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進化の検証

「コウ、それからタイガ、久しぶりだな」

「タケルは最近エルフの集落のダンジョンで忙しそうだったからな……っていうか、平日は会社で会ってるだろ」

「ハハハ、それもそうだな。……で、クロウの進化の検証か。この中で一番遅く始めたコウが、最先端の情報持ちとはなあ」


 タケルもタイガさんもベータ版の頃からのプレイヤーで、冒険者としてはランカーで先頭を走り続けるプレイヤーたちだ。

 そんな2人よりも早く俺がペットモンスターを進化させられたのは、何かの間違いなような気がしてくる。


「ペットモンスターは新規追加の機能だからというのもあるだろうが、それでもコウ殿の功績は凄まじいだろう。アルラウネのペット化、ペットモンスターと協力して特殊アイテムを作成、ドリアードとウルフの進化、上位種との交流……」

「た、タイガさん、その辺にして本題に入りましょう」


 そこまで言われると照れてしまう。

 俺としてはやりたい事(ものづくり)をやっていただけなんだけどなあ。


「で、俺はクロウを連れてクロウレギオンと戦ってきたが……もちろん勝ってきたぞ」

「うむ、それではジャイアントオーガと魔女の魔石を渡そう」

「はー……まさかエルフの集落のダンジョンでも先を越されるとはなあ……よくあの魔女を倒せたもんだ」

「まあ、その方法は追い追い話すとして……こちらが魔石だ」

「……本来ならボスの魔石だし結構な高値で売れるはずだが……いいのか?」

「うむ、進化の条件を絞り込めるならお安いものだ」


 確かに、いまだにドリアードのライア、ウルフのスコール以外の進化例を聞いたことはない。

 進化したことを秘密にしているプレイヤーもいるかもしれないが、ヘルプに進化の項目が追加されたのはライアが進化した時だから、ライアが最初の進化モンスターになるだろう。

 それに、進化の動画をアップすることで、動画が多く閲覧されて万単位の(お金)が手に入るので、公開しないという選択肢を選ぶのは少数派だとも思う。

 まあ、その辺はプレイヤーの自由ではあるが。


「あ、ジャイアントオーガはもらってからすぐに使ったから、魔女の魔石だけで大丈夫だ」

「そういやタケルはガンガンアイテムを使っていくスタイルだったな」

「コウは慎重派っていうかエリクサー病だもんなあ」

「分かる、分かるぞコウ殿……」

「タイガさんもでしたか……」

「オレとしては消耗品は使ってナンボだと思うんだよなあ。まあ、ステータスアップの種泥棒されたときはやっちまったなあって思ったが」

「そういうことがあるから、俺は貴重品を使うなら主人公に使っちゃうな」

「分かる、分かるぞ……」


 ……などと、うっかりゲーム談議に花が咲いてしまうが、気を取り直して魔石の話に戻す。


「……よし、それじゃあヤタに魔女の魔石を与えてみるか」

「ヤタ? クロウのことなら……ああ、八咫烏(ヤタガラス)が名前の元ネタか。もしくは八咫鏡(やたのかがみ)

「そういうことだな。よし、これで『……おや!? ヤタの ようすが……!』ってなるか見ものだな」

「……その場合、Bを連打したら進化が止まるんだろうか? コウ殿は……やってないだろうな」

「ええ、進化前の姿に進化後のステータスで戻れるので、流石に止める理由もないですし……」


 うーん、世代が集まると話が逸れる逸れる。

 しかし、なんとかヤタに魔女の魔石を与え……。


「うおっ!?」


 その瞬間、部屋が光りに包まれる。この反応は……。


 しばらくして、部屋の光量が元通りになり、ヤタはクロウの姿から少し成長した姿になる。

 ……クロウの数が増えてクロウレギオンみたいな集合体にはならなかったようだ。


「すげえ……マジで進化した」

「ふむ、これでコウ殿の仮説は正しいと証明された……のだろうか」

「いえ、よく考えたらクロウレギオンと戦う前と後で、2回分魔女の魔石を与えた方が良かったかもしれませんね。そうしたら上位種が関係していると分かりますし」

「それなら、キングウルフやクイーンドリアードに協力してもらえばすぐじゃないか? ウルフをペットにしたプレイヤーがほとんどだろうし、それで条件の絞り込みができるだろ」

「あとはレベルなども考えられるな……ペットにしてすぐのレベル1で進化するか? というのも気になるところだ」

「それなら情報を公開して、検証班に協力してもらうのもいいかもしれませんね。少人数だとどうしても限界がありますし」


 ……その後、話し合いをして、条件を絞り込んでいく。


・レベル1のウルフに魔女の魔石を与える

・キングウルフと会わせた後に、レベル1のウルフに魔女の魔石を与える

・レベル40のウルフに魔女の魔石を与える

・キングウルフと会わせた後に、レベル40のウルフに魔女の魔石を与える


 これでレベルと上位種がどこまで関係してくるか分かるはず。

 ちなみにレベルを40にしたのはスコールが進化したのが40だからである。

 もっと下から進化するかもしれないが、レベルが関係するかどうかを調べるだけならこれでいいだろう。


「……しかし、ウルフをペットモンスターにしてて、いまだにレベルが1のプレイヤーっているんだろうか?」

「あー、確かにそうだな。オレのギルメンもレベル上げちゃってるな……」

「儂のところもだ。まあ、まだペットモンスターにしていないプレイヤーもいるだろうから、情報を出せば協力してもらえる可能性はあるはずだ」

「……よし、それじゃ公開しようぜ、コウ」

「いや、実はもう少し時間が必要で……」

「……ん? なんでだ?」

「それは儂が説明しよう」


 タイガさんは魔女を倒すのにバインドのスキルが必要で、俺がバンシーさんからもらった貴重なアイテムのスクロールでタイガさんが覚えたことを話す。

 更に、バインドを使えば魔女をペットモンスターにすることが可能であることも。


「……コウ、お前ってさあ……ホントにモンスターたらしだな……」

「それには儂も同意せざるを得ないな」

「ぐぬぬ……」

「とりあえず、それならドリアードをペットにしているギルメンの成長待ちだな」

「うむ、現在パワーレベリングをしているので、明日には完了しているはずだ」

「そういやタイガのギルドはどこでレベリングしてるんだ? やっぱりエルフの集落のダンジョンか?」

「そうだな、ジャイアントオーガが経験値が多く、道中でも稼げるからそこが一番だろう」


 それから、2人は情報交換を始めた。

 うーん、上位ランカーがここで情報交換するとはなあ。

 ま、俺にはほぼ無縁の情報なんだが……。


「うむ、いい時間が過ごせた。礼を言うぞコウ殿、タケル殿」

「こちらこそいい情報とクロウの進化をありがとうな。あ、そうだ」

「ん?」

「コウ、今度また焼肉大河に行こうぜ。次はオレが奢るぞ」

「いいのか? 俺のはイベント報酬だから懐は痛んでないが……」

「ああ、オレのもイベント報酬だ。デジタルマネーを選んだんだが、焼肉大河でも使えるんだ」


 へえ、デジタルマネーも使えるのか。何とかPAYかな?

 俺もあるのは確認したけど、機器の故障とか使えない店があるし、現金払いが好きだからスルーしたんだよな。

 もし次があるなら選んでもいいかもしれない。


「……ふむ、それなら割引券を発券するので少々待って欲しい」

「割引券……そういうのもあるのか」

「うむ、協賛している儂の特権でな。エインズの町防衛戦での配布も権利を使わせてもらったのだ」

「あれは嬉しかったですね。俺が食べ放題を選んだのもあのカルビがきっかけでしたし」

「さすがオーナー様は分かってらっしゃるぜ。割引されるならちょっとお高いやつも食べてみるか」

「……これがタイガさんの経営戦略ですか」

「まあそれもあるが、実際に得られた情報は貴重だから、これぐらいはな」


 タイガさんは10%割引券を発券すると、タケルに転送する。

 これをワールドクリエイターズのアプリ経由で提示すれば、会計の合計額から割り引いてくれるようだ。


「ありがとうございます、しっかり食べさせて頂きますね」

「うむ、楽しんでもらえると儂としても嬉しいからな」

「よーし、それじゃ次の給料日は焼肉パーティーだな!」


 その後、進化したヤタのステータスやスキルの情報を共有してからお開きとなる。

 ちなみに、スコールも進化で新しいスキルを覚えた。それは……。


【穴掘り(ユニークスキル):穴を掘ってランダムで何かが手に入る。消費MP30】


 スコールはMPにステータスを振られてないので、使えるのは平日だと5回だ。

 ランダムで何かが手に入るのだが、ゴミだったり、植物の種だったり、朽ちた装備だったり……。

 今までで一番良いと思ったのは鉱石なのだが……クォルトゥス鉱山で掘った方が早い。

 レアな物が掘れることもあるのだろうが、まだまだ検証回数が足りていないのが現状である。

 スコール以外にも進化したウルフが出てきたら、検証回数も増えていくだろうか?


 ……それにしてもこれ、どう考えても『ここ掘れワンワン』だよなあ……。


 などということを考えながら、畑の世話をするのだった。




**********




「……ん? 運営からメッセージが入ってる……?」


 その後、ハイポーションなどを作ろうと思い、準備を進めているとメッセージが届く。

 ……最近は何もしてないはずなんだけど……。


【お世話になっております、ワールドクリエイターズ運営です。

 ライアさんのグッズのサンプルが完成したのでお送り致します。

 メッセージ下部の『受け取る』ボタンを押下すると、アイテムボックスに転送されます。

 なお、開発中のものとなりますので、ホーム内、かつ他のプレイヤー様がホーム内に存在しない状態でしかアイテムボックスから取り出せませんので、確認の際はご注意ください。

 また、グッズの情報に関しましては、関係者以外の方とお話しするのはお控えください】


 もう!?

 まさかサンプルとはいえこんなに早くグッズが完成するなんて……。

 俺ははやる気持ちを抑えながら、下部の『受け取る』ボタンを押す。


 そして、アイテムボックスを確認すると、『アクリルスタンド』と『フィギュア』が追加されていた。

 アクリルスタンドはワールドクリエイターズのキャラデザイナーの人の描きおろしイラストで、しかもライアが着ているのはアテナさんが作った服! なるほど、これならライアを知っている人にはすぐにライアだと分かるな。

 フィギュアの方もアテナさんの服を着ているライアで、こちらは魔法少女的ステッキを持ってポーズを決めているところだ。


 その後、添付された資料を読み進めていく。


 ……なるほど、ワールドクリエイターズ内に3Dモデルがあるから、フィギュアの原型は3Dプリンタで出力が可能で、そこから金型を造って……と工程が早く進むのか。

 アクリルスタンドもフィギュアもゲームセンターに展開されるらしい。

 俺の通ってるゲーセンに入荷するかなあ……一応サンプルとしてどちらももらえるんだけど、ゲーマーとしては自分で勝ち取りたいという欲もある。


 ちなみに、ダンスゲームの方は引き続きプレイしていて、増えた体重はなんとか元に戻せた。あとはリバウンドしないように注意しないと。

 そして、やってるうちに楽しくなってきたので、体重が戻っても続ける予定だ。運動する習慣も必要だしね。



 ……こうして、グッズという楽しみが増えて嬉しく思いながら、今日もものづくりをするのだった。

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