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新しい道具

「もう夕方か……」


 今日はレベル上げをして、アルラウネのレイをペットモンスターにして、迷いの森を調査して……。

 かなり充実した一日だったなと、赤くて綺麗な夕日を見ながら思う。


 レイは今、同じ植物だからか、畑の植物のお世話をしてくれている。

 同じ植物だからこそ、収穫するときはちょっと心苦しいわけなんだけど……。


「……あ、そういえばレイのステータス見てなかったな」


 バタバタしてたからすっかり忘れていた。

 俺はレイのステータスを開いてみる。


【光合成Lv1(パッシブスキル):日光を浴びるとMPが回復する。回復量はスキルレベルによって変化する】

【シードバレットLv1(アクティブスキル):魔力で種を撃ちだして敵を攻撃する。地属性】

【アイビーニードルLv1(アクティブスキル):地面からツタを突き出して攻撃する。地属性】

【品質上昇:植物 (ユニークスキル):プレイヤーがログイン中、スキル所持者が畑に30分以上存在していた場合に効果が発揮される。翌日に収穫される植物のランクが10%の確率で上昇する(各植物ごとに判定)】


 !?


 ほとんどライアと同じだなーと思っていたら、ユニークスキルを思わず二度見してしまった。

 ランク上昇……?! つまり、その辺で普通に売っているランクDの薬草の種から、ランクCの薬草が採取できる可能性があるってことか……?

 そしてランクCの薬草を使ってポーションを作れば、ランクCのポーションになる。

 ランクDのポーションは現在100Gで取引されていて、ランクCになると約150Gと1.5倍にもなる。

 レベルが上がって最大HPが多くなるにつれて、ランクDだと回復量が物足りなくなるからだ。ちなみに回復量はランクDが50、ランクCが75だ。

 ……運が必要だけど、これが量産できるようになるのはかなり大きいだろう。


「るーるー♪」


 レイは器用にツタを使い、ジョウロで水をあげたり、自分の花びらの中にある蜜を水に溶かしてあげたりしている。

 この蜜がユニークスキルに関係するのかな……?


「るー! るーるー!」


 レイは俺を手招きする。

 何かあるんだろうか?


「るっ!」


 レイは花びらの蜜を小さな手ですくい上げ、俺に差し出した。

 ……さすがにこのまま舐めるのは絵面的にとてもまずいので、蜜を俺の手に移してもらう。

 そして、少し舐めてみる。


「これは……!」

「るぅ……」

「お、おいしい! ハチミツみたいなすっきりした自然の甘さで……食パンに付けて食べたい……」

「るーっ!」


 俺が蜜のおいしさに驚くと、レイは両手を上げて喜んだ。

 自分のものが気に入ってもらえて嬉しいのだろう。


「……きゅー?」


 俺たちがそんなやり取りをしていると、ライアが家の中から出てくる。

 俺はライアに「こっちにおいで」と声を掛けると、ふわっと浮きながら傍に来てくれる。


「ほら、これ。レイの蜜なんだけど、すごくおいしいからライアもどうぞ」

「きゅーっ……きゅー!」


 ライアは俺の手の中にある蜜を舐めると、目を輝かせながらレイの方を見る。


「きゅー、きゅっきゅっ!」

「るーっ!」


 おそらく、おいしさをライアなりに伝えているのだろう。聞いているレイの表情はとても嬉しそうだ。

 ……最初はケンカしないか心配だったけど、これならもう大丈夫かな。


「さて、俺は……と」


 蜜を直接持ってしまったのでベタベタになった手を見ながら、この後どうしようか考えるのだった。

 ……水道がないから井戸から汲み上げるしかないんだよなあ。結構重労働だし、触る部分も蜜でベタベタになるから後片付けも大変そうだ……。


 次に蜜をもらう時はちゃんとした容器に移そう……そう頭の中で決めながら、井戸に向かうのだった。




**********




「ライア、そろそろハイポーションを作っておこう」

「きゅーっ」

「るー?」


 俺たちが作業場に行こうとすると、レイが不思議そうな目でこちらを見ている。

 そっか、ポーション作りとかは見たことないよね。


「ライア、机を出してここで作業する?」

「きゅっ」


 ライアもレイにポーション作りを見せてデキる女の子感を出したいのか、同意してくれる。

 それじゃあ……。




 俺はアイテムボックスから、自分で作った机を取り出して、薬草と魔法水を机の上に必要数だけ準備する。

 そしてライアと息を合わせてハイポーションを作り出すと……。


「るーっ!」

「きゅっきゅーっ」


 錬金を見て驚いたのか、レイが目を丸くする。

 そして、そんなレイを見てライアがえっへんと胸を張る。うーん、2人ともかわいい反応だ。


「るーるーっ」


 そんな2人の様子に和んでいると、レイがハイポーションを指差して俺に訴えかける。

 なるほど、レイもやってみたいのかな。


「……それじゃ、レイもやってみる?」

「るーっ!」


 それじゃ……と思って机をレイの方に動かそうとすると、レイが地面から身体を浮かせてこちらへと寄ってくる。

 ライアと同じような移動方法なんだ……根が地面に張り巡らされているわけじゃないんだ……。

 さては運営、アルラウネをデザインしたあと、仲間にしたときの移動方法を考えてなかったな? ……まあ、これなら安心して外へ一緒に出掛けられるからいいんだけど。

 などと思いながらも、レイのために準備を進めていく。


「それじゃ、まずはレイ1人でやってごらん。魔力操作が意外と難しいから最初は失敗するかもしれないけど……俺もライアも最初は失敗したから、気にせずにね」

「るーっ」


 俺はレイの目の前に、薬草をすり潰して入れた魔法水を準備する。


「あとはレイが魔力を送り込むだけだから、やってみて」

「るー……」


 レイはまるで目の前のもの以外何もないぐらいに集中して、魔法水へと魔力を送り込む。

 そして……。


「るー……っ」


 思わず息も止めてしまっていたのだろう、魔力を送り終えたレイが疲れた表情を浮かべる。

 しかし、どうやらうまくいっていたようで……。


【ポーションオブアルラウネ:ランクD、アルラウネの魔力が籠った特別なポーション。回復量はポーションと同じだが、飲むと魅了耐性が付与される(効果時間:3分)】


 ……どうやら、新しいポーションのようだ。ポーションオブ~系のポーションを作れるのはドリアードやウンディーネなどの精霊だけじゃないんだな。

 効果時間が3分なら、効果が切れそうになったらアラートで知らせてくれないかな……なんて。


【INFO:新しいレシピを発見しました。一週間以内に申請することで、特許を取得することができます。また、取得する、しないに関わらず、選択肢を選んだ時点で全プレイヤーにレシピが公開されます】


 そんなくだらないことを考えていると、いつもの特許取得画面が表示される。

 これはもちろん取得する方向で。アルラウネをペットにする方法が判明したし、おそらくポーションオブドリアード以上の特許収入が発生するだろう。

 ……しかし、こんな短期間に特許を3つか……これでお金に困ることはまずないだろう。多分。おそらく。きっと。

 でも、村を作る段階になったら資材代で足りなくなるんだろうな……。


「るーっ?」


 そんな感じでポーションオブアルラウネを見ていると、レイに声をかけられる。

 そうだ、ちゃんと褒めてあげないと。


「ごめん、レイがすごくいい物を作ったからびっくりして見てたんだよ。これでレイも錬金ができるね」

「るーっ♪」


 俺が頭を撫でると、アホ毛が嬉しそうに左右に振られる。犬の尻尾かな?

 ……さておき、これは動画にして公開する必要はあるかな? ライアの動画とほぼ同じになるし……。

 でも、せっかく動画の保存数を増やしたので撮っておこう。ペットモンスター愛好会の掲示板に投稿してもいいし、レイの姿も動画で残しておきたいしね。


「それじゃレイ、動画を撮影するからもう1回やってくれる?」

「るーっ!」



 その後、ペットモンスター愛好会の掲示板に動画を投稿したのだが、アテナさんがレイのために作ってくれた服も好評で、これはまたアテナさんの依頼量が増えちゃうな……などと心配をするのだった。




**********




「るーっ!」


 動画の撮影後、俺はレイを町へと連れてきていた。

 ライアも来たがってたけど、連れて歩けるペットモンスターが1人までのため、泣く泣くお留守番に。

 これは早く運営に要望を出さないとなあ……。


「おう、コウじゃないか。今日はいつもの彼女とじゃないんだな。浮気か?」

「アトラスさん……それ、人に聞かれたら誤解されますって」

「おっと、悪かった。でも、ちょっと気になってな」

「ええと、実はペットモンスターの連れ歩ける最大人数が1人でして……」

「なるほど、そういうことか。お留守番は寂しそうだし、せめて町中ぐらいは全員連れ歩けるようになって欲しいな。戦闘面では数が多いと有利だから難しそうだが……」


 確かに町中では戦闘は起こらないし……いや、そうでもないか。

 次のイベントはこの町が襲われるから、ペットモンスターが多い方が有利になっちゃうか。


「防衛イベントが終わったら検討して欲しいですよね」

「ああ、そういえば防衛戦はこの町が舞台になるな……そりゃ人数制限も仕方がないか」

「終わった後に期待しましょう。一応要望は送る予定ですが……」

「それならおれも協力させてもらうかな。……ところで、ちょっと頼みがあるんだが、いいか?」

「ハイポーションの件ですか?」


 そういえばアトラスさんからもハイポーションを納品して欲しいって頼まれてたのを思い出す。


「いや、それもあるけど……こっちだ」


 アトラスさんがアイテムボックスから取り出したのは、かなり大きめの鉄製のハンマーだ。

 結構な重量がありそうだけど……。


「おれは鍛冶師をしてるんだが、ちょっと作れる武器の種類を増やしたくてな。今回はハンマーを作ってみたんだが……使用した感想が欲しくてさ」

「なるほど……でもなんで俺なんです?」

「コウがものづくりしてるなら、力と器用さにステ振りしてると思ってな。ぶん回すだけなら力だけでもいけるが、器用さがあれば違う使い方もできるか知りたいんだ」

「確かにその通りのステ振りしてますね……では、引き受けましょう」

「悪いな。それじゃ、武器はサンプルってことで無料で、あとはおまけで鉱石を安くしておくぜ」

「この前大量に買ったばっかりですって!? それに、鍛冶師なら鉱石が必要なのでは……?」


 以前も大量に鉱石を買っているので、アトラスさんの使う分の鉱石がなくなるのでは……?


「それなら問題ない。加工済みの魔玉を大量に持ってるからな。ちなみに魔玉は鉄や鋼なんかとも交換できる場所があるから、素材が気になるなら交換してみてもいいだろう」

「なるほど、鉄に交換できるなら遊具の作製に使用して使用回数の向上とかもできそうですね……」


 ブランコは紐の部分を鉄にすれば耐久力が上がりそうだ。

 ただ、鎖状にするには更に加工が必要なんだよな……別の場所に使おうか、それとも加工技術を習得するか……。


「ははっ、すぐにそういう発想になるあたり、誰かが喜ぶものづくりが好きなんだな。普通のやつなら武器に使うとか言い出しそうだしさ。まあ、これはこれで喜ぶプレイヤーがいるが」

「あー、確かにそうかもしれませんね……ん?」


 気づくと、レイが裾を手で引っ張っていた。


「おっと、嬢ちゃんとのデート、邪魔して悪かったな。お邪魔虫はこれで退散ってことで」

「ちょっ、アトラスさん?! ……行っちゃったか。それじゃレイ、町を見て回ろうか」

「るーっ♪」


 その後、レイといろいろなお店を見て回り、魔石を買ってからホームへと帰るのだった。

 それにしても、思いがけず新しい武器が手に入ったけど、どうしようか。

 ……レイのレベル上げをする際に使ってみようかな。ちょっと取り扱いにはコツが必要そうだけど。




**********




「きゅーっ!」


 ホームに帰るとすぐに、ライアが飛びついてくる。

 今まではずっと一緒だったから、やっぱり寂しい思いをさせちゃうなあ……早速要望を送っておこう。


 俺は要望を書いている間、レイには魔石を食べてもらって、ライアには遊具で遊んでもらっていたのだが……。


「そういえば、ペットモンスターが2人に増えたんだし、遊具も2人で遊べるものを作ってあげたいな」


 必ずではないけど、1人で遊ぶよりも2人で遊ぶのが楽しい場合もあるし。

 ……しかし、この体格差で一緒に遊べる遊具、かあ……。

 レイは中学生ぐらいの体型で花の部分もある、ライアは妖精ぐらいのミニマムサイズ。


 んー……。


 公園にあるものを想像して真っ先に浮かんだのはシーソーだけど……。

 板を長めにすればどこかで釣り合う感じになるかな? 大人とこどもでも釣り合うぐらいだし。


 まあ、案ずるより産むがやすし。失敗は付き物だし、やれるだけやってみよう。


 まずは支点部分を作製して……土台が動かないように地面に固定できるようにして、と。

 板は長めにして、落ちないように取っ手も付けて……。

 次に支点に板を取り付ける部分を作って……最後に板を取り付ければ完成かな?

 あとは実際に作りながら考えていこう。



「ふう、一応完成したけど……」


 作業すること1時間半ぐらい。

 なんとかそれらしいものは完成した。


「ライアはこっちの端っこに、レイは中央寄りに座ってくれる?」

「きゅー!」

「るー!」


 これで何とか動くかな? と思ったが……やはり体重差は思った以上にあるわけで。

 そして『?』という顔をしている2人。

 しょうがない、今回ばかりはちょっと自分が力を貸そう。


 俺はライアの方に立って、板に少しずつ力を入れていく。

 すると、レイの方が浮き上がり始めて……。


「るー!?」

「きゅーっ♪」


 そして、今度は少しずつ力を緩めていく。


「るー♪」

「きゅーっ!」


 その後、何度も上下させていくと、2人の顔からは笑みがこぼれる。

 どうやら、シーソーのやり方が分かって楽しんでくれているようだ。


 ……今回は失敗したけど、ライア側の方に重りを付けて調整すれば2人だけでも遊べるようになるかな。

 それと、ドリアードサイズとアルラウネサイズのシーソーを作って、交流会を開いてみるのもいいかもしれない。


 そう思いながら、しばらくは3人でシーソーを楽しむのだった。

レイのキャラデザインを活動報告にアップしています。よろしければどうぞ。

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3495711/


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― 新着の感想 ―
中学生サイズと妖精サイズで、2人で遊べるものですか。難しいですよねぇ。 そういえばレイちゃんに椅子は作ってあげないの?机とかも。ベッドも。作る物が多くて大変ですが。
需要の高い椅子やベッド、作業机を金属補強するのが金策&各スキル鍛錬になりそう
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