ?」
「ええ、みんなとは打ち解けたみたいです。……ただ、お二人はまだ慣れてないみたいですね」
2人が入ってくると同時に、ブラウンは俺の背後に隠れた。ちょっと警戒してるんだろう。……やっぱり姿を見られるのは嫌なのかな……?
俺はブラウンに2人は悪い人ではないことを話すと、少しだけ顔を出して2人の様子を伺い始めた。
「かわいい……お洋服作ってあげたい……」
「あ、でもブラウニーは服をあげたら家を去るって伝承があるよな?」
「……まあ、さすがにペットモンスターがいなくなる仕様はまずいでしょうし、なさそうではありますが……念のため、しばらくは様子をみましょう」
「き、気を付けます!」
「ところで、ブラウニーのステータスはどんな感じだった?」
「ええと、それはこれからですね。ブラウン、ちょっといいかな?」
「ら!」
俺はブラウンのステータスを確認する。
ステータスは物理、魔法半々ぐらいのバランス系のステータスのようだ。
そして、スキルの方は……。
【気配消しLv1(パッシブスキル):敵のターゲットにされづらい】
【効果増幅Lv1(アクティブスキル):アイテムの効果が10%アップする】
【お手伝いします!(ユニークスキル):アイテム作製の際に補助に入ってくれることがある。補助された場合、アイテムの効果がランダムでアップする】
「……と、こんな感じですね」
「へー、補助系のスキルが揃ってるな。攻撃アイテムの効果もアップするなら、それを使うのもいけそうだ」
「アイテムの効果がランダムでアップするのもいいですね。今までの素材で更に上のものが作れそうですし」
「これからいろいろ作りながら確かめてみます。……と、言いたいところなんですけど、お二人もブラウニーをペットモンスターにしたいですよね?」
「はい!」
「もちろんだ」
2人だけでなく、うちのギルドメンバーもおそらくみんなペットにしたがるだろうな……。みんなものづくりが好きだから。
そのためにも、ペットモンスターにする方法を確立しておかないと。
「でも、一度どんな感じで手伝ってくれるか見たいから、ポーションでも作ってみたらどうだ?」
「そうですね、それではちょっとやってみましょうか」
俺はブラウンを連れて作業場に行くと、ポーションを作り始める。
1本目は見ていただけだったが、2本目ではろ過作業などを手伝ってくれ、結果的にポーションの回復量が20も増えることになった。
おそらく、1回目で作業内容を把握して、2回目で手伝ってくれた、という感じなんだろう。
それにしても、ポーションはDランクだと普通は50回復なのに、ブラウニーが手伝ってくれるだけで70も回復するようになるのか。ただ、ランダムだからもう少し下がったり、上がったりはするのだろう。その辺もいろいろ試してみたいところだ。
「ありがとうブラウン、はい、これはお礼だよ」
「らーっ♪」
俺はブラウンにお礼として竹とんぼを渡した。
ブラウンはすぐに竹とんぼで遊び始めたので、喜んでもらえたのだろう。
「さて……スキルの効果が分かりましたし、そろそろ出ましょうか?」
「そうだな、次はおれが梯子をその場で組み立ててみるか……って、コウ、あっちはいいのか?」
アトラスさんに言われて振り向くと、そこには寂しそうな目でこちらを見るライアたちがいた。
う……凄い罪悪感が……。
「ごめん、帰ったらいつもより長めに遊んであげるから……ね?」
「きゅー…………きゅ!」
結構悩んだものの、快諾をしてくれるライア。
レイとスコール、ブラウンも同じようだ。
「……それじゃ、早めに終わらせないとな」
「そうですね、みんなに愛想を尽かされないようにします」
こうして、俺たちは再び特殊ダンジョンに向かうのだった。
……なお、約束通りライアたちと長く遊んだものだから、その日はいつもより夜更かししてしまい、翌日は少々寝坊をしてしまうことになるのだが……この時は知る由もなかったのだ。
**********
「ふぅ、なんとか2人ともブラウニーをペットモンスターにできましたね」
「おそらく、梯子や橋を作って放置するのがポイントなのでしょうか? それでブラウニーに『私たちもものづくりをするよ』というメッセージを送る……みたいな」
「それと、作ったプレイヤーに反応してるように感じたな。おれが作った場合はおれに、アテナが作った場合はアテナに興味を持ってたみたいだしさ」
「後日、他のギルドメンバーにも試してもらって、絞り込みを進めましょうか」
あと9回、ブラウニーをペットモンスターにするまでに、完全な方法を確立できればいいのだけど。
そうすれば、プレイヤーが作れるアイテムの質が上がって、今後のイベントやダンジョンも楽になるだろうしね。
「よし、それじゃあおれは帰ってからブラウニーと鍛冶をやってみるかな」
「私はお洋服を作ってみます。……しかし、本当に服をあげたら去っちゃうんでしょうか……作ってあげたいのに……」
「し、しばらくは我慢しましょう」
「はーい……」
普通のプレイヤーなら、去ってもまたペットモンスターにしにくればいいか、ってなりそうなんだけど、自分でがんばって名前を付けてあげてから去ってしまうのは精神的にダメージだよな……。
「そういえばコウ、ふと思ったんだが……」
「どうかしましたか?」
「ブラウニー、完成した梯子や橋を弄ったよな? プレイヤーは完成したあとは手を加えられないはずだろ?」
「あっ」
そういえばそうだ。
俺たちプレイヤーはものづくりを完了させるとランクが確定して、それ以降の作り直しは不可能になる。
それなのに、ブラウニーは梯子や橋に手を加えていたな……。
「ちょっと梯子や橋のステータスを確認してもらってもいいですか?」
「おう。……ん? 少し使用回数が増えてるな……使用回数の上限も上がってる」
「もしかしたら敵の時だけの特性かもしれませんが……今後、ブラウニーとものづくりをするのが楽しみですね」
プレイヤーに梯子や橋の異変を気付かせ、もしかしたらペットモンスターにできるかも? と思わせる仕様なのかな?
「よし、それじゃあ帰ってものづくりをやるか!」
「「おーっ!」」
こうして、特殊ダンジョンでのブラウニーをペットモンスターにする方法の検証は終わったのだった。
**********
「きゅーっ!」
「るー……」
「らー……」
そして、俺は帰るとすぐにライアたちにつかまり、ブラウンも一緒にトランプ三昧の時間を過ごしていた。
ブラウンが加わることにより人型が俺を含めて4人になるため、七並べ、ババ抜き、大富豪などなど、大人数でも遊べるトランプのゲームバリエーションも豊かになった。
スコールも参加できるように、カード立てを後で作ってみようかな。スコールが選んだ札を、俺が代わりに出すといった感じで遊べるように。
俺が抜けてもペットモンスター4人で遊べるから、人数は充分だしね。
……そして、めちゃくちゃ白熱したせいか、それとも約束通りなのか。
結局俺が寝たのは深夜の1時過ぎになってしまったのだった……。まあ、次の日が日曜日なのでいいんだけどさ……。
**********
後日、ギルドメンバーにもブラウニーをペットモンスターにできるか試してもらったが、全員が成功した。
そして、その様子を動画に撮ってアップしたのだが、異変が起きてしまう。
『同じようにやっているのに、なぜかペットモンスターにできません』
というコメントが付いたのだ。
もちろん、手順通りにやることでペットモンスターにできる人もいたのだが、ペットモンスターにできる人とできない人が3:7ぐらいの割合なのだ。
その原因を探るため、俺はタイガさんやタケルに依頼したのだが……タイガさんたちもタケルたちも、ペットモンスターにできなかったのだ。
「うーん……いったい何が原因で……」
俺は頭を抱えていた。
うちのギルドメンバーは全員成功したのに……何が違うんだろう?
「……そうだ!」
俺はブラウンを連れて出かけることにした。
そして……。
「……で、ワシの所に来た、と」
「はい、本人から直接聞ければ何かが分かるかもしれないと思いまして」
「まーったく、コウはワシを頼り過ぎじゃぞ。……ま、貸しを作るのは悪くないがな」
「お、お手柔らかにお願いします」
なんだか凄いお願いをされそうで気圧されてしまうが、他の人たちのため、何とか聞き出したい。
「さて、ブラウンとやら。お主がコウについて行きたいと思った理由はなんじゃ?」
「らー!」
「ふむ……なるほど、そういうことか」
今の『らー!』の一言に、どれだけのことが凝縮されてたんだろう……。
俺がそう思っていると、クイーンドリアードさんが口を開く。
「コウ、ブラウンはお主が作ったものを見て、それに惹かれたと言っておるぞ」
「惹かれた……ですか」
「うむ、作るのが手慣れておって、他にどんなものを作るのか気になったそうじゃ」
「あ……なるほど、そういうことでしたか。ありがとうございます、クイーンドリアードさん」
おそらく、ブラウニーはものづくりが好きだから、ものづくりをたくさんしているプレイヤーについて行きたいということなのだろう。
あとから、動画でものづくりをする回数のアンケートを取って確認してみよう。
「うむうむ。ワシを崇め奉るがいい。……で、見返りとしてなのじゃが……」
「はい」
「ワシのトランプの相手をせい」
「……はい?」
思ってたよりも簡単な見返りを求められて、思わず変な声が出てしまう。
「いや、な? ワシが他のドリアードと混じってトランプで遊んで、負けが込んだら威厳というのものがじゃな……」
「は、はあ……」
「ということで、今日は夜までワシとトランプじゃ。ライアたちも呼ぶといい」
「分かりました、それでは俺の村まで招待しますので、みんなで楽しみましょう」
「うむうむ、よぉく分かっておるのう」
……こうして、俺は2日連続で、長時間トランプで遊ぶことになるのだった……。




