トレントの島のダンジョンでのレベル上げ
「へー、トレントの島のダンジョンも結構攻略されていってるんだな」
俺は今、掲示板で攻略情報を仕入れている。これを無料で提供してくれるのだから、攻略班には頭が上がらない。
一応、寄付のようなこともできるようになっていて、情報を投稿したプレイヤーのレスにいわゆる投げ銭ができる。俺もちょっと投げておこうかな……1000Gほど。
この投げ銭もバカにならないほどの収入源の一つになるらしく、良い情報を提供すると10万を超えることもあるらしい。ちなみに収益化するには申請が必要とのことだ。
「投げ銭だけじゃなくて、直接アイテムなどを提供するのもよさそうだけど……」
あいにく、攻略班には知り合いはいないんだよね。まあ、タケルやタイガさんがランカーだから、攻略班も兼ねているといえばそうなんだけども。
……さて、各ダンジョンの攻略状況は……。
【ロックバードが単独で出現するダンジョン】
ロックバードの動きが速く、攻撃が当てづらい、被弾が多い、更に複数属性持ちで弱点を突かれやすい。
おそらく、地属性と風属性を持ち、弱点は火属性。風属性は若干軽減されることから、火属性-50、風属性+30、地属性+20のような感じと思われる。
魔石はアルラウネの進化に使えるが、既に需要は下火。ただ、アルラウネの大好物な魔石である確率が高いため、出品されるとこぞって購入するアルラウネLOVEなプレイヤーもいる。
中層には未達。おすすめできません。
【階層ごとにサハギンとリザードマンが交互に出現するダンジョン】
サハギンは動きが鈍く、防御も魔防も低いので遠距離から地属性の魔法を撃っていれば倒しやすい。
リザードマンは胸当てを装備しているため、防御はサハギンより高い。ただし魔防は低い。群れで行動しているのと、動きがサハギンよりは素早いので注意が必要。
中層に入るとサハギンも防具を付けるほか、リザードマンは魔法を使うタイプも出てくる……が、やはり魔防が低いのでそこを突くと倒しやすい。
おすすめ!
【階層ごとにウンディーネとマーメイドが交互に出現するダンジョン】
俺にはかわいい彼女たちを倒すなんて……できない!
……というプレイヤーが続出するダンジョン。
心を鬼にして攻略していくと、中層から劇的にモンスターが強くなる。
具体的には、ウンディーネが全体魔法を撃ってくる、マーメイドの歌の状態異常の幅が広がる、など。
マーメイドの歌は状態異常無効化鉱石が有効ではあるが、攻略のために使うにはいかんせんお高い。
おすすめできません。
【ペンギンが単独で出現するダンジョン】
どうしてこんなダンジョンを造ったんですか? どうして……。
床が凍っているためとにかく戦いづらい。ペンギン自体も毛皮が厚くて防御が高い。
前提として、凍っている床でも大丈夫な靴が必須。今のところそんなものはない。ありません。
つまり攻略が全然進んでいない。絶ッッッ対におすすめできません。
でも、ペンギンをペットモンスターにするために奮闘しているプレイヤーもいるとか。ファイト!
……まあ、大方の予想通りサハギンとリザードマンのダンジョンになるよな……。
しかし、進化で使う魔石が大好物になりやすいとは初めて聞いたな……それなら、鉱石喰らいの魔石を時々バンシーたちに持って行ってあげてもいいかも。
それと、ペンギンのダンジョンの氷で滑るなら、常に浮いていれば滑らないよな……。ここで風起こしスキルの練習が役に立つかもしれない。ま、それはだいぶ先にはなりそうだけど……。
「……よし、情報集めはこれぐらいにして……と」
今日は俺たちもサハギンとリザードマンのダンジョンに潜る予定だ。
以前、レベル上げのためにサハギンとはかなり戦ったけど、リザードマンは初めての遭遇だから気を付けて行かないとな。一応、動画でイメージトレーニングは行ったが、イメージ通り行かないのが現実だしね。臨機応変に対応できる力を身に付けないと。
「コウさーん!」
俺が準備を始めていると、アテナさんの声が聞こえる。どうやらみんなも到着したみたいだ。
「ありがとうございます、オレたちの武器まで用意してくださって……」
「一応ギルド……ティルナノーグのリーダーですしね。これぐらいはしないと」
「ここまでしてくれるのはコウさんぐらいですよ。ありがたくレベル上げさせて頂きます」
「それではパーティー分けはどうしましょうか?」
「ああ、それなら──」
俺のパーティーはアテナさん、アトラスさん、レックスさんのいつもの4人だ。
他のパーティーもほぼメンバーが固定されているのか、すんなりと決まった。
「それでは各パーティー……というか、各メンバーにこれをお渡ししておきます」
「EXマジックポーション?!」
「しかも400回復のを?!」
「今日まで時間がありましたからね。ぜひ有効活用してください」
「ありがとうございます!」
「あなたが神か……」
そこまで?!
俺としてはギルドメンバー全員のレベルが上がることで、HPやMPの上限が増えてものづくりがしやすくなり、それにより新しい発見などができてギルド全体、ひいてはプレイヤー全体の利益になると思って用意しただけなんだけどなあ。
確かに買ったらそれなりのお値段はするけども。
「えー……では皆さん、無理をせずにじっくりレベル上げをしていきましょう」
……こうして、俺たちのレベル上げが始まった。
**********
「……ふぅ、中層でも結構戦えましたね」
「そうだな。バイスの武器もあるが、地属性のペットモンスターが多いのも効いたな」
「おかげでペットモンスターをローテーションしながら、効率よく稼げましたね」
「私はフィーリアちゃんの動きが凄いと思いました!」
「もちろんにゃ! にゃーは水属性は苦手だけど、当たらなければどうということはないにゃ!」
フィーリアは砂漠のモンスターだけあって火属性で、サハギンやリザードマンたちとの属性相性は良くない。
しかし、フィーリアが素早く、更にリザードマンたちの動きが遅いため、攻撃が当たることはなかった。
……どんなに強い攻撃でも当たらなければ意味がないんだよなあ……と改めて思う。
「ただ、においが染みついちゃうのが嫌にゃぁ……早く水浴びしたいにゃあ」
「それじゃフィーリアちゃん、私と一緒に村まで戻りましょうか」
「にゃ! そうするにゃ!」
「コウはどうするのー? ボクは的当てをやりたいからお金が欲しいんだけど」
「あ、俺はちょっと寄りたいところがあるから後から村に戻るよ。……ということで、はい、エファ」
「わー、ありがとー! ……お金がいつもより多い気がするかも?」
「エファもたくさん手伝ってくれたからね。いっぱい遊んできてね」
「はーい!」
……そんなこんなで皆と別れて向かった先は……。
「おお……ホントに凍ってる……」
そう、俺が来たのはペンギンが出現するダンジョン。床がどんな感じなのか実際に来て確かめたかったんだよね。実際にツルツル滑るほどに凍っているし、内部も割と広い。
これなら靴にスパイクを付けるか……それとも火属性の魔法で氷を溶かすとかだろうか。後者は消費MPを考えると現実的ではないけど……。
「きゅー♪」
「あ、もしかして氷が気になる?」
「きゅっ!」
ライアは初めて見る氷に興味津々なご様子。寒さは気にならないようだ。
もしかしたら寒いかもと思ってアテナさんに厚手の服を頼んでおいたけど、正解だったみたいだな。
しかし、長居をするとペンギンに見つかって戦闘になっちゃうからなあ……早めに帰った方がいいかもしれない。
……とは思うのだけど、ライアが楽しそうだから入口付近でちょっといろいろ試してみようかな。
「まずは……と」
俺はアイテムボックスから人が入れるぐらいの籠を取り出す。気球の籠部分のようなものだ。
そしてそれに入ると、スキルの風起こしで籠を浮かせていく。本当なら気球そのものを作ればいいんだろうけど、風船部分ってどうやって作るんだ……となったので今回は籠のみである。乗れればいんだよ乗れればという心構えだ。
「おお……結構遠くまで見えるな。いつか戦況を確認する必要があるイベントとかに使えるかも……?」
やはり視点が高いとダンジョンのいろいろなところが見えてくるな。……あ、あっちの高台に宝箱がある。周りに登れる場所がないから隠し宝箱か……?
などなど、空が飛べるからこそ分かることも多いな。……あ、向こうにはペンギンが……って、こっちに気付いた……?
俺は1羽のペンギンと目が合ったのに気付き、急いで籠を地上に降ろしていく。そして、ライアに声をかけてすぐにダンジョンから出ようとしたのだが……。
「ギー! ギーッ!」
必死にこちらを引き留めようとするようなペンギンの声が気になり、階段でしばらく待ってみることにした。これなら即座に引き上げられるし、危なくはないはず。
そして、ペンギンが走って……ではなく、氷の上をお腹でツーッと滑って階段の傍までやってくる。こちらを攻撃する素振りはなく、俺の顔を見て必死に何かを伝えようとしているけど、俺では言葉が分からないんだよな……。
「ライア、この子は何を言ってるの?」
「きゅー……きゅっ!」
ライアは手で箱のようなものを描き、それがふわふわ浮いていくジェスチャーをする。
「……もしかして、飛んでみたい……ってこと?」
「ギー!」
どうやら正解らしい。確かにペンギンは鳥だけど飛べないんだよね。だから、飛ぶことに興味があるか憧れがある……?
「うーん……それじゃあ、俺と一緒に籠に乗ってみる? 2人だと飛ばすのが難しいから……もし、墜落したらごめんね?」
「ギーッ!」
どうやら気にしない模様。……かといって痛い思いはさせたくないので、しっかり調整しよう。
「それじゃあちょっと失礼して……」
俺はペンギンを持ち上げると、籠の中に一緒に乗る。
そして、そのまま抱きかかえつつ、風起こしでゆっくりゆっくりと高度を上げていく。こうしないとペンギンが外を見られないからね……。
さすがに1人で乗っていた時ぐらいまで高度を上げるのは難しいけど、半分ぐらいの高さまで上がることはできた。
「ギッ! ギッ!」
それでも充分らしく、かなりご満悦な様子。やはり飛ぶのに憧れがあったんだろうな。
……実際、俺もこういう単独飛行というものに憧れはあったから、気持ちは痛いほどわかる。
そして、しばらく空からの眺めを堪能した後、俺たちは地上へと戻っていく。
「ギー」
ペンギンを籠から降ろすと、ペコリと頭を下げる。かわいい。
「楽しかった?」
「ギ!」
「よかった。それじゃあまた今度来ようかな。次は言葉が分かる子も連れてくるから、要望があったら考えておいてね」
「ギー!」
ペンギンはその場でぴょんぴょん飛び跳ねる。かわいい。
よし、次はエファかフィーリアを連れてきて通訳してもらおう。フィーリアは火属性で水属性が苦手だから、寒いのも苦手なんだろうか? ……などと考えつつも、俺は村に帰ることにした。
**********
「あ、お帰りなさいコウさん。ペンギンのダンジョンはどうでしたか?」
「……え?」
村に帰るとアテナさんに開口一番にそう聞かれる。
俺が首を傾げていると、アテナさんは続ける。
「みんなの厚手の服を依頼されたので、分からないわけがないじゃないですか」
「確かに……」
「それで、攻略できそうでしたか?」
「いえ、実は……」
俺はダンジョンでの出来事をアテナさんに話す。
「へー、それはかわいいですね!」
「他のプレイヤーの動画を見ると結構厄介なモンスターなんですけどね……今回のは偶然でしたし」
「でも仲良くなれたのなら凄いですよ。次は私もついていっていいですか? ペンギンちゃんを抱っこしたりもふもふしたりしたい……」
「わ、分かりました。それではフィーリアかエファに通訳をお願いするので、2人の厚手の服をお願いできますか?」
「もちろんです! これから速攻で作りますよ!」
……こうして、ペンギンたちに再会するのはすぐになるのだった。




