島内交流
「──ということで、これがアルラウネの進化に必要なロックバードの魔石です。島にはアルラウネの上位種とトレント、ボアなどが存在していて、ダンジョンも4つあります。必要でしたらティノーク海岸からヨットを出しますが……行きたい方は……」
翌日早くに俺がギルドメンバーを集めて質問を投げかけると、全員が挙手をする。
アルラウネの進化をしたいメンバー、ダンジョンに潜りたいメンバー、アルラウネやトレントと交流をしたいメンバー……島に行きたい理由はそれぞれだが、全員に興味を持ってもらえて何よりだ。
「行きます! というか今すぐ行きましょう!」
「い、いえ、まずはお土産を用意した方が……」
「確かに。こちらがお世話になるのに手土産の一つもないのは失礼ですね。僕は魔石を用意してきます」
「おれも、島で使えそうなものを造るか」
「私はアルラウネちゃんに服を作りますね」
他のギルドメンバーも、自分たちで用意できるものを持っていくことになり、出発は14時からということになった。
俺は遊具を増産していこうかな。
……あと……。
「やっほー、昨日のお礼まだー?」
「一応できていますが、今日もお手伝いをお願いしたいので増産予定です」
「ふーん? とりあえず昨日の分で遊んでおくからちょうだーい」
「それではこれを……」
「なにこれー?」
「風で動く車ですね。ここに前から風を当てると進むんですよ」
「へー」
俺はウインドカーをアイテムボックスから出すと、シルフィーさんに渡す。
これはヨットとは逆に、前から風を受けて前に進む車なんだけど……。
「よーし、ごーごー」
「あ、スピードの出し過ぎには気を付け……もういない……」
うーん、風の精霊だけに自由過ぎる。
まあ、その間に俺はトレントの島に持っていく遊具を作っておこう。
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「おお、コウか。そしてそちらの者たちは……」
「俺のギルドのメンバーです。今日はこちらの島で活動させて頂こうと思いまして、ご挨拶に参りました。それでは順次メンバーを紹介していきますね」
俺はアテナさんやアトラスさん、レックスさんを始めとして全メンバーの紹介と、島でやりたい事をエルダートレントさんに伝える。
「ふむ、事情は承知した。トレントたちはこの場に儂が呼ぼう。アルラウネは東の草原に寝床を造ると言っておったぞ。ダンジョンは……儂らはロックバードのいる森の中のダンジョンしか詳しくは知らぬな。コウたちさえよければ、調査結果を共有して欲しいのじゃが……」
「もちろんです。この島で自由に活動させて頂けるので、それのお礼として提供しましょう」
「うむ、それではよろしく頼んだぞ」
「あ、それと今日はお土産がありまして……」
「ほう……」
俺はエルダートレントさんに魔石を渡す。
俺やギルドメンバーがお土産として買ったものや、所持している余剰分をまとめたものだ。
ちなみに、モンスターの種類ごとに袋に入れて分けてある。
「……この島には存在せぬ魔石もあるようじゃな」
「はい、もし美味しいものが見つかりましたら、次回に多めに持ってきますので遠慮なくおっしゃってください」
「うむ。重ね重ねありがたい……どれ、早速1つ頂いてみるとするか……」
……結構ウッキウキだなエルダートレントさん……。
確かに未知の味は気になるだろうなあ。
「それでは俺たちはそれぞれの活動をさせて頂きますね」
「うむ。……む、これはなかなか美味……」
さっき言ってた、トレントを呼ぶことをすっかり忘れてるけど……大丈夫かなあ……。
とりあえず、俺たちはダンジョン探索チーム、トレント交流チーム、アルラウネ交流チームに分かれて活動を始めるのだった。
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「おう、コウじゃねーか。昨日ぶりだな。そっちのやつらは誰だ?」
「今日もお世話になります、アルラウネさん。こちらは俺のギルドメンバーたちです。今日はアルラウネさんたちとの交流に参りました」
「交流か……といっても、アタシたちもこの島に来たばっかりだからなあ。それでもいいか?」
「俺は寝床づくりのお手伝いをさせて頂きます、それとこちらのアテナさんは……」
「私はアルラウネさんたちのお洋服を作りたいです!」
「おー、なかなか威勢のいい嬢ちゃんじゃねーか。気に入ったよ」
「そ、そうですか? ありがとうございます。……それで、お洋服というのはこういったものでして……」
アテナさんはティアちゃんにペットモンスターを切り替え、ティアちゃんにお洋服をお披露目してもらう。
すると、周りで見ていたアルラウネたちから歓声があがった。
「へえ、似合ってるじゃないか。アテナの手作りなのかい?」
「はい、よろしければ全員分のをお作りしたいので、採寸をさせて頂ければと……」
「いいぜ、アタシや娘の分もよろしく頼むよ。あ、もちろん礼はするぜ」
「分かりました。それではコウさんとのお話がまとまりましたら、お声がけください」
「了解だ。……さて、コウは寝床を造ってくれるんだったか」
「はい。アルラウネさんたちはどういったものが良いのかお聞かせください」
「そうだな……それじゃあ──」
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「──ネさーん、アルラウネさーん?」
「……ん……? くぁぁ……あ、光合成しながら寝ちまってたか。すまないね」
俺は寝床ができあがったので、寝ていたアルラウネさんに起きてもらう。
光合成だったんだ……てっきり日向ぼっこかと……いや、植物だから同じか?
「ということで、こんな感じになったのですが……いかがでしょうか?」
「お……おーっ! いいじゃねえか! これでトレントたちに迷惑かけずに済むな」
「それでは順次説明していきますね」
アルラウネさんの要望は2つ。
・アテナさんの作った服を収納したい
・飲み水を確保したい
……アルラウネたちは植物なので、基本的に雨に濡れても風邪はひかないから、家などは必要ないとのことだった。
ただ、アテナさんの作った服が濡れるとまずいので、それを収納するスペースが欲しい。これが1つ目。
そして、この島はそんなに大きくなく、水源がほぼ無いも同然なのでアルラウネたちの飲み水を確保したい。これが2つ目。
一応、トレントさんたちの棲む森に湖があるが、トレントさんたちが使っているのでできれば避けたいというわけだ。
そこで、まずは『陥没』スキルで池にするための穴を造り、そこに水が貯まるように傾斜などを手作業で調整する。陥没スキルだと元が凸凹でも同じ高さに均してしまうから、調整は必須だ。
次に、池の出口に水門を作る。この水の行き先は池より少し低い土地で、そこに水を送って地面を湿らせる。そして、アルラウネたちは地面に根を張ってから水を飲む……というか取り込む? ようだ。
一応口から飲んでも問題ないようだが、こちらの方が吸収率がいいらしい。
また、服の収納スペースは本土から持ち込んだ木で作った、ネズミ返し付きの高床式倉庫だ。
ちゃんと服を干す場所も確保しているので、濡れても安心である。
ついでに、周りに遊具も設置しておいた。
「……と、こんな感じです」
「いいねぇ……完璧だ。こりゃあ、ちょっと礼を弾まないとな」
「あ、それならロックバードの魔石が欲しいのですが……よろしいでしょうか?」
「ん? 昨日のだけじゃ足りなかったか?」
「俺のギルドメンバー分は充分足りてるのですが、欲しがる人が結構出ると思うので……」
「ふーん、自分じゃなくて他人のためか……よし、それじゃあ昨日より多く取ってきてやろうじゃねえか! コウが帰るまでに間に合わせるから待っててくれよ」
「あ、あの、あたしも行きます、お母さん」
「もちろんだ。……で、他にも来たいやつはいるか?」
アルラウネさんがたずねると、周りのアルラウネたちが手をあげる。
……昨日までは普通のアルラウネだったんだけど、レイみたいに成長している……ということはロックバードの魔石で進化したんだろう。
「よし……アタシがロックバードとの戦い方を教えてやるからついてきな!」
……こうして、アルラウネさんたちは森のダンジョンへと狩りにでかけたのだった。
「……それじゃ、俺たちはトレントの方にいるメンバーと合流しよう」
「はい!」
**********
「おっ、コウじゃねえか。そっちの方は終わったのか?」
「そうですね、お礼としてアルラウネさんたちがロックバードの魔石を取りに行きました」
「あー……それじゃ、さっきここを通って行ったのがそうだったのか」
「そういえばダンジョンはこっちの方角でしたね。アトラスさんたちはエルダートレントさんたちと何を話されてたのですか?」
「ああ、ちょっと日当たりについてだな。人の手が入らないからトレント以外の木が伸び放題でな。ある程度の剪定や間引きをした方がいいんじゃねえかって話になって、道具を作ろうって話をし始めたところだ」
道具かあ……大きい木も結構多いし、高い所の枝を切るのはなかなか難しそうだ。
それに、人が使う道具なら、ここに常駐する必要があるだろうけど……。
「アトラスさんたちはここに村を造って常駐するのですか?」
「それも考えたけど、エインズの町で売られてる物が必要になるから、土日の休みの時に来る感じかな。ポータルがあればよかったんだけどなあ」
「人が住んでない島なので無いんですかね……毎回シルフィーさんに頼るのも悪いので、船などが必要ですかね」
「いや、少人数なら進化したシィルががんばってくれればヨットでいけると思うぜ。今日帰る時におれ1人で試してみるよ」
あ、確かにシィルちゃんはシルフィーさんのおかげで進化してたな。
もしシィルちゃんでもここまで楽に来られるならよさそうだ。
「まあ、風に吹かれてのんびり海を渡るのも好きっちゃ好きなんだよな。四国に行く時に瀬戸大橋を使わずにフェリーで渡ってたこともあったしさ」
「……あれ? もしかしてアトラスさん、岡山の人ですか?」
「……あ。まあ、隠してたわけじゃないがそういうことだ。このゲームで鍛冶やってるのも、岡山と言えば……ってやつだな」
「備前長船ですか、一回博物館に行ってみたいんですよね」
「ははっ、その時は案内するぜ。……っと、今はそういう話じゃなかったな」
思わず話が脱線しそうになるが、アトラスさんがブレーキをかけてくれた。
「こほん。それではアトラスさん用にヨットを1つ渡しておきますね。もし戻れそうになかったらメッセージをください。シルフィーさんにお願いしますので」
「ああ、頼んだぜ」
さて、あとはダンジョン組のメンバーだけど……。
……ん? メッセージが届いてる?
『レックスです。北の洞窟に入ったところ、ウンディーネがモンスターとして出現したので、同じウンディーネのウィンに戦わせたくなくて撤退しました。現在は南のダンジョンを探索中です。20分ほど探索したら一旦打ち切って帰還します』
へー、ここでウンディーネが初登場するのか。
ということは南や東のダンジョンも新モンスターが期待できるかな?
ペットモンスターにする方法が確立できてないモンスターが本土でも結構いるのに、どんどん新モンスターが出てくるのはちょっと忙しくなりそうだけど……。
でも、こういう手探りの期間が一番楽しいんだよなあ。
そう思いながら、俺たちもアトラスさんたちに加わって、トレントたちと話を始めた。
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「それでは今日はこれで帰らせて頂きます」
「うむ、世話になったな。それではこれを持ち帰るがよい」
エルダートレントさんは自分の枝を折り、それを12等分する。
そして、俺たち一人一人に渡してくれる。
「「「ランクB+!?!?!?」」」
メンバーたちが一斉に驚く。うん、それ、俺も通った道だ。
そして、加工しようとしてノコギリなどが壊れるのもおそらく通る道だろう。
ちなみにアルラウネさんからはロックバードの魔石を、取ってきた半分の200個ももらってしまった。
アルラウネが進化したおかげで効率が上がり、短時間でここまで集められたのだと言う。
……もしかして、アルラウネさんに似て他のアルラウネも戦闘狂なのか……?
そんなことを考えながら、俺たちは帰路に就くのだった。
あ、シィルちゃんが進化したおかげで、無事にアトラスさんもヨットで帰れたとのことだ。
さすがにシルフィーさん並みの速度は出せないものの、島に来るには充分な風力だったようだ。




