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新しい仲間

「よし、ペットモンスター愛好会のサークル掲示板にさっきの動画をアップしておこう」


 夕食後に再度ワールドクリエイターズにログインし、久々に動画のアップをすることに。

 掲示板を起動し、投稿しようとスレを見ていると……。


「……ん? 『ウルフをペットにする方法』……?」


 そんなスレタイトルが目に入る。

 ウルフっていったらグラティス草原のモンスターだったよな。

 レアモンスターのキングウルフを呼ぶことはあるけど、レベル2のいわゆるザコモンスター。


 ちなみにスレ立て時刻は14時過ぎ。

 ちょっと気になったのでそのスレを覗いてみることに。


『あ、ありのままに今起こったことを話すぜ! キングウルフを呼び寄せようとしてたら、ウルフがペットモンスターになっていた……』

『状況詳しく』

『ええと……動画は撮っていなかったんだけど、ウルフがあまりにもキングウルフを呼ばないから、「はよ呼べや!」って叫びながら、わざと攻撃を外して地面抉ったんだよな。そうしたらなんかへそ天してペットになりたいって……何を言ってるか分からねーと思うが信じてくれ』


 スレ主はそう言いながら、ペットになったウルフの写真を載せている。

 ウルフの横にはビー……まだペットモンスターになる方法が分かっていない、ハチのモンスターがいる。


『ビーがいるのか。確かビーをペットにする方法は分かっていないから……』

『ああ、こりゃ真実確定だな』

『検証班ーッ! 早くきてくれー!』

『……よし』

『行くのか? ……俺も同行する』

『お前たちだけずるいぞ。俺も行く』

『俺……この検証が終わったらウルフをもふもふするんだ……』

『さりげなく死亡フラグ立てんな。フラグ建築士か』


 真実が確定した途端、わらわら出てくる検証者たち。

 その後も情報がどんどん書き込まれていき……。


『どうもただ外すだけじゃダメっぽいな』

『スレ主はそれまで何回か攻撃したか?』

『いや、呼ばれた仲間を攻撃しただけで、ペットになったウルフは外した攻撃1回のみだ』

『そのウルフは最初から戦ってたやつ?』

『たぶんそうだな』

『何回か攻撃はくらった?』

『あー……何回かはくらったはず。レベル差があり過ぎてダメージは1しか通らないから、あえて回避しなかったんだよな』

『それなら実力差を示して服従させる(ペットにする)タイプか?』

『なるほどな。俺もその線でやってみる』


 そうして条件がどんどん絞り込まれて行って……。

 書き込み時刻は15時を過ぎる。


『よし、ペットになった! わざと10回ぐらい攻撃を受けて、その後に全力の攻撃を地面にわざと外したらペットにする選択肢出てきた』

『マジか。ちょっとやってみてくる』

『サンキュー検証班様!』

『ぐぬぬ……一足遅かったか……。……しかし、スレ主はよくこんな条件を偶然とはいえ満たせたな』

『攻撃受けたら微量といえどHP減るから、ポーション節約のために普通は避けるしな』

『分かる』


 ……なるほど、こんな条件もあるのか。

 ウルフかあ……俺もペットにしようかな?


 そう考えながら周りを見る。


 小さい妖精サイズのライア(ドリアード)。

 中学生ぐらいの女の子の大きさのレイ(アルラウネ)。

 ……で、今は小学生低学年ぐらいのバンシーと仲良くなってるから……。


 …………あれ? これ俺がロリコン疑惑持たれるっていうか持たれてるんじゃ…………。


 いや、ドリアードは卵からランダムで生まれたわけだし、アルラウネは今やみんながペットにしてるし。

 バンシーもイベント条件が分かったから、投稿すればみんなイベントやるだろうし……。


「考え過ぎかなあ……でもなあ……」


 そんなことを考えながら掲示板を読み進めていくと、ペットにしたウルフの動画が目に入る。

 そこにはホームでシルフ……妖精サイズの子を背中に乗せて走り回っているウルフの姿が。


 あ、これライアが喜ぶかも……レイはちょっと乗れないだろうけど、もしウルフが成長したら乗れるかな?


 それに、動物系のモンスターをペットにすることで、新しい遊具の着想が得られるかもしれない。

 食事用の魔石の用意に時間かお金がかかるけど、メリットの方が大きい。

 ……それに俺ももふもふしたい! 現実でペットを飼うにはお金も必要だし、うちのアパートはペット禁止だしで……。


 よし、俺もウルフをペットにしよう!

 そう思って、留守を2人に頼んでグラティス草原へ出かけるのだった。



 ……2人はついてきたがってたけど、間違ってウルフを攻撃してしまいそうなので、今回ばかりは心を鬼にしてソロでの外出になる。ごめん。




**********




「うわぁ……結構人がいるなあ……」


 既に噂が広まっているためか、グラティス草原には多くの冒険者が集まっている。

 ウルフをペットにして町に帰り始めた人もちらほら。

 他のエリアから帰ってきた人はウルフを連れた冒険者にびっくりして、話を聞いてメッセージを送る人もいて……なるほど、こりゃ人が多くなるわけだ。


 とりあえず普段の装備はショートソードにしておいて、戦闘になったらアトラスさんからもらったハンマーに切り替えるかな。

 使用した感想が欲しいって言われてたけど、アルラウネ戦ではツタを切断しないといけないので使えないでいた。そのため、今回はハンマーを実際に使ってみる。地面を抉る威力を出すのにももってこいだしね。

 攻撃を受けるのは盾でもいいのかな。とりあえずラウンドシールドを準備して……と。

 レベル差があるので身体で受けてもいいんだけど、ダメージが低くても絵面的に痛いのでとりあえず防具で受けることにする。



 冒険者の集団から離れたところをしばらくウロウロしていると、ウルフとエンカウントする。

 ええと、まずはわざと10回ぐらい攻撃を受けて……。


「ガァァッ!」

「おっと、危ない!」


 素早く接近攻撃を仕掛けてくるウルフ相手に、俺は防御に集中する。

 相手の攻撃を受けたり、受け流したり……実戦での盾の取り回しの練習にいいなコレ。

 意外とこれが面白くて、攻撃を受けたのは十回は超えているのに、何回も繰り返してしまう。


「……っと、早く帰らないとライアたちが寂しいだろうし……そろそろいいか」


 俺は装備変更でショートソードとラウンドシールドを両手持ちのハンマーに入れ替える。

 そして、ウルフの突進を避けて、ウルフがブレーキをかけたところにハンマーを思いっきり振り下ろす。


 ドン! と地面が揺れて土が飛び散ると、ウルフが降参と言わんばかりにガタガタと震えながら縮こまってへそ天をしてくる。


【INFO:ウルフがペットにして欲しいようです。どうしますか?】


 ……よし。

 俺はそれを承諾すると、ウルフの名前登録画面に……。


 あ。


 しまった。事前に名前を考えておくのを完全に失念していた。


 ええと……ウルフ……狼……。

 有名どころだと北欧神話のフェンリルとハティとスコル、ギリシャ神話のケルベロスとオルトロスあたりかな……。

 いや、その前に性別を確認しておかないとアンマッチなことになるか……。


 ……ステータスを確認したところ、この子はオスのようだ。

 それならスコルから頂いてスコールにしよう。


「ということで、これからよろしくね、スコール」

「がう!」


 そっか、よく考えたら今は2人を連れてきてないからそのまま連れ歩くことになるのか。

 とりあえず、散歩がてら町まで歩いて帰るかな。

 ……ホームに帰ったら思う存分もふもふしよう……ふふふ。


 アパート住まいになってから動物とのふれあいがなかったので、そりゃあもう存分に……。


 ……って、これじゃ方向性は違えどアテナさんやアルテミスさんみたいなことになってるな?

 落ち着け俺。

 それにホームにはライアとレイもいるし、ほどほどにしておこう。ほどほどに。


 ……できるかなあ。



 とまあ、そんな邪? なことを考えつつ、俺たちはエインズの町に帰ることにするのだった。




**********




 ホームに帰ると外に連れて行ってくれなかったことに怒る2人がいたのだが、スコールの姿を見るとその感情はどこへやら。2人ともスコールに興味津々のようだ。

 特にライアは自分より大きいスコールの背中に乗ろうとするなど、かなり積極的だった。


 そして今では……。


「きゅー♪」

「がうー!」


 収穫を終えた畑で、スコールの背中に乗ってはしゃいでいるライアがいる。

 スコールも喜ばれるのが嬉しいのか、畑の周りを走り回ってライアを楽しませているようだ。


「るー……」


 一方でレイはスコールに乗れないので落ち込んでいる様子。

 このゲームのペットモンスターには進化があるので、スコールが上位のモンスターに進化すればレイもスコールに乗れるはず……。


 とは言ったものの、やはり今乗りたいのだろう。羨ましそうに2人を見つめている。

 ……うーん……俺にできることは……。


 ……そうだ!


 俺はアテナさんとアトラスさんに連絡を入れて、2人にホームまで来てもらうことに。

 そして、アテナさんにロープを、アトラスさんに金具を、俺は本体を木材で作る段取りを決める。


「るー……?」


 レイは俺たちの作業に興味があるようで、こっそりこちらを覗き込んでいる。

 その眼差しに見守られながら、俺たちは作業を続け……。




「──よし、できた……かな? レイ、ここに座ってくれる?」

「るー?」


 俺は完成品の本体の椅子部分にレイに座ってもらう。

 そして、本体から出ているロープをスコールに装着して……。


「スコール、このまま走ってくれる?」

「がう!」


 レイを乗せたソリは、スコールに牽引されてホームの庭を走り出す。


 そう、俺たちが作っていたのはソリ。

 スコールを見ていて、これならレイを乗せて走れると思いついたのだ。


「るーっ!」


 レイは楽しそうにこちらに手を振ってくれる。


「レイちゃん、楽しそうですね」

「作った甲斐があったな、コウ」

「そうですね、ご協力ありがとうございます。ホーム限定ではありますけど、レイに喜んでもらえるものが作れました」

「もし外で走らせたいなら協力するぜ。実はおれもウルフをペットにして、アルラウネでレベルも上げたから引く力なら結構強いぞ」

「あ、それならグラティス草原で走らせるのはどうでしょうか? ソリの宣伝にもなりますよ」

「アテナさん、それはいい考えですね。まだ冒険者はいるでしょうし、ちょっと出ましょうか?」

「はっはっは、アテナは商魂逞しいな! いい商人になれるぞ。……じゃあコウ、用意してから出かけようぜ」

「分かりました……ところで」

「ん?」


 俺はちょっと気になることがあってアトラスさんの方を向く。


「アトラスさんのウルフの名前は……」

「あー……フェンリルにあやかってまんまフェンだ。ちなみにメスだな。コウのスコールの元ネタも同じようなもんだろ?」

「……ええ、スコルから取ってます」


 ……名付け下手同盟同士、俺たちは握手をする。

 それにしても名付けの難しさよ……。



 その後、俺たちはホームでしばらくレイに楽しんでもらったあと、グラティス草原でソリの宣伝を兼ねてフェンにソリを引いてもらい、レイやティアちゃんに乗ってもらって遊ぶことに。


 最初は何をしているんだろうと遠目に見ていた人たちだったが、次第に集まってきはじめる。

 そして、ソリの作り方を聞いて自分で作ってみる人、今度のフリーマーケットなどで売って欲しいと要望を出す人などさまざまな人たちと会話を楽しんだ。

 ほかにも、移動手段として検討してみたいという人もいたな。

 確かに起伏の少ない草原なら歩くよりも早く移動できそうだ。これはちょっと思いつかなかったな。

 ウルフのレベルが上がればステータスも上がって、複数人をソリで運ぶこともできそうだ。


 こうして、いろいろな人の意見を聞けるのはいいものだなと思いつつ、次の土日のフリーマーケットで改良したソリを売り出してみようと決めるのだった。




 ……あ、ちなみにペットモンスター愛好会のサークル掲示板にアップした、ライアとレイが水着で遊ぶ動画はすぐに1万回以上再生された。

 いろいろなコメントがあったけど、みんなうちの子(ライアとレイ)をかわいいと言ってくれていて嬉しかったな。

 と、ほっこりして今日はログアウトして就寝するのだった。

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― 新着の感想 ―
いきなりハンマーでドーンは、怖かっただろうなぁ、スコール君。 そっか、ロリコン疑惑があったのか。ハーレム疑惑も出てきていますけど?私の中で。 スコール君に乗っかっているライアちゃんも、狼ソリに乗っかっ…
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